10日に招集されたNATO・ウクライナ評議会で「ロシア軍によるミサイル攻撃の激化」と「イラン製無人機と北朝鮮製弾道ミサイルの使用」を非難、NATO加盟国の多くは2024年に「数十億ユーロの追加能力提供」に関する計画をウクライナに說明した。
参考:NATO-Ukraine Council meets, Allies pledge further air defences
多くの加盟国が2024年に「数十億ユーロの追加能力提供」に関する計画をウクライナに說明
昨年7月に創設されたNATO・ウクライナ評議会が10日に招集され「ロシア軍によるミサイル攻撃の激化」と「イラン製無人機と北朝鮮製弾道ミサイルの使用」を非難、NATO加盟国はウクライナ防衛を強化する決意を再確認し、多くの加盟国が2024年に「数十億ユーロの追加能力提供」に関する計画をウクライナに說明した。
数十億ユーロの追加能力が何を意味しているのかは明かされていないが、NATO・ウクライナ評議会で話し合われた内容を踏まえると「防空システム」や「迎撃弾」の供給に関連している可能性が高く、パトリオットシステム、SAMP/T、IRIS-T SLM、IRIS-T SLS、ホークシステム、ASRAAMを使用した地上ベースのシステム、AIM-7が統合された旧ソ連製の防空システム、ゲパルト、SkyNexで使用する弾薬の追加供給を約束したのだろう。
因みにロシアのミサイル備蓄量や生産能力に関する確実な情報はないが、国防省情報総局(GUR)は2022年8月末「ロシア軍のミサイル備蓄量は侵攻前と比較して45%以下(Iskander-Mは20%以下)まで減っている」と、レズニコフ国防相は2022年10月「侵攻前と比較して1/3以下(1,844発→609発)に低下した」と明かし、ウクライナも西側諸国も「制裁の影響でロシア軍のミサイル備蓄は何れ尽きる」と繰り返し主張してきたが、ニューヨーク・タイムズ紙は11月に入ると「本当にミサイル備蓄が尽きるのか?」と疑問を投げかけた。
ロシア軍が2022年11月15日に100発以上のミサイル攻撃(Kh-101/Kh-555、Kalibr、Kh-59、Shahed-131/136)を仕掛け、この攻撃の主体が「備蓄量が急速に減少している」と主張していた巡航ミサイル(Kh-101/Kh-555とKalibrを合わせて77発以上)だったため、ニューヨーク・タイムズ紙はジェーンズの分析を引用して「ロシアはクリミア併合で西側諸国との関係悪化を経験したため、ウクライナ侵攻の数年前から精密誘導兵器の製造に必要なマイクロチップやコンポーネントの備蓄を行っていた可能性が非常に高く、制裁リスクを厭わない国家や民間組織を通じて必要な部品を入手し続けている」と指摘。
さらに「侵攻前からIskander、Kalibr、Kh-101/Kh-555などの大量生産を開始し、既にロシア経済は戦時体制に移行して3交代制のフル操業に入っているため我々の想像より多くの兵器が生産されている」と主張し、ロシア軍のミサイル備蓄が尽きるという見方に疑問を投げかけて注目を集めた。
レズニコフ国防相は2022年11月「ロシア軍のミサイル備蓄量」に加えて「2月23日以降に生産されたミサイルの数量」を明かし、この中で「ロシアが侵攻後の9ヶ月間でIskander-Mを48発、Kalibrを120発、Kh-101を120発、キンジャールを16発生産した」と主張、9ヶ月間で巡航ミサイルのKalibrやKh-101を120発づつ生産したのが「多いのか」「少ないのか」は平時の生産量が不明なため何とも言えないが、2022年に生産されたトマホークが154発だったことを踏まえると「多い」と言える。
GURは2023年1月「インフラ攻撃に使用されるKh-101を月30発、Kalibrを月15発~20発ほど生産できる」と発表、さらに2022年7月に使用が確認されていた「S-300の対地攻撃モード」による攻撃が増加、レズニコフ国防相も「対地攻撃モードで使用されるS-300は200km~220km先の目標に到達するためハルキウ、ムィコラーイウ、ヘルソン、ザポリージャを恐怖に陥れている」と明かし、S-300で使用する迎撃弾(5V55R)の備蓄量が2022年11月時点で8,000発から6,900発に減少。
GURは2023年5月になると「ロシアはKh-101を月35発、Kalibrを月25発、キンジャールを月2発、イスカンデルを月5発ほど生産しており、国際的な制裁にも関わらず必要なコンポーネントを入手して生産量を増やしている」と指摘、つまり制裁の影響でロシアのミサイル生産量が落ち込むことなく「増加(侵攻初期に比べて2倍以上)している」とウクライナ側も認めている。
2023年末なるとウクライナ軍は「2022年2月24日以降に発射されたShahed-131/136と各種ミサイルの総数」と「撃墜した数」を公表、S-300の迎撃弾を除く各種ミサイルの消耗量は3,311発で、侵攻当初に444発しか保有してないかったKh-101/555/55は1,360発も発射されており、ウクライナ側の推定値が正しいなら「ロシアは22ヶ月間で同ミサイルを916発(月平均41.6発)も生産した」と格好だ。
種類 | 兵器名 | 発射数 | 撃墜数 |
無人機 | Shahed-131/136 | 3,940機 | 3,095機 |
Lancet | 不明 | 不明 | |
KUB-BLA | 不明 | 不明 | |
計 | 3,940機 | 3,095機 | |
巡航ミサイル | Kh-101/555/55 | 1,360発 | 1,045発 |
Kalibr | 834発 | 397発 | |
Iskander-K | 154発 | 62発 | |
対艦ミサイル | Kh-22 | 不明 | 不明 |
K-300P | 不明 | 不明 | |
弾道ミサイル | Iskander-M | 約900発 | 不明 |
Tochka | 不明 | 不明 | |
S-300の対地攻撃モード | 約2,400発 | 不明 | |
S-400の対地攻撃モード | |||
キンジャール | 63発 | 25発 | |
計 | 5,711発 | 1,529発 |
因みにウクライナはロシア軍のミサイル備蓄数(12月18日時点)についてKh-101/Kh-555×441発、Iskander-M×198発、キンジャール×87発、Kh-22/Kh-32×150発、Iskander-k×98発、P-800×290発と予想しており、今後のミサイル攻撃をどれだけ防ぐことが出来るのかに注目したい。
関連記事:ロシア軍のミサイル兵器の備蓄量は侵攻前の45%以下、イスカンデルは20%以下
関連記事:ウクライナ国防相、ロシア軍が保有する精密誘導ミサイルの残数は609発
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※アイキャッチ画像の出典:DoD photo by Lisa Ferdinando
第二次大戦では4トン5トンも積める爆撃機を英米それぞれ千機規模の軍団で繰り返し爆撃していたのに比べればハラスメントみたいなものっすね
都市攻撃は大して戦局には寄与しないが、国民の生命と財産を守る民主主義国家である以上迎撃しない訳にはいかず、対空ミサイルの備蓄が削られるのはむず痒いな
>>第二次大戦では4トン5トンも積める爆撃機を英米それぞれ千機規模の軍団で繰り返し爆撃していたのに比べればハラスメントみたいなものっすね
第二次大戦の無誘導爆弾落とすだけの爆撃と比べて何の意味があるんだろう
イギリスもアメリカもそんな事はもうできねえし
イスラエルがやってるじゃん
アメリカは可能ですよ
今は戦闘機で第二次大戦時の爆撃機以上に搭載できます
F15Eで10トン超えますね
ベトナム戦争では第二次大戦以上に投下されましまね
比較にも意味ありますよ
第二次大戦の空襲にも及ばない程度の嫌がらせでは国を屈服させる事はできないって事ですね
初めからハズしまくってる分析に
意味があるんでしょうか。
コロナ時に湧いてきた
自称専門家にも言えますが。
分析や予想らしきものが外れても
反省も検証もしない、虚業の人たち。
専門家というより山師だな。
ウクライナ情報だとロシア脅威の生産力というほかない…
なぜロシアの生産能力を考えないで見積もっているんだろうか
英国なんて何度枯渇するといったことか
劣った東側の国が俺等抜きに兵器なんて作れるわけがない
という驕りがあったんでしょうね
北朝鮮のミサイル開発がEUにとって他人事ではないと認識してくれて良かったよ。今更なうえに、いつまでそれが続くかは知らんが。
今度のダボス会議でアメリカ側はウクライナ政府に具体的な戦争計画を提示するように要求してるみたいですね。ブルームバーグの飛ばし記事の可能性もありますが、米国家安全保障会議(NSC)もコメントを控えてますし、何かしらの回答を出してもらわないと議会を説得できない状況という事でしょう。
一つ前の記事の内容ではありますが、NATO加盟国全体で自国の防衛強化をしつつ、ウクライナ支援を継続するというのは矛盾はしていないと思いますが、ユーロ圏自体が経済的には景気後退が始まっている兆候が出ており、勇ましい発言とは裏腹にそこまでの余裕があるのかは些か疑問ではありますね。
>ユーロ圏自体が経済的には景気後退が始まっている兆候が出ており
出てませんね
そんな兆候見当たら無いので(むしろ順調)、世界経済に占める割合を言ってるんでしょうが、単に伸び代のある新興国の割合が増えてるだけっすね
シュナーベルECB理事 『ユーロ圏の景気後退が最悪期を脱したとしても、景気は厳しい見通し』
ECBデコス氏、『ユーロ圏プラス成長でなかっただろう-10~12月期』
直近の発言だけでも関係者から弱気発言が連発してますが?EU自体がアメリカに比べて経済的な基盤が脆弱なのは覆しようがない事実です。
EU経済圏の中核であるドイツの経済指標も強弱まちまちですし、景気後退とは言わなくても順調と評価するのは流石に欧州に対して甘い見立てだと思います。
>ユーロ圏自体が経済的には景気後退が始まっている兆候が出ており、勇ましい発言とは裏腹にそこまでの余裕があるのか
対ロ制裁の強化や対中制裁の強化の激しい反動に米製兵器をFMSで買って軍事強化、おまけに対中戦線に参加しろ!さらにはグローバルサウスがドルを嫌うので代わりに米国債を買え!ぐらいのところで回ってますからねえ。チョムスキーは”ならず者国家と言ったらアメリカでしょ”旨を書いてましたが、米国の”グランドチェスボード”路線に鼻面引き回され、巨大市場とレアマテリアルを含む資源のリーズナブルな調達が危うくなりハイテク産業も含め今も将来も暗い。EUは中国に大代表団を送って土下座、エアバス他の大量購入を得ましたが、米国に逆らえずに中国をしきりに挑発していますから報復を食いそうです。さらには広くグローバルサウスの目が厳しく”ドルやユーロじゃ売らないよ。うちの国のお金か、金塊、人民元やルーブル、ルピーなら売るよ”で、ドルやユーロの将来は弱含み。米国がなぜとんでもなく経済と軍事と政治力が強いかと言えば、源泉は「安ッすい紙切れ」を価値あるお金として押し付けられるから。他の国は商売で稼いだ希少な外貨で輸入するところ、米国だけが10セントで刷った「100ドル札と称する紙切れ」で百ドルの価値がある商品やサービスを輸入できる。百ドル分の商品は米国内を経巡ると利潤が乗っていって150ドル、200ドルに膨らむ。一方、外国に支払われた100ドル札は世界を経巡って米国に戻り、米国債などに投資されます。100ドル札は様々な公共調達や公共サービスのために使われ利潤が乗っていって150ドル、200ドルと膨らんでいく。つまり、10セントが言って来いで何百ドル、何千倍にも膨らむという錬金術こそが世界の軍事費の半分近くを占める米国の軍事力と政治力のタネなのです。そして財政と貿易の莫大な赤字にもかかわらず、野放図な国家運営ができている秘密でもあります。こうしたインチキはソ連では東側に対してさえ通用しさせられなかったのでソ連圏は崩壊したのです。逆に言えば、「米国にドルでは売らないよ。ドルを第3国間の決済でも使いません」と世界の85%を占めるグローバルサウスがぐいぐい動けば、風船のように膨らんだ米国の力は維持できず、塩を掛けられたナメクジのように縮んで力を失ってしまいます。
ドルという紙切れがグローバルサウスに通用しなくなったら、米国は欧日らに”お前らが現地通貨や金塊で買って、俺にドルで転売しろ”と言ってババを押し付けるんだろう。米国から買うものといったら売りつけられる兵器とITソフトとハードくらいしかない。
米国が力に奢って、国際ドル決済スイフトシステムを私し外国のドルを差し押さえたり勝手制裁※に使ったために自らドルの信用を棄損してしまった。※国際法上、経済制裁はWTOルールに則るか安保理決議が必要。米国の制裁はWTOルールに反しているし第3国制裁までやってるし、安保理決議もない。まさにrule(俺様支配)に基づく国際秩序そのもので「最大のならず者国家」の称号にふさわしい。
米帝の自爆・自滅自体は他国の主権で仕方ないのだろうが、属国国民として破綻に引きずり込むのは勘弁してほしいんだけどなあ。
毎度のことながらもうちょっと短くまとまりません?
長い割に言ってることの大部分がその辺の経済系自己啓発書の丸写しみたいなことだし。
他の記事のコメントの話で大変申し訳ないのですが、ウクライナがS-300の対地モードでポーランドを攻撃したという話は何処をソースとしたものでしょうか?
ご返信いただけると幸いです。
長い
情報をちゃんと消化して自分のものにして無いと、結局自分でも理解なんて出来ていないので「要点をまとめて簡素に説明する」事が出来ずにダラダラとした長い引き写しみたいな文しか書けない、という典型ですね。
NATO全体で2024年で数十億ユーロでしょう?
(記事ではNATOの主要国各国で数十億ユーロずつ約束したとも読めるけど、元の英文的にはNATO全体な気がする)
そこまで勇ましい額ではないと思いますけどね。
アメリカの支援が止まってる中、むしろそれで足りるのか?と思ってしまいました。
別件ではあるけどニューズウィークに「実はほとんど機能していない-ウクライナ供与の独戦車-レオパルト2-に衝撃の事実が発覚」という記事が出てますね
先日、ドイツの企業がウクライナに整備拠点を作るというニュースがありましたが、こういう足元を固める協力も進めないと片手落ちになりそう
(でもアメリカから供与され米の整備をうけれないはずのブラッドレーはまだ動き続けてるから、この件はバッドケースの切り抜き&誇張のような気はします)
ブラッドレーは供与数が多いので
残ってるだけだと思いますよ。
6月に南部の地雷原で大量に破壊されましたが
そのあと追加供与もしてましたし。
レオパルト2は元々20台もなかったA6は
最前線に出してたので、ほぼ全滅。
その後、ザルジニが戦車を引っ込めて
歩兵の人海戦術に切り替えたので
A4型はまだ40台くらいは残ってるはず。
前に出せば損耗していくと思いますが。
ブラッドレーは良くも悪くも被撃破数が多いので、ニコイチ用の部品取り車体に事欠かないからではないでしょうか。
ちょっと前にブラッドレーの墓場のリーク映像が出てましたが、なかなか凄惨なものがありましたね。「ブラッドレーは回収して修理すれば何度も使える!」と宣伝されていたのが、実態は「撃破された車体はかなりの確率で使い物にならないか、残ってる使用可能な部分だけ抜かれてスクラップになる」というのが残酷な現実でした。
「ブラッドレーは回収して修理すれば何度も使える!」という宣伝を聞いたことはないです
ブラッドレー含む西側装甲車は乗員の生存性が高いとは何度も聞きましたが
ウクライナ軍が、防空ミサイルを今のペースで消費してれば、既に保有している分の消費は見えてきます。
停戦後を考えれば、ウクライナ軍が自国の安全保障のために、貴重な兵器だったんですけどね…。
ウクライナは、戦後ウクライナ自身の軍備がポーランド・ハンガリーなどの隣国からも警戒される立場ですから(大陸国の隣国外交はそんなものです)、消費した分の喜捨は分からないわけです…。
ロシアの兵器ストック・戦時生産(大国の全面戦争)は、物量が凄まじいですね。
どういう終わり方になるかわからないけど、ウクライナ側も不要になるから供与された兵器の返還という流れになるはず
でも供与した国は補填に西側の新式の受けとってたりでもめて、結局民間の補修会社(レオ1を大量保有してたベルギーの会社みたいな存在)が総ざらいして終わりそう
たしかに仰る通りですね。
ウクライナがロシアの脅威を主張して(安全の担保として)、早期停戦後も供与された武器を保管していたと考えていました。
個人の興味なのですが、戦後に武器の扱いをどうするのか(どういった約束があるのか)、少し気になりました。
今の流れだとウクライナは
降伏に近い条件を飲まされます
軍は武装解除されて
供与兵器もロシア軍が接収すると思いますよ
自分も、ウクライナが追い込まれれば追い込まれるほど、降伏に近い条件を懸念しています。
国境の非武装地帯・武器の射程制限・沿ドニエストル共和国への自由通行権・ロシア系住民の権利保護などが戦況により入ってくると考えています。
減るか増えるか論は実はあんまり意味がない話だったりします。
増産してるんだから在庫が0になってもその分は打てるんですよ。それだけの話ですね。
しかし、意味合い的には「本来ならば大量に在庫が高まる筈だった」ものが「在庫を減らしてでも使ってる」という話にもなります。
従って、ウクライナに落ちる数は相変わらずだけども、将来的にロシアがその先で使える数が目減りする事に違いはありません。
従って、在庫に与える影響は軽視出来ない話になる訳です。本来なら二倍三倍と在庫を積み重ねなければ欧州とは遣り合えません。
そもそも、言ってはなんですが…ウクライナ程度の段階で大幅に減らしてて良いものではなかった筈なんですよね。その面ではもう完全に計画が狂ってる。しかも、これだけ使っていて大きく捗った話でもない。これから何千発無駄撃ちする事になることやら。