インド太平洋関連

豪州は2032年と2035年にバージニア級ブロックIV、2038年にブロックVIIを取得

米海軍でAUKUSプログラムを担当するライフステック大佐は14日「2030年代初頭までに豪州の原潜受け入れ準備が整う予定で、2032年と2035年にバージニア級原潜のブロックIVを、2038年にブロックVIIを売却する」と明かした。

参考:Here’s when the US Navy plans to sell subs to Australia under AUKUS

ブロックVIIの着工は2029年頃なのでブロックVIやブロックVよりも新しいテクノロジーが採用されている可能性が高い

米英豪の首脳は「AUKUSの枠組み下で検討してきたオーストラリアの原潜取得に関する合意と詳細」を今年3月に発表、豪原潜取得のロードマップは大まかに3つのステップで構成され、2027年頃を目処に米英の原潜が西オーストラリアでローテーションを開始、この取り組みを通じて豪州は原潜運用に不可欠な産業基盤や能力を確立、2030年代に米国からバージニア級を3隻購入、2040年代に米戦闘システムを搭載する英国設計のAUKUS級原潜を取得する予定だ。

出典:Photo by Chad McNeeley

米海軍でAUKUSプログラムを担当するリンカーン・ライフステック大佐は14日「豪州の兵士だけでなく造船産業界の労働者にも原潜に慣れ親しんでもらおうと取り組んでおり、2030年代初頭までに豪州の原潜受け入れ準備が整う予定で、2032年と2035年にバージニア級原潜のブロックIVを、2038年にブロックVIIを売却することになる。さらに2030年代後半に英国で建造されたAUKUS原潜が引き渡され、2040年代前半頃に豪州で建造されたAUKUS原潜を受け取るだろう」と明かし注目を集めている。

2032年と2035年に売却されるブロックIVは米海軍が使用した中古艦だが、2038年に売却されるブロックVIIは新造艦で「極超音速兵器(IRCPS=Dark Eagleの海軍版)を搭載可能な最新のバージニア級の豪州に売却する」という意味だ。

出典:BAE Systems AUKUS原潜

現在建造されているブロックV(10隻)は「オハイオ原潜の退役」に備えてバージニア・ペイロード・モジュールを計2基搭載しているため、全長が115mから140mに、排水量が7,800トンから10,200トンに増加しているものの、この後に計画されているブロックVI(5隻)とブロックVII(5隻)はバージニア・ペイロード・モジュールが1基に減らされ本来の大きさに戻るが、ブロックVIIの着工は2029年頃なのでブロックVIやブロックVよりも新しいテクノロジーが採用されている可能性が高い。

因みにAUKUS原潜の開発・建造に問題が生じた場合、米国はバージニア級を追加で2隻売却することを約束している。

出典:U.S. Army Dark Eagle

追記:陸軍が会計年度内の配備を予定したDark Eagleは連続して試射に失敗、陸軍で調達を担当するブッシュ次官補は「会計年度内の配備は達成できない見込みだが、年末までにDark Eagleの提供を目指している」と述べていたものの、最近になって「Dark Eagleの年内配備は難しい」と述べた。

関連記事:米英豪、AUKUSの枠組み下で原潜のサプライチェーンを分散化させる
関連記事:米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を導入
関連記事:豪州は2030年前半にバージニア級を最大5隻購入、後半に新型原潜を建造
関連記事:米陸軍のDark Eagle、試射失敗で実戦配備を会計年度内から年内に変更

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by John Narewski/RELEASED

米海軍、数年以内に魚雷発射管から発射・回収が可能なUUVを実用化前のページ

アラブ首長国連邦、スリオンを購入するため韓国航空宇宙産業と交渉中次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    台湾は2027年までに2隻の新型潜水艦を配備、後期型は対艦ミサイルを搭載

    ロイターは25日、台湾が28日に進水式を行う予定の新型潜水艦について「…

  2. インド太平洋関連

    海中にも無人化の波、台湾が無人潜水艦に発展する可能性を秘めたプロジェクトを推進

    中国の軍事的な圧力に晒されている台湾では潜水艦技術の国産化に関する取り…

  3. インド太平洋関連

    F-35では対抗不可? 韓国メディア、日本の次期戦闘機「F-3」に制空権を奪われると警告

    韓国メディアは21日、日本はステルス戦闘機開発の野望をあらわにしており…

  4. インド太平洋関連

    韓国を訪問したウクライナ大統領夫人、尹大統領と防空システムについて協議

    ウクライナ大統領夫人のオレナ・ゼレンスカ氏がアジア・リーダーシップ・コ…

コメント

    • ルアー
    • 2023年 11月 16日

    結局はやはりバージニア級に落ち着いたよう
    オーストラリア海軍の要求書を見ればこれしか無いのは丸分かりだった
    にも関わらず、右往左往して頓珍漢な事を喋る「専門家」の多かったこと
    茨の道だろうがオーストラリア海軍の成功を祈る

    24
    • 58式素人
    • 2023年 11月 16日

    この話題を読むといつも思うのだけれど。
    オーストラリアは物凄い背伸びをしようとしているのですね。
    必要/需要があるのは理解しますが。
    米国と英国から原子力産業に従事している(いた)人に移民してもらうのかな。
    言い方悪いけど、(≒WASP)な人達。他は、お呼びでなかったりして。

    14
      • 成層圏
      • 2023年 11月 16日

      この原潜の話のとき、誰もランニングコストの事を言わない。
      イギリスでも原潜と核兵器のメンテナンスで1兆円ずつくらい使っているはずだが、オーストラリアの軍事費で賄えるのかな?
      それに現地生産にこだわるなど、58式さんの言うとおり「ものすごい背伸び」だと思う。
      防衛費の対GDP比が5%くらいになるんじゃない?

      19
      • 成層圏
      • 2023年 11月 16日

      この原潜の話になると、誰もランニングコストのことを言わないが、イギリスでも核兵器と原潜で毎年1兆円くらい使ってるはず。
      オーストラリアの経済力で大丈夫なのか?対GDP比5%くらいになるんじゃない?
      それに現地生産にこだわるなど、58式さんの言うとおり「物凄い背伸び」だと思う。

      1
    • DEEPBLUE
    • 2023年 11月 16日

    米海軍「バイデン大統領っていつもそうですね…!身内そっちのけでバージニア級2隻追加売却とか私たちのことなんだと思ってるんですか!?」

    14
      • Authentic
      • 2023年 11月 16日

      ふたばの二次裏でよくそれの元ネタ画像見るけどあれってなんていう作品?

        • Authentic
        • 2023年 11月 17日

        自己レスだけど機動戦闘車で対戦車戦闘するってやつ
        前から気になってたんだけど自衛隊ネタ漫画ってGATEくらいしか知らない

    • エマノン
    • 2023年 11月 16日

    米海軍自身の原潜の更新分の建造はちゃんと出来るんでしょうかね?
    日本の潜水艦建造もそうだけど、造船所の余裕はないでしょうに

    8
      • DEEPBLUE
      • 2023年 11月 17日

      AUKUS抜きでも純減かどこか延命させないと足りなくなる計算だったはず

        • 匿名希望係
        • 2023年 11月 17日

        人員の確保もな

    • 朴秀
    • 2023年 11月 16日

    米国が本気でオージーを鍛え上げられば原潜を作れる造船所が増えるな
    ファイブアイズの一員だから米国を裏切ることはないだろうし
    他国の金で生産能力を向上できるわけだ

    2
      •  さ
      • 2023年 11月 17日

      問題は、オーストラリアにそれを可能にする工業地帯が少なそうなこと、
      そしてその貴重な地域に大型造船所を作る余地が残ってるかどうか……

      5
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  2. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  3. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  4. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  5. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
PAGE TOP