欧州関連

SAAB、スウェーデンから次世代戦闘機システムの概念研究を受注

SAABは22日「スウェーデン軍国防資材局から次世代戦闘機システムの概念研究を受注した」と発表したが、これらの取り組みは「次世代機開発」ではなく「調達方針を決めるための研究開発」で、グリペンの後継機に関する方針が決まるのは2031年頃だ。

参考:Saab receives order for Swedish future fighter concept studies

スウェーデンは独自の理論とスケジュールに基づいた次世代機構想を練り上げる可能性が高い

スウェーデンと英国は2019年7月「両国の要求を満たす新しい概念の開発」と「戦闘機に関する共同研究」を行うことで合意、当時「テンペスト・プログラムにスウェーデンが参加した」と報道され大きな注目を集めたが、スウェーデンは開発を主導するチーム・テンペストに参加せず「サーブが独自にBAEと協力を行うという範囲での関与」に留まり、英国、日本、イタリアの3ヶ国が立ち上げた次世代戦闘機を開発するための枠組み=Global Combat Air Program=GCAPへの参加にも否定的な立場だ。

出典:Team Tempest

日本とスウェーデンが締結した防衛装備品・技術移転協定にはGCAP協力に関する内容が含まれており「最終的にスウェーデンがGCAPに参加するかもしれない」という噂があるものの、パリ航空ショーに参加したスウェーデン国防装備庁のラース・ヘルムリッヒ氏は「我々が次世代機を必要する時期は他国と異なる」「いち早く次世代機計画に着手したのはより良い状態で決定を下すためだ」と、ウィクマン空軍司令官も「我々が第6世代機について協力している意図は他国と異なる」「現時点での取り組みは『調達プログラム』ではなく『事実確認プログラム』だ」と言及。

スウェーデン関係者はマドリード会議でも「我々は1年前に英国やイタリアとの協力=テンペスト・プログラムから手を引いた」「我々の調達方針が決まるのは2031年だ」「現在の選択肢は『独自開発』『共同開発』『完成品を購入』の3つだが何も決まっていない」「方針決定に必要な情報を提供するため次世代機のコンセプトを2023年から2025年までに、関連技術を2026年から2030年までに開発し、この中で運用分析、システムコンセプト、デモンストレーターなどに取り組み、デモンストレーターの開発計画は2026年開始を予定している」と明かしていた。

出典:Saab

SAABも22日「スウェーデン軍国防資材局から次世代戦闘機システムの概念研究を受注した」「これはSystem of Systemsの観点に立った有人及び無人ソリューションの概念研究、技術開発、実証実験が含まれ、SAABは軍、各研究機関、産業界のパートナーと緊密に協力していく」「我々はグリペンEとGlobalEyeを開発したため、次世代戦闘機システムのコンセプトを前進させる高度な技術とエンジニアリングのノウハウを持っている」と発表。

スウェーデンの次世代機構想が何処に着地するか今のところ不明だが、独自の理論とスケジュールに基づいた次世代機構想を練り上げる可能性が高く、仮に共同開発を選択してもGCAPやFCASとは開発時期が異なるため、グリペンE導入で協力を深化させているブラジルが協力相手に浮上するかもしれない。

関連記事:スウェーデンの次期戦闘機問題、グリペンの後継機調達は2031年に決定
関連記事:スウェーデン、今すぐ欧州主導の第6世代機開発に参加する必要性はない
関連記事:スウェーデン空軍、次世代戦闘機の戦略立案を11月まで終える

 

※アイキャッチ画像の出典:SAAB

F-35Aを悩ませてきたGAU-22/A、遂に25mm機関砲が効果的になる前のページ

日米はT-4後継機を共同開発する方向で調整、自衛隊だけでなく米軍も採用?次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    ウクライナ大統領府のアレストビッチ顧問、ロシア側のエージェントと非難され辞任

    ウクライナ大統領府のオレクシー・アレストビッチ顧問は「ウクライナ軍が撃…

  2. 欧州関連

    ウクライナ外相、我々をロシアの付属物として見る3つの国が見解を改めればNATO加盟は実現する

    ウクライナのクレバ外相は「我々をロシアの付属物として見る3つのNATO…

  3. 欧州関連

    北朝鮮の猛反発も影響? 空母クイーン・エリザベスの韓国訪問中止はデルタ型の感染拡大が原因

    韓国国内の新型コロナウイルス感染状況や北朝鮮の反発を理由に「英海軍は空…

  4. 欧州関連

    開発を進めている無人戦闘機の出来次第? テンペストの調達数に関する決定は2024年末

    タイフーンの後継機として開発を進めている第6世代戦闘機「テンペスト」は…

  5. 欧州関連

    英空軍、機体寿命を半分以上残したタイフーン×30機を2025年までに退役

    英国は6,000飛行時間に設定されている機体寿命を半分以上残したタイフ…

  6. 欧州関連

    英海軍、就役した直後の新鋭艦がエンジントラブルでダウン

    英メディアは14日、就役したばかりの英海軍の艦艇がエンジントラブルでダ…

コメント

    •  
    • 2024年 3月 23日

    ブラジル、インド、南アフリカあたりがこの計画に参加してGCAPやFCASより成功した戦闘機になったりして

    6
      • 名無し
      • 2024年 3月 23日

      むしろ共同開発「しない」ほうが、早く安く強く開発できるんじゃないとか思ったりも。。。

      37
        • 774rr
        • 2024年 3月 23日

        世界で1番お金と技術を持っているだろうアメリカ様がF35では国際共同開発してるんよね
        早く安くは出来るかもしれんけど 強くは無理そう

        6
          • jimama
          • 2024年 3月 23日

          そのF35、いくらスペックやシミュ上で強くても未だに問題頻出の惨状見てるとなあ
          それに数が揃わんとどうしようもないし

          19
            • hoge
            • 2024年 3月 23日

            F-35とF-22以外は「現在の防空システム相手に生き残れない」という重大な欠陥があるので、そもそも選択肢にならない。

            11
          •  さ
          • 2024年 3月 23日

          幾ら強かろうが、必要な時に必要な数が間に合わなければ、絵に描いた餅でしかないわけで

          9
    • 匿名希望係
    • 2024年 3月 23日

    スウェーデンは大型にする場合はインフラ更新の覚悟もいるんだけど

    ステルス機で大なり小なり拡張がいるからそのあたりの覚悟完了しているのかもな。

    1
      • バーナーキング
      • 2024年 3月 23日

      スウェーデンの場合は「インフラが貧弱」な訳じゃなくて「インフラに打撃を受けた状況での運用が前提になってる」ので、ステルス化しても格納時の翼幅と重量はビゲン未満、全高はグリペン以下くらいの線は譲れないんじゃないかなぁ。

      16
        • 匿名希望係
        • 2024年 3月 23日

        ステルス機って仕様で考えるとデブルから
        横幅だけじゃあすまなそうなんだよね。そして重量はどうにみもごまかせないし
        ステルスを採用しない可能性すらあるな

        4
          • まいく
          • 2024年 3月 23日

          ステルス機って仕様で考えるとデブルから

          体型的に俺はステルス機だった…?
          道理でみんなが飲み会する時や旅行行く時も俺はほとんど誘われなかったのか
          ステルス性能をもってたからみんな俺に気づきにくかったんだな
          絶対そうだよ…

          28
            • 匿名
            • 2024年 3月 25日

            きっと、いつか良い事もあるさ…😭
            気を落とさず生きていけよ😉✨👍

            1
            • チョモランマ春巻き
            • 2024年 3月 27日

            エモノを隠さない「ビーストモード」にすれば、みんな気付いてくれるよ。
            気付いた後の反応は期待通りではないだろうが。

            1
          • バーナーキング
          • 2024年 3月 23日

          「デブる」要素はウェポンベイくらいだし翼幅とは必ずしも関係しない気がします。
          RAM塗装等と合わせて「重くなる」事で翼面積、翼幅を大きくする必要が出る事はあるとは思いますが、グリペンは今時かなりアルミ率高い機体だから軽量化の余地はありますし
          ステルス丸ごと諦めなくてもウェポンベイだけ無くしちゃうとか小さくする(ミーティア×2くらい)のもありなんじゃないでしょうか。

          3
            • トーリスガーリン
            • 2024年 3月 23日

            航続距離を求めると機内タンク容量でデブりますね
            F-35がわがままボデーなのはざっくりいうと兵装ベイに加えて機外にドロップタンク2本丸ごと機内に抱え込んでるからですし
            そういう意味では航続距離をそれほど求めない短距離小型の軽ステルス機というのはまだ存在しないタイプになるのかな?

            5
              • バーナーキング
              • 2024年 3月 23日

              スウェーデンの次世代機構想についての話なので「航続距離を求めるとデブる」と言われたら「求めないんじゃないですかね?」と言う回答になります。
              ウクライナのゴタゴタでスウェーデンのロシア観とドクトリンが劇的に変わったのでもなければ、スウェーデンの優先度としては 航続距離<ステルス<<<<<<<<<制空権を取られた環境下でのゲリラ的運用性 だろうと思ってるので。

              3
              • pil
              • 2024年 3月 23日

              たしかにタンクを削って効率化したステルス機は、基地も近い内陸部での防衛戦では有効かもしれませんね。ウクライナ戦争でもロシアの近距離滑空弾に苦しめられているという話も多いので、それを近づけなくさせる抑止力になりそうです。
              ステルス機はアメリカ、中国、ロシアのような、グローバルサウス側から見れば「面倒なヤツら」と思われがちな国の独壇場となっているので、安価で使い勝手の良いステルス機がまだマシ(?)なスウェーデンから買えるなら一考の価値はある気がします。

              ただ「どんな戦略で戦うか」という政治的な面も含む一番大事な点は本当に謎です。ロシアの継戦能力を見ると、「敵基地や工場を潰すために敵地へ潜入する必要があるか」や「ウクライナレベルの激烈な陸上戦は他でも起こるのか(考慮する価値はあるのか)」、「ロシア本国が実戦投入を渋るステルス機を他の国が侵攻に使うのか」など、機体性能を大きく左右しかねない要件に結論が出ていないように感じます。

              6
          • Whiskey Dick
          • 2024年 3月 23日

          戦闘機の使い方として空中戦と対地・対船舶攻撃がある。空中戦は自国領空若しくはその付近で発生しやすい「防御的」な任務です。一方、対地・対船舶攻撃は敵地若しくは自国領海外で行う「攻撃的」な任務です。
          スウェーデンのグリペンは小型故に短距離離着陸が可能だが航続距離が短く、「自国のインフラが破壊された状況」でも使える「防御的」な機体です。さて自国領空内の防空は地対空ミサイルでも可能であり、対船舶攻撃は地上配備型のミサイルでも可能です。地上配備型の対空・対船舶兵器は運用コストが安く、遮蔽物があれば身を隠すことも容易です。しかし領土全てをカバーする数量を配備するのは難しく、射程を伸ばすことでカバーしようとすれば地形や水平線による探知の限界が生じる。
          アメリカ海軍ではE2やF/A18で水平線外の目標を探知し、データリンクによって長射程のスタンダードミサイルの照準を可能とするNIFA-CAを採用している。この方法を使えば機体に自前の兵器を積まなくても攻撃可能になる。スウェーデンが望む小型かつステルス性を備える(かなり矛盾した)戦闘機を実現するのなら、機体自らの装備は(ステルスモードでは)自衛用AAMのみとして、「高みの見物」で敵を探知して長射程SAM若しくはSSMに攻撃を任せるセンサー的役割になるかもしれない。

          7
            • Whiskey Dick
            • 2024年 3月 23日

            修正:NIFA-CA → NIFC-CA

            長波長のレーダーを使えばステルス機の探知がしやすいらしく、アメリカ海軍は空軍と比べあまりF35に執着していない模様。長波長レーダーの弱点としてはレーダーの寸法が大きくなる、ミサイルを誘導するほどの解像度が得られないことだ。解決方法としては遠距離(発射母体のレーダー)は長波長、近距離(ミサイルの終端誘導)では短波長電波を用いるデュアルバンド利用や、長波長レーダーと赤外線探知を併用する方法が考えられる。

            1
            • バーナーキング
            • 2024年 3月 23日

            「かなり矛盾した」含めて概ね同意です。
            NGADとは真逆のベクトルで「戦闘機と呼んでいいのか怪しい機体」になる可能性もあるかと思います。

            5
    • 765
    • 2024年 3月 23日

    第5世代戦闘機が従来世代の戦闘機と比較して性能が隔絶しているっていまいち理解されて無いよね
    4.5Gen vs 5Gen戦闘機が空対空戦闘したら、ドッグファイトからスタートとかでも無い限り、AWACSが居てもイジメみたいな戦闘になるんだぞ

    5
    • トーリスガーリン
    • 2024年 3月 23日

    色々思うところはあるとしても、SAABが作る第5世代(?)戦闘機、見てみたい、見てみたくない?

    6
    • ブルーピーコック
    • 2024年 3月 23日

    小〜中型ステルス機とか、F-22に近いサイズだがF-22が諦めたSTOL性能を付与して高速道路から離陸できる戦闘機だと良いな。

    2
    •  
    • 2024年 3月 24日

    空対空でもミサイル1~2本しか積めなさそうだけどな。スウェーデンならそれでもそっち選びそうではある。もちろんステルス犠牲にした「ビーストモード」相当の機能やら、無人随伴ドローン指揮能力はつけるだろうけど。

    1
    • フォン・ローゼン
    • 2024年 3月 24日

    NATO加盟前ならばビーストモードメインでも問題なさげですがNATOの義務を果たすとなると専守防衛ではダメなわけで落としどころが気になるところですね。

    2
    • シーキャットワン
    • 2024年 3月 24日

    ところで、エリクソン社製電子戦装置はどのぐらいの能力を有しているんでしょうか。
    グリペン同様に高度な電子戦装置を有するのであれば、スウェーデンの次期戦闘機はBAEのEPAWSSに搭載しているようないわゆるデジタルステルスを搭載しそうな感じもしなくもないような……。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  2. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  3. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  4. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  5. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
PAGE TOP