欧州関連

ウクライナ製155mm自走砲が連続量産を開始、数ヶ月以内に量産車輌を納品

ウクライナのレズニコフ国防相は「2S22Bohdana(ボーダナ)の契約を製造企業と締結済みで、最初の量産車輌を数ヶ月以内に納品すると約束している」と言及、まもなくウクライナ製155mm自走砲がロシア軍との戦いに投入される見込みだ。

参考:Deliveries of new Bohdana self-propelled guns are expected in the coming months – Reznikov

自国で調達や保守がコントロールできる155mm砲弾対応の自走砲は非常に貴重なので1日でも早い引き渡しが期待されている

旧ソ連時代から戦車・自走砲の製造を手掛けていたクラマトルスク重機建設工場(KZVV)が開発した155mm自走砲「2S22Bohdana(ボーダナ)」は2018年の独立記念日に公開され、実用化に向けてフィールドテストを繰り返していた最中にウクライナ侵攻が勃発、この工場はドネツク州クラマトルスク市にあったため軍は「ロシア軍の手に落ちる前にBohdanaのプロトタイプを破壊しろ」とKZVVに命じたが、元国防委員長のパシンスキー議員の働きかけで安全な後方に移動。

出典:Резніков Олексій 量産タイプのBohdanaを示唆するレズニコフ国防相の写真

このプロトタイプを手に入れたウクライナ軍は黒海に浮かぶ蛇島(スネーク島)の攻撃に使用しており、2023年1月に「国防省とKZVVの間でBohdanaの連続生産に関する契約が締結された」と報じられていたが、現地メディアの取材に応じたレズニコフ国防相は「最初の量産車輌を数ヶ月以内に納品するとKZVVは約束している」と明かし、侵攻前から開発を進めていたBohdanaの量産車輌が間もなくロシア軍との戦いに参加する予定だ。

恐らく量産準備に時間がかかったのは製造拠点をドネツク州クラマトルスク市からウクライナ西部に移転(管理人の想像)したためだと思われるが、自国で調達や保守がコントロールできる155mm砲弾対応の自走砲は非常に貴重なので1日でも早い引き渡しが期待されている。

出典:VoidWanderer/CC BY-SA 4.0 2018年の独立記念日に公開されたBohdanaのプロトタイプ(量産タイプとは仕様が異なる)

因みにBohdanaの射撃性能はHEIAP弾で最大40km先(フィールドテストでは最大42km先の目標を破壊することに成功)、RAP弾で最大60km先の目標を攻撃でき、6発装填式の自動装填装置を備えているため「降車せず射撃を実施できる(発射速度は毎分4発~6発/車体に20発分の砲弾を収納可能/プロトタイプを見る限り自動装填装置らしきものは見当たらない)」と言われているが詳しい仕組みなどはよく分かっていない。

追記:国営企業のウクロボロンプロムが「あるNATO加盟国」と120mm迫撃砲弾の共同生産を行うことで合意したと報じられている。

関連記事:ウクライナ、待ち望んでいた旧ソ連規格152mm砲弾の連続生産を開始

 

※アイキャッチ画像の出典:Mil.gov.ua/CC BY 4.0 2022年6月に蛇島を攻撃したBohdana(プロトタイプ)の様子

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コメント

    • Hk
    • 2023年 2月 10日

    国内に製造拠点があればミサイルですぐに壊されるんじゃないかと思ったけど、外注して国外で製造すれば問題ないのかな。

    7
    • 774rr
    • 2023年 2月 10日

    自動装填装置やっぱり良いなぁ
    6発と限られてるとは言え どうせバースト射撃して直ぐ撤収するんだし必要十分

    ついでに言うとダブルキャブで何処かの国の19式よりは居住性が良さそうなのも羨ましい

    28
    • 成層圏
    • 2023年 2月 10日

    今は有事だから、どんどん設備投資するのはいいんだけど、戦争後その設備が償却できるまでの利益が出るのだろうか?
    利益が出るとしたら、どれだけの兵器が市場に出回るのかな。
    韓国やトルコなんかもそうだけど、大量の兵器を生産・購入したら使わないとまるっきりの損なのだが、使うという事は戦争をすることなんだよね。
    当分平和な世界は来なさそうだね。

    以前、アフリカだったか、の部族の祭りで、隣の部族にお宝を行き、目の前で破壊する、という祭りがあった。色んな価値観があるんだと思ったが、いっそのこと隣国同士で同等の兵器を交換し、破壊するっていうのはどうだろう。少しは平和になるかも、。無理か。。

    3
      • 戦略眼
      • 2023年 2月 10日

      まあ、生産は民生品にも転用出来るし、元々兵器の外販にも積極的だったし、何とでもなるでしょ。
      ウクライナより、韓国が技術をばら蒔いて、あちこちでAFVが生産されて、好き放題戦争し出す方が怖い。

      13
      • 2023年 2月 10日

      「兵器を買ったから(or 作ったから)使わないと損」という考え方が極端になると「好戦的な国家」や逆に「無防備な国家」を生むのでは?
      平時から兵器を買って(or 作って)陳腐化したら売るか廃棄する、というサイクルが「平和のために必要なコスト」と捉えられれば無理に戦争する必要も無いし、処分するということは平和だったと喜べば良いと思います。
      国家予算の2%の防衛費が勿体ないというのは平和のための基本的なコストが賄えないという事になると思います。
      (もちろん平和のためのコストは防衛費だけではありませんが。)

      18
      • 匿名
      • 2023年 2月 12日

      >隣の部族にお宝を行き、目の前で破壊する、という祭りがあった。

      ポトラッチですね…
      北米の原住民が、部族間でどれだけ貴重なものを惜しげもなく破壊できるかを誇り、互いにマウントを取り合う風習だったと記憶しています

    • ぱんぱーす
    • 2023年 2月 10日

    これは良いニュースですね。
    西側から多くの自走砲供与があったとは言え、主力はずっと旧ソ規格の152mmだったでしょうから、これで本格的に西側装備への転換が始まりますね。
    数さえ揃ってくれば弾薬不足に悩む事もなくなるかもしれません。
    戦車の供与も決まりましたし、あとは何とか時間さえ稼げれば……。

    12
      • 戦略眼
      • 2023年 2月 10日

      120mm滑腔砲もウクライナは自作出来たはずなので、自力でLeopard1やチャレンジャーの主砲を換装しないかな。

      5
    •  
    • 2023年 2月 10日

    自走砲の量産に入ったのはわかったけど肝心の弾はどうした弾は。
    弾薬製造のほうが西側全体を通しての懸念事項なんじゃあないか?
    120mm迫撃砲弾のことは追記にあるけれど記事中に弾の生産については何も書いてないような…
    発射プラットフォームは正直、西側から送れば当座は凌げそう(ボーダナが要らんというわけではない)だけど、弾薬に関してはウクライナの前線だけでなく西側全体で不足が目立って来てるからどーにかしないとマズいと思うのだけれど。

    3
      • 戦略眼
      • 2023年 2月 10日

      120mm迫撃砲は、元々ソ連規格の物が広まったものだから、生産ラインは元からあるのでしょう。

      3
      • shkk
      • 2023年 2月 10日

      西側で作ってないソ連規格のはここの記事にもなってるように
      国営企業のウクロボロンプロムが152mm砲弾の連続生産を確立してます

      それに自走砲の数が足りないはずですよ
      現状は西側規格の自走砲が少なくてどの自走砲も酷使で破損するぐらい使われてますし
      (ソ連規格の自走砲は多いけどそっちは弾がない)

      まぁ色々言ったけど象徴的な意味合いが大きいかなと。西側規格の自国製自走砲投入ですからね。

      2
    • ネコ歩き
    • 2023年 2月 10日

    ネット上の2S22Bohdanaに関する記事をいくつか当たってみましたが、「最小戦闘範囲780m」て記述が個人的に目を引きました。普通無いですよね。
    大口径榴弾砲も状況によっては直射戦闘を行うことが有り得ると承知してはいますが、最初からその気満々という感じで「そうなんだ」という感想です。砲尾右側に直接照準器ぽい装置が付いてますが、キャビン内から遠隔照準するんでしょうか。

    それと、手動装填作業中の画像がありましたのでプロトタイプが全自動装填装置付でないのは明らかです。仮に直射戦闘を前提にするなら、全自動装填装置は必須になるでしょうね。

    3
      • 御影渦音
      • 2023年 2月 11日

      ソ連式だと榴弾砲の直接照準射撃は割とよくある運用とは聞きますが、
      こんな、いかにも後方を走り回る感じの装輪自走砲でもやるんですね…

      2
    • 折口
    • 2023年 2月 10日

    砲の右後方から生えてるのがALS用の弾薬トレーかなと思ったんですけど、今のところはラマーらしきものが付いてるだけですね。出回ってる動画だとそれすら動かしてないので、ALSは後日装備かな。写真の状態だとカエサルや19式にある装填補助機構や仮置き用のトレーすらもないので、頭より上の場所に155ミリの弾頭を持ち上げなきゃいけなくて逆に大変そうですが…

    4
      • ネコ歩き
      • 2023年 2月 10日

      ラマーと言われれば形状的にそのほうがらく見えますね。

    • 台湾大好き
    • 2023年 2月 11日

    素人の疑問です。
    この手の装輪自走砲は装軌式以上に、バースト射撃のあと一目散に退散する運用だと思いますが、なぜ揃いも揃って前方向に砲が付いてるんでしょうね。WW2のアーチャーの如く後方に砲を向けて装備しないのはどんな理由があるんでしょうか。運転席をマズルブラストから守れるし合理的じゃないかと思うのですか。
    (重量配分?車長の短縮化?手動装填の場合は操作スペースがない?)

    1
      • 戦略眼
      • 2023年 2月 12日

      トラックシャーシは、後輪の方が耐荷重が大きいので、反動を受け止め易いからです。

      3
      • 折口
      • 2023年 2月 12日

      仰る通りレイアウトの都合が大きいと思います。装輪榴弾砲が構造上一番気にしなきゃいけないのは砲の反動で、装軌式のように車両の足回りだけでこれを吸収させようと思ったらいかに10トン級のトラックでも耐えられないでしょう。トラックは縦長なので横方向の力には前後向きで受けるのが一番安定します(2発目を迅速に撃つためには振動の収束の速さが重要)し、砲の反動方向にアウトリガーやスペードを展開できる空間があるのは後方だからあの形になっているんだろうと思います。

      英軍の17ポンド砲アーチャーと現代の装輪榴弾砲との相違点は、英アーチャーが直接照準射撃を旨とする自走対戦車砲であったのに対して、双輪榴弾砲は間接照準で何kmも離れた目標を撃つ自走榴弾砲だということです。APCRやAPDS弾の対戦車砲は初速が命なので、地形が許す限り近くから撃ったほうが戦車の撃破確立が上がります。従ってバックで陣地に進入して待ち伏せ、射撃ののち速やかに距離をとれる後ろ向き砲にも合理性がありました。対して間接射撃をする自走榴弾砲の場合、敵に対して前後に動くよりもむしろ敵をとらえ続ける圏内をこまめに陣地転換しながら射撃を繰り返す事になります。最初から最後まで敵からは見えない場所で活動するので、敵との対面は本来は意識しない類の兵器です。

      5
        • 台湾大好き
        • 2023年 2月 14日

        論理的な回答有難うございます、納得しました。
        要約すると、陣地転換の速度は早いに越したことはないが、その為にレイアウトで無理をするほどには重要視されていないということですね。
        マニアとしては、じやあダナのように旋回式にしてと思わなくもないですが、それだと装輪のメリットであるコストに跳ねちまいますもんね。

        1
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