欧州関連

BAE、155mm砲弾の射程距離を大幅に拡張したScorpio-XR砲弾の試射に成功

米陸軍は2024年12月「155mm自走砲とHVP=超高速発射体を組み合わせた防空砲に関する契約をBAEと締結する」と発表していたが、BAEは13日「米陸軍と共同で行われたScorpio-XR砲弾の試射で目標への誘導と着弾に成功した」と発表し、今回の試射に使用されたScorpio-XR砲弾とはHVPのことだ。

参考:BAE Systems’ Scorpio-XR extended range artillery projectile strikes a decisive blow

Scorpio-XR砲弾を使用したMDAC構想は現在も生き残っているのだろうか? それとも対地攻撃の射程延長弾として生き残りを図るのだろうか?

米海軍はレールガン向けの専用砲弾として低抗力設計を取り入れたHyper Velocity Projectile=HVP(超高速発射体)を開発し、これを通常の大砲でも使用可能な高速多目的弾(装薬使用)として発展させ、開発元のBAEはHVPについて「レールガン、陸軍や海兵隊の155mm砲、海軍の5インチ(127mm)砲などで使用出来る次世代の低抗力誘導弾だ」「実行可能な任務はHVPを使用する大砲とプラットフォームによって異なるものの、水上艦艇で使用すれば弾道ミサイルや巡航ミサイルの迎撃、航行中の艦艇、地上目標の攻撃に活用できる」と説明。

出典:U.S. Navy photo by John F. Williams/Released HVP

HVPは通常の大砲で使用しても低抗力設計の効果で高速性、機動性、目標到達時間の短縮を実現、さらに標準砲弾の数倍以上とも噂される到達距離をロケットモーターのアシストなしで実現しており、米陸軍は2020年9月「M109A6がHVPを使用して巡航ミサイルの動きを模倣した標的機=BQM-167の迎撃に成功した」と発表。この結果を受けて米陸軍は「155mm装輪式自走砲」と「HVP」を組み合わせたMulti-Domain Artillery Cannon=MDAC(マルチドメイン砲)に関する情報提供依頼書を2024年7月に発行。

WarZoneは「MDACは弾道ミサイル、巡航ミサイル、自爆型無人機などから拠点を守る低コストの防空システムだ」「155mm榴弾砲を使用しているためMDACは必要に応じて防空以外の用途にも使用されるかもしれない」「MDACは単独で機能することを期待されておらず、既存の防空レイヤーに追加の保護レイヤーを提供する」と指摘していたが、米陸軍の早期能力重要技術室(RCCTO)は2024年12月「MDACのプロトタイプ契約をBAEと締結する予定だ」と発表。

RCCTOはMDACシステム一式について「マルチドメイン砲×8門、多機能精密レーダー×4基、戦闘管理システム×2基、HVP×144発で構成され、無人機、巡航ミサイル、固定翼機、回転翼機、高度な航空機やミサイルの脅威から固定及び半固定の地域を防御可能で、既存の対空迎撃やミサイル防衛を補完するもの」と説明していたが、トランプ政権の陸軍改革でMDAC構想が生き残るのかどうかはよく分かっていない。

それでもBAEは13日「米陸軍と共同で行われたScorpio-XR砲弾の試射で目標への誘導と着弾に成功した」「Scorpio-XR砲弾は試射目標の要件を大幅に上回った」「この試射でScorpio-XR砲弾と52口径155mm榴弾砲との互換性が実証された」「Scorpio-XR砲弾は高度なセンサーと組み合わせることで砲兵砲弾の射程を2倍以上上回る距離で精密射撃能力を獲得でき、戦闘環境下における155mm榴弾砲の殺傷能力を向上させる」「これまでにScorpio-XR砲弾は39口径から58口径までの様々な155mm榴弾砲で記録的な距離にある標的との交戦に成功している」と発表。

出典:BAE Systems

Scorpio-XRは低抗力設計を取り入れたHVPのことで、仮に155mm通常砲弾の射程を30kmとした場合、ロケットモーターのアシストなしでScorpio-XR砲弾の射程は60km以上となるが、砲兵砲弾にベースブリード弾も含まれるならScorpio-XR砲弾の射程は80km以上となるものの、結局のところ使用する榴弾砲の口径にも左右されるためScorpio-XR砲弾の射程距離は推測の域を出ない。

果たしてScorpio-XR砲弾を使用したMDAC構想は現在も生き残っているのだろうか? それとも対地攻撃の射程延長弾として生き残りを図るのだろうか?

関連記事:米陸軍が低コストの防空砲開発に着手、実証テストを2028年に予定
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※アイキャッチ画像の出典:BAE Systems

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コメント

  • コメント (9)

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    • p-tra
    • 2025年 10月 17日

    MDACは自走砲が対空戦にも参加できちゃう…というお得な感じを演出してますが
    実際はデカい十字架みたいな多機能精密レーダーがいるんですよね。
    シーカーがある対空ミサイルと違って、この砲弾は多分レーダーだけで誘導されるから
    レーダー側が巨大化・複雑化するしかない。
    安い防空手段は理想で高価な対空ミサイルは使いたくないが、そう上手い話はないなと。

    6
      • バーナーキング
      • 2025年 10月 18日

      シーカーのある対空ミサイル、ペトリや中SAM改だって射撃用のレーダーは必要なんだからそこは同じで、1発億単位のミサイルよりは単価がはるかに安いだけで十分では?
      ペトリや中SAM改のレーダーと比較にならないくらい巨大で高価なんです?

      2
    • Authentic
    • 2025年 10月 17日

    ベースブリード弾で80kmいったらすごいなと思ってたら
    なんか変な記事出てきた・・・
    転倒した英国人のお尻に57mm対戦車砲弾が突き刺さり、陸軍の爆発処理班が出動
    リンク

    3
      • レプタリアン
      • 2025年 10月 18日

      転倒しただけですから
      間違ってもケツ穴で遊んでませんよと必死に説明したんだろうなぁ
      ケツから砲弾抜き取る爆発物処理班の心境や如何に…

    • L
    • 2025年 10月 17日

    大変結構!問題は量産できる価格かどうか
    旧世代の砲弾一つ製造に苦労する米国産業界は果たして量産できるのか

      • 黒丸
      • 2025年 10月 17日

      ニトロセルロースの中国依存が問題になったので
      もしかしたら米国も装薬不要なレールガン開発を再開するのでは と薄っすら思ってます
      従来砲とレールガン共用の砲弾とか開発するかも

      1
        • L
        • 2025年 10月 18日

        ニトロセルロースはイギリスのアプローチに期待してる

        3
    • 南無
    • 2025年 10月 18日

    自走対空砲が使われるとか10年前の自分なら、鼻で笑ってた
    戦争がどんどん昔に戻っていく

    1
    • 名無し
    • 2025年 10月 20日

    数千Gに耐えられる誘導砲弾を作るコストと火薬マシマシロケット砲にして誘導させるのはどっちがコストが低いんでしょうかね。

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