ウクライナ保安庁(SBU)はクリミア大橋攻撃の映像をCNNに公開、攻撃に使用された水上無人艇は“Sea Baby”と呼ばれており「クリミア大橋、大型揚陸艦のオレネゴールスキイ・ゴルニャーク、民間タンカーの攻撃に使用した」と明かした。
参考:The moment Ukraine used an experimental drone to attack a Russian bridge
これは我々全員にとって感動的な瞬間で近いうちに勝利は間違いなく訪れるだろう
7月17日にロシア領クラスノダール地方とクリミア半島の間のケルチ海峡で爆発音が鳴り響き、クリミア大橋の道路橋の2面ある橋桁の内に鉄道橋側の橋桁が損傷、ウクライナメディアは「クリミア大橋への夜間攻撃は海軍と保安庁(SBU)による特別作戦だった」と、ロシア側も「自爆型の水上無人艇によって道路橋の橋桁が損傷した」と説明していたが、SBUはCNNにクリミア大橋を攻撃した際の映像を公開した。
SBUのマリウク長官は「攻撃に使用した水上無人艇は“Sea Baby”と呼ばれており、これはSBUが独自に開発したもので民間企業は一切関与していない。この水上無人艇を使用してクリミア大橋、大型揚陸艦のオレネゴールスキイ・ゴルニャーク、民間タンカー(ロシア海軍向けの燃料を輸送していたとウクライナ側は主張している)を攻撃した」と明かし、CNNに提供した映像にはSea Babyがコンクリート製の橋脚に衝突する瞬間が映っている。
さらにSBUはクリミア大橋の監視カメラ映像も提供、この映像にはSea Babyが橋の下に入る瞬間と道路橋が爆発した瞬間が映っており、マリウク長官は「この作戦のためSBUと海軍は準備に何ヶ月も時間をかけ、期待された爆発が起きると喜びに溢れ、お互いに作戦の成功を祝福した。これは我々全員にとって感動的な瞬間で近いうちに勝利は間違いなく訪れるだろう」述べているが、なぜロシア軍の兵站に重大な影響を及ぼす「鉄道橋」を狙わなかったのかは依然として不明だ。
軍事アナリストのオレクサンドル・コヴァレンコ氏は「道路橋の被害はかなり深刻だ。この影響で物流の流れは減少するか通常よりも時間がかかるようになるだろう。しかしこれは道路網を使用した物流の話で、人員や装備をクリミアに移動させる兵站の主要要素は鉄道輸送だ。そしてクリミア大橋を通過する列車は現在も動いている。道路橋の損傷で10%~15%の軍事物資輸送が影響を受けると思うが、この程度は鉄道輸送で何とか出来る範囲だろう」と指摘。
2014年から2017年までウクライナ軍参謀本部の報道官を務め、現在は軍事アナリストとして活躍するウラジスラフ・セレズニョフ元大佐も「敵の軍需物資の大部分は鉄道輸送によって賄われている。そのため(損傷したクリミア大橋が及ぼす影響について)大きな期待は抱いておらず、恐らく占領地を通過する陸路とフェリー輸送が民間物流の問題を解消するだろう。従って道路橋の損傷は軍事的な現在の状況に大きな影響を及ぼすととは考えにくい」と述べており、もし7月の攻撃で鉄道橋が損傷していればウクライナ南部に展開するロシア軍の兵站は確実に圧迫されていただろう。
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※アイキャッチ画像の出典:CC BY 4.0/Rosavtodor.ru
・クリミア大橋への攻撃は、ロシア側に心理的に大きな打撃になるだろう。少なくともプーチンにとっては、かなり鬱陶しいだろう。
・実際の損害は民需や観光客への打撃であり、ウクライナ南部のザボリージャなどへの軍事輸送に関しては、わざわざクリミアを経由せずに陸路主体だと思われる。
・民間のタンカーへの攻撃は、積み荷がロシア軍の石油だと主張しているが、お金と一緒で石油には色はついていないので強弁のような気もする。
・この水上攻撃は、偽装した民間船などを母船として出撃したのではないか。その場合、今後のウクライナ保安庁のこのような攻撃はどうなるだろうか。穀物協定の停止で、今後は穀物輸送の航路の聖域もなくなるし、ロシア海軍による船の臨検とかは、きびしくなるのではないか。
ウクライナ東部からの陸路主体のルートなんて前からでも最近でも攻撃受けているし安定した補給路でもないから安定したルートでもない。
偽装民間戦でやったら流石に西側へのアピールポイントにはならないし、ロシアへの民間船攻撃の口実にしかなり得ないから流石にあり得ない。
鉄道橋に比べると、道路橋の方がやけに水面すれすれで作っている感があるので、大型船を通せるよう高くしている鉄橋部分以外だと、道路橋の下って、船舶が通過しにくい仕掛けとかがあったりするのかもしれないですね。防潜網みたいなのがあるだけでも、通過するつもりで道路橋の橋脚間で立ち往生して意味もなく自爆する(可能性がある)くらいなら、道路橋の橋脚を破壊しとこう、とか。
クリミア大橋沿いに、大量のジャミングを設置している画像を拝見しました。
対レーダーだけでなく、対GPSの設備もあると思います。
ウクライナ軍が、ジャミングがある中で、どういった誘導方式で命中・起爆させたのか気になっています。
ジャイロや加速度、恒星天測を組み合わせたのでしょうか?(地形誘導は海上なので厳しいと思うのです)
今回の水上無人艇“Sea Baby”は、衝突の瞬間まで遠隔操作を行えているので、ジャミングの影響はあっても僅かかと思います。GPSジャミングも黒海全域ではないでしょうから、GPSが使える間はGPSで現在位置を把握、以降はコンパス頼りで北上していくだけでも、クリミア大橋は長大なので、多少ズレたとしても到達は容易でしょう。
衛星通信を無効化するジャミングをすればいい気もするんですが、利用してる波長的にロシア側もその波長域が使えないと困るとかあるのかもしれませんね。
ご説明ありがとうございます。
勉強になりました!
航行しているタンカーも撃破しているのですね。
推測になりますが、民間船に偽装した母船で近い海域まで行き、夜間に発進し、ひたすらジャイロで方角に向かい、本当に接近したら、カメラからの情報で手動で遠隔操作し橋桁を狙ってぶつけたのでは?
そうでなく、過去のモスクワ艦を撃破した時のように、レーダーや迎撃ミサイルを掻い潜って誘導したとしたら。それで、航行中のタンカーや今回も橋桁に当てたとしたら。
これは、イギリスやアメリカの人工衛星システムでの対艦ミサイルのレベルなので、イギリスやアメリカの実質的な指導が入ったのでしょう。それなら、軍中心の先端技術を使った作戦だと思う。が、自爆艇の外見はわりに安っぽい。
単に水上は見つかりにくいのかな。しかし、最近は漁船のレーダー程度でも、浮遊物や小さなものも分かるそうなので、前述のように天候や時間なども含め原始的な方法で色々な条件の隙間をついたのかも。個人的には、こちらの方かと思います。
それなら、スパイや秘密警察や工作活動のウクライナ保安庁の得意とするところです。
何故、鉄道橋を狙わないのか?
水上無人艇では橋脚を破壊できるほどの爆発物を運搬できないのかもしれません。
現状、橋脚は破壊できないので、橋桁を下からの爆風で持ち上げて壊しているように見えます。
鉄道橋の橋桁は、道路橋とくらべると水面からより高い位置にあり、
水上爆発では爆風がより多く逃げてしまうし、構造も道路橋より強固なので狙わないのかも。
現在、何回かの攻撃でそこらへんを調整していて、そのうちどーんとやるかもしれませんが。
動画で映ってるグレーの無人艇ですけど、以前からある黒塗りの半潜航艇と違って、ただのモーターボートを改造しただけ感がめっちゃ強いですね。見た目からして半潜航艇よりかなり大型に見えますけど、普通の水上レーダーで簡単に検知できそうなので、本当にこんなのでロシアの警戒網を突破して戦果を出しているのか気になるところです。
こないだ揚陸艦を攻撃したのもステルス性なさそうな小型ボート型だったので、ロシア軍に根本的な海上警戒設備・体制が整ってない可能性があります
海上ギリギリ飛行の対艦ミサイルとかもあるのに、不思議でしょうがないんですが
同じ疑問を抱いたので、素人ですので、憶測を交えて。
多分、シークラッターに隠れるのではと思います。
元々、水面付近では波が立つので、レーダーは波と
物象をプログラムを使って分けるそうです。
レーダー電波を発振をして、一度検出したものを記録し、
次の発振の時にデータを比較して、前回の位置に近いものを
表示するみたいです。不規則に立つ波のデータを排除するのでしょう。
レーダーの回転は毎分24回転とか48回転だそうです。
つまり、レーダー電波の同方向への発振は2.5秒毎或いは1.25秒毎です。
今回の高速ボートの速さは時速80kmとのこと。つまり毎秒22.2mです。
レーダーが一回転する間に、27.75m〜55.5m移動するわけです。
レーダーのプログラムは、これを不規則な波と捉えるのではないでしょうか。
素人なりにそう考えています。
この自爆ボートはサイズが小さく喫水が浅いので通常の艦船に比べてレーダーで見えにくいということは言えそうですが、80Km/hも出ている目標であればドップラーレーダーで検出できるはずですし、AESAレーダーであれば走査速度が速いので、シークラッターに隠れて見えないということはないと思います。
もっと単純に、これだけ大きな橋をすべて守るだけの水上レーダーやCIWSや対艦ミサイルを用意できていないということではないでしょうか。
おそらくは、通常の水上レーダー(当然回転式、航海用?)
のみを稼働させていたものと推定します。船の方はそうでしょう。
ロシア側の油断?/舐めプ?/懐事情?でしょうか。
スプーフィングは凄いレベルという話も他所の記事で読みますので、
虚を突かれたのかもですね。
それでも、12日にはミサイル攻撃を許しているようですから、
隙があるのは間違いないのでは。
いずれ、ウクライナ側がクリミア大橋に迫って来れば、
もっと濃密な防御をするであろうことは想像されます。
基地がある湾内ですと捜索レーダーは電波が強すぎて使えないし危険なのでCIWSも当然OFFにしているので艦船は無防備になってしまいます。そこで、セヴァストポリでは湾の入り口に対潜網よろしく海面に浮いた妨害フェンスを設けているようですが、ここにはなかったのですかね。
民間タンカーは、軍用の捜索レーダーもないですし、たとえ発見できても防御手段もないのでやられ放題になってしまいます。
橋は、まあ長いので守り切れないのだと思います。空からの攻撃であればS-400を配備してなんとかなっているようですが。
作戦行動中の艦船であれば、こういった自爆ボートには簡単にはやられないのではないかと想像しています。
実際に、有視界時に戦闘艦に迫った時に、
機関砲とヘリからの射撃でボコボコにされて、
爆発している動画が数日前にありました。
いずれは、潜水したほうが良いのでしょうね。
ミゼットサブの復活かもしれません。
WW2のドイツに良いモデルがあったと思います。
現代技術で再解釈すると良い物が出来そうな気もします。
魚雷を携行し、ワイヤを切る油圧カッターを付けて。
列車橋は車道橋側に比べ高さがあり幅も狭いので爆風の威力をダイレクトに伝えられず、USVでは有効打を見込めないのではないかと思います。
ストームシャドウでダイレクトヒットできればいいんですが。
命中させるなら、橋の中央の鉄橋部分で、燃料輸送列車に充ててほしいです。
火災とその熱で鉄橋の鉄の強度を下げ、9.11のWTCのように崩壊してほしいです。
鉄道橋狙うなら魚雷の方が良いのでは。
魚雷の方が破壊力が桁違いに大きい。
クリミア大橋を完全に通行できなくする方が陸上戦より効率良いし被害者も出ない。
西側諸国にそろそろ魚雷か対潜ミサイルも要求した方が良いかもな。
海中に電波は届かないから無線誘導はできないし、橋脚はスクリュー音発してるわけじゃないからなあ
それに魚雷は真上の構造物をパルスで効率よく破壊するよう作られてる(要するに対水上船を想定)から、コンクリ製の橋脚にはあまり効かないのでは