欧州関連

独メディア、ショルツ首相はノルド・ストリーム2に言及することなく首脳会談を切り抜けた

独メディアはショルツ首相とバイデン大統領の首脳会談について「肝心のノルド・ストリーム2には一言も言及することなく『約束します何とかします』で切り抜けた」と報じている。

参考:Duz-Offensive von Olaf und Joe gegen Putin
参考:Durch vermintes Gelände beim engsten Verbündeten

会見を行えば行うほど立場が悪くなるため、ショルツ首相は針のむしろに座らされた気分だろう

ショルツ首相と会談したバイデン大統領は7日、記者会見で「ロシアがウクライナを進行すればノルド・ストリーム2は終焉する」と強い言葉でロシアを牽制、ショルツ首相も「私達は完全に団結しており異なる措置を講じることはない」と語り米独の共同歩調が確認されたと報じられているが、ドイツ国内や米メディアは「ノルド・ストリーム2に言及することなく首脳会談をショルツ首相は切り抜けた」と受け止めており、ドイツへの不信感が高まり続けている。

出典:THE WHITE HOUSE

記者会見に参加したドイツ人記者は「ショルツ首相は何故ノルド・ストリーム2を停止させるとハッキリ明言しないのか?これをきちんとすれば米国からの信頼を取り戻せる思わないのか?」と質問したが、この質問にショルツ首相ではなくバイデン大統領が「ドイツは完全に信頼できる、完全に完全に徹底的に信頼できる」と答えてやり過ごしたため、独メディアのBildは「ショルツ首相が米国に譲歩したのは“すべての選択肢がテーブルの上にある”という表現を引っ込めただけで、肝心の“ノルド・ストリーム2”には一言も言及することなく『約束します何とかします』で首脳会談を切り抜けた」と報じている。

米メディアのCNNも「ショルツ首相は終始ノルド・ストリーム2という言葉を避け続け『ウクライナ侵攻が発生した際の制裁に協力する』と述べるに留まった」と報じており、ノルドストリーム2の主要幹部を務めるシュレーダー元首相が露国営ガス会社の取締役に就任、ウクライナへの武器供与拒否、エストニアが要請する旧ソ連製122mm榴弾砲のウクライナ輸出阻止、東欧諸国への追加部隊派遣への参加拒否などを上げて「ドイツは本当に信頼できる同盟国なのか?」と疑問の声を投げかけた。

出典:THE WHITE HOUSE

特に興味深いのは「ドイツに対する過剰な信頼をバイデン大統領がアピールしたことでドイツへの信頼が揺らいでいること示した」と独メディアのDIE WELTが報じている点だ。

連立政権の中核をなすドイツ社会民主党(SPD)や連邦議会でロシアへの同情を示す勢力=ロシアのオリガルヒ(旧ソ連崩壊後に形成された政治的影響力をもつ新興財閥)とビジネス上の繋がりがある政治家達はウクライナ問題に起因した制裁にノルド・ストリーム2が活用されるのに抵抗を示しており、ショルツ首相はバイデン大統領との会談にノルド・ストリーム2の話題を持ち込まないため全力を尽くしたが「ロシアがウクライナを侵攻すればノルド・ストリーム2は終焉する」とバイデン大統領が明言したためドイツは逃げ場が無くなってしまった。

ショルツ首相は「すべての選択肢がテーブルの上にある」という曖昧な表現を引っ込めることで辛うじて「自身がノルド・ストリーム2に言及しない」という譲歩を米国から引き出したが、バイデン大統領は会見で過剰だとひと目で理解できるほどドイツへの信頼を口にしたため世界中に「米国とドイツとの関係に問題がある」と印象づけられてしまい、CNNの番組に出演したショルツ首相はノルド・ストリーム2に言及しないことで司会者の意地悪な質問をやり過ごすもCNNに「ドイツがノルド・ストリーム2に関する説明を再び拒否した」と速報で報じられ、米国からの信頼を取り戻すというミッションは完全に失敗したと言っても良い。

しかもショルツ首相は訪米後、ウクライナとロシアを相次いで公式訪問するため「ノルド・ストリーム2に直接言及しない」というシーンが繰り返し世界中に流れることになる。

まぁ自業自得と言えばそれまでだが、会見を行えば行うほど立場が悪くなるため針のむしろに座らされた気分だろう。

関連記事:5時間以上もウクライナ問題を討議した露仏首脳会談、フランスの提案は助けになる
関連記事:ドイツのレッドラインはどこにあるのか?その答えを同盟国も敵も知らない

 

アイキャッチ画像の出典:THE WHITE HOUSE

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コメント

    •  
    • 2022年 2月 08日

    今回の件抜きでもアメリカが反対してたノルドストリーム2完成までこぎつけたのにオジャンになんてできるわけねーだろってのが本音ではあるんだろうなあ。

    26
    • 2022年 2月 08日

    >ウクライナとロシアを相次いで公式訪問するため
    このあとウクライナで嫌味言われて、ロシアでは元KGBな首相に睨まれるのか。
    で、国に帰ったら連立政権内の調整という激務が。。

    首相の立場にはちょっと同情する。

    12
      • 2022年 2月 08日

      元KGBな首相じゃなくて大統領でした、失礼

      3
    • 折口
    • 2022年 2月 08日

    ドイツ政府が親露姿勢をごまかす素振りすら見せないおかげで、日本の消極姿勢や内政上のゴタゴタで親露勢力が払拭できない問題が追求されないという。全然ありがたくないし日本こそ国際的な批判にさらされておくべきだと思いますが。

    本音を言えば、今度ばかりは米国の外交圧力で政治中枢に居座る元総理達を一喝してもらいたい…。四島だか二島だかに限っても、経済協力やEUとの外交的な橋渡し役を気取ったところでなんにもならなかったし(そもロシアは日本を主権国家と見なしていない)、恐らく期待値で言えば米軍や戦略ミサイルの道内配備で圧をかけてく方がまだ希望があると思うんですよ。自分の持っているものを一方的に貢いでいって無言でお返しを待つのは交渉ではなく朝貢です。

    32
      • STIH
      • 2022年 2月 08日

      あれを親露勢力と言い切れるとは、随分と威勢が良いな。
      核ミサイル持ってるだけでじゃなくて、単純な戦力も向こうが強いんだぞ。福祉だって全然状況が違うんだから、軍事に金だしゃ何とかなるような差じゃねえんだ。そりゃ向こうが弱体化するまでは、適当な距離感で応対するのが日本にとって最善だろ。
      親露勢力を粛清しましたー、親中勢力粛清しましたー、アメリカ万歳、て言ってアメリカがはしご外したらどうすんだ。そのために独自で外交をー、ていうんだったら、尚更おたくの言う親露勢力みたいなパイプが重要だろ。

      9
        • くらうん
        • 2022年 2月 08日

        パイプ役と見るか、国益に反する勢力と見るかは微妙なところだね。
        明らかに外部から金をもらってるとしか思えないようなのがいるのも事実。

        それは置いといて、軍事プレゼンスによる外交術はこの国の人間のほとんどが(官僚含め)アレルギーを持ってるしそもそもノウハウも知らないから、根本的な部分から少しずつ変えていかない限り土台無理な話でしょうね。

        8
          • STIH
          • 2022年 2月 09日

          軍事プレゼンスによる外交術にアレルギーって、実際できないんだから仕方がない。太平洋戦争で大暴れして無くした信用を取り戻すには、それを封印しなければならなかったわけなんだから。
          一方で今から軍事プレゼンスを高めるっていっても、米中露+南北朝鮮という世界屈指の筋肉質な国に囲まれてるんだから、ここから目立とうとしたらいくら金があっても足りないんじゃない?左翼っぽくて嫌なんだけど、実際軍事に頼らない外交をせざるえない気がする。
          よその国事情に首が突っ込める西欧て平和なんだなと思うわ。

          1
    • A
    • 2022年 2月 08日

    就任早々大変だね。
    かわいそうっちゃぁかわいそうだけれどノルド2は以前から問題視されていたね。

    • K
    • 2022年 2月 08日

    >この質問にショルツ首相ではなくバイデン大統領が「ドイツは完全に信頼できる、完全に完全に徹底的に信頼できる」と答えてやり過ごした

    「キミはこの質問には答えたくないだろ?ボクが代わりに答えておいてあげるよ!」
    バイデンおじいちゃんがエゲレスしぐさしとる…

    18
    • 匿名
    • 2022年 2月 08日

    世界の注目がウクライナに集まっている状況で、水面下で静かに進んでいる可能性がある軍事作戦は、中国による台湾侵攻ではないでしょうか。
    本気で侵略を行おうとする国は、わざわざ自軍の集結を公表して注目を集めるような事はしないでしょう。なので、ロシア軍のウクライナ国境集結はおそらく何らかの陽動なのでしょう。
    では真の狙いは何か? それは中国による台湾への侵攻ではないでしょうか。 軍事作戦を行うと決心した国は、それが事前にバレる事を避ける為に、前兆を見せずに突然侵攻を始めるはずです。おそらく中国とロシアは事前に相談をしており、台湾侵攻の陽動として、ウクライナ危機を盛大に盛り上げているのではないでしょうか?

    3
    • ザコ
    • 2022年 2月 08日

    「ロシアのガスプロム社がドイツのシュレーダー元首相を取締役に指名」ってニュースが先日ありましたがこれどんな影響があるんでしょうかね。
    受けるにせよ辞退するにせよどちらかから叩かれそうですが。

    5
    • DEEPBLUE
    • 2022年 2月 08日

    こういう時は(スターリンと組んでポーランド潰した)ヒトラーの息子って言われないんですねドイツ

    13
    • 匿名
    • 2022年 2月 08日

    何となく、Trust meな元首相を思い出した。
    状況とか、深刻度合いとかは、全く違うけど。

    6
    • 戦略眼
    • 2022年 2月 08日

    まあ、バルト海で錨を引き摺れば済む話。
    たまには、痛い目にあってもらいましょう。

    2
    • 慕華館
    • 2022年 2月 10日

    WW2でソ連軍に本土と首都でリアルヒャッハーされたのだから仕方ないですね(-_-;)
    首都だけでも10万人の女性が強●されたわけですし…

      • test
      • 2022年 2月 11日

      たまに聞くけど10万人ってソースあるのそれ?

      何かドイツの医者か誰かの記録があったらしいけど
      どうやって被害者数を精確にカウントしたのかがよく分からん

      レイプされたとかいう自己申告?

      1
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