ザポリージャ州ロボーティネ方面の戦いは激しさを増しており、27日~29日までの戦いはロシア軍がロボーティネ方向とベルベーヴ方向でウクライナ軍を押し戻し、ウクライナ軍はノヴォプロコピフカ方向で前進を遂げた。
この戦いはトクマクを解放しただけで勝負がつくほど簡単なものではないし、目標達成には多くの困難を乗り越える必要がある
ザポリージャ州ロボーティネ方面の戦いは激しさを増しており、27日~29日までの戦いはロシア軍がロボーティネ方向とベルベーヴ方向でウクライナ軍を押し戻し、攻勢を仕掛けるウクライナ軍はノヴォプロコピフカ方向で遂げたと言ったところだろう。
ウクライナ軍の攻撃を示す視覚的証拠
- Ⓐ=コパニでロシア軍の装備を砲撃で破壊
- Ⓑ=ロボーティネの南にあるロシア軍陣地を砲撃
- Ⓒ=ベルベーヴ方向のロシア軍兵士を自爆型ドローンで攻撃
- Ⓓ=ベルベーヴ方向のロシア軍兵士を自爆型ドローンで攻撃
- Ⓔ=ベルベーヴ方向のロシア軍兵士を自爆型ドローンで攻撃
- Ⓕ=ベルベーヴ集落内を走行するロシア軍車輌を砲撃で破壊
- Ⓖ=ベルベーヴ方向を砲撃した様子
ロシア軍の攻撃を示す視覚的証拠
- Ⓗ=ロボーティネ集落内のウクライナ軍兵士を砲撃
- Ⓘ=ロボーティネ集落内のウクライナ軍陣地を自爆型ドローンで攻撃
- Ⓙ=ロボーティネ集落内のウクライナ軍拠点を砲撃
- Ⓚ=ロボーティネ集落内のウクライナ軍車輌をランセットで攻撃
- Ⓛ=ロボーティネ集落内のウクライナ軍拠点を砲撃
- Ⓜ=ノヴォプロコピフカ北東でウクライナ軍陣地を自爆型ドローンで攻撃
ウクライナ軍はロボーティネ集落内の南端に到達して解放を28日に宣言したが、ロシア軍の反撃が強化されたため集落南部の保持が難しくなりグレーゾーンへ移行、ロシア側情報源(Рыбарь)は27日「敵の空挺部隊は砲兵でロシア軍陣地を破壊してから歩兵を前進させる標準的な戦術で突破を試み、死傷者を出すことなくベルベーヴの西郊外に到達することができた」と言及したものの、最終的にはロシア軍の反撃で押し戻されている。
ただウクライナ軍兵士がノヴォプロコピフカ北東=Ⓜに到達しているため、依然として2本目の防衛ラインは直接的な攻撃に晒されていると言えるだろう。
ロボーティネから約20km南にあるトクマクはメリトポリ~ドネツクを結ぶ鉄道が通っているため「ウクライナ軍が奪還に成功すればロシア軍の補給が乱れる可能性がある」という指摘もあるが、ドネツク~トクマク間とトクマク~メリトポリ~ジャンコイ間の鉄道輸送は前線に近すぎるルートの問題、パルチザンによる破壊工作、長距離攻撃兵器による攻撃などで随分前から機能しておらず、トクマクを失ってもロシア軍のロジスティクスが受ける影響は限定的だ。
反攻作戦の目標は「南部と東部に展開するロシア軍を真っ二つに引き裂くこと」で、これには「アゾフ海沿いの物流ルート=陸橋」と「クリミア経由の鉄道輸送」を遮断する必要があり、クリミア大橋は長距離攻撃兵器で破壊することが可能だが、陸橋はウクライナ軍がアゾフ海に到達して物理的に遮断するか、限りなくアゾフ海に接近して砲兵戦力による統制下に置く必要がある。

出典:Photo by Lance Cpl. Nicholas Guevara
ストームシャドウ、HIMARS、エクスカリバー砲弾、VULCANO弾を無限に使用できるなら反攻作戦の目標達成は限りなく容易になるが、これらの兵器は数が少ないため通常の155mm砲弾が届く位置=メリトポリ近郊まで前進する必要があり、これとセットでクリミア大橋を破壊できればヘルソン反撃の再現が実現するだろう。
メリトポリに向かう経由地としてトクマクは重要なものの、この戦いはトクマクを解放しただけで勝負が決まるほど簡単ではないし、目標達成には多くの困難を乗り越える必要がある。
追記:地図にⓃを追加、ロシア軍がベルベーヴの西郊外に到達したウクライナ軍部隊を攻撃する視覚的証拠
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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
トクマクへの攻勢正面は
敵陣地が頑強である
↓
地雷の除去作業に取り掛かっており、これが終了すれば部隊機動が可能
…に変化しておるね
ロシア陣地よりの攻撃は大体排除できたのかな
ロシア軍の回復攻撃が、始まったようですね。
ウクライナ軍の最前線部隊、攻勢で消耗した後に、陣地のない突出部で防御態勢を整える必要があります。
ウクライナ軍は、高密度の地雷原・散布地雷に英雄的な前進後ですので、最前線の部隊が壊滅しない事を願っています。
ロシア軍予備隊の量によると思いますが、前線(前哨陣地・第1防衛線)にどの程度の部隊を拘置していたのか気になりますね。
前哨陣地、前哨ライン、第1防衛線、第1防衛ライン、いろいろな表現、言い方はできますが、とにかくロシア軍の防御陣地が、数重、数線、多重の縦深陣地である以上、後方に反撃、逆襲のための予備や、主力の部隊を待機させる、あるいは移動させるのは当然の話であり、予備の主力が精鋭の空挺軍、2個赤旗親衛空挺師団というのは、普通に考えてそうでしょう。
精鋭の2個赤旗親衛空挺師団と言っても、実兵力がどんなもんかは詳しくはわかりませんが、前哨、あるいは第1防衛線であるロボティネに配置されていた時間稼ぎ、遅滞行動のための警戒部隊よりは、当然強いでしょう。
もっともウクライナ軍の10個旅団?というのも、定数割れ、定員割れの部隊も多いかもしれず、実兵力がどのくらいかはよくわかりません。長い激戦の後の消耗や再編成を考えると、ウクライナ軍とロシア軍の両軍ともに定員割れの部隊が多くて当然です。
突破を図るウクライナ軍の逆包囲、というのはロシア軍の予定の行動でしょうが、ウクライナ軍の方もそうはさせないように側面を必死に守ろうとするでしょう。
仰る通りです。
両軍どの部隊も、充足してるのか、よく分からないですよね。
とても難しい局面と思います。
ウクライナ軍は、ロボチネ南方の突破口に10個旅団を投入してきたという情報があります。ウクライナ軍は勝負をかけてきたかもしれません。
そして、このウクライナ軍がもう少し南下すれば、ロシア軍の第1防衛線に当たります。
(混乱しやすいですが、昨年来から衛星写真などで第1防衛線と言われていて龍の歯や対戦車壕が目印になっているラインです。8月ごろからISWが第2防衛線と言っているラインと同じと思います)
とにかく、ウクライナ軍の大軍がこのラインを手早く突破できるかどうか。ここの戦況は、注目すべきだと思います。
ロシア軍は他の戦線より2個空挺師団を増派したとの事です
他戦線より戦力抽出を行うにも限界がありそうですしこれを打ち破り、第二防衛線を突破できればトクマク攻略は見えてきそうですね
多忙につきしばらく戦況ウォッチから離れていましたが、泥濘期があと1月程度に迫る中反転攻勢の戦況は天王山の局面と迎えたと評価してよさそうです。
47,65,33旅団を消耗したウクライナ軍は第10軍団(116,117,118旅団)とMaroon tactical group(82,46旅団)を投入して前哨ラインを突破、ロボティネとその東郊外を手中に収めました。
しかし南への突進は主防御陣に阻まれ、空挺の増援によるロシアの反撃はロボティネ南部を再びグレーゾーンに戻した模様です。
細すぎる突破軸では周到防御された陣地帯からの火制を浴び、主陣地帯に到達する前に機械化攻勢は破砕されるのでコパニとノボポクロフカの”両肩”の集落を確保せねば陣地を乗り越えての前進は難しいでしょう。小泉悠氏が指摘するロシア軍の包囲に自ら飛び込むリスクも存在します。
仰る通り、ロシア軍の防衛戦術(防衛ライン)は、攻め込まれた後に逆包囲するように作られていました。
今からが本番(奪還地域の防衛)と言えそうなので、注視したいですね。
ウクライナ軍の攻撃部隊、消耗した部隊が・陣地を構築できないまま、防衛戦に入るので厳しい戦いが続くと思います。
成る程、管理人さん作成の戦況図を良く見ると、確かにノボプロコピフカを南東側から半包囲する形で防御陣地が築かれてますね!ベルベーヴに進軍したのはそういう意味なんですね!勉強になります
今度はガボンでクーデター…
ウクライナ軍の第82空中強襲旅団がベルベーヴ郊外に到達しましたね。
ロシア軍は「47.44189, 35.95220」にいるウクライナ軍を攻撃しています。
視覚的情報でヴェルボヴェ集落の西入口に到達しているのは明らかですね
これは主要陣地を突破した位置にあります(ただし南に予備陣地あり)
ベルベーヴ方面はともかく、ノボプロコピフカ方面はコパニに抑えた後でも良かったのではとも思わなくはないが、
これ程近接して二つの町がある場所では、両軍とも負けられまいと予備兵力や他戦線からの転用をして激戦はいずれにせよ不可避、と見るとノボプロコピフカ方面に出るのも悪い選択ではないのかもしれない。今は注視あるのみか。
>(トクマク経由の)鉄道輸送は前線に近すぎるルートの問題、パルチザンによる破壊工作、長距離攻撃兵器による攻撃などで随分前から機能しておらず
「機能しておらず」というか「機能させたい側と機能させたくない側の必死の攻防が繰り広げられてる」訳ですよね。虎の子の長距離兵器まで投入して。
つまり「トクマク後方の鉄道」を巡って
>ストームシャドウ、HIMARS、エクスカリバー砲弾、VULCANO弾を無限に使用できるなら反攻作戦の目標達成は限りなく容易になるが、これらの兵器は数が少ないため通常の155mm砲弾が届く位置=メリトポリ近郊まで前進する必要があり
この話が進行してる訳で、ものすごく大きな前進だと思います。
やっぱり鉄道ってのは陸路とは余裕で2つ3つ輸送力の桁が違いますからね。
問題は双方ともに兵力は損耗する事に尽きます
ウクライナ軍は追加投入できる戦力があるのかが不明瞭ですが、ロシア軍は左右(というにはやや遠目ですが)から戦力をスライドさせています
このまま粘りきられてしまうと秋の泥濘期・冬の降雪に入ってしまい進軍速度は劇的に落ちてしまいます
どうなることやら
地勢としては圧倒的ロシア有利
(ロボチネ周辺の「陣地を築いた」「高台」に陣取っている)
空も対空兵器はあっても航空機飛ばせるのはロシア
ウクライナが兵の数と兵器の質でひっくり返せるのかどうか
ここに至ってロシア側は製造のハードルが高いのかクラスター弾搭載した長距離ロケットとか使って可能な限りアウトレンジで攻撃してないのがね。
撃ちっぱなしの精密誘導兵器が歩兵レベル砲兵レベルで無いのも居たいし、少しでもウクライナ軍に対して遠距離から攻撃出来る砲システムも全然無い状態でいい加減改善するような兵器出てきても良いタイミングなんだけどな。
手持ちの駒だけで戦うなら攻撃軸に結構な戦力投入してくれてるんだから、もっと誘い込んで状態観察して迎撃弾の消耗だけさせている首都への攻撃に使用しているミサイルやUAVを南部への主要な兵站攻撃に使用して大打撃でもか火力低下させないと一息付けない感じがする。