ロシアは戦場で効果的な徘徊型弾薬「Lancet」の生産量を大幅に引き上げたという情報があるが、ウクライナ企業のメトインヴェストは1日「徘徊型弾薬から装備を守るランセット・キャッチャーの量産と供給を開始した」と発表した。
ランセット・キャッチャーは移動中の装備を保護するように出来ておらず、サンシェードをウクライナ軍が取り入れるかどうかは不明
2019年に露ZALA(カラシニコフ・コンサーン傘下)が発表した「Lancet」は徘徊型弾薬「KUB-BLA」を発展させたもので、米国製のSwitchblade600(22.7kg)と比べるとLancet-3(最大重量12kg/弾頭重量3kg/滞空性能40分/航続距離40km)は小型だが、攻撃効果を高めた能力拡張型(Izdeliye51:最大重量14kg以上/弾頭重量5kg/滞空性能60分/航続距離70km)は弾頭重量が増しているため破壊力が向上しており、これまでに徘徊型弾薬による交戦は100回以上も確認されている。
Момент атаки российского дрона-камикадзе «Ланцет» на комплекс ПВО IRIS-T SLM. Момента удара не видно, но атаковали радар TRML-4D, который ценнее пусковой установки. По видео не скажешь, насколько серьезно он поврежден. Однако похоже, что его бросили под обстрелом. pic.twitter.com/ji5Iiqvnql
— IanMatveev (@ian_matveev) June 7, 2023
ロシア軍は最低でもLancetとKUB-BLAを使用してウクライナ軍の戦車×11輌、装甲戦闘車輌×8輌、榴弾砲×24門、自走砲×25輌、多連装ロケットシステム×4輌、地対空ミサイル×8基、レーダー×12基、通信機器×2基、各種支援車輌×11輌、艦艇×3隻を破壊、Oryxの集計が停止された3月以降も車輌、榴弾砲、自走砲に対する攻撃が多数確認されているが、特筆すべきはIRIS-T SLMのレーダーがLancetで損傷した点だろう。
ロシアはLancetの生産量を大幅に引き上げたという情報(生産数については諸説ある)が出回っているが、回収された残骸から「構成部品が西側諸国からロシアに流れ込んでいる」と証明されており、依然としてロシアは製造に必要な部品を入手し続けているためLancetによる攻撃が減少する兆候はなく、ウクライナ軍も被害を防ぐため即席のメタルネットによる装備保護に乗り出している。
今年1月にメタルネットに引っかかったLancetの残骸が登場、ウクライナ側は「メタルネットを正しく設置すれば徘徊型弾薬から榴弾砲や自走砲を保護できることが判明した」と主張していたが、現地企業のメトインヴェストは1日「徘徊型弾薬から装備を守るランセット・キャッチャーの量産と供給を開始した」と発表した。
ウクライナ軍と共同開発したランセット・キャッチャー(全長10m×幅5m×高さ5m/鋼鉄製で重量は約1トン)は殆どの陸上装備を保護することができ、メトインヴェストは「前線で素早く組み立てることも解体することも可能でメンテナンス性にも優れている。既に32のランセット・キャッチャーを無償で軍に提供し、1週間で最大5つのランセット・キャッチャーを生産している」と述べており、これが前線に普及すればLancetや自爆型ドローンの被害も減少するかもしれない。
A Russian Western Military District T-72B3 tank with a roof screen with Kontakt-1 ERA bricks. https://t.co/RPQuvBOn14 pic.twitter.com/bCHrQ0u2J2
— Rob Lee (@RALee85) May 6, 2023
ただランセット・キャッチャーは移動中の装備を保護するように出来ておらず、ロシア軍が採用しているサンシェードをウクライナ軍が取り入れるかどうかは不明だ。
因みにメトインヴェスト8月25日「敵の精密弾薬を浪費させるのに役立つ精巧なダミーを250以上も軍に引き渡した」と発表している。
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※アイキャッチ画像の出典:Метінвест
次の対策が講じられるまでの繋ぎにはなるかね。LancetとKUB-BLAの次も出てくるだろうし。
日本語で言うとつまり金網なのだが、ランセットキャッチャーというとなんとなく凄そうに見えるのは自分だけだろうか
Lancetと比べるとSwitchbladeの戦果はあまり聞かないのですが、実際のところはどうなのでしょうね?
あと、Phoenix Ghostって現物も残骸の写真も見たことがないのですが、本当に存在しているんでしょうか???
Switchblade300は供与された数も少なく炸薬量もグレネード1個程だそうで装甲目標には力不足で早期にウクライナ軍も安価なFPVドローンにRPG弾薬を取り付けたタイプの自爆ドローンに切り替えていましたね
Phoenix Ghostについては本当にオバケみたいにいるのかいないのかも解りません…
たしかにSwitchblade 300は、炸薬量からみてもソフトターゲット用で、Switchblade 600が対装甲車両用ということですが、Switchblade 600はできあがったばかりで数がまるでないのでしたね。
そうすると、戦果も限定的なのはしかたがないところです。
Phoenix Ghostは書類上では1000機以上引き渡していたと思いますが、倉庫に眠っているのか、エア兵器なのか…
名称はStorm Shadowみたいに中二病感あふれててかっこいいのですけど(笑)。
記事の最後にも触れられているけどウクライナのダミー兵器は本当にクオリティが高い。特に牽引砲の類いは画像を拡大してみても本物と遜色ないくらいの出来。 第二次世界大戦でもダミー兵器は頻繁に見られたけど現在でもその効力は健在ですね。
心臓に良くない写真から
メトインヴェスト社の社長は模型マニアだったりするんですかね
戦争序盤でアマチュア無線マニアたちがロシア軍の平文通信を通報しまくってたときみたいな胸熱貢献
ウクライナは経済規模の割にスキフ、マスターボックス、ミニアート、ICMなどクオリティの高いプラモデル会社が多いので工作好きな国民が多いのかも知れませんね。
対策(キャッチャー、デコイ)を講じなければならないほどにLancetによる被害がでてしまっているという事なのでしょうね
それにしても、開戦当初に対ジャベリン用の上部防護措置を笑っていたのが、対徘徊ドローンの最適解という形で再び目にするようになるとは…兵器の進化とその対策というのはなかなかに予想を越えてくるものばかりです
中国製でなく西側製の部品なんですねぇ
中国製部品なら対中国の経済制裁に繋がる訳で、こういうとこはロシア戦争巧いですわ
ロシアで対ドローン用「トリトン電子防衛システム」というのが発表され、T-72B3Mに搭載されるそうです、実態はドローンで良く使われる周波数帯4種類を妨害する装置のようです。
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ランセットのような自爆型ドローンは、安く簡単に作る設計思想になります。
構成部品は、民間で大量に量産されていて、安価に調達できる汎用品が好まれます(防衛省の装備品は、基本的に真逆です)
汎用品を使うわけですから、経済制裁で網にかけるのは、とても難しいのではないでしょうか(国が数量管理しにくいです)
キーコンポーネントが何なのか少し気になります(無線送受信・制御用の安価な半導体、レンズでしょうか?)
上記の部品であれば、西側諸国から調達しなくても、中国でも作れる水準と思います。
>回収された残骸から「構成部品が西側諸国からロシアに流れ込んでいる」と証明されており、依然としてロシアは製造に必要な部品を入手し続けているためLancetによる攻撃が減少する兆候はなく…
ランセットに限らず低価格のドローンで高価な兵器を破壊損傷席てしまうことは何処の軍隊にとっても頭痛の種でしょうね
今回登場したランセット・キャッチャーも通常の徘徊弾薬に対してなら効果が有りそうですが新型ランセットのような自己鍛造弾タイプですと防御はかなり難しそうです…
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ランセットキャッチャーとサンシェードは違うものなのか。わざわざ呼び分けているということは違うのか
ロシア軍が戦車に採用しているサンシェードは、戦車の上に被せる無骨な日傘といったところなのに対して、ウクライナ軍が今回導入しているランセットキャッチャーは戦車全体をすっぽり被せる金網籠といったところで、前者は移動中にも使えそうだけど守れるのは砲塔上面だけ、後者は停車中しか使えないけど戦車全部を守る、といった具合に違いがあるようです。
なので、呼び分けしてるのかな、と。
教えてくれてありがとう
駐機中の不意打ちを防ぐには効果的ですが、防護しすぎて移動できない戦車に存在価値があるのかどうか・・・
もはやただの固定砲台ですよ。いやまあ防衛戦ならそういう運用で成果を上げるケースは多々ありますが。