欧州関連

ポーランド運送業者によるウクライナ国境の封鎖、2024年2月1日まで延長

ポーランドの運送業者によるウクライナ国境の封鎖は20日目に突入、人道援助や燃料の輸送にも影響を及ぼし始めているが、この抗議を支援するポーランドの極右政党「同盟」は22日「申請が受理され国境封鎖の活動は2024年2月1日まで延長された」と明かした。

参考:Польські перевізники оголосили про намір блокувати кордон з Україною до лютого

これが事実なら燃料輸送にも影響を及ぼす国境封鎖の期間は「予想されるロシア軍のエネルギーインフラ攻撃」と重なる

EUはウクライナ支援の一環として「道路による貨物輸送の自由化協定」を昨年6月に締結、これによりウクライナの運送業者は「EU域内でのトラック輸送」に許可を取得する必要がなくなり、国境を越える取り扱い貨物量も2021年と比較して53%も増加、この結果を受けてEUとウクライナは今年3月に「自由化協定の1年延長」で合意したのだが、ポーランドの運送業者は「自由化協定」の影響で自分達のビジネスが不利益を被ったと主張。

出典:Serhiy Derkach

ポーランドの運送業者と東欧諸国のドライバー達は「自由化協定の取り消し」と「ウクライナ運送業者に対する許可取得の復活」をEUに訴えるため、ポーランドとウクライナの国境にあるクラコヴェッツ検問所、ヤゴディン検問所、ラーヴァ・ルーシカ検問所を今月3日から封鎖、両国の国境付近では約2万台のトラックが立ち往生しており、Bloombergは「気温の低下と降雪の影響で立ち往生しているドライバー達は厳しい状況に直面しているが、この抗議活動にポーランド人農民も合流する動きを見せている」と報じている。

抗議者は「人道援助物資、燃料、危険物、生鮮食品を輸送するトラックの通過は妨害しない」と主張していたものの、人道援助物資や燃料を積んだトラックも検問所に向かうトラックの長い車列に巻き込まれて立ち往生しており、ウクライナのカチカ経済副大臣も「国境封鎖によってLNG、ガソリン、軽油の輸送、ポーランドを経由するバルト三国からの輸入が影響を受けて危機的状況だ」と述べ、ウクライナ、ポーランド、EUによる三者協議の開催を呼びかけているが、EUは自由化協定の取り消しには応じない構えだ。

運送業者による国境封鎖の背後にはポーランドの極右政党「同盟」が関係しており、同政党のラファウ・メクレル氏は22日「活動の延長申請を提出して受理された。国境封鎖の活動は2024年2月1日まで延長された」と報告、これが事実なら燃料輸送にも影響を及ぼす国境封鎖の期間は「予想されるロシア軍のエネルギーインフラ攻撃」と重なるため、ウクライナにとっては頭の痛い問題になるだろう。

関連記事:ウクライナ国境の封鎖は19日目に突入、人道援助、LNG、ガソリンの輸送に支障
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※アイキャッチ画像の出典:Serhiy Derkach 立ち往生したドライバーの支援に取り組むウクライナのデルカッハ・インフラ副大臣

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コメント

    • kitty
    • 2023年 11月 23日

    ポーランドの極右政党「同盟」は「肉壁」たるウクライナが崩壊して、ポーランドが最前線になったら、どういうコメントするんだろうな。
    まあ、そんな論理的思考をしていれば「極右」なんてレッテルは貼られませんか。

    14
      • kame
      • 2023年 11月 23日

       NATOに加盟済みのポーランドからすれば、最前線になる事は大した脅しにはならなそうですけどね。ロシア寄りのベラルーシと国境を接している現状でも、見ようによっては既に最前線な訳ですし。
       どうなるか分からない戦後の話よりも今現在の生活のほうが大事というのは一般人的には間違っていないし、そういった人達の民意を受けて当選する政治家がいる以上、今回の動きも仕方がないのでは?

      61
        • たむごん
        • 2023年 11月 23日

        仰る通りです。
        ポーランドは充分にウクライナ支援しているうえに、EU内で(東欧諸国と共に)悪者のような扱いを受けていますからね。

        ポーランドはNATO加盟国ですし、以前から最前線(ウクライナも対ウクライナ親露派時代を含めれば)ですから、理解できる部分があります。

        11
      •  
      • 2023年 11月 23日

      「同盟」の党員や支持者たちもポーランドがベラルーシと国境を接してることすら知らない極東の島国の人に論理的思考が何かを説かれたくないと思う

      48
        • 歴史と貧困
        • 2023年 11月 23日

        確かに、さらにはロシアの飛び地であるカリーニングラードがグダニスクのすぐ東にあり、バルチック艦隊がいますからね。
        ポーランドは遥か以前から“直接ロシアと国境を接する最前線”であり、スバウキ回廊にワグネルが現れることも想定してベラルーシと国境で揉めているような状況です。純粋に、【ウクライナだけが最重要】とならないのは当然でしょう。

        25
    • Easy
    • 2023年 11月 23日

    見るべきポイントの一つとして、「2月までの資金の目処がついた」
    封鎖に参加してるトラックや運転手は収入が途絶えているわけですから、その間の生活資金やローン支払いの支援が無くては封鎖を続けられません。
    すなわち、封鎖に対しての寄付や支援金が十分に集まったんですね。
    その資金の出所が気になりますが、意外にユダヤ系かもしれないですね。イスラエルへの支援を充実させるには,ウクライナ問題はさっさと終わらせた方が彼らにとってのメリットになりますので。

    22
      • 歴史と貧困
      • 2023年 11月 23日

      あと個人的に気になるのは、最初から極右政党が封鎖を主導していたのか、それとも運送業界が自発的に行った封鎖に便乗する形で今に至るのか、です。
      後者ならば本当に2月1日まで続ける目処が立ったのか微妙なところですが、前者の場合は資金源の含め相当に周到な計画があったことになり、非常に根の深い問題になるかと。

      14
      • たむごん
      • 2023年 11月 23日

      仰る通りですね。
      資金面の出し手は、気になります。

      1ヵ月も経たないうちに、農民などから、多額の寄付金が集まらないでしょうから。

      8
      • タチコマァ
      • 2023年 11月 23日

      あからさまにロシアの工作だろこれ

      2
    • 58式素人
    • 2023年 11月 23日

    仮に2月1日まで頑張って目的が達せられなかったら。
    誰の面子が潰れ、誰の懐が痛むのだろう。興味があります。
    輸送の妨害で訴訟にあったりもするのかな。
    2月1日以降も頑張るのかな。
    それとも、また選挙をするように持っていくのかな。

    4
    • はる
    • 2023年 11月 23日

    実際いつまで封鎖が続くか分かりませんが2月まで続くと凄いことになりそうですね

    7
    • Easy
    • 2023年 11月 23日

    > ロシアによるウクライナ侵攻にNATOは一致団結しなければならない

    旧ソ連と旧ソ連が同士討ちしてるのに、別にNATOが何かしなければならない理由など何もないですよ。
    強いて言えば、ポップコーンでも食べながらゲラゲラ笑いながら眺めるのが正しいんじゃないでしょうかね。

    22
      • ( ゚Д゚)
      • 2023年 11月 23日

      結局旧ソ連どまりなんですね。

      10
      •  
      • 2023年 11月 23日

      そうだとすると素朴に考えて弱い方に加勢して双方共倒れがベストでは ?

      5
    • けい2020
    • 2023年 11月 23日

    >「申請が受理され国境封鎖の活動は2024年2月1日まで延長された」

    これが達成されたとして、
    封鎖してる運送業者=収入がなくなり困窮
    巻き添えの運送業者=収入がなくなり困窮
    ポーランド経済=経済流通が停滞し経済に悪影響
    ポーランド政党 同盟=政治的目標達成で満足だけは出来る
    ウクライナ=経済封鎖で被害が右肩上がりに
    ロシア=国外から補給できないウクライナ相手なら侵略成功率大幅UP

    6
      • 理想はこの翼では届かない
      • 2023年 11月 23日

      ポーランドの運送業者の方々からすれば、「自由化協定の取り消し」と「ウクライナ運送業者に対する許可取得の復活」を勝ち取らないと何の意味も無いので、通るまでやるのではないですか?
      中途半端に封鎖を解除してしまっても、結局は自由化協定によって収入は激減するのですし

      自分の生活が苦しくなる事がわかっている状態で「ウクライナのために我慢しろ」と言われて黙るのは日本人ぐらいなものだと思うのですよ

      10
    • たむごん
    • 2023年 11月 23日

    滞貨の量が、どれくらいになるのか気になりますね。
    ウクライナ向けに、2万台のトラックが立ち往生しているのであれば、積み込み先でには恐ろしい滞貨が発生する事になります(物流は大量の滞貨を基本的に想定しないため、倉庫貯蔵には限度があります)。

    ポーランド・東欧国内の物流も混乱するでしょうから、自国のインフレ(生活)にも悪影響が及ぶ事になります。
    政治的に支持を得ているという事は。ウクライナは穀物問題などにより、隣国の末端レベルから支持を失っており危機的なレベルと考えるべきですね。

    ウクライナ政府の戦時外交について、穀物問題への隣国対応は、最悪だった一例としてケーススタディになりますね。
    農民の積極的な協力は、トラック(運送業)は空荷を避ける経済合理性があるため、穀物などの食糧を運ぶ連想(ウクライナ→東欧ルートの空荷を避ける)もあるのではないかと推察します(個人的な意見です)。

    7
    • 古銭
    • 2023年 11月 23日

    農業界の抗議と同じでポーランドが目立ちます(規模や立地だけが理由ではないでしょう)が、実際にはハンガリー,スロバキア,チェコ,リトアニア各国最大手の運送事業者協会が自由化協定の取り消し等を求めています。

    域内事業者が国内とEUの基準や法を守ってコスト,手続きを受け入れている横で、そういったものとほぼ無縁のウクライナ事業者が好き勝手に活動するというのはとても正常な状態とは言えません。ドライバーへの報酬ひとつ取っても、ウクライナ勢はポーランド勢の三分の一以下の(当然ポーランドでは許されない基準の)支払いで済ませられることすらあります。

    過去の記事でも紹介されていましたが、EU域外資本(主にウクライナ)の企業が国内で登録をするのも大きな問題でしょう。
    今回問題となっている運送自由化協定が許可するのは二国間輸送と通過輸送のみ。しかしウクライナ勢が各国内で事業者登録し(これ自体も平時に比べて容易)、各種特権と組み合わせて有利に事業展開するという事例が多発しています。
    ウクライナ戦争の早期終了が夢物語である中で事態の改善をただ待つだけであった場合、どうなるかは言うまでもありません。

    今戦争の影響とEUがウ国に与えた各種特権は域内各国(特に中東欧諸国)の経済や産業構造を歪にしています。
    長期戦を覚悟するのであれば、どこかで持続可能な形に再編する必要があるでしょう。
    もう余力が無いのだと、ただ打ち切るだけの選択肢も存在しますが。

    14
    • ウルフリック
    • 2023年 11月 23日

    ポーランドは10月の選挙で今まで政権を握っていた右派勢力が負けてリベラル派勢力が勝った

    そこで思想的に反EUな右派勢力の中でバランス感覚が欠如している極右は政局を有利にするために
    ウクライナ支援でEUから不公平な負担を強いられていると感じている層を焚き付けて今回のストライキに油を注ぐという事ですね

    小生としましてはこれまで反EUのハンガリー政権とつるんでいた右派勢力が政権の座から滑り落ちて、
    親EUのリベラル政権になってEUのハンガリーへの制裁が発動したら中々香ばしい展開になるのではないかと興味深く覗いています

    3
    • たら
    • 2023年 11月 24日

    EUの政策によって特定の層への不利益が生じるのなら,EUはその層への損失補填の政策を講じるべきだと思うのですが,それはされてないのでしょうか?

    1
      • 古銭
      • 2023年 11月 24日

      今のところは特にされていません。
      農業界を含む不利益を受けた各種業界への対応を見ている限り、12月4日のEU運輸・電気通信・エネルギー評議会でも(問題の解決となるような)損失補填が検討されるかは怪しいところです。

      そして何より深刻な部分は、ウクライナがもたらした市場の混乱と蚕食が農業界よりも大きいというところでしょう。
      金銭的な補助があったところで、不平等な環境下で奪われたシェアは戻ってきません。今までの生き方を諦め、いつ無くなるかわからない公的資金頼みの生活を望む人や企業はそう多くはないでしょう。

      1
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