インドの国防研究開発機構(DOD)は政府に第5世代戦闘機「AMCA=Advanced Medium Combat Aircraft 」の計画承認を要求、計画が承認されればF414搭載のプロトタイプが2026年までにロールアウトするらしい。
参考:DRDO approaches CCS for AMCA project approval
テジャスMK.1A/MK.2と同時並行でAMCAやTEDBFの実機開発に進むのかは何とも言えないが、、、
インドの国防研究開発機構(DRDO)とヒンドスタン航空機(HAL)は第5世代戦闘機「AMCA=Advanced Medium Combat Aircraft 」の開発を進めており、本機の開発は予備設計や詳細設計を終えた段階=基本設計の最終段階を意味するクリティカル・デザイン・レビュー(CDR)に到達、現地メディアは「政府にAMCA計画の承認をDRDOは要求した」と報じている。

出典:Josh097/CC BY-SA 4.0 TEDBF
つまりDRDOが提示したCDRを承認すれば「AMCAの設計仕様が確定してプロトタイプの製造に進める」という意味で、DRDOは「政府が計画を承認すればF414搭載のプロトタイプは2026年までにロールアウトする」と明かしているのが興味深い。
DRDOの説明によるとAMCAは初期型のMK.1と発展型のMK.2に分かれ、MK.1は5.5世代のテクノロジーとF414-GE-IN56を、MK.2は6世代のテクノロジーと新型エンジンを採用し、指向性エネルギー兵器、無人戦闘機との協調能力、ドローンの群制御といった技術も盛り込まれる予定で、空軍が最低でも125機(約7個飛行隊分)の調達を検討している。

出典:Dipjyotimitra14 / CC BY-SA 4.0 テジャスMK.2の完成イメージ
テジャスMK.2とAMCAに搭載するF414はインドと米国が「完全な技術移転を伴う現地生産」を交渉中で、MK.2が採用予定の新型エンジンはフランスや英国との共同開発が噂されているものの、モディ首相はDRDOに「コア・コンピタンスを重視し、開発を進めるプロジェクトのスケジュール遅延やコスト超過を抑制しろ」と指示したばかりなので、政府がAMCAに直ぐゴーサインを出すかは未知数だ。
DRDOが主導する航空機開発プロジェクト | ||
戦闘機 | テジャスMK.1 | 量産中で現在までに空軍が40機発注 |
テジャスMK.1A | 空軍が73機発注、2024年2月までに初号機引き渡し | |
テジャスMK.2 | 2024年に初飛行、2028年に運用開始を予定 | |
AMCA | 承認されれば2026年までにプロトタイプがロールアウト | |
艦上戦闘機 | TEDBF | 2026年に初飛行、2031年に量産機の生産開始を予定 |
初等練習機 | HTT-40 | 開発完了、空軍が2023年に70機発注 |
高等練習機 | LCA-LIFT | 空軍が10機発注、4月5日に量産機が初飛行に成功 |
超音速練習機 | HLFT-42 | 今年2月にエアロ・インディアで発表 |
軽輸送機 | サラス | MK.1の量産を開始、2025年にMK.2の初飛行を予定 |
攻撃ヘリ | プラチャンド | 量産中で162機以上の発注を予定 |
軽攻撃ヘリ | ルドラ | 空軍と陸軍で90機以上を運用中、75機を発注 |
小型ヘリ | LUH | 開発完了、空軍と陸軍が12機発注、200機程度を調達予定 |
多目的ヘリ | IMRH | Mi-17やMi-8の更新用プログラム、2025年頃に初飛行を予定 |
無人戦闘機 | CATS Warrior | 2024年~2025年に初飛行を予定、空軍と海軍が採用予定 |
ステルス無人機 | Ghatak | 技術実証機が初飛行、2025年頃にプロトタイプの初飛行を予定 |
無人回転翼機 | NRUAV | イスラエルとの共同開発、予備設計段階 |
DRDOが主導する航空機開発プロジェクトを数えるのはもう両手では足りない段階(UCAVやUAVの開発・製造プロジェクトを加えるとプロジェクト数はもっと増える)に達しており、テジャスMK.1A/MK.2と同時並行でAMCAやTEDBFの実機開発に進むのかは何とも言えないが、これだけのプログラムを同時に進めているので「インドの航空機開発能力」は大きく進歩している可能性が高く、研究開発に投入される人員数や規模だけで言えば相当なものだろう。
プロジェクトと実力が釣り合っていなかった時代があったため「本当に計画通り進むのか」という危惧もあるが、テジャスMK.1AやLCA-LIFTの開発作業はスケジュール通り進んでおり、従来とは異なる顔を見せ始めているのも事実だ。

出典:Narendra Modi
勿論、インドの航空機開発にとってエンジンの国産化はまだハードルが高いものの、足りない部分は海外から技術導入でカバーすることができ、モディ首相が進める「Make in India」のお陰でDRDOは技術移転を引き出すのに有利な立場を獲得しているため、今後もインド市場に食い込みたい米国、英国、フランス、イタリアは技術移転や現地生産に積極的な姿勢を見せている。
インド政府は調達する防衛装備品について段階的に輸入を法律で禁止、インド市場で海外企業が生き残るにはインド企業と提携して装備品を現地生産するしかなく、このやり方は技術移転に消極的(適当)だった欧米企業の考えを改めせるのに効果で、これを見た中東諸国も同じような政策を相次いで導入しており、インドや中東に防衛装備品を売り込みたい場合「作ったものを輸出する」のではなく「現地で作ったものを納品する」というアプローチが提案できないと市場から退場するしかない。
少々話が逸れたが、インドは成長した航空機開発能力とMake in IndiaでAMCAやTEDBFをモノにしてくる可能性があるため、個人的には非常に楽しみな存在だ。
関連記事:海外市場での存在感を高めるインド、テジャスMK.2に16ヶ国が関心を示す
関連記事:インドが国産練習機HTT-40を70機購入、700万ドルで海外の顧客にも提供
関連記事:エアロ・インディア、HALが超音速練習機/軽戦闘機「HLFT-42」を発表
※アイキャッチ画像の出典:FlyingDaggers45SQUADRON/CC BY-SA 4.0
AMCA案は、テジャスの艦載機版とは、また違うみたいですね。
もし、同時に開発を進めているなら、ある意味、スゴイ!
それに引き換え、我が国は。
気持ちはちょっとは分からんでもないですが
第五世代機を単独でモノにしてみせたのは米国だけではないですかね
露中は言うに及ばず、インドのコレも米国あってのものでしょ(完成せしめたわけでもなし
なんだかですが。
どこの国もそうかと思いますが、エンジンとアビオニクスを
自国製産できるか否かということでしょうか。
或いは、サプライチェーンの構築を許されるか、でしょうか。
弱そ
記事にカスリもしない事なんだけど、サムネの模型の迷彩が空自の作業服に近い色合いで少しだけ親近感を覚えた。
ピクセル系のデジタル迷彩って昔流行ったけど、まだ続くのかね?
まあ人口で言えば日本の10倍、アメリカの数倍で教育・技術の水準もかなり高く、隣国と頻繁に小競り合いしてる様な状況なんだからフェイズの違う4.5世代機3機種、第5世代機1機種くらいの同時並行開発はリソース的にはどうって事ないんじゃないかな。
冷戦中のアメリカなんかセンチュリーシリーズ筆頭にもっと多くの機種をしかも競作で開発してた訳で(まああれは「ジェット機」自体が未成熟でよく言って試行錯誤、悪く言えば迷走してた部分があるので差し引いて考える必要はあるんだろうけど)。
>テジャスMK.1AやLCA-LIFTの開発作業はスケジュール通り進んでおり、従来とは異なる顔を見せ始めているのも事実だ。
インド時空は過去の話しと化しつつあるのか。
ネタが消えていくのは何だか寂しい感じ。
>インドや中東に防衛装備品を売り込みたい場合「作ったものを輸出する」のではなく「現地で作ったものを納品する」というアプローチが提案できないと市場から退場するしかない。
そして現地生産や技術移転の結果、「独自」に作れるようになったら結局市場から退場させられることになるんだろうな。「パクリ」は中国だけのお家芸じゃない。
>そして現地生産や技術移転の結果、「独自」に作れるようになったら結局市場から退場させられることになるんだろうな。「パクリ」は中国だけのお家芸じゃない。
その手の市場を失う行為は、一世紀ほど前の日本を舞台にも起きた事ですね。
ただし当時新興勢力だったビッカースやアームストロングは、日本での経験を踏み台にして英国本国での市場参入を果たし、失ったものより得たものの方が大きかった様ですが、
今回のケースだと既存勢力の各メーカーは、単純に市場を失うだけの結果になりそうですね。