ウクライナ戦況

ゼレンスキー大統領、ロシア軍がハルキウから90km離れた国境地帯に集結中

ウクライナ軍関係者や専門家らは「ロシア軍がウクライナ軍を薄く引き伸ばすためスームィ州で新たな攻勢を開始するのではないか」と危惧していたが、ゼレンスキー大統領も26日「ハルキウから北西に90km離れた国境地帯にロシア軍が集結している」と言及した。

参考:Зеленський: Росія збирає нове угруповання біля кордону
参考:We Do Not Want the UN Charter to Be Burnt Down Just Like These Books – Address by the President of Ukraine to the World Leaders on the Eve of the Peace Summit

グライヴォロンからヴェリカ・ピサリフカに攻勢が始まると再びウクライナ軍に対応(戦力投入)を強制することになるだろう

ウクライナ軍は2023年夏の反攻作戦や同年秋に始まったロシア軍の攻勢阻止で消耗してしまい、動員法改正案の成立にも手間取ったため各旅団は兵力不足に陥り、この好機を活かすためロシア軍はハルキウ方面で新たな攻勢を開始した。

出典:СИРСЬКИЙ

この攻勢目的は「ハルキウ占領ではなくウクライナ軍を薄く引き伸ばすための戦力誘引」と指摘する声が多く、ウクライナ軍はハルキウ防衛のため戦略予備の投入に加え、ザポリージャ州やドネツク州からも戦力転用を行っており、ロシア軍は戦力密度が低下したクピャンスク方面、バフムート方面、ドネツク西郊外方面、南ドネツク方面、ザポリージャ方面で成功を収め、さらにウクライナ軍を薄く引き伸ばすため「スームィ州で新たな攻勢を開始するのではないか」と危惧されている。

ウクライナ国防省情報総局のブダノフ中将はNew York Timesの取材に「スームィ州を攻撃するかもしれない」と、Economistも「スームィに近いスジャ周辺ではロシア軍部隊が集結しつつある」と、ウクライナ国境局も「敵は十分な戦力が無いにも関わらずハルキウ方面で攻撃を開始したため、絶対にスームィ攻撃の可能性を排除することは出来ない」と言及していたが、ゼレンスキー大統領も26日「ハルキウから北西に90km離れた国境地帯にロシア軍が集結している」と述べた。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

RBC-Ukraineの取材に応じたウクライナ人軍事アナリスト=オレクサンドル・ムシエンコ氏は13日「ロシア軍はオクチャブリスキーからコザチャ・ロパン、グライヴォロンからヴェリカ・ピサリフカやアフトゥイルカへの攻勢を準備しているかもしれない」と警告していたが、ゼレンスキーが言及した「ハルキウから北西に90km離れた国境地帯」とはスームィ方面のヴェリカ・ピサリフカ方向を指している可能性が高い。

ヴェリカ・ピサリフカ自体は約3,000人ほどの小さな集落だが、その先にはボルチャンスクと同規模のアフトゥイルカが控えており、ヴェリカ・ピサリフカからボホドゥヒフ方向に進まれるとハルキウの西側面に問題が生じるため、本当にヴェリカ・ピサリフカ方向で攻勢が始まると再びウクライナ軍は対応(戦力投入)を強制することになるだろう。

関連記事:スームィ攻撃の可能性を排除できない、スジャ周辺にロシア軍が集結か
関連記事:ブダノフ中将はスームィ侵攻を警告、ウクライナ軍に予備戦力は残っていない
関連記事:ロシア軍によるスームィ州侵攻の可能性、国境地域で住民避難が始まる

 

※アイキャッチ画像の出典:PRESIDENT OF UKRAINE

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コメント

    • 名無し
    • 2024年 5月 26日

    目が死んでる…

    23
      • 2024年 5月 26日

      このところゼレンスキーが悲壮的な表情で訴えている写真が多かったがついにその壁を超えて次のステージ(感情が崩壊)に到達したように見える。

      23
      • F-117A
      • 2024年 5月 26日

      今日の夕飯は何にしよう、という顔

      8
        • イーロンマスク
        • 2024年 5月 26日

        冷蔵庫空っぽだったのかな

        17
    •  
    • 2024年 5月 26日

    やはりアフトイルカ、ボゴドゥコフ方面が本命ですよね

    5
    • たむごん
    • 2024年 5月 26日

    スームィ方面は、地雷原や塹壕、要塞整備はできているのでしょうか?

    ハリコフが、ウクライナ第二の重要都市にも関わらず手抜き工事でしたから、他も期待できない気がしてしまいます…

    20
      • jimama
      • 2024年 5月 26日

      とりあえず竜の歯に関しては道路わきで石垣になってましたね
      地雷ぐらいは撒いてると思いたいけど期待薄
      塹壕も写真だとDIYレベルだからハリコフ以下じゃないかなーと
      今攻められたらどこで止められるのかな?レベルな気がします

      27
        • たむごん
        • 2024年 5月 26日

        情報ありがとうございます。
        この方面も、ハリコフ前面と同じように、やはり期待できないですかね。

        ウクライナ軍、国境付近の部隊は、決死隊みたいになりそうですね…

        18
          • 通りがかりさん
          • 2024年 5月 26日

          ハルキウの時のように投降が多く出ると思います。推測される兵士の質の問題もありますが、ウクライナのメディアグループが大本営発表を止める影響も出てそうな頃合いですし。

          17
            • たむごん
            • 2024年 5月 26日

            仰る内容が、現実と思います。

            防衛線が整備されず、人海戦術に投入されても、財政破綻により補償も分からないでしょうし。

            11
          • jimama
          • 2024年 5月 27日

          イヤな言葉を思いついてしまったですよ
          Dig It Yourself (Grave) :自分で(墓穴を)掘れ
          もうこの期に及んでは自主退役()するのが一番賢明な気がします

          8
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 5月 26日

    主導権を握られっぱなし、振り回されっぱなしですな
    どこかで全体の立て直しをしない限りは延々と戦線の引き伸ばしと各地での消耗戦からの突破を許すだけでは
    どうやって立て直すのかはわからんけど

    19
      • ふむ
      • 2024年 5月 26日

      ガリツィアまで後退すれば民心も反露色強いなので、占領されてもゲリラ戦に移行できて北ベトナムやタリバンのような勝ちパターンに持ち込める可能性がワンチャン

      自衛戦争なのにマイダンのせいで東部南部の民心が付いてこないのが痛い

      24
        • BOB
        • 2024年 5月 26日

        西部は反露だけど口だけで戦うのが嫌いなんじゃない?
        徴兵官との鬼ごっこ動画も西部が多いし。
        ウクライナ兵で勇敢に戦ってるのは民族的ロシア人が多いというのもウクライナ人の書き込みで見たことある。

        29
          • ふむ
          • 2024年 5月 26日

          そうなんですよね…
          本当に士気が高い人々はもう志願しているはずなので、実際のところどうなるかは未知数です
          なのでまぁワンチャンとかそのレベルかな、と

          12
          • 無名
          • 2024年 5月 26日

          西部の人達は
          東部からの避難者を表面上は温かく迎えて、避難者の中に男がいたら警察や軍に密告する。
          って開戦当初から話しは出てましたからね。東部の問題は東部で何とかしろみたいな意識の人達もいるのでしょう。

          24
      • nachteule
      • 2024年 5月 27日

       ウクライナにとってグッドニュース?は西側支援が増えつつあるのと西側兵器使ったウクライナのロシア領内攻撃を容認する流れが出てきている事。ただ解禁されたからと言って提供されているかも分からない最新仕様のATACMSやタウルスの500km近くぐらいがマックスで影響が大きい空軍基地や兵站拠点、工場等をどれだけ狙えるのかが問題なんだよね。ロシア領内の攻撃が上手くいくならば破壊か後方へ下がる事で前線への影響は大きくなる。

       後はどこの前線かは分からないが燃料不足が酷いのと電子戦の効果が薄くHIMARSで被害を受けている所はあるらしく全てにおいてロシア優勢とは言えないと思うし、GPS誘導兵器の無力化が完璧な状態では無い戦域があるならばそこに集中させて優位を得る可能性はある。

       無駄な損害が出ている戦域は切り捨てて後方に下げる、西側の支援増加を要求、SAMや長距離兵器で航空機を潰す。施設系の支援を西側に求め陣地の強化。的の弱みを徹底的について自分の弱みをなるべく無くすしか立て直しは無理だと思う。

      2
    • nk
    • 2024年 5月 26日

    ウクライナはハルキウとクリンキーの2個所攻勢でロシアは東部南部全域と北側でハルキウは防御に移行でさらにスムイにも攻勢準備という戦況か。ロシア春の攻勢祭り開催中という所か。
    ウクライナ側シミュレーションゲームならリセットしたい所ではあるがそれは不可能なため慎重な指し手が必要だけども、肉弾ハルキウ特攻とクリンキーでの水遊び追加の返し手とは思わなかった。
    ウクライナ側攻勢場所は結局の所、政治的理由の面が大きいのだろうが果たしてどうなるか興味深い。
    また久しぶりに攻勢に出るのだから、反転攻勢CM第2弾作成したら良いと思う。弾1弾の「シーッ」のCMは見た瞬間に失敗を確信できるものだった。

    34
    • BOB
    • 2024年 5月 26日

    バイデンに対してロシア領内攻撃許可の圧力が国内外から強くなるだろうね。
    それでウクライナが優勢になることはないだろうけど。

    14
      • たむごん
      • 2024年 5月 26日

      ロシアS300をが1万発保有、ゼレンスキー大統領が言及してるんですよね。

      チャシブヤール陥落後に、大都市が砲撃範囲に入る事も考えれば、報復がとんでもない事になりそうな気もします…。

      8
    • Authentic
    • 2024年 5月 26日

    地図の真ん中のKURSKの文字がなんか不吉だな

    6
      •   
      • 2024年 5月 26日

      個人的にはf16が投入されるか楽しみ。
      f16vs MiGの空戦が見れるのか。それとも対空ミサイルの前にビビるのか。間に合わないのか。

      6
        • F-117A
        • 2024年 5月 26日

        MiGもないわけではないが、スホーイじゃね?

        Su-34によるUMPK滑空誘導キット付き航空爆弾を使ったスタンドオフ攻撃を、F-16が防止できるのかが見どころじゃね?

        7
        • 阿呆
        • 2024年 5月 26日

        ミグと言うよりスホーイでしょう。
        空戦と言うよりF-16が気付く前にミサイルが飛んできて慌てるも時すでに遅しってパターンが殆どでしょう。

        12
          • 伊怜
          • 2024年 5月 27日

          今戦争で防空を担ってるのは主にMiG-31では?

          4
        • なな氏
        • 2024年 5月 26日

        そもそもウクライナの空軍基地が全て敵対地ミサイルの射程圏内という状況で空戦なんて成り立つんですかね。
        駐機している所を狙われて飛び立つ前に殲滅されるのがオチでは?

        12
          • paxai
          • 2024年 5月 26日

          今でもどうにかしてウ空軍機が飛んでるのは事実だしそれは野暮かなと。
          これに関しちゃウ空軍はよーやっとると思ってます。

          11
        • 転売ヤー
        • 2024年 5月 27日

        戦車戦もそうだけど空戦という言葉も死語になりそう。

        12
    • 空飛ぶバタフライ
    • 2024年 5月 26日

    ハリコフですらあんな手抜き工事なのにより郊外の方のズームィとなると要塞とか塹壕レベルのお話じゃないだろ…蛸壷があればいい方かな。

    29
    • 暇な人
    • 2024年 5月 27日

    広域地図はありがたい、グーグルアースだと英語で書かれてて地名がよくわからないので

    6
    • はひふへ~ほ~
    • 2024年 5月 27日

    これが本命だと思っていたらわざわざばらさなくてもいい話だな

    1
    • ななしびと
    • 2024年 5月 27日

    ただでさえ兵士が足りんと言ってるところに別の個所から越境の可能性となると動員が焼け石に水となりそうな雰囲気もありますねぇ…
    東部、北東部が抑えきれず後退し続けてる状態でさらに予備が拘置されるとなると、これ今完全にウクライナは手詰まり状態じゃないですかね。
    言っても仕方ないことですけど、バフムトやアウディイウカ、ザポリージャ反転攻勢で何も得られないまま失われた戦力がいたならもう少し状況は違ったんでしょうが。
    何にしてもロシアの地力に、ウクライナも西側諸国も対処の方法がどんどん失われていますね。

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