ポーランドのブラスザック国防相は27日「エアバスD&S(仏部門Space Systems)から偵察衛星を2基購入することで合意し契約に署名した」と発表、この偵察衛星で取得できる画像の分解能は30cm級だと言及されている。
参考:Poland buys two spy satellites from Airbus
予算成立を待っている多くの国防関係者からすればポーランドの状況は羨ましいに違いない
ポーランドは昨年10月に軍のサイズを14万人→30万人(40万人規模に達する可能性も浮上)に拡張することを決定、偵察衛星導入は大規模な装備調達計画における「重要なピース」だと見られていたが、2022年中に契約締結(6.1億ドル/2027年までに打ち上げ予定)まで漕ぎ着けたため噂されていた装備調達の殆どに目処がついた格好だ。
調達先 | 種類 | 数量 | ステータス | |
米国 | 戦闘機 | F-35A | 32機 | 契約済 |
攻撃ヘリ | AH-64E V6バージョン | 96機 | 交渉中 | |
UCAV | MQ-9B | 不明 | 交渉中 | |
MQ-9A(MQ-9B導入までの繋ぎ)のリース | 4機 | 契約済 | ||
主力戦車 | M1A2/SEPv3 | 250輌 | 契約済 | |
装甲車輌 | クーガー | 300輌 | 契約済 | |
防空システム | パトリオット | 8セット | 契約済 | |
MLRS | HIMARS | 20輌 | 契約済 | |
500輌 | 交渉中 | |||
防空レーダー | LTAMDS | 不明 | 交渉中 | |
英国 | 短距離防空システム | CAMM | 不明 | 契約済 |
空対地ミサイル | ブリムストーン(駆逐戦車向け) | 不明 | 交渉中 | |
フリゲート | アローヘッド140 | 3隻 | 契約済 | |
フランス | ISR | 偵察衛星 | 2基 | 契約済 |
イタリア | 多用途ヘリ | AW149 | 36機 | 契約済 |
イスラエル | 地上シミュレーター | F-16C/D Block52+向け | 4基 | 契約済 |
韓国 | 主力戦車 | K2/K2PL | 計1,000輌 | 契約済 |
歩兵戦闘車 | レッドバック | 不明 | 交渉中 | |
自走砲 | K9A1/K9PL | 648輌 | 契約済 | |
M-29の後継機 | FA-50/FA-50PL | 48機 | 契約済 | |
トルコ | UCAV | TB2 | 24機 | 契約済 |
国内調達 | 掃海艇 | コルモラン型 | 3隻 | 契約済 |
歩兵戦闘車プログラム | Borsuk | 不明 | 開発中 | |
駆逐戦車プログラム | OttokarBrzoza | 不明 | 開発中 | |
砲兵システム | グラディウス | 契約済 |
ポーランド軍の調達需要で存在感を発揮しているのは米国と韓国で、これに食い込むため英国もSA-8の後継システム=ナレフ・プログラムにCAMMを提案、ポーランド側に「前例のない規模での技術移転」「CAMM製造へのポーランド産業界の参加」「独自にCAMMの海外輸出も容認」すると約束することで競合相手のIRIS-T/SLMやNASAMSを抑えて受注を獲得したが、この破格の条件提示はドイツやスペインと競合していたフリゲート艦受注への布石でもあり、英国は狙い通りアローヘッド140の受注獲得に成功した。
さらに興味深いはポーランド空軍が新たに調達するF-16C/D Block52+向けの地上シミュレーターで、JASSM-ERを導入する際にポーランド空軍のF-16C/DはMMC(マルチ・ミッション・コンピューター)やLink16を更新、F-35Aとの情報共有など戦場通信ネットーワークのコアとして機能するようになったため「実行できる航空戦術」が増加し、従来の地上シミュレーター(F-16C/D導入時のもの)では対応できなくなり2020年に新型シミュレーターの入札を開始。
あまり話題にならない分野だが、F-16向けの地上シミュレーターは米国が技術情報を導入国に解放している数少ない分野で、導入国の企業も積極的に開発(恐らくコアプログラムをLMから購入して自国向けにカスタマイズしているのではないかと思っている)しており、ポーランド空軍の入札には製造元のロッキード・マーティンなど計7社が応じてイスラエルのエルビット・システムズが受注している。
ポーランド空軍が調達する新型シミュレーターはF-16C/Dが獲得した新機能を完全にカバーし、共同出撃のシナリオでは4人(システム的には最大5人)のパイロットが同時に訓練可能で、導入するF-35Aの地上シミュレーターとも連動することができネットーワーク経由で国際的な共同訓練も実行できるらしい。
大分話が脱線したが多くの国はウクライナ侵攻後に軍事力強化に乗り出したため、2023年度予算が成立すると莫大の資金が防衛産業界に流れこむことになるが現状の供給量は限られているため「発注から納品まで長い時間(仮に増産体制に踏み切っても年単位のリードタイムが発生)がかかる」と予想されており、ウクライナ侵攻前の2021年に大規模な軍事力強化に乗り出したポーランドは他国に先駆けて「防衛産業界の製造能力」を押さえた形だ。
これは結果論なのでポーランドがウクライナ侵攻後を予知していた訳では無いが、予算成立を待っている多くの国防関係者からすれば「契約締結に必要な予算を確保しているポーランド軍の状況(防衛装備品の正式な契約には取引額の10%前後を支払う必要があるという話があり、残りは分割支払いが一般的なものの政府か金融機関の保証をつけなければならないらしい)」が羨ましい映っているだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Ministerstwo Obrony Narodowej
ポーランドは、そんなに金持ちなのか?
金持ちではないが、経済成長率は良いと予想されているらしい。
ひどい話ではあるが、ウクライナの戦火で流入した労働力が
ポーランドでの賃上げ上昇に対する圧力として働く可能性があり それにより
ポーランド国内労働需給逼迫を緩和し、インフレ昂進を防ぐのにも貢献すると考えられており
朝鮮戦争時の日本ではないが、経済成長が予想されているらしい。
本命は韓国からの技術移転と国内生産で、それらの輸出権利までなのか
これでサプライチェーンまあでポーランドで完結できれば、世界トップクラスの地上兵器輸出大国になれる
ポーランドがウクライナ侵攻後を予知していた訳では無いでしょうが、たぶんロシアの不穏な状況を察知して対応に乗り出したんだろうと思う。
WW2ではノンビリしていて痛い目を見ているから、真剣なんだろう。
こう聞くとF-2のは最新のやつになっているのか気になりますな。
元記事に27年までに打ち上げとあるので、既存衛星の引き渡しではなく衛星の製造から始めるのかな?と思います。これは早くも遅くもない、衛星の製造も含めたらまぁそんなもんかという感じですね。ESAは最近、中型ロケットソユーズが使えなくなったり小型個体ロケットVEGAが不調で事故調査や部品検証をやらなきゃいけないなどが重なったことで受注を捌ききれなくなる可能性が出てきているのですが、27年打ち上げならそれも関係ないでしょう。願わくばこの辺の欧州外縁国の打ち上げ需要が日本に流れて着て欲しいのですが、2月から始まるH3体制も遅延と防衛省案件の増加で予定みっちりですから、まぁ分かんないですね。