欧州関連

トルコ、フィンランドやスウェーデンにテロ容疑者33人の引き渡しを要請

トルコのボスダグ法務相は3ヶ国の合意文書に基づき「以前からフィンランドやスウェーデンに要請していたテロ容疑者33人の引き渡し実行を求める」と述べて注目を集めている。

参考:Adalet Bakanı Bozdağ: Finlandiya’da 6 PKK’lı, 6 FETÖ’cü, İsveç’te 10 FETÖ’cü, 11 PKK’lının dosyaları bekliyor
参考:Turkey calls on Sweden to extradite 33 ‘terror suspects’
参考:Neuvottelu­tulos oli Suomen voitto, mutta Turkki voi vielä haastaa tulkinnat sopimuksesta – Näin tutkijat arvioivat ratkaisua

果たしてフィンランドのスウェーデンのNATO加盟手続きは滞りなく進むのか、再び話が拗れて政治問題化するのか

トルコ、フィンランド、スウェーデンの首脳は28日にNATO首脳会議が開催されるマドリードで協議を行い、フィンランドとスウェーデンはクルディスタン労働者党(PKK)への支援禁止、国内でPKKが資金調達や組織の拡張活動を行うのを禁止、PKKを含むテロ組織やネットワークの活動阻止、トルコに対する禁輸措置を解除することに同意、逆にトルコは両国のNATO加盟を支持することで合意した。

出典:Public domain

この結果を受けてバイデン大統領はエルドアン大統領に「フィンランドとスウェーデンのNATO加盟を支持してくれたことに感謝したい」と述べ、国防総省も「トルコの戦闘機近代化を支持する、これはNATOの安全保障ひいては米国の安全保障に貢献する」と発表、事前に米下院外交委員会が「もしトルコがフィンランドやスウェーデンのNATO加盟をブロックすればF-16V売却を認めない」と発言したことを合わせるとトルコへのF-16V売却は高い確率で実行に移されるだろう。

ただ3ヶ国の合意文書には「トルコが指定したテロ容疑者の強制送還または引き渡し要求に迅速かつ徹底的に対処する」という文言が盛り込まれていると指摘があり、トルコのボスダグ法務相は早速「以前から両国に要請していたクルディスタン労働者党(PKK)とフェトフッラー・ギュレン氏が率いるグループ(FETÖ)のメンバー33人の引き渡し実行を求める」と述べて注目を集めている。

出典:Kurdishstruggle / CC BY 2.0

ボスダグ法務相は「合意文書に署名したからといって両国の加盟プロセスが終了した訳では無い」と語り、この合意文書には両国が合意内容を守っているかどうかを監視する委員会の設置が義務付けられているので「トルコは両国の対応を注視している」と述べ、この合意によってテロ容疑者の引き渡しに新たな措置が取られるのかという記者の質問には「合意の枠組み内で約束を果たすよう両国に求めていく」と答えた。

ボスダグ法務相は「フィンランドには12人(PKK6人+FETÖ6人)、スウェーデンには21人(PKK11人+FETÖ10人)の容疑者引き渡しを再度要請する」と明かしており、PKK関係者の引き渡しについては合意文書に含まれておらず「フィンランドは従来の立場を維持している」という以前の報道とは大きく食い違う。

出典:Ministerio de Relaciones Exteriores / CC BY-SA 2.0

フィンランドメディアは「3ヶ国が署名した合意文書には解釈の余地が残さているのでフィンランドの観点からは何も変わらないが、これをトルコがどのように解釈するかはトルコの問題だ。トルコは合意内容を政治的に利用して解釈の異議を唱えることも可能だ」と述べているので、つまり合意文書は立場の違いから3ヶ国が「都合よく解釈できる余地を意図的に残したもの」という意味だ。

果たしてフィンランドのスウェーデンのNATO加盟手続きは滞りなく進むのか、再び話が拗れて政治問題化するのか、どちらかと言うと後者のような気がしてならない。

関連記事:トルコ、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟支持を確約

 

※アイキャッチ画像の出典:NATO

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コメント

    • 通りすがり
    • 2022年 6月 30日

    2国合わせてたかが30数人のために、国の安全保障犠牲にするとは思えないけどな

    4
      • 名無し
      • 2022年 6月 30日

      >2国合わせてたかが30数人のために

      一発目の完璧な前例作成、という認識が正しいのでは。

      12
      • たけやぶやけた
      • 2022年 6月 30日

      人権の擁護を主眼とする国家では違った価値観を持っているとみる必要があるのでは

      7
    • 横田
    • 2022年 6月 30日

    この33人の容疑者が本当にテロ事件の容疑者として適当なのかわからないとなんとも…

    12
      • 幽霊
      • 2022年 6月 30日

      実際にテロ活動を行なっていなくてもテロ組織に所属していた時点でテロリスト扱いですからね。
      今回の引き渡し要求の人が本当に所属していたかどうかの確認は必要でしょうが、所属していたならテロリスト扱いされても仕方ないと思います。

      20
    • 名無しさん
    • 2022年 6月 30日

    この件ではトルコが中々クレバーな立ち回りしてるな

    10
      • バクー油田
      • 2022年 7月 01日

      昨日の時点で「覚書」に署名とありましたので、こんなんでトルコが合意した事が寧ろ意外でした。
      というのは前の記事のコメント欄にも書きましたが、PKKというのはマルクス・レーニン主義のクルド人国家を作る事を当初目指しており、ソ連の支援を受けてたテロ組織ですからね。
      こんなん、今でもロシアとの関係が深いはずの組織ですので、ロシアの息のかかったグループがトルコからの独立を目指していたという事は、今現在ウクライナで現実に起こっているクリミアやドンパス地方の「独立→ロシア連邦加盟」のスキーム上にある動きです。
      覚書といえば、何ら守られなかったブタペスト覚書の前例があります。
      だからトルコにとってはロシアの息のかかった毒牙の組織に関するこの二か国との約束事が「覚書」レベルでOKになった事自体が外野の私からしたら意外な感じしてたので
      こうやってきちんと結果も求めるセットの動きのこのニュースの方がそらそうやろうと納得性がありますね。
      戦後の日本外交であればこれで成果出たー、友愛の覚書とか言いながら終わって裏切られるのがオチですし、
      日本以外にウクライナもブタペスト覚書を署名してしまってますし、エルドアンともあろう人が脇が甘い判断をしたのか、それとも外野の私には分からない「覚書でも裏でちゃんと担保されている仕掛け」があるのかと思ってました。

      5
        • Kenny
        • 2022年 7月 01日

        PKKが現在、最も関係が深い国は何とアメリカなんですよ(PKK/YPGとして)
        シリア政府軍との微妙な関係を考えると、ロシアとは友好的とは言えない。

        3
      • せい
      • 2022年 7月 01日

      それだけ事態が逼迫してるって事ですかねぇ。

    • 名無し2
    • 2022年 6月 30日

    >PKK関係者の引き渡しについては合意文書に含まれておらず
    これは…合意ではなく合意()だった可能性も

    2
    • 黒丸
    • 2022年 6月 30日

    今までPKK安住の地だったスウェーデンとフィンランドから、彼らを素早く追い出さないと
    時間を与えて組織や資産を他国に移転されたら、せっかくのトルコの好機が水の泡になるから
    トルコはここから矢継ぎ早に攻勢をかけてくるんじゃないかな

    4
    • 匿名
    • 2022年 6月 30日

    こういう前例が出来ると、いずれロシアから出されるであろう「民間人に非人道行為を行ったネオナチ組織のアゾフ大隊を差し出せ!」という要求にも応える必要が出てくるでしょうね

    3
    • WSO
    • 2022年 6月 30日

    北欧二か国はなんでもどうでも加盟しちまえばこっちのもんだ!あとは合意なんてバックレちまえばええねん!て…

    早速トルコ喉首握って締めにきましたよ?どうすんねん

    7
    • エア
    • 2022年 6月 30日

    実行犯なら引き渡しも仕方ないですが
    それ以外も引き渡すのは難しいのでは

    第三国に亡命させて
    今後は新たに受け入れないという約束をするところが落としどころになりそう

    ただエルドアンの考えはいまいち読めないので・・・

    3
    • Abc
    • 2022年 6月 30日

    普通に証拠調べをしたり、弁護士付けて弁明の機会を与えたりしてたら、決定が出るまでにそれなりの時間はかかるだろう
    スウェーデンとフィンランドがちゃんとそこまでやるか、それともNATO加盟を急いでトルコに言われるがままにチャチャっと引き渡すか
    前者だとトルコが再びゴネ始めて新たな要求をしてきそう

    2
    • 浅見真規
    • 2022年 6月 30日

    ファインランドはロシアと地続きなのでNATO加盟の必要性が非常に高いですが、スウェーデンは地続きではないのでフィンランドほどにはNATO加盟の必要性が高くないので、フィンランドがトルコから引き渡し要請されてる容疑者らが、そこを理解してスウェーデンに逃亡し、フィンランド政府は容疑者らを逮捕して引き渡そうとしたけどスウェーデンに逃げられましたとトルコに報告しトルコもしぶしぶフィンランドのNATO加盟を認め、スウェーデンのみ加盟拒否という線で落ち着くかもしれません。

    4
    •     
    • 2022年 7月 01日

    世界の常識の一つ
    「アメリカ大統領に嘘をついてはいけない」
    これを破ると大変な事になる
    イスラエルもこれは必ず守る
    破ったアラファトさんはもう…

    バイデンはエルドアンとの電話会談で加盟支持の確約を取り付けているので流石に覆せない
    バイデン「とりあえず加盟支持しろや。それをしないなら他の話も無しな」
    NATO加盟は覆らない、覆せない

    1
      • 名無し
      • 2022年 7月 02日

      仲介した両者が共に破った場合、どうなるのだろう?
      しかも両者が互いにその行為を「相手の責任」と擦り付けあった場合や、なし崩しに合意が破られた場合とか。

    •        
    • 2022年 7月 01日

    条文解釈の他に、人道的見地から引き渡せないとか超法規措置とればいいのよ
    トルコもゴネるのは形だけの出来レースよ

    1
    • 無無
    • 2022年 7月 01日

    中国がダライ・ラマ信者や法輪功はテロリストだから引き渡せって言い出したら、日本政府が従うか?よくよくトルコのことも調べるといい、なんでクルド問題が起きているのか、そこね

    2
      • 匿名
      • 2022年 7月 02日

      >中国がダライ・ラマ信者や法輪功はテロリストだから引き渡せ

      第三国もテロリスト認定してたっけ?
      違うのなら、例として不適切かと。

      1
        • Ttt
        • 2022年 7月 02日

        トルコはギュレン運動のメンバーの引き渡しを要求してるが、アメリカもEUもギュレン運動をテロ組織とは認定してない
        (トルコはギュレン運動が2016年のクーデター未遂事件の黒幕だと主張していて、アメリカ滞在中の組織創設者ギュレンの引き渡しを求めたが、アメリカは充分な証拠がないとして拒否している)

        1
          • 匿名
          • 2022年 7月 02日

          アメリカだけでなく第三者のEUも「テロ組織とは認定してない」状態で、かつ、アメリカが引き渡しを拒否している事例と。

          「ダライ・ラマ信者や法輪功」の例は、こちらと比較した方が良さそうですね。
          PKKの事例に持って来るのは違う印象です。

          1
    • ネコ歩き
    • 2022年 7月 01日

    トルコが指名する引渡し対象者が両国でどういう立場かにより対応は変わるかもですね。
    難民申請中の立場なら、手配中のテロ組織構成員であることを理由に申請を拒否し強制送還を実施することに問題はない。この場合は合意内容に一致し他の解釈はあり得ません。フィンランドとスウェーデンの意図するところはこれかなと。
    難民として受け入れ済或いは国籍を取得済の場合は身分の剥奪が必要なわけで、不可能ではないが特に後者は面倒な手続きを伴いそうです。
    根本的に解決するには、トルコ-フィンランド及びトルコ-スウェーデン或いは三国間の犯罪者引渡し条約締結が必要と思われます。トルコ政府は解決を急がないとのことでしたから、今後その方向で協議が進むかもしれません。

    2
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