欧州関連

ポーランドのM1A2導入の真相、やっぱり次期主力戦車プログラムは継続予定

ポーランドは電撃的に米国からM1A2/SEPv3を導入すると発表して世界中を驚かせたが、ようやく詳しい導入経緯やウルフ・プログラムとの関連がハッキリしてきた。

参考:Czołgi Abrams za ponad 23 miliardy złotych dla Wojska Polskiego

M1A2/SEPv3導入はロシアのT-14に対抗するための緊急調達でウルフ・プログラムを阻害するものではないらしい

まず最初にポーランドが電撃的にM1A2/SEPv3の導入に踏み切ったのはロシアのT-14が原因だ。

ロシアは次期主力戦車T-14を2015年に発表して2018年までに量産を開始すると主張したものの新型ディーゼルエンジンが設計通りのスペックを発揮できない問題の解決、輸入に頼っていた前方監視型赤外線装置(非冷却マイクロボロメータ)の国産化、当初設計に含まれていない無人運用が追加されたことで量産化が遅れていたのだが、ロシアは全ての問題を解消して2022年から量産に入ることを発表している。

出典:Boevaya mashina / CC BY-SA 4.0 次世代主力戦車「T-14」

つまり親ロシアを掲げるベラルーシと国境を接して「対ロシアの最前線」と呼ばれているポーランドからするとT-14の量産・配備は最大級の脅威であり、現在進めている次期主力戦車調達計画「ウルフ・プログラム/ProgramWilk」は国内の防衛産業界に配慮した内容(直輸入ではなく現地生産)なのでT-14の登場に間に合わないとポーランド政府は判断、そこで緊急調達という名目でM1A2/SEPv3の導入に踏み切ったらしい。

当然予定外の「緊急調達」なので国内のあらゆる調達手続きを省略、ポーランド側はM1A2/SEPv3の早期引き渡しを実現するためオフセットを放棄して米国が提示する対外有償軍事援助(FMS)の内容を丸呑みする構えだ。

問題は今回のM1A2/SEPv3導入がウルフ・プログラムにどのような影響を与えるのかで、一部では「ウルフ・プログラムの勝者=M1A2/SEPv3」だと報じているメディアもあるが「無関係」というのが真実らしい。

出典:US Army Photo by Mark Schauer ユマ性能試験場でテスト中のM1A2C

ポーランドの防衛メディア「Zespół Badań i Analiz Militarnych/ZBiAM」は今回のM1A2/SEPv3導入は「国防省が進めている他の近代化プログラムに影響を与えることはない」と報じており、航空宇宙・防衛分野の国際的な市場調査会社「Forecast International Inc」も米国からM1A2/SEPv3を購入するのは緊急要件を満たすためで「ウルフ・プログラムを阻害するものではないとポーランド国防省が強調した」と15日付けの記事で言及している。

追記:英国のジェーンズも16日付けの記事で「M1A2/SEPv3導入はポーランド国防省が進めている他の近代化プログラムに影響を与えることはないとブラスザック国防相が言及した」と報じている。

参考:Poland Outlines Abrams Tank Procurement
参考:Poland to procure M1A2 Abrams MBTs

要するに国内の防衛産業界に配慮したウルフ・プログラムは健在で800輌近い次期主力戦車需要の一部は今回のM1A2/SEPv3で満たされるものの、残りはウルフ・プログラムで選定する新しい主力戦車で需要を満たすという意味だ。

まぁM1A2/SEPv3の取引内容が緊急調達を名目に一方的過ぎてウルフ・プログラムを潰すと国内からの反発に招くため妥当な落とし所と言えるだろう。

以上がM1A2/SEPv3の導入経緯で依然としてウルフ・プログラムは生きており、この知らせに一番安堵しているのはK2PLを提案していた韓国なのは間違いない。

関連記事:総費用は約6,600億円規模、ポーランドが250輌のM1A2/SEPv3調達を正式に発表
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関連記事:ポーランド陸軍の次期主力戦車に新たな挑戦者、イタリアが国際共同開発を提案

 

※アイキャッチ画像の出典:Photo by Sgt. Nathan Franco, Fort Irwin Operations Group

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 7月 16日

    なるほどなー
    ただ緊急調達でM1A2/SEPv3を導入するのは分かったけど、ウルフ・プログラムを進めてもし別の主力戦車を選定した時M1A2/SEPv3はどうするんだろう?
    アメリカに返品する?それとも運用を続ける?
    主力戦車が2種類有ると整備とか大変になりそうな気がしないでもないけどそこんとどうするんだろう。

    2
      • 匿名
      • 2021年 7月 16日

      今でも複数車種を運用してるんだから、あまり気にしてないのでは。
      それよりウルフプログラムが順調に進展しないと、またM1を追加する可能性が開けたように思う

      17
        • 匿名
        • 2021年 7月 16日

        確かにそうですね
        個人的感想として次期主力戦車で1種類にするのかと思っていたのでこう言うコメントを書かせてもらいました。
        コメントありがとうございます。

        4
      • 匿名
      • 2021年 7月 17日

      M1系列だとがぶ飲みする燃料のJP-8の供給がめんどくさいことになるよね
      ポーランド陸軍は基本ディーゼルだしヘリもミル系列で燃料構成同じとは思えない
      マルチフューエルだよ!って言ってもあれJP-8以外使ったらおそらく重整備必要だし

      3
        • 匿名
        • 2021年 7月 19日

        あんまり適当なこと書くなよオーストラリアがディーゼル運用してるのは有名な話だし、そんな情報知らなくてもディーゼルとガスタービン併用している艦船が2種類の燃料わざわざ積んでいる非効率な事をしているのかを考えたら燃料の問題なんてないのは分かるだろう。まぁ単純にJP-8切れたから軽油ぶち込んだとか適当な事したら多少の問題は発生する可能性はあるんだろうけど、最初からディーゼル運用するなら少なくとも異種燃料でのトラブルは起きない。

        1
    • 匿名
    • 2021年 7月 16日

    「ウルフ・プログラムなしね」とは思っていても言えないよね.

    2
    • 匿名
    • 2021年 7月 16日

    エイブラムスでT-14に対抗するのはなかなか難しそうだけどどうなんだろ。40年前の戦車でもアップグレードしてたら最新戦車にも立ち向かえるってことなのか

    5
      • 匿名
      • 2021年 7月 16日

      FCS、装甲(+APSによる生存性)、砲弾、BMSのアップグレード、何より信頼性や維持メンテの容易さ、APUによる稼働時間の延長があるから、40年前とは筐体以外は全く別物だと思われ。

      10
        • 匿名
        • 2021年 7月 17日

        T14の能力自体は、そんな大騒ぎするほどの物ではないと思うけど。
        アルマータ系列の肝は運用効率向上なので、より侵攻されやすくなるという点で脅威だが。

        4
          • 匿名
          • 2021年 7月 17日

          乗員の生存性と、IFVとの車体共通化での運用効率向上の二つは大きな進化だけれども、それ以外はそれまでもソ連戦車の延長線上にしかないしね。
          無人砲塔採用の分、重量が軽く済んでいるけれども、運用も構造も複雑で軽装甲の無人砲塔は容易に無力化されてしまう恐れがあるし。

          3
      • 匿名
      • 2021年 7月 16日

      昔からの東側戦車あるあるで、ぱっと見の走攻守のカタログ値は凄くとも、センサーやFCSの性能で遠く及ばないので一方的に遠くから攻撃されて撃破しまう可能性も。
      ロシア戦車の熱戦映像装置はずっとThales製で、案の定、T-14は熱戦映像装置の国産化に苦労して遅れていたようだし、今も西側最新世代のセンサー、FCSに及ばないのでは。

      3
      • 匿名
      • 2021年 7月 17日

      そのT-14自体の実力はどうなんでしょうね?
      なかなか野心的なコンセプトの戦車なんですが、戦車の姿を変えたと言われるT-34の現代版になり得るんでしょうか

    • 匿名
    • 2021年 7月 16日

    ウルフプログラムはM1と同等性能かそれ以上が求められるってことか・・・

    8
      • 匿名
      • 2021年 7月 16日

      T-14相手にすると考えたら妥協出来ないラインになりそうですね…

      7
        • 匿名
        • 2021年 7月 16日

        ウルフプログラミング=K2PLと仮定して、
        パワーパックはどう調達するのだろう?
        独仏のMGCSから、良いとこ取りになるパワーパックだけ調達できるものなのか?

        1
          • 匿名
          • 2021年 7月 16日

          噂の上ではポーランドが自国開発すると聞いたぞ
          それがダメでも韓国もエンジン・変速機両方供給できるぞ
          トルコのアルタイ戦車の初期案の様にユーロパワーパックを導入する事もおそらく可能だろう

          5
          • 匿名
          • 2021年 7月 17日

          多分ポーランドで生産すれば割とまともに動くと思うよ。

          3
          • 匿名
          • 2021年 7月 17日

          韓国軍が採用しなかっただけで十分な性能のパワーパック出来てるから韓国パワーパックのポーランド生産になるんじゃねーかな

          5
      • 匿名
      • 2021年 7月 17日

      調達・運用コストも性能の内。

    • 匿名
    • 2021年 7月 16日

    個人的にはPL-1を量産して欲しがった。
    今更改良案とかは出て来ないですよね~、CV90ベースの軽戦車だし。

    3
    • 匿名
    • 2021年 7月 16日

    いかにポーランドが直面している危機が深刻かわかる
    おいドイツてめえポーランド死んだら次お前だぞ

    7
      • 匿名
      • 2021年 7月 16日

      なんかポーランドって常に孤独な戦いを強いられてる感がある

      11
      • 匿名
      • 2021年 7月 18日

      いまのドイツはむしろ親ロだから、ポーランドがロシアに侵攻されても
      救援しないのではないか? ウクライナからの軍事援助要請を蹴ったように。

      1
    • 匿名
    • 2021年 7月 17日

    T-14の事に疎いのですが、現行の120mmで大丈夫なのでしょうか?

      • 匿名
      • 2021年 7月 17日

      あの無人砲塔の正面装甲は120mmで余裕っぽいが無人だからKE貫徹されて予備弾バスルブローオフしてもまだ戦える。
      砲塔が機能喪失してAPSをCEで吹き飛ばされ逃げる所を上面狙いの徘徊無人機ミサイルで止め刺す対艦戦闘みたくなるかな?
      何れにせよ今どきの戦車対戦車で車体に当てるのが難しいのは若干車体高が上がったT14とて同じなので120mmでも十分かなと。
      仮に130mm砲にしてT14の120mm抗堪車体正面を貫徹可能としても超壕してくる所を狙える防御戦闘でもなければ意味がない=必然性がない。

      3
    • 匿名
    • 2021年 7月 17日

    T14が新開発の鋼鈑を使用してるとはいえ、それが現代の西側滑空砲弾を防げるとは思えない
    むしろ遠距離射撃の命中精度と所要時間、これが勝負の分かれ目になるのがイラク戦争等の実戦からの結論。
    しかし、これは実戦しか確かめようがない
    砲塔の無人化で乗員の生存性を高めたのと、対戦車での戦闘能力とは別個に評価しないとね

    3
    • 匿名
    • 2021年 7月 17日

    国内量産化計画はまだ諦めてなかったのね。でもこんな条件飲むのK-2しかなかったみたいだけどK-2じゃT-14相手では厳しいって事なんかな
    それか部品が世界各国に散らばってるから納品が遅いとか許可取りに時間が掛るとか提示された量産計画が根本的に怪しかった(部品取り寄せキットは量産と呼べるのか?)とか
    なんにせよまだまだK-2ちゃんの話題で遊べるね

      • 匿名
      • 2021年 7月 17日

      単純に配備間に合わないからってブログ記事にも書いてるやんか…

      14
      • 匿名
      • 2021年 7月 17日

      韓国叩きしか頭にないの?ちゃんと記事を読めや

      9
    • 匿名
    • 2021年 7月 17日

    急ぐのなら、leopard2のオーバーホールと7+改修が優先だが、何かずれているな。
    オーバーホールと改修なら、部品代以外は自国に落ちるし、問題ないのに。
    ロシアは以前T-72系列を新型砲塔に換装するとしていたが、ポーランドも実践してみてはどうだろうか。
    運用出来ない道具なぞ、何の役にも立たない。
    因みにエジプトは、M1の後はT-90。

      • 匿名
      • 2021年 7月 17日

      オーバーホールや改修に回している時間すら惜しいのではとも。まあ乗員の訓練も必要ですが、対露で軍拡するならば相対的に問題は小さくなるのかな?
      あとは、レオパルド2A7+ではT-14に対抗できないとポーランドが考えているとか。T-14が出てきてから独仏の新型戦車プログラムが始まった訳ですし。今のところアメリカは急いで新型戦車を開発するつもりは無い様なので、新型徹甲弾と増加装甲でT-14に対抗できると見ているのかと

        • 匿名
        • 2021年 7月 17日

        本気なら、グダグダしている間にオーバーホールが終わる。
        T-14は単体での脅威度は高くないが、部隊全体での運用効率向上により、実数以上の戦力になるのが脅威。
        だから、ポーランドとしても両数を増やしたいのだろうが、足元をしっかり固めないと結局戦力にならない。
        この辺は、陸軍大国ロシアの面目躍如と言った所だな。

    • 匿名
    • 2021年 7月 17日

    M1は緊急調達だとして残りは従来どおり国内産業に配慮するとしたら、場合によってはポーランド版アルタイ戦車みたいなのが出てくるかもしれないな。ソ連系の戦車開発技術持ってる国と韓国が組んで作った戦車、絶対見てみたいな…

    1
      • 匿名
      • 2021年 7月 17日

      T-72系列換装用の新型 砲塔を作ってくれ。

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