ウクライナ戦況

中国製ドローンへの依存、ウクライナはMavicの生産量の60%を購入

ウクライナのシュミハル首相は「400億フリヴニャ(約1,640億円)もの資金をドローン購入に割り当てた。ウクライナはMavicの生産量の60%を購入している」と発言し、中国製ドローンへの依存が浮き彫りになった格好だ。

参考:Ukraine continues to snap up Chinese DJI drones for its defense
参考:Ukraine buys 60% of the world’s Mavic drones

Mavicは今後も(両軍にとって)市場から量が確保できる便利なドローンであり続けるだろう

ウクライナはロシアとの戦争に欠かせないドローン開発や国内生産に取り組み、徐々に国産ドローンの供給が始まっているものの「主要コンポーネントの供給」は中国系サプライヤーに依存しており、ニューヨーク・タイムズ紙は9月末「中国がドローン部品の輸出制限を9月1日に開始したためウクライナは必要なコンポーネントの入手が難しくなっている。ロシアがミサイル製造に不可欠なコンポーネントを入手するのと同じように『複雑な経路による密輸』を余儀なくされている」と指摘。

出典:United24 ウクライナ製のドローン

同紙の取材に応じたウクライナ人も「誰が何と言おうと中国が最も多くのドローンを製造している」「米国や豪州のラベルがついたコンポーネントも結局は中国で作られている」「中国製部品の代わりを作るのは不能に近い」と証言していたが、シュミハル首相も国際経済フォーラムの中で「ウクライナは今年400億フリヴニャ(約1,640億円)もの資金をドローン購入に割り当てた。これは国内外からドローンを調達するための資金で、ウクライナはMavicの生産量の60%を購入している」と発言し注目を集めている。

米ディフェンスメディアは「ウクライナも独自のドローンプログラムを育成しているため中国製ドローンへの依存度は不明なものの、軍事的有用性を備えた商業技術が戦場にどれだけ浸透しているのかを浮き彫りにしている」と指摘し、DJIの担当者も「シュミハル首相の発言に驚いている。この発言内容は現実と一致しておらず誤解を招くものだ。全ての代理店や再販業者は契約上『禁止事項の遵守』を定期的に証明する必要があり、これに違反すれば当社との関係が終了する」と主張したが、小売されたMavicが何処に行き着くのかを追跡するのは至難の業だ。

出典:Сухопутні війська ЗС України

ウクライナはDJIがソフトウェアの更新で課してくる制限もセキュリティを破ることで無効化しているため、Mavicは今後も「(両軍にとって)市場から量が確保できる便利なドローン」であり続けるだろう。

因みに英国王立防衛安全保障研究所は「ウクライナで必要とされるドローン」の数について「月1万機」と予想している。

関連記事:ドローン戦争を左右する部品供給、ウクライナは中国の輸出制限に直面
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※アイキャッチ画像の出典:C.Stadler/Bwag CC BY-SA 4.0

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コメント

    • hogehoge
    • 2023年 10月 23日

    ドローンは弾薬と同様の消耗品ですね。
    先日、自衛隊で部隊配備のドローンが少なく貴重なため、自前のドローンで練習し紛失したのが航空法違反なんたらで処罰されたと報道がありました。
    地縄自爆というのでしょうか。アホみたいですね。

    ウクライナが毎月1万機取得しているということは、毎月1万機消費しているということであり、
    こういう取得レベルで同盟国内にて製造する体制というのをG7あたりで構築すべきでしょう。
    安全保障分野まで中国依存状態で台湾問題に直面しそうで怖いですね。

    55
      • たむごん
      • 2023年 10月 24日

      自衛隊にそんな事があったのですね、情報ありがとうございます。
      やはり自衛隊は、愚かな法規制・規則に縛られ過ぎて、現状では戦える気がしないですね。

      空の薬莢の捜索、食事が少ない事もそうですが、何というかズレてるなあと感じます…。
      hogehogeさんの仰るドローンもそうですが、弾薬など消耗品の備蓄などに力を入れて欲しいですね。

      23
      • ホテルラウンジ
      • 2023年 10月 24日

      その通りと思います。ウクライナ戦争でこれからの戦争ではドローンが弾薬と同じく消耗品として大量に必要という事が現時点で分かったので
      弾薬をダイキンに生産してもらってるように、国内の民間から大量調達できる生産体制を構築すべきですね。設備投資に民間が及び腰なのであれば国営工廠建設してそこで作ってくれで良いと思います。急いでますので。
      防衛費増額のお金はこれ以上の高価な正面兵器より直近での台湾開戦に備えてこういう所と弾薬と砲身の生産体制強化に重点的に入れるべきでしょう。
      ドローンの航空法でガチガチに縛られている問題は当然課題なんですが、これは防衛省(背広組)が法改正に向けて主体的に動くべき話ですよね。こういう時の為にスーツ着てるんやろあんたらはですわ。
      水面下ではもうガンガン動いているのかもしれませんが、現時点で動いていないとすれば相当な問題と思います。

      27
    •  さ
    • 2023年 10月 23日

    国産ドローンが強く求められるけれど、大量生産するだけの設備投資をして果たしてペイできるかというと…
    企業に求めるのは難しいよなぁ

    6
      • 分析
      • 2023年 10月 23日

      日本だけなら平時に月1万機も絶対に使いませんからねえ
      日本国内需要だけでは有事に備えたレベルのドローン生産網整備はやっていけないですね
      ドローン大国としての地位を確立し、世界各国に販路開拓を成功させたDJIだからこそ、既に生産設備が整っており、ロシアとウクライナ双方のドローン需要に応えて発送が出来ているんでしょう
      そして自社製ドローンが使われるほど、その運用法がフィードバックされ、より洗練されたドローンが出来るというループですね

      24
      • M774A6
      • 2023年 10月 24日

      韓国戦車はロボットによる製造割合が高いという話は参考になりますね。
      平時は遊休率高くても、何時必要になるか分からない熟練労働者を遊休状態で雇用維持するよりは安いだろういくらかの維持費で機械なら製造能力保てますから。
      ていうかそんな労働者には遊休化されるより他に何か売れるもの作ってもらった方が世のためです。
      ここの5月末の記事ではハンファがロイターに対して現在は一日8時間の稼働だが必要なら24時間でもやれると言っているのが印象的です。

      燃料も原材料も食料も輸入に頼る日本では、有事に日本国内へと持ち込める物資量が減った時にどう割り振るかも考えねばならないとすると、あまり使い捨ててしまうと製造能力はあっても材料が無くて製造不能なんて事態もありえるため、ドローンでも生残性に配慮すべきかもなんて考えます。
      島国は防衛には利点がありますが、物資を持ち込むことにも制約があります。
      太平洋戦争などもろにそうなりました。

      13
        •  さ
        • 2023年 10月 25日

        それを案って、最初に大規模な設備投資が必要で、その初期費用がペイ出来ない時点で民間企業がそれを実行するのはほぼ無理では?
        国からの財政支援でもないと

        1
          • M774A6
          • 2023年 10月 26日

          国からの支援なんて当たり前過ぎて触れる必要も感じてなかったです。
          戦車やドローンを何台と最終製品の供給だけを求めてるのではなく、必要になった時には緊急に追加で大量供給できる体制を取れってメーカーに求める話なんですから所用の費用は要求する側が出す必要がありす。
          これまでも国内に工場置くようにとか、部品は潜在的な敵国に頼ってはいけないとか今でも要求しますけど、それと同じように生産体制についても要求を入れておかないと現代の高度化した装備品は急に増産できないので予め用意しておこうって話でその用意の費用を国が出すのは当たり前過ぎるので。
          別案としては、同等や類似の装備品を持っている他国といざという時に融通し合う約束をしておくというのもありますけど、これも難儀しそう。まあ現在までも弾薬や装備品で米国仕様を優先しているのは融通し合えることを期待してのことですね。
          その米国をしても、供給の意欲はあっても備蓄の限界が見えて困ってますが。

          どれも嫌なら有事に使い切る心配がないほど備蓄しておくしかなくなってそっちの方がはるかに非現実的かと思います。
          備蓄しまくるのはアップグレードが適用されなくて不利な選択肢でもありますしね。

          あえてここまで触れなかった非常に残念な選択肢として、特に改革することもなく現在の流れのままの体制や装備で防衛不可能ならその時はさっさと降伏する腹積もりでおくってのもあります。これのメリットは現在の負担が増えないことですがデメリットはまあ悲惨ですね。

          1
    • fd
    • 2023年 10月 23日

    首相の発言はかなり不味いんじゃないですかね?
    こんな事を聞いてしまったら、DJI自身は内心売れれば何でもいいと思っていたとしても、周りが調査や規制を強化して、DJIにもより圧をかける気がするのですが…

    6
      • wmk
      • 2023年 10月 24日

      中国のドローン製造企業は内心売れれば何でもいいと考えていたので、ロシアに民生用ドローンを大量輸出していましたね。
      ロシアはウクライナより金払いが良かったので、中国企業はロシア優先で輸出していました。
      「ロシアよりウクライナの方が好きだけど、ロシアの方が金払いは良い」と中国企業はウクライナに説明していたとのこと。

      1
    • たむごん
    • 2023年 10月 23日

    軍需製品も、民間の工業基盤に大きく依存しますからね。
    ドローンの世界シェアは、中国が圧倒的であるため、ドローン用のモーター・電池など各種部品産業も集積しています。

    日本企業にも、チャンスはあったんですけどね。
    日本政府が、ドローン規制を厳しくしすぎたため(国民も規制を望んだ)、ドローン産業育成に失敗した事が残念です。

    15
      • nachteule
      • 2023年 10月 24日

       飛ぶ事で攻撃の自由度が増してウクライナで攻守ともに活用されてハマスレベルですら対戦車兵器として使っている現状だと、誰にとっても使い勝手の良い攻撃兵器足り得るし規制が残念だと言うべきかな。

      4
        • たむごん
        • 2023年 10月 24日

        日本は、規制緩和の議論を、今慌ててやっているんですよね…。

        5
    • 匿名
    • 2023年 10月 24日

    西側のみんなでお金出し合って中国のドローン産業を育成してるということやんけ
    早くどうにかしろよこれ

    8
      • 774rr
      • 2023年 10月 24日

      ドローンはDJI(中国)一強なのでどうしようもないです
      フランスやアメリカのメーカーもあったけどぜーんぶDJIに負けてる

      じゃけん、これからも中国様に投資し続けようねせやね

      11
    • lang
    • 2023年 10月 24日

    そもそもウクライナが助かったとしても、西欧じゃなくて中国の経済植民地になる未来しかなさそうなんですよね

    4
      • zeema4
      • 2023年 10月 24日

      どちらかと言えば、中国の経済植民地になってるのは明らかに現在進行形でロシアの方では…。

      ウクライナが勝ったらNATOやEU、G7諸国から支援を受けると思う。元々戦後復興基金の話もあるし。

      18
    • minori
    • 2023年 10月 24日

    この前も同じこと書いたけど、ウクライナの軍需だけで毎月1万機の需要があるなら、それを代替するだけで相当な量産効果が望めるはず。

    戦中は軍需と補助金で事業を育てて、戦後は施設投資の返済が終わった設備を活用して生産すれば、価格競争力も持てて民需でもそこそこのシェアが取れるハズ。加えて西側諸国もなんだかんだ顧客になってくれるだろう目論見も立つ。

    そんなに分の悪い投資には見えないのですが、そんなに及び腰になる理由ってなにかありますか?

    2
      • 分析
      • 2023年 10月 24日

      経営者じゃないので分からないですが、恐らく西側諸国にとどまらずロシアの企業なんかも自国での量産と戦後の輸出拡大なんかを考えたでしょうか、どこも今の所やろうとしている形跡が無いということは、何かしらがネックなんでしょう
      企業の目線としては恐らく儲けられるか否かなので、仮に補助金もらってもDJIに価格競争で勝てず、西側諸国もなんだかんだ安いDJI製を買うので採算が見込めない、な感じなんですかね。
      後は西側は民主主義なので、特定企業に補助金ジャブジャブは民意で否決されそうです。民主主義の弱点というかなんというか

      10
    • 58式素人
    • 2023年 10月 24日

    ロシアの兵員ですが、こっそり徴兵(強制志願?)をしているのかな。
    実態はよくわかりませんが、連邦内の少数民族が対象みたいですね。
    もしそうなら、ロシア人?にとっては痛くも痒くもないのでしょう。
    モスクワや聖ペテルブルグ・他の大都市圏のロシア人を
    キーウやオデーサの市民達と同じ目に遭わせないといけないのでは。
    この冬のウクライナ/ロシア相互のインフラ攻撃は凄いことになるのでは。

    1
    • のー
    • 2023年 10月 24日

    ドローンが月に1万機ということは、砲弾レベルでの消費量ですな。
    米国が来年155mm砲弾の生産量を月9万発に増やすとか、過去の記事でありましたが
    砲弾よりはるかに複雑なドローンをそんなペースで消費してたら、いかに中国でも生産が追い付かなくなるのでは?
    来年の今頃は、両軍ともドローン不足で、また従来型の砲撃戦に戻ったりして。。。

    • ふむ
    • 2023年 10月 24日

    うーむ
    なんかシリアの米軍基地が攻撃受けてるとかって話が出とりますな
    ウクライナとイスラエルと台湾、流石にアメリカでも3正面では戦えない
    しかもドローン生産の根幹が中国となれば、何か起きた時に切り捨てられるのは極東になる可能性が大きそうで…
    嫌な流れですわ

    道徳的には国際法違反のイスラエル切り捨てて台湾取って欲しいもんですが、あちらさんの政治と資金考えると難しそう

    2
      •       
      • 2023年 10月 24日

      まぁ国同士の関係は複雑怪奇ですから。敵だと思ってたら味方だったりその逆もしかり。
      イスラエル軍装備品も中国から大量に輸入してるらしく、てんてこ舞いの忙しさだとか。
      最近はあっという間に決着がつく戦争が多いけど、国同士の戦争は攻め込む方は大変ですよ。みんな簡単に言ってるけどw

      1
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