メルケル政権時代のカレンバウアー国防相は「安全保障や平和に貢献するEUの役割を具体化する空母建造プロジェクト」を発案したことがあるが、欧州域内市場委員のブルトン氏は10日「EU空母やEUミサイルシールドが必要だ」と述べて注目を集めている。
参考:Top EU official wants European aircraft carrier and missile shield
結局のところ「防衛産業界への投資を維持・拡大する資金を何処から捻出するのか」という問題に行き着く
メルケル政権時代のカレンバウアー国防相は「安全保障や平和に貢献するEUの役割を具体化するため象徴的な空母建造プロジェクトを開始できる」と発案したが、フランスを始めとする欧州のアナリスト達は「欧州空母という発想は馬鹿げている=加盟国毎に安全保障政策や地政学条件が異なるため、EUが空母を保有しても共通戦略や意志決定を構築するのが困難なので『まともな運用など期待できない』という意味」と失笑したものの、再び欧州(EU)空母というキーワードが登場して注目を集めている。

出典:Ministère des Armées
欧州域内市場委員のブルトン氏は10日、ブリュッセルで開催された欧州防衛・安全保障会議で「弾薬やミサイルの生産増強に対する取り組みは始まったばかりだ。今後の投資を確実なものにするため『野心的な防衛投資プログラム』を産業界に提示する必要があり、空母、ミサイルシールド、宇宙ベースのISR能力について議論を始める時期が来ている。再び欧州大陸で激しい紛争が発生しているため他に選択肢はない」と訴えた。
ウクライナでの戦争をきっかけに防衛産業界への資金流入が始まったが、この流れを今後も維持・拡大する「もっと大きなニーズ=空母、ミサイルシールド、宇宙ベースのISR能力を真剣に議論して需要を喚起すべき」という意味なので、軍事的側面から欧州空母が必要かどうかは不明だ。

出典:MBDA
この発言は防衛産業を含む域内市場委員視点のもので、結局のところ「防衛産業界への投資を維持・拡大する資金を何処から捻出するのか」という問題に行き着くため、欧州防衛基金=European Defence Fundの資金と結びついた「野心的なプログラム」を要求しているだけとも言える。
関連記事:フランス政府は440億ユーロの国防予算を要求、空母2隻体制にも言及
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※アイキャッチ画像の出典:Thierry Breton
防衛基金があるのはEU加盟国の安全保障に頼りになりますね。
無理でしょうが東アジア、太平洋地域でも同じような物ができそこから軍事予算を引き出せたら….まぁ日本だと基金への拠出額の方が多そうですが…
台湾は引き込むと中国と必要以上に緊張する可能性が有りますし、
韓国は親中北勢力が力を持っているので情報を共有するのには不安が…
今のEUは、統治機構・経済体制・通貨はありますが、軍事力がないため不完全なものなのでEU軍の問題定義は理解できます。
ただ、EU各国の複雑な利害関係、プレイヤー数の多さを考えれば、使い勝手が非常に悪いように感じます(ウクライナの武器支援でさえ、今それが露呈しています)。
EUは、業界のスタンダードや独自規制を強化しており、(アメリカ離れしてきたため)安全保障も独自のものを追求する必要があるのは当然と思います。
フランスは、核抑止力や武器売却を外交力にしているため、どこまで乗ってるくるのか。
NATOとEU軍の住み分けなどは、どのようにしていくのか気になりますね。
欧州で正規空母を建造できる国って実質フランスだけなのでは…
それなりの儲けさえあれば普通に話に乗ってきそうですが
金銭面は仰る通りですね。
搭載戦闘機、整備や補給でも、フランスは噛めそうですし。
現在はフランス独自運用に対して、EU軍でどのような権限を要求してくるかでしょうか(船員と航空要員をフランス軍にすれば、権限は握れそうですね)
クイーンエリザベス級も忘れないで。
EUで考えてました!
欧州で考えれば仰る通り、イギリスも能力がありますね。
二酸化炭素フリーな原子力空母とか言いそう。
原子力空母を主張するフランスと
通常動力それもLNG推進+甲板に太陽光を主張するドイツで
設計思想がぶつかり合ってぐだぐだになりそうな
で、ソ連のキーロフ級の機関のような、フランスの経済水域内では原子力
ドイツの経済水域内ではLNGを燃料とするボイラ、その他の海域での平時の推進動力は
都度 欧州防衛・安全保障会議の判断とする蒸気タービン空母が出来上がるかと
フランスは自前で空母持ってるし、空母がいかに(建造や装備、運用のコストが)高額かを知り尽くしてる
それに自国の都合を無視して動くかもしれない空母なんて、正直反対するんじゃないかな
ドイツは今、EU内外でも「欧州の病人」呼ばわりされるほど経済的に非常にヤバいので金ださないだろうし
加盟国の一部は内陸国、半数近くが大洋に面さない内海沿岸国のEUで空母を共同購入なんて話通る訳ないと思うんですよね。ヨーロッパの利益を代表してアフリカやアジアを空爆して植民地を獲りに行きますというならまだしも、欧州防衛の問題が山積してる状態で艦隊作ってもしょうがないでしょう…。逆にBMDは冗長化の恩恵があるのでNATOと別口でもやったら良いと思いますし、ISR能力の拡充などは単独でやる事のほうが難しいでしょうからやはりやるべきですよね。まぁ、そういうハイテク系やシステム系だけでは防衛産業にあんまり旨味がないからこそ空母なんてトンチキが出てきたんでしょうけども。
EUは構成国内での経済格差が激しいから結局大部分を負担するのはドイツやフランス、イタリアだろうね。そうすると大して負担をしないギリシャやブルガリアなどがフリーライダーと化して軋轢が生まれそうな予感。そもそも大きな脅威がないヨーロッパでEU空母を造っても宝の持ち腐れになりそうな気がするのだが。
米国のイージスアショアが既に稼働していると思うのだけど。
少なくも、ルーマニアにレーダーがあったはず。
フランスは自前のBMDが欲しいと言うことかな。
イージスアショアはNATOのものだろうから。
EUの防衛において、その中心になるべき存在は当然最大の人口と経済力を持つドイツになるはずだが、今のドイツにEUを導くリーダシップも、模範となる覚悟すらない。
リンク
10/8にドイツで地方選挙(ヘッセンとバイエルン州)が行われたが、ショルツ首相のSPDは低迷する経済を背景に惨敗した。
移民排斥とEU懐疑論を掲げる極右AfDが西ドイツのヘッセンで前回から5ポイント上昇の18%の得票率へ躍進し第二党、南ドイツのバイエルンでは4ポイント上昇の14%へと躍進した。
これまでAfDは東ドイツで地盤を持っていたが、西ドイツでこれほど躍進することは過去に例がない。
ショルツ政権は今後ますます不安定な政治基盤のもと政権運営を行う必要がある。
情報ありがとうございます。
ドイツは、エネルギー安全保障が、供給不安とインフレにより壊滅しましたからね。
ドイツ政府は、地球環境問題の旗を降ろして、石炭を燃やしまくっていますし(日本は散々、文句を言われてきました)。
ロシアの安い天然ガスを原料や発電に使って、化学産業・自動車産業などの製造業を成長させてきましたから、ウクライナ戦争でガタガタになっています。
ウクライナ戦争は、ドイツ現政権にとって、死活問題でしたね…。
大揉めに揉めて気付いたら立ち消えてる未来が見える…見えるぞ…!
誰が金を負担するのか、誰が指揮するのか運用するのか
どう考えても机上の空論だよなぁ
そもそも必要性が薄いからな
EU空母というユニークなワードはともかく、開会演説の全文を見る分にはEU域外に依存しない防衛体制の構築と技術開発、そのための資金を調達出来る環境を整えようというお話でした。出身も込みでフランス感があるようなないような。
あくまで個人的な感想(そもそも開会演説でしかない)ですが、弾薬やミサイル、ドローンといった消耗品であり基礎体力となるような分野の生産能力拡大・維持に対しては強い熱量を感じなかったのが少々残念です。言及はされているのですが、非経済的すぎない範疇での計画を求めているように見えました。
一部のドローンであれば民需を刺激することで生産能力に働きかけることが可能かもしれませんが、弾薬やミサイル等は(後で計画を縮小・停止出来ないようにした上で)資金を確保する以上の選択肢は早々ないのでは。どこか遠くで常に需要を生み出す方針でもない限り。
会議全体ではブルガリアの国防相が弾薬生産に関する現状や課題について講演していたようなので、そちらが気になりますね。
現状既にそういう体制ではないの?
英仏は補助艦艇は少なく、英仏の空母は基本EUの補助艦艇頼みだし。
どこで使うんだというのは置いといて、域内市場委員というのは経済産業大臣じゃないのか
経済安全保障の担当者であって直接軍事安全保障の担当者じゃないだろう
>どこで使うんだ
空母って遠隔地での打撃力確保のための存在だと思っていますが、EUとして遠隔地へ火力投射する必要が生じる事ってあるんですかね。東西はポルトガルからキプロスまで領域があり、大西洋にも北海にも地中海にも面している。こんな彼らが遠隔地まで出張るために空母ということは…
これは想定される台湾有事にEUが直接軍事介入する意思表明なのか?まさかそうなのか!?うっそだろお前!
というのはともかく、軍事の各部門でEUとして強靱化・抗甚性向上のために海軍力の象徴として空母が挙がっただけのような気がします。
あと何より政治的な意志薄弱さを何とかしないと戦えそうもないような。
夢を見るのは良いけれど、夢を押し付けるのは良くないな。内陸国からしたら空母に金が流れるだけでも無駄金でしかないし。
建造資金に維持費に指揮権に運用に兵員、それらの構成や比率を話し合うだけでも纏まるとは思えないが。
防衛産業から賄賂でも貰ってるかのような突拍子のない話だなぁ。そもそも建造した後の運用管理・指揮権は何処になるんだろうか?内陸国はまず有り得ないし、空母の運用経験のない国も除外となると、結局、フランスしか該当しない。
架空戦記に出てくるような話で、賛成する国があるのかね。
ロシアや中東相手に使えないのにどこ相手に使うの?マジでアメリカと軍事的に張り合いたいのかEU?
90年代か2000年代の始め頃にB52の威力をみたヨーロッパが自分たちもああいう爆撃機が欲しいと言ってた事がありました。