ロシア軍は10月下旬にバフムート方面での反撃を開始、ウクライナ軍は約1月半の戦いで複数方向の支配地域を失い「一部地域」では3km以上も後退、ゼレンスキー大統領が12日に発表した「テリコン奪還」もロシア軍に直ぐ奪い返されてしまった。
参考: Під*ри виклали відео зі знятим синьо-жовтим прапором на териконі шахти ім.Гагаріна
ロシア軍の約1ヶ月半の反撃、バフムート方面のウクライナ軍は複数方向で支配地域を失った
ウクライナ軍のシルスキー大将は10月下旬「バフムート方面のロシア軍が大幅に強化され積極的な作戦に移行した」と主張していたが、ロシア軍は12月14日までにベルヒフカ貯水池付近からボダニフカやクロモヴォに向けて3km以上もウクライナ軍を押し戻すことに成功し、この方向の前線はクロモヴォとチャシブ・ヤールを結ぶ道路(O-0506)に達している。
他にもロシア軍は「バフムートの西と南でイワニフスキー方向に前進」「クリシェイフカの戦術的高地を制圧(ウクライナ軍は高台陣地の一部を保持しているという話もあるが正確な状況は不明)」「ロシア軍が線路を越えてアンドリーイカに再侵入したため集落がグレーゾーンに移行」「オリホヴォ・ヴァシリフカ方向にも攻撃を開始」「夏にサッコ・イ・ヴァンツェッティやミイコラフカ付近で失った土地を奪還」「線路沿いに前進してヴァイセルの側面に進出」するなど複数方向で成功を収めており、ロシア軍は冬を迎える前にバフムートの状況を大きく改善した格好だ。
極めつけは「ホルリウカ郊外のテリコン奪還」で、ゼレンスキー大統領は12日「第24機械化部隊がホルリウカ郊外のテリコンを奪還して国旗を掲げた」と発表したが、この国旗は直ぐにロシア軍兵士によって引きずり降ろされしまい、ウクライナ人が運営するDEEP STATEも14日「テリコンは再びレッドゾーンに戻った=ロシア軍の支配下に移行したという意味」と報告している。

出典:DMG 132 бригада “Беркут” 引きずり下ろしたウクライナの国旗に排尿するロシア軍兵士
政治の延長線上にある戦争にプロパガンダや情報戦はつきもので、ゼレンスキー政権も「見通しの暗い反攻作戦が招いた暗い雰囲気」を改善するため「占領状態が続いているホルリウカ周辺で象徴的な作戦」を要求し、ウクライナ軍はピブデンヌ近郊のユジナヤ炭鉱周辺にあるテリコン(ぼた山)奪還を実行に移したのだろう。
これ自体は政治的に意味があったと思うが、ロシアは「テリコンを奪還した」と発表した翌々日に「引きずり降ろした国旗におしっこをかける」という動画を公開し、久々の明るいニュースになるはずだった「テリコン奪還」の正体が「テリコンに国旗を掲げてきただけ」とバレしまい、暗い雰囲気を改善するはずだった「象徴的な作戦」は逆効果になった感がある。
因みにウクライナ東部については様々な報告があるものの「前線の動き」が活発過ぎて視覚的確認が追いついておらず、管理人が引く「推定前線の位置」を信用せず「他の情報」と照らし合わせて戦況を追って欲しい。
関連記事:ゼレンスキー大統領、ホルリウカ西郊外に位置するテリコン奪還を発表
関連記事:侵攻657日目、ウクライナ人は「前線の状況が全体的に悲惨だ」と警告
関連記事:バフムート方面のロシア軍は大幅に強化され、防衛から積極的な作戦に移行
※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
殆どの意味のなかったパフォーマンス的な行動を逆利用されてしまった形であり、完全にウクライナ政府のプロパカンダ失敗となってしまった。開戦初期から始まっていたウクライナの宣伝効果も現実の戦場との解離によって、ハリボテになってしまった事の証明だろう。
※画像や動画が無い上に、X上での情報だが、ウクライナ北部都市シンキフカ(ハルキウ州)にロシア軍が浸透してきたという内容の投稿があったようです。
バフムートでの一連の流れを踏まえると、ウクライナ軍が無理な攻勢を仕掛けてくるのを適当にいなし続け、損耗が限界に達し息切れしたところを満を持してロシア軍が反撃を開始し押し戻した感じですかね
滅茶苦茶勢いのあったころのワグネルでも制圧できずに終わったクロモヴェや0506線を突破されているという時点で、現地のウクライナ軍がどれほど劣勢下にあってロシア軍に勢いがあるのかというのが分かりますし
もはやバフムートでの戦いはほぼ決して高地にあるチャシブ・ヤールに次の焦点が移りつつありますが、ここも真正面から攻撃を仕掛けるのではなく、フリホリフカ方面から背後に回り込んで無効化するという感じになるでしょうし、Rybarも実際フリホリフカにロシア軍の攻撃が行われていると報告していましたからね
それにロシア軍がイワニフスキーに近付きつつありますが、ここを占領されたらもはやクリシチーウカやアンドリーウカを保持する意味も失われてしまうのでウクライナ軍も後退せざるを得ないでしょうし(本来なら高台を取られつつある時点で一刻も早くクリシチーウカから撤退するべきなのですが)
ただやはり本気でロシア軍を後退させてバフムートを奪還したかったのであれば、南部ではなく北部に主要戦力を全ベットして主要ジャンクションであるパラスコヴィフカやソレダールを制圧しておかなければならなかったのに、何故か南部に力を入れるという謎ムーブをかましてしまいましたからなあ
まだ北部に力を入れておけばそれでも恐らくバフムート奪還は難しいものの、現在よりはマシな戦況にしてもう幾分か時間を稼ぐことが出来ていたでしょうが
ロシア軍は、ドネツク州・ルガンスク州の全土掌握を政治目標にしていますから、それに向かって進めているように感じています。
ウクライナ軍は、防衛線の整備を政治目標に掲げましたが、もう少し早ければ対処できる事は多かったのではないでしょうか(南部攻勢失敗の結果論ですが…)。
ゼレンスキー大統領は、宣伝戦に成功して、世界からの援助取り付けに成功しましたからね。
テリコン奪還のプロパガンダにより士気を保とうとしたのでしょうが、ウクライナ軍の前線歩兵を不憫に感じてしまいます…。
ロシア軍が奪還したバフムート西側、イワニフスキーの西側に標高の高い丘のようなものが3Dマップにあります。
ここを簡単に抜かれるかどうかで、ウクライナ軍の防衛線の強度、ロシア軍による攻勢の衝力が分かりそうですね。
>ゼレンスキー大統領は、宣伝戦に成功して、世界からの援助取り付けに成功しました
ただ今冬は、宣伝戦に失敗し、欧米からの援助取り付けに失敗してしまいましたね。「成功体験」というのは、時に戦場では麻薬のような魔物なのだと思います。
また、相手方の宣伝戦に利用されるのは承知の上で、ヘルソンから撤退し強固な防衛線を敷いたスロヴィキン将軍の戦略眼と、外交との兼ね合いを含めて承諾したプーチン大統領の決断が、今の優勢に繋がったのだと。
資金と弾薬に加え兵員も枯渇しつつある現状、イワニフスキーは果たして維持できるのか。そして、何時まで維持すればよいのか、政治的な見通しがないのが、前線の兵士にとって一番キツいのではないかと。
まさに仰る通りです。
4州併合宣言の直後に、ヘルソン撤退(ドニエプル川西岸撤退)を決断していますから、もの凄い批判を浴びていました。
プリゴジン・カディロフなどが、スロヴィキンの撤退を称賛・擁護していた事が、印象に残っています(プーチン大統領の決断ですがリスクヘッジもあるのでしょう)。
ウクライナ軍は、東部の要塞構築をどこに考えているのか、少し気になっています。
併合宣言直後のプーチンに撤退を進言できる将軍がいて
プーチンにもそれを受け入れる度量があったと
下手な国だと進言した段階でクビですよ
自分のメンツより兵隊の命を優先したのが見事にはまった感
プーチンは国内では盤石なんでしょうね
国内基盤がガタガタだったら国民の機嫌を取るためにメンツを優先してたでしょうし
逆にゼレンスキーは後退の判断ができるのでしょうか
度量や能力云々ではなくて支援で戦争をしている状況が判断に枷を嵌めていそうな気がします
仰る通りです。
日本の企業レベル、オーナー企業の社長レベルで考えれば、分かりやすいでしょうね。
社長のポリシーに対して、事業部長が撤退・リストラの進言を続ければ、クビ・左遷されるというのはよくある話です。
ゼレンスキー大統領が、撤退判断できるのかは、仰る通りで注意深く見ています。
スポンサーのお金で戦争しながら、政争もしているわけですから、現状は後退判断に失敗しているように見ています。
退いて守るべきですね
戦線を整理すればまだまだ粘れる
本来であれば去年の今頃に選択すべき手段です。
ただ敵地でなく自国領土防衛ということを加味すると、機動防御は戦術的、戦略的に正しくても
政治的にはキツイというところでしょうか?
装備が潤沢で機動力のあるロシア軍ならともかく、歩兵の比率が高いウクライナ軍で撤退は追撃戦を受けて大損害を被りますよ
欧米の支援策は年越しが確定したうえ、ここ最近の進撃はいよいよ末期的と感じるな
ISWなんてロシア勝利の場合に米軍にかかる費用の試算まで発表し始めた始末だし 敗北主義者か?
アメリカの610億ドルに続き、EUの500億ユーロもハンガリーの拒否権で再検討となってしまいましたね。これでは、先の計画を立てようもないでしょう。
アメリカの次年度予算は元来9月末までに決まるべきものですから、10月、11月、12月と、3ヶ月もウクライナへの支援が予算ゼロのまま滞っていることになります。そろそろ、ウクライナ前線の砲弾や弾薬備蓄が本格的に枯渇しているのではと。流石に、バフムートの後退が急すぎるように感じて、遅滞戦闘というより“弾切れによる敗走”という印象を受けます。
他の戦線も、マリンカ、ノボミハイリフカ、クビャンスクと12月に入ってから押し込まれ気味で気になります。アウディーイウカは恐らく補充が優先的に送られている(からこそ何とか持ち堪えている)と思うのですが、その分だけ他が枯れているようで。
粗末なロシア軍のものが思いきり見えてますけど大丈夫ですか?
私の息子よりは大きい…
重要なのは回数だから・・・。
手で隠れている辺りから放水されているように見えたので、その下の謎突起物は“ソレ”ではない安心安全なナニかだと思っていたのですが…
真相はボカ…いや闇のなかに…
5月半ばから10月半ばまでのウクライナ軍の半年の攻勢成果が、ロシア軍の反撃開始から1ヶ月半でほぼ振り出しに戻ってしまった・・・
シルスキー大将はやはり、敗退の責任を問われるのだろうか。
WW1末期のドイツみたいだな
最後は切り貼りされてポーランド自治領になるんじゃないか?
散々ネタにされてた分割ネタに期待の新人が…?
実際、プーチン大統領以下ロシア首脳部は「ウクライナ西部はポーランドかハンガリーにプレゼントしたい」と、もはやウクライナ分割を隠してすらいませんので。
ここでポーランドの勝利条件がシフトしており。
・ウクライナ西部をポーランドの支配下に置く
・ウクライナ西部を非武装中立地帯として対ロシアの緩衝地域とし、ポーランドにEUとNATOの軍事支援を集中させる
すなわち。
ウクライナが死んでくれると、ポーランドがウクライナが得るはずだった兆円単位の軍事支援を代わりに得ることになるんですね。
陸軍大国としての復権はポーランドの宿願でもありますから,ポーランドの国益のためにはウクライナは死んで粉々に砕け散って欲しい、という構造が現れつつあります。
晩秋以降、ウクライナの戦果は
真偽不明の撃退情報と、特攻渡河。
あとは民間狙いのテロくらいで
相当弱体化してますね
EUはともかく、アメリカは
出口戦略に移行してるかも
アフガンでも頭越しにタリバンと交渉してたし
こうなるとベラルーシが北から参戦する可能性が大きくなりました。既にベラルーシの諜報機関がキエフに入り一部軍部隊も戦闘準備態勢になっています。これと連動して、ルーマニアやポーランドがウクライナ西部の保障占領に動き出すかもしれません。いずれにしてもウクライナは戦争の危機です。
ロシア軍は2022〜23冬季攻勢の失敗による損害が極めて大きかったと思われますが、4月以降は守勢に転じて戦力を回復し、満を持して攻勢に転じたようですね。
ウクライナ側は、全領土を奪回して戦争に勝つ気でいるゼレンスキー大統領と、負けないことを優先する軍で、対立しているように見受けられます。
ウクライナ側の現実的な戦略は、ロシア軍の攻勢に粘り強く耐えながら相手の消耗を誘い失敗させることで、ロシアを和平交渉のテーブルにつかせることだと思います。
それは十分可能な目標だと思いますが、ウクライナ側の意思統一が重要ですね。