インド太平洋関連

行き詰まるロシア製兵器の輸出、インドがKa-31調達を無期限で延期

インドは国産空母で運用する早期警戒ヘリ「Ka-31」の追加調達を無期限で中断したと報じられており、制裁に直面するロシア防衛産業界の製造能力や調達資金の送金方法が問題になったらしい。

参考:India halts Ka-31 helicopter deal with Russia

バイデン政権は制裁に直面するロシア製兵器の購入が先細ることを見越して「米国製兵器の輸出条件緩和」を議会に働きかけている

インドは国産空母ヴィクラント(7月就役予定)に必要な早期警戒ヘリ「Ka-31」の追加交渉を2019年に開始、COVID‑19の流行と高額な価格設定がネックとなって交渉が行き詰まったが、総額5億2,000万ドル(Ka-31×10機)の線で話がまとまり2022年2月から契約に関する交渉が進んでいたらしい。

出典:Narendra Modi

しかしロシア軍によるウクライナ侵攻が勃発、制裁に直面したロシア防衛産業界の製造能力に対する懸念、国際社会の厳しい対ロシアへの態度の中で取引を強行するリスク、ルピー・ルーブル決済のメカニズムについて合意に至らないなど複数の問題に直面したため、インド政府の関係者は「Ka-31の調達を無期限で中断することになった」と米ディフェンスメディアに明かしている。

今のところインドはKa-31の追加調達を中止して代替機種の調達を行うつもりは無いらしいが、バイデン政権は制裁に直面するロシア製兵器の購入が先細ることを見越して「米国製兵器の輸出条件緩和」を議会に働きかけており、ブリンケン国務長官は最近「トルコへのF-16V売却」を認めるよう議会に要求した。

出典:SAC Helen Farrer RAF Mobile News Team / OGL v1.0

つまり海外の顧客を奪うことで研究開発への投資→新兵器の実用化→海外輸出による投資資金の回収→研究開発への再投資というサイクルを妨害、ロシア防衛産業界の弱体化を推し進めて兵器輸出を通じた影響力の拡大も阻止できる「絶好の機会」だとバイデン政権は考えているのだが、今のところ議会は輸出条件緩和に大した関心を示してしない。

まぁウクライナ問題で色々とストップしている懸案事項(S-400導入を強行したインドへの制裁など)もあり、抜本的な武器輸出政策の見直しは暫く先になりそうだ。

関連記事:トルコ、F-16V売却は米国側からの提案でF-35追放に対する補償
関連記事:トルコが米国にF-16×40機と近代改修キット80機分の売却を要請
関連記事:インドは困窮するロシアからの石油購入量を増やす方針、中国を意識か

 

※アイキャッチ画像の出典:MC3 John Grandin/U.S. Navy

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コメント

    • や、やめろー
    • 2022年 5月 17日

    いい対応、と言いたいところだが、もう中止にしたらいいのに。SH60とかにすればいいのに。

    4
      • 幽霊
      • 2022年 5月 17日

      早期警戒ヘリはイギリスとロシアの物しかないような?
      オスプレイを早期警戒機にする提案が有るとはネットに有りましたが現在どうなってるんでしょうね?

      30
        • 無印
        • 2022年 5月 17日

        あれば便利だと皆解るけど
        「じゃあ誰がお金だそう、ペイするだけ皆買う?」
        って話になると「う~ん」ってなっちゃう所では

        10
        • 戦略眼
        • 2022年 5月 17日

        EH101AEWがあるよ

    • zerotester
    • 2022年 5月 17日

    早期警戒機は無人機にする方向性ではないでしょうか。イギリスが艦載できるのを作ると言ってますね。トルコはどうするのかな。

    6
      • tofu
      • 2022年 5月 17日

      早期警戒機にできる無人機って今あるのかな
      発電能力と積載量的にターボファンエンジン+大型の機体が必須になりそうだけど、そうなるとグローバルホーククラスの大型機に?

      8
        • zerotester
        • 2022年 5月 17日

        出力はあまり大きくないでしょうから、なるべく近づくのと数でカバーするのではないでしょうか。米軍も無人機の早期警戒機を採用すると言ってるので手はあるのでしょう。

        4
      • APFS
      • 2022年 5月 17日

      プランだけならスホーイのBAS-62がありましたね。10年前なのでお流れになっていそうですが。

      実機が作られたのだと、中国が開発したスマートスキンタイプのJY-300くらいでしょうかね。有人機AEWにはかなわないけど、ないより安全性を高めるし、その分のヘリコプターを対潜にあてられるとのこと。

      4
    • G
    • 2022年 5月 17日

    >今のところ議会は輸出条件緩和に大した関心を示してしない

    何年も前からS-400をはじめ東側兵器の存在感が増し、逆にアメリア製兵器の存在感が減少してもはや政治的圧力の原動力となりえなくなっている状況でなおこの反応はさすがに危機感が足りないように思えるのは私だけでしょうか
    ロシアは現在多くの国が制裁参加中だからとしてもその分中国に付け入る機会を与え、今後さらに米中の国際影響力のバランスが悪くなる要因にしかならないように思えるのですが

    26
      • 四凶
      • 2022年 5月 17日

       単に目先の事だけしか見て動く訳では無いと考えていいのでは。
       死の商人がボロ儲けとかどこの世界の話だよって事もあるし、現状の生産ラインで足りないからライン拡張投資してもそれを満たす需要が続くのかも有るだろう。

       それにS-400の話なんてアメリカが類似のシステム持ってないからもあるだろう。
       アメリカに首輪付けられるの嫌がる国が他国兵器に逃げたとかの要因無視して性能だけを売りとして輸出緩和だけすれば上手くいくのかな。

       そんなに単純な話でも無いと思うし、本気で輸出に力入れるなら改める所は沢山あるんじゃないかな。

      4
    • ななし
    • 2022年 5月 17日

    インドは「Ka-31のインド国内でのライセンス生産」「インド製Ka-31の輸出の自由化」をロシアに提示するかも
    日本のUS-2の時もこの条件出してきたし、足元見て吹っ掛けそう

    15
    • ロシア兵器
    • 2022年 5月 17日

    ロシア兵器を買う国を制裁しても仕方ない。売り手のロシアの軍事産業を制裁しないと…
    今回のロシア軍の停滞は、ロシア兵器の運用国に不安を呼んでいるから、アメリカ様は優しくそこにつけ入りましょう。

    16
    • samo
    • 2022年 5月 17日

    まだ制裁による影響の見通しで話してる段階だから大したことない

    だけど、本当の影響がどこまで出るかがわかる地獄はこれから

    10
    • 無無
    • 2022年 5月 17日

    インドにとっては西も東もないんです、アメリカが冷たけりゃアメリカを切り、ロシアが弱ればロシアを切る
    ひたすら我が道を行く未来の大国

    8
    • 匿名
    • 2022年 5月 17日

    >研究開発への投資→新兵器の実用化→海外輸出による投資資金の回収→研究開発への再投資というサイクル

    ロシアなんかあの体たらくだったわけでこの図式自体絵餅な気がするんだよな…
    ここでは成功例扱いの韓国の輸出案件でも国内からも「あまりに相手に有利すぎる」て批判が出てたりするしな
    更に極端なこと言えばアヴァンガールドとかアレな兵器は大金投じても(多分)回収はできない訳で

    6
    • 金 国鎮
    • 2022年 5月 17日

    何やかやといってもロシアの基礎科学は歴史がある。
    韓国の軍事産業と対照的である。
    韓国は今どんどん軍事輸出で販路を拡大させている。
    彼らの努力もあるが韓国には政治的制限がない。

    ロシアが軍事的に弱くなるということはユーラシアの政治的リスクを増大させる。
    彼らが北の核ミサイルの暴発を抑えている。
    お互い銭儲けに必死であるならば韓国とロシアは間もなく軍事兵器の共同生産に入るだろう。
    アメリカが横やりを入れるかどうかは韓国の軍事技術のレベル次第だろう。
    それにしてもロシアは国内の情報を公開しないのでプーチンだけが何時もテレビに出てくる。

    個人的にはロシア沿海州に行ってみたいね。

    • 月虹
    • 2022年 5月 17日

    ロシアの兵器輸出の後釜を虎視眈々と狙っているのが韓国だ。155mm自走榴弾砲 K9サンダーは派生型を含めると既に8か国(フィンランド、ノルウェー、エストニア、ポーランド<車体のみ>、トルコ、エジプト、インド、オーストラリア)で採用され、インドやフィンランドなど追加購入オプションを行使した国もある。主力戦車(MBT)であるK2は採用国は未だ無いがノルウェーの次期主力戦車選定プログラムで最終候補にレオパルト2A7と共に残り、現地の厳寒期にあたる2月より最終選定が継続されている。エジプトへもK9自走榴弾砲と合わせてK2の売り込みが行われた。歩兵戦闘車(IFV)はオーストラリアのランドフェーズ200プログラムに合わせてK21歩兵戦闘車を改良したAS21レッドバックを開発、ドイツのリンクスと共に最終選定が進行中。AS21はアメリカの次期歩兵戦闘車プログラム(OMFV)の予備設計に進むチームにも選ばれ(アメリカ企業のオシュコシュと提携)、今後はK21に代わり各国にも提案していくようだ。

    韓国の兵器輸出の強みは技術移転やライセンス生産などで現地企業と協力して防衛産業として現地での雇用や経済を生み出すという点が非常に上手いところ。また各国の要求に合わせて仕様を変更したりするなどユーザーからの要求に合わせて柔軟に対応する姿勢が評価されている。韓国製兵器は「西側規格で性能の割りに安い」と言う部分が定評になりつつあるので今後の兵器輸出においてはダークホースになりえるかも知れ無い。

    4
    • APFS
    • 2022年 5月 17日

    以前インドにお断りされたE-2のスキージャンプ対応型にチャンスか。
    まぁ費用対効果で無理なんでしょうけど。

      • 戦略眼
      • 2022年 5月 17日

      自衛隊のE-2Dをスキージャンプ仕様に出来ないかな?

      2
    • A29
    • 2022年 5月 17日

    QE来航時に日本のマスコミへCrowsnestを公開しなかった事から英国はAUKUS内でしか売る気ないかもね。LMも絡んでいるから米国の許可もいるだろうし

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