英空軍は無人戦闘機の技術実証機開発・製造プログラム「モスキート」をキャンセルして注目を集める中、BAEは新たに機敏で手頃な無人戦闘機のコンセプトを発表した。
参考:UAS Concepts
英空軍が進めている「Lancaa Program」や英海軍が進めている「Project Vixen」をターゲットにしてるのは明白
BAEが発表した無人戦闘機は2種類あり、Concept1と呼ばれる機体は情報・監視・偵察(ISR)任務向けの小型機で、高度9,100mをM0.5の速度で4時間飛行することができレーダー、電子光学センサー、EW、弾薬など最大40kgのペイロードを搭載できるが、基本的にConcept1は消耗を前提にしているので調達コストは安価になるよう設計されているものの「パラシュート方式の回収機能も備えているため複数回の再出撃」にも対応している。
さらにConcept1の運用は滑走路ではなくレール式カタパルトが基本で、コンテナ型の保管システムを利用して迅速に展開・運用することできるらしい。
Concept2は既存の航空戦力が担う制空権、攻撃、ISRの役割を代替及び強化するために設計された中型機(最大離陸重量は3,500kg)で、高度9,100mをM0.75の速度で飛行できMeteorやSPEAR-3を搭載が示唆されているがConcept2にウェポンベイが存在するのかは不明だ。
Concept2はConcept1と異なり再利用(100回以上)を前提にしているが「リスクの高い環境で使用を躊躇うほど高価でもない」とBAEは主張しており、具体的な言及はないものの英空軍が進めている「Lancaa Program」や英海軍が進めている「Project Vixen」をターゲットにしてるのは明白だが、Concept2は技術実証機の製造がキャンセルされたモスキートにコンセプトが近いので英空軍が興味を示すかは謎だ。
英空軍参謀総長のウィグストン大将は「我々がモスキートをキャンセルしたのは『もっと早く実用化できるシステム』に焦点をあてるべきだと判断したからだ」と述べており、ロッキード・マーティンも各国が支持するLoyal Wingmanの概念は「予想されているような作戦効果を上げるとは思えない」と主張して分散アーキテクチャに重点を置いたDistributed Team(分散チーム)の概念を発表するなど、有人・無人チーミングの進むべき方向性は定まってない。
Early look at BAE’s loyal wingman-esque drone at #RIAT22 pic.twitter.com/wLLtepuAPI
— QE (@QE1045) July 14, 2022
18日に開幕するファンボロー航空ショーにConcept1やConcept2のモックアップを出展するようなので、より詳しい情報が発表される可能性がある。
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※アイキャッチ画像の出典:BAE Systems
日本もTACOMを発展させていればなぁ・・・
「無人機研究システムを活用した新たな無人機システムに関する検討」は2020年12月にスバルと契約している
検討かぁ。
次世代戦闘機は無人機をひっくるめたシステムとして運用されることがほぼ確定しているけれど、無人戦闘機に関して日英は協力するのだろうか。日本の無人僚機はアメリカと技術協力するみたいな話になっているけど、さあどんなものになるか・・・
18日が楽しみだな。
FCASはもとから中型、小型の無人機を想定しているし、最近の動きをみるとチーミング無人機は1機種だけでなく、用途別の複数の種類を用意するのが潮流になってきているように思える。日本はどんな方向に行くのかな。イギリスとほぼ共通の戦闘機を使うのなら、無人機システムも合わせた方がいいと思うんだが。
この記事読んだ感じはチーミングは諦めた(たぶん誤解される)という話に思えます
おそらく本来はNGADのような本格的な連携を模索してたはずだけど、それは諦めて(本格的に連携するにはマッハ0.7は遅すぎるしセンサー類も同等のものとは思えないから)高性能な有人機がメインで、その指示のもと無人僚機が攻撃などを行うコンセプトだと思う
つまり「対等な僚機」から「ただのミサイルキャリアー」に格下げみたいなイメージ
そして日本の場合は領海が広いからもっと速度と航続距離が欲しいよねとなって無人機の共通化はしなさそう
この記事と関連記事読んでその結論になるの?w
無人機の形状がいつみてもナチのV1みたいで笑ってしまう。
あの設計どんだけ先進的だったんだよ。
日本では「自律向上型戦闘支援無人機の機能性能及び運用上の効果に関する研究」で、将来の無人機コンセプトを導出することになっていますが、どのようなコンセプトが導き出されるのか、非常に楽しみですね。
「自律向上型戦闘支援無人機の機能性能及び運用上の効果に関する研究」では、達成すべき目標として
① 無人機コンセプト導出技術
人工知能(AI)技術を適用した自律性の高い無人機モデルなどをシミュレータ内に構築し、将来の航空戦闘下における機能・性能、運用上の効果に関するトレードオフスタディを通じて将来の無人機コンセプトを導出する。
② チーミング技術
戦闘機に随伴する無人機に必須なチーミング(連携)に関する技術を確立する。
などが挙げられています。
他の人も言ってたけど何だかんだで今後の戦闘機随伴型の無人機ってナチスドイツのV1をステルス化した感じになるんだなぁ…まあそれはともかく空自の次期戦闘機は一応アメリカとも協力は続けてく訳だし、開発予定の随伴無人機は果たして米英どちらの無人機コンセプトに合わせてくのやら
無人機開発でも、今後は2つの方向性になると思う。
分散型ネットワークを構築できる場合(米・NATO・中国・日本など)は、LMやBAEの発表したコンセプトのような、単独で作戦可能な無人機での運用が可能になる。
分散型ネットワークを構築できない場合(豪など)は、戦闘機随伴型の無人機がメインになる。
このCncept1ってデフォルメじゃなくてまんまこのデザインなのか。
可愛すぎでしょ。
遅ればせながらですが、「分散チーム」の概念について参考となりそうなレポートがあるので紹介します。
『CSBAが“Mosaic Warfare(モザイク戦)”のレポートを発表
-AIと自律システムの軍事的将来像-』
海上自衛隊幹部学校 未来戦研究室(トピックス078 2020/04/21)
リンク
「ネットワーク中心の戦い」は、将来戦において彼我の電子戦により劣化したC2ISR(指揮統制、インテリジェンス、監視及び偵察)環境に晒されるので、これをモザイク戦による「意思決定中心の戦い」へ移行する。
モザイク戦においては、戦いの全体様相を構成する個々のピースを、OODA(観察-情勢への適応-意思決定-行動)ループもしくはキルチェーンにおいて、基本的に単一の機能しか有しない安価なユニットにデザインする。(一部が損なわれても全体としての機能は維持される)
戦場における相互運用性・冗長性を確保し、量的優位及び分散配置により敵を飽和させるとともに、我の適応性・生存性を向上させ、可変性・非定型性がもたらす膨大な複雑さをもって、敵の意思決定を混乱させる。
レポートの一部分の要約ですが、このように解説されています。
究極的モザイク戦はAIと自律システムの将来的発展が前提とされ、近々に実現可能なものではありませんが、LMの「分散チーム」構想はこの概念の過渡的応用とも思えます。
空自の無人戦闘機の運用構想に近いのはConcept2でしょうね。
ただ、中国の第5世代戦闘機と戦うとなると高度なステルス性能と複数のAAM搭載の両立が必要なので、全翼機形状の方が良いかもしれません。