ウクライナ戦況

スームィ攻撃の可能性を排除できない、スジャ周辺にロシア軍が集結か

Economistは20日「ハルキウ方面で前進スピードは鈍化したもののスームィに近いスジャ周辺でロシア軍部隊が集結しつつある」と報じ、ウクライナ国境局の報道官も21日「絶対にスームィ攻撃の可能性を排除することは出来ない」と述べた。

参考:Faced With a Russian Onslaught, Ukraine Struggles to Keep the Lights On
参考:Пограничники не исключают наступления российской армии в Сумской области

スームィで攻勢を始めるつもりなのか、それとも部隊を集結させるだけで終わるのか、その答えはロシア人にしか分からない

Economistは20日「ロシア軍が開始したハルキウ方面の攻勢は国境から約9km離れたリプシ付近、約5km離れたボルチャンスクに到達したものの前進スピードは鈍化した。ロシア軍が準備した推定4.8万人の戦力でウクライナ第二の都市を攻撃するには戦力不足だが、ウクライナの指導者らは状況は依然として不安定で流動的だと見ている。スームィに近いスジャ周辺ではロシア軍部隊が集結しつつあり、ウクライナ軍もビリィ・コロディアズへの攻撃に備えている」と報じた。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

ウクライナ国境局の報道官も21日「敵は十分な戦力が無いにも関わらずハルキウ方面で攻撃を開始したため、絶対にスームィ攻撃の可能性を排除することは出来ない。敵は前線や敵対行為が活発な地域を拡張することで我が国の防衛能力を低下させようとしている」「スームィ州の国境線は560km以上もあり、ここに我々の戦力が拘束されるようなことがあっても強力な防衛体制を維持しなければならない」「なぜなら敵は装備、攻撃手段、そして兵力の面で我々を上回っているからだ」と警告しており、スームィ国境地域では住民避難が始まっている。

ウクライナ国防省情報総局のブダノフ中将もNew York Timesの取材に「ハルキウ方面での積極的な攻撃は3日から4日ほど続き、その後にスームィ州を攻撃するかもしれない」と予想、同州の国境地域に配備されているウクライナ人将校も「ロシア軍の砲撃回数は増加している」「敵が砲撃している場所は以前から何回も攻撃されていた場所で何の意味があるのかは分からない」「いずれにせよ、我々は完全な戦闘準備を整えている」と述べている。

出典:СВІТ НАВИВОРІТ

ロシア軍が本当にスームィで攻勢を始めるつもりなのか、それとも部隊を集結させるだけで終わるのか、その答えはロシア人にしか分からない。

関連記事:ブダノフ中将はスームィ侵攻を警告、ウクライナ軍に予備戦力は残っていない
関連記事:ロシア軍によるスームィ州侵攻の可能性、国境地域で住民避難が始まる

 

※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

ロシアと戦い続けるウクライナの3重苦、武器不足、兵士不足、電気不足前のページ

ロシア軍がチャシブ・ヤールに侵入、クレシチェエフカの中心部で国旗を掲げる次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    ゼレンスキー大統領、ロシアやベラルーシと接する全地域への要塞建設を指示

    ウクライナ人ジャーナリストや現地メディアは「10年間も時間があったのに…

  2. ウクライナ戦況

    ウクライナ侵攻323日目の戦況、ロシア軍がソレダル周辺で突破口を開く

    323日目が経過したウクライナ東部戦線の状況は「ロシア軍がソレダル周辺…

  3. ウクライナ戦況

    ゼレンスキー大統領がヘルソン市を訪問した理由、スイカのために来た

    解放されたヘルソン市を訪問したゼレンスキー大統領は報道陣に「スイカのた…

  4. ウクライナ戦況

    ロシア軍の弾薬庫爆発、ウクライナで消費する弾薬2ヶ月分以上を失う

    エストニア国防軍情報センターのキヴィセルグ大佐は19日「ロシア軍はトヴ…

  5. ウクライナ戦況

    ウクライナ人捕虜を輸送中のIl-76が墜落、ロシア側は撃墜されたと主張

    24日午前11時頃にロシア領ベルゴロド州でIl-76が墜落、ロシア側は…

コメント

    • nk
    • 2024年 5月 22日

    いずれにせよ、我々は完全な戦闘準備を整えている」と述べている。とのことなのでまったく信用ならず安心できそうもない。
    やはり手抜き工事からの~になると予想するし、ロシアは無理ない範囲で侵攻するとは思うかな。
    またF-16もそろそろ来るかもしれないが、希望ではなく絶望に変わる予感しかしない。
    ロシアの防空網突破出来ないだろうし、戦闘機数も質もロシアの方が圧倒的に上なので余り出来ることは無いとは思う。
    いっそのこと、まったくもってF-16通用しないのほうがウクライナ側が停戦交渉に進む可能性高いと思うので結果的にはいいことなのかなとも思う。

    33
      • F-117A
      • 2024年 5月 22日

      F-16は旧式やし、ハイローのローやしね。
      カタログスペックではSu-35に対して分が悪い。
      数も少ないし、パイロットの訓練時間も短い。
      本来はいい勝負に持ち込めたら御の字。

      5
      • 名無し
      • 2024年 5月 22日

      F-16が最強の戦闘機かの如くあんなに神格化される時が来るとはリハクの目を以てしても……

      30
        • kitty
        • 2024年 5月 22日

        F-15が最期には微妙な扱いにされてF-16が未だバリバリ大人気な未来もボイドの目を以てしても予測できなかったでしょうね。

        20
        • 2024年 5月 22日

        グリペンがスホーイキラーって呼ばれたりして吹き出すかと思ったよ。

        7
        •     
        • 2024年 5月 22日

        当事者たちは口を酸っぱくしてゲームチェンジャーじゃないと言ってるんですけどね…

        >特定の兵器をウクライナに与えるだけで戦いの流れが変わるという「ゲームチェンジャー論」を否定、ウクライナメディアもオースティン国防長官の発言を受けて「戦場の結果を左右する魔法の杖は存在しない」と報じている
        リンク
        >「我々は防空に必要な資産の25%しか持っておらず、ロシアと同等の立場になるためにはF-16もしくは先進的な戦闘機が120機~130機必要だ。最初のF-16は2024年中に受け取れると信じているものの、最初は数が足りないため重要な役割は果たせないと思う」
        リンク

        10
      • たむごん
      • 2024年 5月 22日

      中古の旧式F16に、ここまで期待が高まる事になるとは、思いもよらないですよね。

      30年・40年ものという事を、知らない方が多い気がします…。

      23
        • NHG
        • 2024年 5月 22日

        ウクライナは同じぐらい古いミグしか持ってないからね
        しかもロシアからの新規購入も保守部品の輸入も搭載する弾薬類の購入も(いずれも自国で作ってなければ)できない状態
        とりあえず大型SAMと近距離対空ミサイルの隙間から滑空爆弾落としてくるロシア空軍機なんとかしてグレーゾーン作れないと

        6
          • たむごん
          • 2024年 5月 22日

          仰る通りです。
          滑空爆弾が落ちてくる限り、ほんとどうしようもないですよね。

          サーモバリック爆弾にも滑空誘導爆弾キットつけてますから、前線は地獄な気がします。

          7
    • 名無し
    • 2024年 5月 22日

    スームィはハリコフほど人口も多くない上に、州に展開する兵力も戦況マップだと2個大隊と2個郷土防衛旅団、1個機械化旅団だけなので、場合によっては今度こそスームィを取りに来てもおかしくは無いでしょうね

    というか海外のウクライナ応援アカウントがスームィ州においてもハリコフ同様龍の歯が道路の路肩に山積みになったまま去年の夏から放置状態だとする映像を上げて嘆いていたので、こちらも防衛線などは正直お察しなんだろうなと…

    33
      • たむごん
      • 2024年 5月 22日

      情報ありがとうございます、勉強になります。
      龍の歯が山積みならば、今後の工事も有り得る訳ですから、地雷をあまり埋設していない可能性もありそうですね。

      汚職をするにしても、国境の都市部・住民も多い地域でやってるのが不思議なものです。

      地元住民・地元企業ならば、地元愛みたいなものがありそうですが、汚職文化はピンハネを優先してしまうのでしょうかね…

      12
    •  
    • 2024年 5月 22日

    うーんなんでスムィなんでしょう?
    今の状態でスムィ方面に前進しても何もいいことはないと思いますが
    ロシアの戦略意図が読めません

    6
      • Easy
      • 2024年 5月 22日

      単なる訓練かもしれないですね。ロシア軍の計画ではあと30個師団ぐらい増やす途中ですから、現状でも編成中の師団が5−6個あるはすです。
      前線警備を兼ねて、いつミサイルが飛んでくるかわからないエリアに敢えて展開することで、兵士に緊張感を持たせているのでは。
      とまあ、兵力に余裕がある方は余裕のある部隊運用ができるわけですね。ウクライナ側は敵の目標を絞り込めないと大変です。

      28
      • バンダイは早くジムⅢのMGを作ってくれ
      • 2024年 5月 22日

      戦力が手薄なスムィを攻撃して、ウクライナの戦力を分散させるとか?
      スムィを守るために増援を送るとなるとどっかかの戦線から連れてくるしかないですし

      スムィに増援を送らなかったら、それはそれでキエフの奴らは東部を見捨てた、的に東部とウクライナを分断させるように工作するとか?(これはなさそう)

      戦略的には重要じゃなくとも、「何km前進した」みたいなプレゼンスのためとか、ウクライナの士気?を下げる(もう下がってる)とか  でもこれはより一層の支援とか追加動員の口実になりそうだしないかなぁ

      一番ありえそうなのは、スムィ方面からハルキウに南下して、撤退して防衛線を整えるか、ロシア軍に半翼包囲されるかの決断をウクライナ軍にさせるとか
      電撃戦大好きな自分からしたら、縦深防御が機能してないウクライナ軍の後方に回り込むとかワクワクしますね

      20
        •  
        • 2024年 5月 22日

        ハリコフ方面の包囲が目的とすると個人的には進出方向はアフトイルカもしくはグライボロンになると思うんですよ
        その方が鉄道を遮断して補給に負担を与えられますし、スムィ方面は遠い上に森林地帯で機動に不向きかつハリコフとの間にボルスクラ川も流れています、一連の作戦としてはちょっと考えにくいかなと

        6
          • マジノ線
          • 2024年 5月 22日

          森林地帯…!
          機動に不向き…!!

          ア ル デ ン ヌ の 森!!!

          5
    • 名無し
    • 2024年 5月 22日

    安全地帯確保で攻めてくる可能性はありますね

    4
    • ひまじん
    • 2024年 5月 22日

    ウクライナさあ、もうATACMSだかなんだか知らないが、もらった長距離兵器でモスクワ撃てよ。勢力が不均衡にも程があるねん。

      • BOB
      • 2024年 5月 22日

      それ軍事的に意味あるか?

      47
      • マミー
      • 2024年 5月 22日

      モスクワへのミサイル攻撃をして、モスクワのロシア人が本気になれば、特別軍事作戦ではなく戦争に格上げされるから、ウクライナ側は、更に不利になるが?

      24
        • 例のアレ
        • 2024年 5月 22日

        いや、ロシア国民のほとんどがモスクワのテロをウクライナの仕業だと思ってて、それで入隊してる奴らが山ほどいるらしいから、ミサイルを撃ち込んだところで特に変化はないんじゃないか

        11
          • 通りがかりさん
          • 2024年 5月 23日

          少なくともドローンは何度も飛ばして、民間人攻撃してますね。
          テロは判断つきませんが、ある程度の信憑性はあるかと。
          基地に攻撃できて都市に不可能な理由はないでしょうし

      • どねつくぼうし
      • 2024年 5月 22日

      残念ながら自分より弱いと認識している相手に殴られて震えあがる人はいません
      仕返しがより苛烈になるだけです
      実際ウクライナがロシアの製油施設などへのドローン攻撃を活発化させた結果、ウクライナの発電施設への報復が激化してしまいましたし

      25
    • たむごん
    • 2024年 5月 22日

    スームィの人口、約26万人もいるのですね(2021年時点)。
    スームィ市・ハリコフ市に、周辺の市町村を加えれば、200万人以上になりますから国内難民の対応にも追われそうですね。

    スームィの北側は、平地のように見えますから、一気に20km圏内に入られる可能性もあります。
    クルスク市から近く、国境線の凹凸を考えれば、ここも攻防戦になる可能性は充分にありえそうですね。

    (スームィ Wiki)

    5
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 5月 22日

    いつ、どこで、どうやって攻撃するかという主導権が完全にロシア側にありますね
    もっと早く大規模動員・訓練・部隊配備していれば話が違ったのでしょうけど、こうなってしまってはロシア軍の動向にひたすら振り回されるだけです
    どこかしら綻びができてしまうと、更に手当てをせねばならず、どんどんと状況が悪化してしまいます

    18
    • ポンポコ
    • 2024年 5月 22日

    スームイ方面への心配は、

    ハルキウ方面に侵攻している兵力が少ない割に、その周辺にもロシア軍の予備兵力が多いからだと思います。

    その心配をするということは、ウクライナ軍の上層部は、作戦面では割にちゃんと戦況を見て対処できていると思う。ギリギリで何とか対処している状態かもしれないが。

    一方、ロシア軍の方は、大規模で果敢な侵攻作戦ができないようなので、ロシア軍側の兵力にも、今は表れていない弱点があると思います。

    しかし、大局的には、ウクライナ軍は兵士の損失を省みない人海戦術(例えば守りの場合は死守的なことをさせている)と、政治的な作戦(例えばクリンキーとか)で兵士を消耗させてしまいましたね。

    5
      • 通りがかりさん
      • 2024年 5月 23日

      傭兵や元囚人と違って一から育てた兵士っぽいですし、ある意味今後を担う兵士たちですからね。
      大事にしつつ教育なのかなと思います

    • うくらいだ
    • 2024年 5月 22日

    兵力が拘束される問題もそうですが、経済にも負荷がかかりますね
    避難させると、マンパワーも必要だし、避難場所に避難民を養っていかなければならないですし。
    そう思わせるだけでも十分効果がありそうです

    8
    • cosine
    • 2024年 5月 22日

    ロシアの狙いは避難民爆弾ですかね
    ハリコフなどからの大量の避難民をしかし政権(なお任期)は決してキエフに受け入れようとはしないでしょうからますます混乱しそう…

    16
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  2. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  3. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  4. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  5. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
PAGE TOP