欧州関連

ウクライナ国境の封鎖43日目、ポーランドの裁判所が抗議活動の再開を許可

ポーランドの運送業者によるウクライナ国境の封鎖は43日目に突入、現在も封鎖が続く3ヶ所の検問所で2,600台のトラックが立ち往生しており、市長が解散を命じたドロフスクでも裁判所が「抗議活動の再開」に許可を出したため18日から封鎖再開の可能性があるらしい。

参考:Przewoźnicy mogą protestować w Dorohusku. Jest decyzja sądu
参考:Польские перевозчики добились через суд разрешения возобновить блокаду на границе
参考:Три пункта пропуска из Польши до сих пор заблокированы, в очередях стоят 2600 фур

再びヤゴディン検問所で抗議活動が再開されれば「長い行列」に加わるトラックの数は増加に転じるだろう

EUはウクライナ支援の一環として「道路による貨物輸送の自由化協定」を昨年6月に締結、これによりウクライナの運送業者は「EU域内でのトラック輸送」に許可を取得する必要がなくなり、国境を越える取り扱い貨物量も2021年と比較して53%も増加、この結果を受けてEUとウクライナは今年3月に「自由化協定の1年延長」で合意したのだが、ポーランドの運送業者は「自由化協定」の影響で自分達のビジネスが不利益を被ったと主張。

出典:Serhiy Derkach

ポーランドの運送業者は「自由化協定の取り消し」と「ウクライナ運送業者に対する許可取得の復活」をEUに訴えるため、ポーランドとウクライナの国境にあるクラコヴェッツ検問所、ヤゴディン検問所、ラーヴァ・ルーシカ検問所を11月3日から封鎖(実際には検問所を通過できるトラックの数を1時間あたり1台か2台に制限)、抗議活動に合流したポーランドの農民達もシェギーニ検問所を封鎖したため、7.5トン以上のトラックが通過可能な全検問所が封鎖された格好だったが、ポーランド南部のドロフスク市長が11日にヤゴディン検問所の抗議者に解散を命令した。

ヴォイチェフ・サワ市長はドロフスク(ヤゴディン検問所)で抗議活動を行っていたポーランド人らに「もう地域住民が仕事を失うのを容認できない」と訴えて解散を命令、ウクライナ国家国境庁も「11日午後2時にドロフスクでの抗議活動が終了してヤゴディン検問所の封鎖が解除された」と明かしていたが、ポーランドのルブリン地方裁判所は15日「抗議者らはドロフスクで抗議を続けることができる」と判決を下したため、18日からヤゴディン検問所で抗議活動が再開される可能性があるらしい。

出典:Donald Tusk

現在もクラコヴェッツ検問所、ラーヴァ・ルーシカ検問所、シェギーニ検問所の封鎖は継続中で、ウクライナメディアは「依然として2,600台のトラックが検問所を通過するため長い行列を作っている」と報じており、再びヤゴディン検問所で抗議活動が再開されれば「長い行列」に加わるトラックの数は増加に転じるだろう。

ポーランドのトゥスク首相は「抗議活動の背景にある問題(自由化協定に関連したポーランド人運転手の不満)を速やかに解決して東部国境の安全を確保する」と述べていたが、これは抗議活動を強制的に解散させるのではなく「政治的なアプローチで自由化協定に関連したポーランド人運転手の不満を解決する」という可能性が高く、もしそうなら物流の混乱は相当長引くかもしれない。

出典:United24 ウクライナ製のドローン

因みにロイターは「ウクライナ軍が依存しているボランティア団体やNGOからの軍事援助(無人機、暗視装置、電子機器、防弾チョッキ、ピックアップトラックなど)が国境封鎖の影響で届かなくなっている」と報じており、ウクライナ国内で軍事向け装備を製造する企業の代表者も「このまま封鎖が続けば大きな問題になるし既に影響も出始めている。工場で使用している機械部品、無人機のエンジン、無線装置に使用する電源ユニットの供給に遅れが生じている。国の国防プロジェクトに参加する民間企業が海外で調達した大量の部品が国境で立ち往生している」と事態の深刻さを訴えている。

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※アイキャッチ画像の出典:pixabay

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コメント

    • 戦略眼
    • 2023年 12月 16日

    流石に抗議活動をやり過ぎだろう。
    ウクライナも、そんなに出稼ぎするほど人が余っているなら、徴兵したら。

    3
      • 歴史と貧困
      • 2023年 12月 16日

      >ウクライナも、そんなに出稼ぎするほど人が余っているなら、徴兵したら。
      とはいえ、100万人と言われる動員兵の衣食住を確保するだけでも膨大な物資は必要になりますし、軍隊を維持するための民間輸送業者だけを見ても足りていないのが現状なのではと。
      出稼ぎする人がいなくなったらいなくなったで、ただでさえ壊滅的な税収や国内総生産がさらに悲惨なことになり“産業崩壊”が加速するリスクもあるなら、八方塞がりな気はします。

      16
    • たむごん
    • 2023年 12月 16日

    ウクライナは戦争を継続したいのであれば、ポーランドに外交的妥協をすべきですが、いつまで経っても解決する気配がないですね。
    ウクライナの外交交渉能力は、かなり低いという前提で、日本も対応していく時期が来ています(戦時中に、死活問題の補給路を解決できないため)。

    ウクライナ国内に工場がある=ウクライナ国産の部品で全てが賄える訳ではありません(海上輸送が重要な理由です)。
    自動車・半導体など、軍民関係なく・あらゆる製品は、サプライチェーンの中身は国際分業により成り立っています。

    ウクライナの反転攻勢が失敗した中で、アメリカ上院が支援否決・EU500億ユーロの経済支援否決しており、年内の見通しが立たなくなりました。
    来年にならないと分からないようなものに、日本がフルベットして賭けるのは極めてリスクが高いです。

    ヨーロッパの問題で、EU内が揉めている訳ですから、日本が突出する必要性がありません。
    ウクライナ支援を、二か国間援助に切り替える案が浮上していますが、EU各国の国内世論が賛同するとは限らず、決まらないリスクがあるからです(各国の政権交代を見れば分かりやすいですね)。

    プーチン大統領が、日本とのエネルギー取引継続について言及があるわけですから、ロシア権益を維持していくべきですね。

    29
      • もく
      • 2023年 12月 16日

      私がロシア人なら、天然ガスを武器に条件をつけ、外交で日本政府に譲歩させるとともに、日本国内で権益を維持しろ、利益を享受しろって煽りますけどね。

      ドイツのようにならないことを祈ります。

      15
        • たむごん
        • 2023年 12月 16日

        仰る点は理解できます。

        ロシアは、対中国で依存を避ける観点から、日本を利用。
        日本は、対中国とシーレーンの問題から、ロシアを利用しているなあと。

        中東はどうかと考えれば、日本を上手に利用して経済協力・技術協力を引き出したり、日本企業の購入出資・不動産購入を進めているんですよね…
        温室効果ガス削減の宗教から距離を取って、石炭・原子力を活用した方がマシだと、個人的には考えています。

        8
      • 朴秀
      • 2023年 12月 16日

      ゼレンスキーは兵器をもらいにアメリカに行くのが大事なのは分かりますが
      ポーランドに謝罪と妥協をする方が先のような気がします

      23
        • たむごん
        • 2023年 12月 16日

        自分も、同意見です。
        戦時中の破綻国家(ウクライナ)が、なぜ隣国(ポーランド)にあれほど強気なのか、理解できないんですよね。

        ポーランドが、死命を制するような補給線を握っているのに、不思議なものです。

        24
    • 2023年 12月 16日

    ウクライナの次はポーランドだと大軍拡を進めていたのに、こんなことになるなんて。ウクライナに責任があるといった情報戦も盛んですし、これぞハイブリッド戦争ですねぇ。

    ハリー・デクスター・ホワイトやゾルゲのような工作員が世界中にいるんでしょうね。

    6
    • mugi8
    • 2023年 12月 16日

    ボランティア、NGO、民間企業が集めた軍事物資等を積んだトラックが通れないのが問題であって公的な軍関係の運送は問題なく通れるんですよね?
    なら軍事物資を運搬するボランティア等のトラックに軍用に準じた通行証を発行して優先して通せばいいだけではって思うのだけど……完全に推測ですがポーランドはそれを提案してウクライナは全運送業者に優遇措置を与えたいので協定を盾に拒否をしてるとかですかね

    ウクライナに妥協せよって意見が多いのも分かりますが個人的にはそもそもポーランドは戦争前から賃金の安い出稼ぎウクライナ人ドライバーを10万人以上もこき使っていたので自業自得かなぁと思わなくもないです
    安く使ってたウクライナ人に今は逆に価格競争を仕掛けられてヒィヒィ言ってるわけですので
    ポーランド人ドライバーからすると業界内で下に見ていたウクライナ人ドライバーが大きな顔をして自分の仕事を奪っていくので耐えられない人がいそうなのも想像できますしどう解決してもしこりは残りそうですね

    14
    • 半分の軍事費の国から
    • 2023年 12月 16日

    この際なので、ウクライナに荷物を運ぶEUのトラック運転手達をウクライナの戦時公務員にして、非常勤職員位の給料を支給すれば良いのでは?それ位で解決するとも思えませんが、EUで資金提供してウクライナの戦時公務員協会とか作れば出来なくも無さそう。

    1
      • 歴史と貧困
      • 2023年 12月 16日

      >EUで資金提供してウクライナの戦時公務員協会とか作れば出来なくも無さそう。
      うーん、今のEUのシェンゲン協定を巡る対立と混乱を見るに、難しいと思います。

      日本貿易振興機構(ジェトロ)の2023年11月28日の記事に、「オーストリア政府、シェンゲン協定地域拡大拒否の姿勢が濃厚」とありました。
      【一部抜粋】
      シェンゲン協定への参加は、同協定参加のEU加盟国による全会一致の賛成が必要となるが、EU理事会が2022年12月8日にクロアチア、ルーマニア、ブルガリアの協定参加について協議を実施した際、クロアチアのみ承認し、ルーマニアはオーストリアの、ブルガリアはオーストリアとオランダの反対によって否決された(2022年12月12日記事参照)。

      オーストリア国内では、極右の自由党以外の野党や、連立与党の緑の党のほか、オーストリア連邦産業院(WKO)が両国のシェンゲン協定参加を歓迎している。オーストリアでは2024年に予定されている国民議会選挙を前に移民問題が再び着目され、同問題を代表的な争点とする自由党が世論調査で最も高い支持率を得ていることから、与党・国民党は難民受け入れに厳しい政策を維持している。

      オーストリアのエネルギー大手OMVは、黒海での天然ガス産出開始に必要な法的整備を待っているが、ルーマニア政府はシェンゲン協定問題が解決するまでは法律の承認を延期すると報じられている

      【要点】
      既にEUに加盟しているルーマニアやブルガリアですら、自由な国境移動のシェンゲン協定が許されておらず、オーストリアはオランダなどは、“東欧や中東からの移民の受け入れ”に繋がる政策に否定的。⇒極右も台頭しており、オランダでは37議席で第一党となった。この情勢下で、EUに加盟していないウクライナに“例外項目”を設けることには、オーストリアやオランダがより否定的になるばかりか、ルーマニアやブルガリアからも反発を買う。

      という状況が前提としてありますので、“東欧の輸送の自由化問題”は、10年以上前からEU内で根深い対立をはらんでいます。今回のウクライナの件は、そこに例外的に割り込んできたので、ポーランドのみならず、ルーマニアやブルガリアなども相当な反発があるのは間違いありません。スロバキアなどにも抗議活動が広まっているのはそうした地盤があるからでしょう。

      11
        • 古銭
        • 2023年 12月 16日

        ポーランドばかりが目立ちますが、そもそも今騒動はハンガリー,スロバキア,チェコ,リトアニア各国最大手の運送事業者協会が自由化協定の取り消し等を求めて抗議を始めたものですからね。

        23
        • 匿名さん
        • 2023年 12月 16日

        詳しい事情は存じませんが、
        権利を主張するなら、義務を果たすことが、当然求められると思いますので、
        ウクライナのように権利ばかり要求して、EU加盟国に課されている義務は特例免除となれば、
        EU加盟国が反発するのは、当然だろうと思います。

        ましてや、特別扱いに反発したら、ウクライナ政権から提訴や非難までされるのだから、
        何のために自分たちは我慢しているんだ?と感じます。

        24
          • たむごん
          • 2023年 12月 16日

          権利と義務、まさに仰る通りです。

          ウクライナに違和感を感じるのは、ロシアとの戦争で義務を果たしているため、援助の権利を主張するようなロジックです。
          一義的には、ウクライナの対ロシア外交安全保障問題なんですよね。

          ポーランドが怒るのは仰る通りで、とても共感するものがあります。
          日本人が、生活保護目的に入国した外国人に、怒る感情に近いものを感じています。

          日本人でもなく(EU圏外の国が)、納税の義務も果たしてこず(EUの法律・予算制限・汚職対策なども果たさずに)、権利だけを享受する(市場開放もせずにビジネス特権だけを得る)。

          8
    • 古銭
    • 2023年 12月 16日

    市長にしても(抗議活動に対して出した)許可の撤回であったことからわかるように、抗議反対派とは言い難いです。
    こういった活動は長引くほど現地当局に圧力がかかるため、仕方ない面もあったのでしょう。

    10
    • ポンポコ
    • 2023年 12月 16日

    ポーランドのトラック運転手たちですが、自分と家族の生活を守ることがまず第一に大切なんですよ。

    自分達の生活の糧が奪われてきて、ウクライナはEU加盟国でもないのにズルイとか納得できないという気持ちがあるのでしょう。

    東欧の運転手たちは、賃金が安いので、EU内の運送を担ってきた。そしたら例えばドイツは、ドイツ通行中はドイツの最低賃金を適用したりした。そのためポーランドの中小の運送業で倒産したり、雇用から請負に変更したりとか、とにかく、彼らも生き残るために毎日戦っているわけです。

    EUのトップや官僚のウクライナを特別扱いする考えとは、くい違いがあるわけですね。ウクライナ西部とポーランドは、ハンガリーなんかもそうですが、もともと民族対立も歴史的には色々とあり、住民たちが特に仲が良いというわけでもないので。

    ただ、ポーランド政府に強い意志があれば、国境封鎖を法的に解除するのは可能であったとは思います。運転手らの票は失っても票が流れる先は、野党第一党の方はもっとEU寄りだったりしますからね。

    なぜ、解除しなかったか。たぶん、ウクライナのことより、国内政治第一なんでしょうね。

    それとこれは陰謀論かもしれませんが、ゼレンスキーと前ポーランド首相は、開戦直後にウクライナの歴史的な一部の領土割譲を約束したという話があります。それでポーランドは熱情的に支援した。しかし、ゼレンスキーが領土問題を反故にしたから、ポーランドの態度に変化が出たと。

    7
    • 匿名
    • 2023年 12月 17日

    いやぁ、EUって本当に面白いもんですね~

    • ウルフリック
    • 2023年 12月 17日

    こういう状態ならトラックで国境を越えるのは止めて鉄道で越えるしか無いですね

      • たむごん
      • 2023年 12月 17日

      標準軌と広軌の問題が、あるんですよね。

      積み替え投資のコストを、他国(ウクライナ)の戦時需要の為に、誰が支払うのかという問題が出てきます。

    • 七面鳥
    • 2023年 12月 18日

    「市長と裁判官の金の流れを洗え」
    「教科書通りの対応ね」
    ってヤツかな?

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