アタック級潜水艦キャンセルの余波を受けてフランスが開発協定への署名を見送っていた英仏の対地/対艦ミサイル開発プログラムは17日、協定への署名が行われ本格開発へ移行した。
参考:Future Cruise/Anti–Ship missile project moves forward
ラムジェット推進採用の単一ミサイル開発計画が超音速と亜音速の2種類に分裂?
英国とフランスは共同でハープーン、エグゾセ、ストーム・シャドウ等を更新するため最大マッハ5.0で飛行する「Future Cruise/Anti-Ship Weapon(FC/ASW)」の開発を計画していたが、アタック級潜水艦キャンセルの余波を受けてフランス側が開発協定への署名を延期していまい、いつFC/ASWが本格開発に移行できるのか不透明になった。

出典:MBDA FC/ASWのコンセプトモデル「ペルセウス」
特に英海軍がFC/ASWで更新する対艦ミサイル「ハープーン」は間もなく運用能力を保証した期間が切れるため、2023年のハープーン退役と2030年頃のFC/ASW実用化とのギャップを埋める暫定的な対地/対艦ミサイルの調達(ハープーンK SLAM-ERやブルースピアなど)を予定していたのだが、FC/ASWが不透明なため「暫定的処置を中止して独自に極超音速で作動する対地/対艦ミサイルの取得を検討している」と第一海軍卿が明かして注目を集めていたものの両国は「FC/ASWの開発を進めるための協定に署名した」と17日に正式発表。
Le Délégué général pour l’armement Joël Barre, le directeur 🇬🇧 @DefenceES & le PDG @byMBDA, ont lancé les travaux de préparation du futur missile antinavire et futur missile de croisière (FMAN-FMC) après signature d’un accord étatique et notification de contrats #NotreDéfense pic.twitter.com/Xbs1j6OO3u
— Direction générale de l’armement (@DGA) February 17, 2022
これを受けて暫定的な対地/対艦ミサイルの調達が復活するのか、独自に取得を検討していた極超音速で作動する対地/対艦ミサイルの扱いはどうなるのかなど色々と疑問が生じてくるが、最も注目すべきはマルチプラットフォーム(航空機、水上艦艇、潜水艦など)に対応した1つのミサイルを開発すると解釈されていたFC/ASWプログラムが「超音速で飛行する対艦ミサイル」と「亜音速で飛行する巡航ミサイル」の2種類を開発するように変更されたと報じられている点だ。
当初の計画ではラムジェット推進(最大マッハ5.0)の採用を謳っていたのでFC/ASWを極超音速ミサイルに分類する向きもあったが、ここにきて「超音速で飛行する対艦ミサイル」と「亜音速で飛行する巡航ミサイル」の2種類に分裂したため不透明なFC/ASWプログラムを更にミステリアスなものに変貌させてしまった。
果たしてFC/ASWプログラムは最終的にどこへ着地するのか益々目が離せない。
追記:英海軍は正式にハープーン退役後のギャップを埋める暫定的な対地/対艦ミサイル調達の計画破棄を通知したとジェーンズが報じている。
関連記事:英海軍、極超音速ミサイル実用化までのギャップを埋めるハープーン更新計画を中止
※アイキャッチ画像の出典:Direction générale de l’armement
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>「超音速で飛行する対艦ミサイル」と「亜音速で飛行する巡航ミサイル」
超音速で長時間飛ぶ巡航ミサイルが、今の所この2国では開発できないって事でしょうか
どちらかのミサイルがレベルアップしたら、その成果が片方のミサイルに反映される方式?
いきなり極超音速巡航ミサイルという高いハードルに挑むのではなく、2種類の低めのハードルからクリアしていくやり方に見えます
おそらくコストパフォーマンス等の問題かと
ラムジェットエンジン式は撃墜されにくいメリットがある反面、推進機構が複数必要(ラムジェットエンジンは超音速でないと機能しないため、その速度までは別の推進器で加速する)ため高価でメンテも大変だと思われます
反面トマホークのようなジェット推進によるものはラムジェット式より撃墜されやすいものの、比較的機構が単純・安価などといったメリットがありますし、目標に合わせて使い分ける、あるいは組み合わせて運用する目的があるのではないかと
欧州は複雑怪奇、目が離せません
欧州情勢は「紆余曲折」。
今後も続きそうですな。
最終的に着地したら爆発して跡形も無くなりそう
ものがミサイルだけに。
おあとがよろしいようで。
対艦ミサイルの射程がどんどん伸びてるからそのうち水上艦の活躍できる余地がだいぶ減りそう
そして、レーザー版CIWSが実用化されたら、対艦ミサイルは花火扱いになるのかな?
矛と盾の争いの海上版、今後どう展開するのか、興味深いですね。
極超音速ではないけど、ASM-3ベースの超音速SSMが少し頭を過りました。
日本自体でそんな計画無いから無理だけど、最近の日英共同開発とかの動向とかを受けて、少し夢を見たくて。
日本では、より高性能で高速な「極超音速誘導弾」を開発中ですよ。
この「極超音速誘導弾」は極超音速巡航ミサイルに分類されます。
防衛技術シンポジウム2021を見ればわかると思いますが、「極超音速誘導弾」には、先進的な「デュアルモード・スクラムジェットエンジン(DMSJ)」が搭載されています。
あ、記述が不適切でごめんなさい。
夢見たのは、日英共同開発での艦対艦ミサイルです。
ASM-3ベースは、その手段として上げました。
90式、17式は何れもASM-1のファミリー。
極超音速誘導弾はエンジンなど要素開発の段階との認識で﹙防衛装備庁技術シンポジウム2019などで紹介された燃焼試験結果の印象が強いです﹚、
ファミリー展開で艦対艦ミサイルを望むには早過ぎると思い、ASM-3ベースとしました。
あと、ミーティア→JNAAMのイメージにも囚われ過ぎて、既存ASMベースを前提にしていたのかも。
でも指摘頂いた後に改めて日英共同開発での艦対艦ミサイルをイメージしてみると、要素開発の次のフェーズだと寧ろアリかな?、と考えを改めている所です。