欧州関連

イタリア海軍参謀総長、TB3取得と空母カヴールへの統合に初言及

LeonardoとBaykarは2025年6月「無人航空機技術の開発に特化した合弁企業=LBA Systemsを設立する」と発表し、イタリア海軍参謀総長は25日「TB3をLeonardo経由で取得して空母カヴールに統合する」と言及し、イタリア海軍が公式の場で初めて「TB3の導入」に言及した。

参考:Italian Navy: New programs and future developments

日本の防衛産業にとって武器輸出が重要なのは「日本の技術は凄いんだという国威発揚や武器輸出で儲ける」という部分ではない

トルコのBaykarはMALE UAV(中高度・長時間滞空型無人航空機)分野で目覚ましい成長を遂げ、小型のTB2はNATO加盟国を含む34ヶ国で、MQ-9に匹敵するAkinciも10ヶ国で採用され、強襲揚陸艦からの運用に対応したTB3やKızılelmaの開発が進んでいる。

出典:Poland MOD

ただし、Baykarの輸出先の大半は中東、アフリカ、中央アジア、東南アジアに集中し、地理的に最も近い欧州諸国(ポーランド、ルーマニア、クロアチア、アルバニア、ウクライナ)の採用は限定的で、これを打開するためイタリアのPiaggio Aerospaceを2024年12月に買収、BaykarとLeonardoは2025年3月「無人機に対する欧州市場のニーズが高まっている」「今後10年間の無人機需要は1,000億ドルを超える」「この需要を取り込むため両社は50対50の合弁会社を設立する」と、2025年6月のパリ航空ショーで「無人航空機技術の開発に特化した合弁企業=LBA Systemsを設立する」と発表。

LeonardoがBaykarと提携した理由は「欧州がEurodrone(MQ-9の約3倍となる巨大なUCAV)開発で多くの時間を無駄にしてしまったため、欧州には無人機分野の独自プラットフォームが育っていない」「Eurodroneのみで無人機分野の競争力を確保するのは難しく競合他社は製品投入をどんどん加速している」「Leonardoの認証取得や統合型マルチドメイン技術のノウハウをBaykarの無人機セグメントを網羅するポートフォリオに統合し、輸出可能な製品を出来るだけ早く欧州市場に投入して主要プレイヤーの地位を確立した」となり、いかに急成長を遂げる軍用無人機分野で生き残るかを模索した結果なのだ。

出典:Leonardo

要するに「Leonardoがどれだけ優れたセンサーとミッションシステムの技術をもっていても、いまからプラットフォームを開発していたら競合他社に市場を席巻されて生き残れなく」「トルコもEU加盟国でないため欧州市場への進出に苦戦している」「互いの弱みを補完して欧州市場に無人機を共同投入して勝者の地位を手に入れよう」という意味になり、これは武器輸出を「国威発揚のオール・イタリア」ではなく「持続可能な成長の機会」として捉えている左証といえる。

Leonardoのチンゴラーニ最高経営責任者も「イタリア軍がTB3、Akinci、Baykarの徘徊型弾薬や自爆型無人機を購入する可能性」に言及したため、Defense Newsは「イタリアは米国製無人機の忠実な購入者だったが、今回の合意はローマの方針転換=米国製兵器依存からの脱却を反映したものだ。高価な米国製兵器の購入が安全保障に結びつかないなら購入の動機は失われる」と指摘したことがあり、今月12日の決算報告でも「M-346で2機の無人戦闘機(Kızılelmaの可能性)を制御する最初のデモンストレーションを今年5月までに実施する」と明かしていた。

イタリア海軍のジュゼッペ・ベルッティ・ベルゴット参謀総長も25日の外交・国防委員会で「TB3を製造するBaykarがLeonardoと提携したのは周知の事実で取得はLeonardo経由で行われる」「この無人機は空母カヴールに統合可能で監視と攻撃の両方を行うことができる」「今後も効果的な能力を維持するに伝統的な戦力資産、デュアルユース・プラットフォーム、無人システム、商業オペレーターが提供するサービスを組み合わせて効果のクリティカルマスを生成するのが重要だ」と述べ、イタリア海軍が公式の場で初めて「TB3の導入」と「カヴールでの運用」に言及したため注目を集めている。

LeonardoがBaykarの無人機セグメントを取り込んでイタリア化や欧州化を推し進め、イタリア海軍も空母・強襲揚陸艦プラットフォームへの無人機統合で米国製のMojave、Gray Eagle STOL、MQ-9B STOLではなく、Leonardoが提携したBaykarのTB3を選択して両社の取り組み=無人機ビジネスを後押しするつもりなのだろう。

ちなみに、韓国のHanwhaは無人関連技術の開発に積極的で、特にUGV開発においてはトップティアに近い実力を備え、歩兵に随伴可能で直接射撃、間接射撃、物資輸送、ISR、EW、C-UASなどの任務に対応できるマルチプラットフォームのArion-SMETは米国防総省の比較評価プログラムにも選定され、Andurilと共同で米陸軍のUGV調達に挑戦すると発表して注目を集めたが、2024年10月にはArion-SMETを発展させたGRound UNcrewed Transport=GRUNTを発表。

大型な兵器システム(30mm機関砲、対戦車ミサイル、レーザー兵器など)を搭載可能なマルチプラットフォーム=UCV-Lの開発も進めており、2025年2月にはUGV開発の最大手企業=Milrem Roboticsと戦闘用UGVを含む無人地上車両の開発や国際的なマーケティングで協力するための協定を締結し、2025年3月に開催された防衛事業庁のイベントで「2028年までにUGV製品群のフルラインナップを完成させて海外のUGV市場を主導する」と宣言した。

Hanwha Aerospace、Hanwha Systems、Hanwha Oceanの3社は陸海空の有人・無人システムを統合運用するMUM-Tソリューション構想を披露し「Hanwha Aerospaceの無人地上車両、Hanwha Systemsの低軌道衛星通信システム、Hanwha Oceanの無人水上艦艇を組み合わせて運用すれば作戦効率が高まる」と説明し、防衛事業庁も「有人・無人システムを開発して効果的に運用する能力は『将来戦場への対応』と『防衛産業の競争力強化』に不可欠だ」と述べ、必要な関連法案と制度を整備して構想を支援すると約束したものの、Hanwhaの無人関連技術における弱点は無人航空機分野だ。

この分野における国内の主導的立場は韓国航空宇宙産業や大韓航空に握られており、Hanwhaにとって「無人機分野の穴をどうやって埋めるか」が製品ポートフォリオ上の課題だったが、Hanwha Aerospaceは2025年4月「無人機開発の最大手企業=GA-ASIとGray Eagle-STOLを共同開発する」「GE-STOL開発に7,500億ウォン以上=5.1億ドルを投資して国内に開発拠点と生産インフラを整備する」「両社は2027年までにGE-STOLの量産機を初飛行させ、同機を米国、欧州、中東、アジアの国々に売り込んでいく」と発表。

出典:General Atomics Aeronautical Systems

これは事実上「無人機市場への進出宣言」で、GA-ASIも「Hanwhaとのビジネス関係拡大に興奮している」「彼らが無人機事業成長のため投資準備が整っていることを承知している」と述べ、防衛市場関係者も「Hanwhaは無人機市場を未来に向けた戦略的支柱に位置づけている」「今回の投資によってHanwhaは無人機分野の全ライフサイクル(計画、設計、生産、統合、販売)をカバーするつもりだ」と指摘したが、両社は2025年10月に開幕したAUSAでGE-STOLの共同開発・生産契約に署名している。

無人機やドローンと一口に言っても、MQ-28Aのような有人戦闘機に随伴してセンサーや弾薬携行能力を拡張する無人戦闘機、MQ-9Aリーパーのような武装可能なUCAV、スキャンイーグルのような戦術偵察無人機、Shahed-136のような自爆型無人機、ランセットのような徘徊型弾薬、DJI製Mavicのような偵察に使える商用ドローン、ウクライナ軍とロシア軍が多用する無線・光ファイバー制御のFPVドローン、自爆型無人機を阻止する迎撃ドローン、手のひらサイズのマイクロドローン、実用化が始まった大小様々な無人潜水艦や無人水上艦艇、まだ本格的な実用化に至っていない各種無人車両などがある。

出典:Airbus

この全てにおいてビジネス関係の拡大や市場での生き残りを目的とした提携が激しく行われており、誰もが急成長を遂げる軍用無人機分野(2034年の市場規模は300億ドルを突破すると予想)で主要プレイヤーの地位を狙っているのは「軍用無人機を構成する基盤技術の大半が軍事技術ではなくデュアルユース技術で構成され、2035年には推定2,099億ドル=約33兆円まで成長すると見込まれている商業用途を含めた無人機分野の市場で勝ち組を狙っている」となり、無人機分野の将来を左右する企業提携(誰と組むのか)に日本企業の名前は全く登場しない。

日本企業が無人機分野に積極的投資できない政治的、制度的、経営的理由は幾つもあるため「仕方なかった」と言えばそれまでだが、2014年に制定された防衛装備移転三原則のルール下でも5類型(救難、輸送、警戒、監視、掃海)の防衛装備品輸出は可能で、これまでの12年間でフィリピンへのレーダー輸出1件で終わったのは「企業側にやる気がない」と解釈するのが妥当だろう。

日本の防衛産業にとって武器輸出が重要なのは「日本の技術は凄いんだという国威発揚や武器輸出で儲ける」という部分ではなく、これまで経済力でゴリ押しできていた「異常に高価な日本製防衛装備品の調達」が持続可能なものではなくなり「エコシステムの拡大」「アフォーダビリティ性の追求」「商業的機会の獲得」を無視できなくなったからだ。

もし武器輸出を通じた持続可能性の向上に失敗すると、自衛隊需要のみで成り立ってきた日本の防衛産業ビジネスは生き残れなくなって蓄積してきた技術や経験が失われてしまうかもしれない。

関連記事:小泉防衛相、自衛隊を無人装備品を駆使する世界一の組織に変革する
関連記事:日本の武器輸出、小泉防衛相が5類型撤廃後にトップセールスを本格化
関連記事:Leonardo、2026年中にM-346から制御する2機の無人戦闘機を飛行させる
関連記事:パリ航空ショーが開幕、初日から人気の高い無人機関連の発表が相次ぐ
関連記事:イタリアとトルコは欧州市場への無人機投入を急ぐ、第一弾はAkinciか
関連記事:BaykarとLeonardoが提携、KızılelmaがGCAPのウイングマン候補に
関連記事:HanwhaとGA-ASIが韓国でGray Eagleを共同生産、K9装輪バージョンも発表

 

※アイキャッチ画像の出典:Baykar

エアバスも対自爆型無人機分野に参入、バード・オブ・プレイ迎撃ドローンを発表前のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    ウクライナ支援の財源、EU加盟国外相の大半がロシア凍結資産の利益転用を支持

    EUはウクライナへの武器支援や資金援助に「ロシア凍結資産の利益」を充て…

  2. 欧州関連

    フィンランドが6月にNATO加盟申請を提出? スウェーデンもこれに続く?

    英Time紙は11日「フィンランドはNATOへの加盟申請を6月に提出す…

  3. 欧州関連

    A330MRTTが夜間の自動空中給油に成功、2025年に認証を取得予定

    AirbusはA330MRTT向けの自動空中給油システム=A3Rの実用…

  4. 欧州関連

    ポーランドが装備調達に15兆円を投資、ロシアの野蛮な侵略に対する正しい反応

    ブラスザック国防相はポーランドの安全を保証するため「2035年までに5…

  5. 欧州関連

    英空軍が1億ポンドのF-35Bを失った原因、エアインテイクを覆うカバーの取り外し忘れか?

    極東派遣を終えて母港ポーツマスに帰投中の英空母クイーン・エリザベスから…

  6. 欧州関連

    伊外相がウクライナへのSAMP/T追加提供に言及、ロシア領内の攻撃には反対

    イタリアのLa Repubblicaは先月「メローニ政権が準備している…

コメント

  • コメント (4)

  • トラックバックは利用できません。

    • たむごん
    • 2026年 3月 31日

    武器輸出は、外交安全保障の相互依存関係を深める役割がありますからね。

    閣僚の中でも、防衛大臣は重量級であり、首相や副首相級が兼ねてる国もあります。

    他国と、将来の人間関係を構築するきっかけにもなりますから、外交基盤としても重要でしょうね。

    2
    • 無印
    • 2026年 3月 31日

    TB3がカヴールに乗るって事は、ほぼ同じサイズのいずもにも乗せられるねぇ…
    多分色々セールして来ると思うんですけど、その場合導入するのはTB2をテストした陸自なんですかね?

    イタリアはTB3を海軍が運用するみたいですが
    海自はMQ-9Bをメインに使っているので、ここにTB3をねじ込むのはハードル高そう…

    2
    • YF
    • 2026年 3月 31日

    無人機、無人化、省人化技術の開発は防衛装備だけでなく少子高齢化の日本の社会に必要な技術だと思います。
    ちょうどデュアルユース技術の研究推進 政府、科技基本計画を決定、予算も増額されたので、官民両輪で規制緩和も含めて進めていって欲しいですね。

    2
    • イーロンマスク
    • 2026年 3月 31日

    無人艦載機が増えるなら強襲揚陸艦にリニアカタパルト積んだ076型みたいなのが絶対欲しいな

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  2. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  3. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  4. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  5. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
PAGE TOP