インド太平洋関連

イスラエルとシンガポールが狙う東南アジアの対艦ミサイル需要

15日に開幕したシンガポール・エアショーにイスラエルとシンガポールが共同開発したBLUE SPEAR(ブルースピア)ミサイルが初めて登場した。

参考:IAI debuts its new surface-to-surface missile at Singapore Airshow

シンガポール・エアショーに初登場したブルースピアが東南アジアの対艦ミサイル需要に目をつけているのは明らか

BLUE SPEAR/5G SSM(ブルースピア)とはイスラエル航空宇宙産業(IAI)の対艦ミサイル「ガブリエル」をベースに開発した亜音速域で作動する対艦/対地ミサイル(最大射程280km)で、シンガポールのSTエンジニアリング(STE)が弾頭やブースターモーターなど主要なサブシステムの設計・開発を担当、IAIがそれ以外の部分の開発を担当しており、両社の合弁会社Proteus Advanced Systemsが製造・販売を行っている。

出典:Kongsberg

ブルースピア最大の特徴はGPS妨害下でも非常に正確な内蔵INS(慣性航法装置)を使用して精度命中の高い攻撃が実行できるという点にあり、登場して間もないにも関わらずエストニアの対艦ミサイル調達プログラムでスウェーデン製のRBS-15/Mk.4、ノルウェー製のNSM、米国製のハープーンBlockIIを破り初受注を獲得、さらに保有するハープーンの寿命が2023年に尽きる英海軍へも売り込みが行われるなど非常に動きが活発で、アジアで最も影響力の高いシンガポール・エアショーに満を持して登場した。

当然、これをシンガポール・エアショーに持ち込むこということは同地域の国防関係者にブルースピアを売り込むことを目的にしているのだが、南シナ海を舞台にした中国との対立に悩むフィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナム、台湾は比較的安価で効果が高い対艦ミサイルの導入に力を入れており、東南アジアの沿岸防衛=対艦ミサイル需要に目をつけているのは明らかだ。

出典:Адміністрація Президента України / CC BY 4.0 ネプチューン

現在、東南アジア諸国の対艦ミサイル需要には米国のハープーン、ノルウェーのNSM、インドのブラモス、ロシアのK-300P、ウクライナのネプチューン、韓国の海星などが提案されており、フィリピンは艦対艦ミサイルに海星を地対艦ミサイルにブラモスを導入、インドネシアは最大120隻整備することを検討しているミサイル艇にNSMを採用する可能性(今年中に適合テストが実施されるらしい)が高く、ベトナムは地対艦ミサイルにK-300Pを導入済みだが新たな地対艦ミサイル導入を検討中、マレーシアも艦対艦ミサイルにNSMを導入したが地対艦ミサイル導入も検討中している。

イスラム教徒が多いインドネシアやマレーシアはイスラエルとの国交正常化を拒否しており、シンガポール企業との合弁会社を通じて開発したブルースピアを「非イスラエル製」と主張して売り込むことが出来るのかは謎だが、フィリピンやベトナムに売り込むには特に支障がない。

果たしてブルースピアは海外市場で何処まで顧客からの支持を集めることが出来るだろうか?

因みにイスラエル航空宇宙産業が手を組んだシンガポールのSTエンジニアリングは世界100ヶ国以上(米国、英国、スウェーデン、フィンランド、アラブ首長国連邦、インド、インドネシア、フィリピン、タイ、ブラジルなど)に防衛装備品やサービスを提供、24ヶ国46都市(北米、欧州、アジア、中東地域)に100を超える子会社や関連企業を所有しているアジアでも有数の防衛産業企業で、売上高は50億ドル(売上の内訳は76%がアジア、19%が米国、残り5%が欧州と中東)を突破している。

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※アイキャッチ画像の出典:Israel Aerospace Industries Ltd

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コメント

    • A
    • 2022年 2月 16日

    とうとうシンガポールまでも。
    最近はいろんな意味で武器輸出のハードルが下がってるんだろか。
    なんなら日本製も買ってくれないかな。
    結構いい線行ってると思うんだけれど。

      • ブルーピーコック
      • 2022年 2月 16日

      『12式地対艦誘導弾能力向上型』の出来と、政府の方針次第では叶うかもしれませんね。まずは試射までこぎつけてほしい。

      15
      • バーナーキング
      • 2022年 2月 16日

      読み違いだったらすまんけど、シンガポールやSTエンジニアリングを格下に見てるならそれは違うと思うよ。

      9
      • 投石器
      • 2022年 2月 17日

      30FFMのインドネシア輸出が叶った場合、搭載ミサイルはどうなるのでしょうね
      17式艦対艦などがセットで輸出されるのかどうか

      2
    • tarota
    • 2022年 2月 16日

    国産のミサイルはわりかし高性能だと思うのだが輸出の話題が出ないのが謎だ
    やっぱ高いのかね

    1
      • トーリスガーリン
      • 2022年 2月 16日

      ワンセットの規模もデカいからなぁ
      ただ地対艦ミサイルを複数連隊規模で運用してきたノウハウの提供とかは他にはあまりないセールスポイントになるかも?

      8
      • 匿名
      • 2022年 2月 16日

      言われてみると、対艦ミサイルなどの売り込み、聞いた覚えが無く、不思議な感じですね。
      レーダーとか輸送機などと異なり、﹙国内を気にして?﹚売り込み難いのかな。
      それとも、単に知らないだけなのか。

      2
      • ブルーピーコック
      • 2022年 2月 16日

      ハープーンやエグゾセといった実績のある競合品が多いのと、ロシアのP-800の性能が高い(その分、ミサイルは大きいけども)ので、購入するならそっちに流れるでしょうね。
      さらにP-800はマッハ2.5で射程距離300km、中国のYJ-62は亜音速ながら射程距離400kmで、両方とも輸出モデルあり。
      12式地対艦誘導弾の実際の性能は分かりませんが、これらに勝る何か(現地生産の許可など)が無いと厳しいでしょう

      5
    • 折口
    • 2022年 2月 16日

    東南アジア諸国で対艦ミサイルの更新/導入が加速しているのは良いですね。艦隊規模の差から言っても中国海軍の水上優位は揺るがないでしょうが、各国がほんの僅かでも長射程で迎撃難易度の高いASMを装備すればそれだけ有事における中国海軍の潜在的リソースを浪費させることになりますからね。

    11
    • 演習なんだけども対艦ミサイルと小型ボートの集中運用で空母、イージス艦、強襲揚陸艦を撃沈しまくった事がありましてな。今ならドローンとの連携になるんだろうけど全く侮れないどころか決定打になりうるんですわ。

        • うみ
        • 2022年 2月 16日

        青年学派に時代が追いついたのか。

    • うみ
    • 2022年 2月 16日

    いいねぇ。
    中共海軍が南シナ海から出られなくなれば、大分楽になるよ。

    1
      • くらうん
      • 2022年 2月 17日

      水を差すようだけど、ASEANのどの国も自国が直接攻撃にあわない限りこのミサイルを中国海軍にぶっ放すことはまずないよ。
      中国との対峙で東南アジアの参戦はもちろん、クアッド側への支持も期待しない方が良い。

      3
        • 匿名
        • 2022年 2月 17日

        >中国との対峙で東南アジアの参戦はもちろん、クアッド側への支持も期待しない方が良い。

        仮に参戦を行うとしても、中国側の敗戦濃厚な場合限定でしょうね。
        クアッド側への支持は、もうちょい早めで中国不利位でもあるかも?、だけど。

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