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BAYKARが新しい巡航ミサイルの試射を公開、地上発射型の徘徊型弾薬?

BAYKARは新しい巡航ミサイル「KEMANKEŞ-2」の試射を17日に公開、これはTB2、TB3、Akinci等に搭載可能な巡航ミサイル「KEMANKEŞ」の発展型だと思われるが、展開式の主翼が大型化して固定翼になっている。

参考:KEMANKEŞ 2 Mini Cruise Missile Completes First Firing Test

KEMANKEŞ-2がジェットエンジンで作動する地上発射型の巡航ミサイル(徘徊型無人機)なら非常に面白い存在

BAYKARはトルコ最大の防衛見本市「TEKNOFEST 2023」でTB2、TB3、Akinci等に搭載可能な巡航ミサイル「KEMANKEŞ」を発表、滞空時間は約1時間(射程距離に換算すると200km以上)だが、自律的な飛行と脅威の識別が可能なため巡航ミサイルと言うよりは「ジェットエンジンで作動する空中発射型の徘徊型弾薬」と言うべき存在で、2023年6月にTB2からの試射を成功させている。

KEMANKEŞがいつ実用化されるのかは不明だが、BAYKARはKEMANKEŞ-2と呼ばれる新しい巡航ミサイルの試射を17日に公開、そのためKEMANKEŞの名称はKEMANKEŞ-1に変更されており、KEMANKEŞ-2はKEMANKEŞ-1の発展型という位置づけだろう。

公開されているスペックを見る限りKEMANKEŞ-2はKEMANKEŞ-1よりも大型してペイロードも6kgから20kgに増加、最大の相違は展開式の主翼が大型化して固定翼になった点で、試射も走行中の車輌から行われているためKEMANKEŞ-2は地上発射型なのかもしれない。

ウクライナとロシアの戦いでは「接近拒否の成立により航空戦力が戦場の奥深くに侵入できない」と実証され、砲兵戦力でカバーできない前線後方(40km以上)を「安全に攻撃できる兵器」が威力を発揮し、その代表例はロシア軍のLancetで、ウクライナ軍も最近になってLancetの類似品(まだ正式名称は不明)を投入し戦果を挙げている。

155mmの射程延長弾やHIMARSのGMLRS弾なら40km以上後方を叩くことも可能だが、徘徊型無人機の方が戦場での移動が目立たず調達コストも安価で、ウクライナ軍にとってもロシア軍にとっても「目標の捜索と攻撃を同時に行える徘徊型無人機」は欠かせないものになっているのだろう。

出典:ПРЕЗИДЕНТ УКРАЇНИ Lancetの類似品について説明を受けるゼレンスキー大統領

少々話が脱線したが、KEMANKEŞ-2がジェットエンジンで作動する地上発射型の巡航ミサイル(徘徊型無人機)なら非常に面白い存在で、今後も前線の低空域を活用した攻撃アプローチは増えていき、攻撃される側にとって本当に困難な時代だ。

関連記事:BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
関連記事:圧倒的に安価なLancetの類似品、ロシアは2024年末までに数千機を生産
関連記事:徘徊型弾薬対策、ウクライナ企業がランセット・キャッチャーの量産を開始
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関連記事:ロシア軍の徘徊型弾薬が戦場で効果を証明、攻撃ヘリの代替手段として活用

 

※アイキャッチ画像の出典:BAYKAR

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コメント

    • たむごん
    • 2024年 4月 22日

    ウクライナ戦争がきっかけで、新しい兵器がドンドン活躍・登場してますね。
    軍事用ドローンといえば、大型高価(バイラクタルTB2やリーパー・プレデターなど)だったものが、使い捨てタイプのものに変わったように感じます。

    イスラエルの対イラン防空戦闘もそうでしたが、防空兵器だけでも高コストですから、防衛側は本当に割に合わない時代ですね。
    外交でどうにもならない地域は、軍拡を進めるしかなくなってきている気もします。

    10
      • ローテクおっさん
      • 2024年 4月 22日

      ロシアの輸入した、シャヘド136の価格が後に10万アメリカドル以上と発覚した様に当初言われてた程は低速の自爆無人機は安価ではなかった
      アメリカなどで同級品を製造すれば恐らく倍の値段にはなると想像に固くない
      迎撃ミサイルによるミサイル防衛は高価だが、ミサイルでダムや発電所、工場を防衛できなければ数十億ドルの資産や人命が失われることを踏まえると安いか高いかは対象次第と言える

      9
        • たむごん
        • 2024年 4月 22日

        正論だと思います。

        問題は、攻撃側は場所を選べるため防衛側はカバーエリアが広くなり、莫大な予算が必要な事でしょうね。

        4
          • 名無しの悪夢
          • 2024年 4月 22日

          なんかローマ帝国末期みたいなイメージ涌きましたね

          2
      • ななし
      • 2024年 4月 22日

      無人機はハイ・ミドル・ローの3つのグレードに分かれて行ってる感じですね
      あれもこれも欲張りセットみたいな高機能高価格のハイ、ある程度の損失を考慮して価格や機能を抑えたミドル、使い捨て前提のオモチャみたいなロー
      ハイやミドルも戦場に投入されてるはずですが、損失すると痛いので声高に宣伝してないだけだと思います
      その代わりに使い捨てのローの映像を宣伝すれば皆そっちに向くでしょうからね、撮れ高もあるでしょうし

      6
        • たむごん
        • 2024年 4月 22日

        仰る通りです。

        局面に応じて、必要な種類が変わりますね。

      • nachteule
      • 2024年 4月 22日

       流石に軍拡を進めるしかないはどうかと思う。軍拡した結果で国が滅べば意味は無く、軍拡だけすれば戦争でうまくいく訳でもない。

       国としての組織、国民や民間会社やインフラ、経済含めて国としての総合力を上げないと意味は無いでしょう。

      3
        • たむごん
        • 2024年 4月 22日

        日本の場合ですが、インフラをいくら作っても破壊されたり、シーレーンを封鎖されれば終わりです。

        それが平時に100兆円の価値があっても、原料や食糧がなければサプライチェーンも止まり、価値を生み出せなくなってしまうわけです。

        結局のところ、仰る通りバランスが大事ですから、平時に何をやっておくのか重要性を感じますね。

        3
    • 名無し
    • 2024年 4月 22日

    V-1好きとしては、カミカゼUAVはさっさとパルスジェット載せろよ!
    名前はJB-2を襲名していいぞ!

    7
    • 名無し
    • 2024年 4月 22日

    画像の第一印象がランセットの新型?
    という印象だったがやはり徘徊型弾頭か

    性能より量産性とコストが気になる

    3
      • 名無し
      • 2024年 4月 22日

      ランセットのかたちは、量産性とコストの鬼っぽくて好き 味も色気もない長方形の翼8枚ぶっきらぼうに付けるのは、本当に反則よ

      1
    • 折口
    • 2024年 4月 22日

    バイカル社の製品の外観を決めている設計エンジニアとは何か深いレベルで分かり合えそうな気がします。日本で講演会とかやってくれないかな…。

    砲兵と対地攻撃機の間を埋める存在としての徘徊弾薬って興味深いですね。確かに安価ではないし、安価なものでもサプライへのアクセスに依存しているという点で伝統的アセットを葬り去ってしまうようなものではなさそうですが、米国や中国のような金銭的なベースの大きい軍隊が本気で整備したら地上戦の様相が変わってしまうんでしょうね。

    5
    • kitty
    • 2024年 4月 23日

    最後の写真でゼレに「ご説明」している軍人らしき人だけにモザイクがかかっているのはなぜなんだろうか。
    テロリストを直接相手にする特殊部隊の人間は原則、顔出しNGですが、諜報関係者だから?

    • 2024年 4月 23日

    日本もバイラクタルTB2買うなら是非ともセットで購入したいね

    1
    • 七面鳥
    • 2024年 4月 23日

    主翼の位置から見て、重心がかなり前寄りにあるように思える。
    お尻はジェットエンジン(通常は航空機では一番重い)だけだろうから、弾頭と制御装置が相当に重いのだろうか。
    燃料も重心近くに置きたいはずなので、胴体の後半分は重心のつりあいと尾翼のモーメントのためだけにのばしてるのかな、と思ったりする。

    1
    • YA
    • 2024年 4月 23日

    無人機が1周回って日本が昔研究してたTACOMみたいになってきた感

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