インド太平洋関連

普及が進むUAV、東南アジアの国がイスラエル製無人航空機「ヘルメス900」を導入

エルビット・システムズは2日、アジアの国と無人航空機「ヘルメス900」供給に関連した約3億ドルの契約を獲得したと発表した。

参考:Elbit Systems Awarded a $300 Million Contract to Supply Hermes 900 Unmanned Aircraft Systems to a Country in Asia

東南アジアの国がイスラエル製の無人航空機「ヘルメス900」を導入

エルビット・システムズが開発した「ヘルメス900」は中高度(最大高度9,100m)を30時間以上の飛行することが可能で、機体に搭載しているEO/IRセンサーや合成開口レーダーを駆使して広域を長時間偵察・監視することができる非武装の無人航空機で多くの国が海上監視用途で導入することが多いが、軍事作戦の偵察・監視にも活用することが可能でレーザー目標指示装置を備えているため目標にレーザー誘導に対応した兵器を誘導することも出来る。

特にアゼルバイジャン軍はヘルメス900を昨年のナゴルノ・カラバフ紛争に投入して戦場の偵察・監視に活用しており、イスラエル軍も同機を軍事作戦に使用しているため非軍事用途の無人航空機という訳ではない。このヘルメス900にアジアの国から注文が入ったとエルビット・システムズは発表したが正確な顧客の情報は伏せられている。

しかし複数の海外メディアは「ヘルメス900を発注したアジアの国の空軍はヘルメス450を運用している」と報じているのでフィリピン、シンガポール、タイのいずれかがヘルメス900を発注した可能性が高い。

参考:Asian Country Orders Hermes 900 UAVs for $300M

出典:Public Domain 中国航天科技集団有限公司が開発を手掛けた無人航空機CH-4

上記に挙げられた国がヘルメス900を導入したところで日本の安全保障に問題を引き起こす訳ではないのだが、東南アジアの国が軍事用途で無人航空機を導入しているか確認してみるとカンボジアとラオスを除く国の軍事組織が何かしらのUAVやドローンを導入済みで、特にフィリピン、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイといった国は本格的なUAV(イスラエル製のヘルメス900やヘルメス450以外のUAVも多数、米国製のスキャンイーグル、中国製のCH-4、豪州製の無人回転翼機S-100など)導入して活用しており無人航空機は特別装備では無くなってしまったと改めて実感させられた。

※追記:ヘルメス900を導入したのはシンガポールで販売数は推定12機、3億ドルの契約にはコントロールシステムや数年間のメンテナンスプログラムも含まれいるらしい。

参考:Elbit’s Hermes 900 deal: the country in Asia upgrades its third drone squadron

あともう一つ無人航空機に関する興味深い話がある。

リビアの国民統一政府(GNA)側は2020年5月にトブルク政府側を支援するリビア国民軍の重要拠点「アル・ワティヤ空軍基地」を襲撃した際、ロシア製の近距離防空システム「パーンツィリS1」を無傷で奪取することに成功したが、この貴重な戦利品の所有権を巡って米国とトルコの間で争いが発生したとThe Africa Reportが報じている。

出典:CC BY-SA 3.0 / A.Savin パーンツィリS1

参考:How the US and Turkey agreed to share a captured Russian defence system

結局両国は話し合いの末、無傷のパーンツィリをトルコに運んで両国のエンジニアがロシア製のシステムを研究することで妥協したらしい。

The Africa Reportは両国がパーンツィリで使用されている電子的な特性を解明することで得られた成果を米国はMQ-9、トルコはバイラクタルTB2に活かせば戦場での優位性を確保出来るようになると予測していたが、トルコのUAV開発企業ベイカーは最近「ロシアの電子妨害システムはバイラクタルTB2の行動を妨害できない、トルコの無人航空機は常に戦場の上空に留まり続けることができる」と自信たっぷりに語って注目を集めている。

参考:SİHA ve İHA’ların üreticisi Haluk Bayraktar ile yayındayız

出典:Savunma Sanayii Başkanlığı トルコの無人航空機「バイラクタルTB2」

なぜロシアの電子妨害システムがバイラクタルTB2に通用しないのかについては不明だが、入手したパーンツィリの研究結果やアゼルバイジャン軍を通じて入手したロシア製兵器の電子的なデータなどから新たな電子的な対策が施されたか、噂されていたAIによる自律的な攻撃能力の付与がバイラクタルTB2に追加されたのかのどちらかだろう。

日本もロシア軍が北方領土に配備した電子戦システムの脅威に晒されているので、トルコのようにロシア製兵器の特性や戦場でのデータが入手できれば大いに助かるのだが、、、

関連記事:UAV開発が盛んなポーランド、1,000セットも導入した国産カミカゼドーロンの実力

 

※アイキャッチ画像の出典:Martin Thoeni、www.powerplanes.ch / CC BY-SA 4.0

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 3月 03日

    何でリビアが奪取したものを、アメリカとトルコが所有権争いをしたのだろうか?

    1
      • 匿名
      • 2021年 3月 03日

      そりゃ戦場にそれぞれの軍事顧問団が存在してたんだよ、あるいはスポンサーとしてな

      7
      • 匿名
      • 2021年 3月 03日

      GNAの後ろ盾だから

      7
      • 匿名
      • 2021年 3月 03日

      当ページの過去記事にもありますが、トルコは暫定政権側に軍事的介入をしています。
      アメリカは積極的に関与していない印象だったのですが。。。

      3
    • 匿名
    • 2021年 3月 03日

    どんな組織も活発に動いてないと情報も入らないんだよね。戦争やってた日本軍も鹵穫兵器から情報を得てたし。自衛隊の出遅れは避けられない
    だからって戦争に参加しろって話はしないからなw

    15
    • 匿名
    • 2021年 3月 03日

    TB2にロシアの電子戦が利かなかったてのはあくまでメーカーが主張してるだけだから本当かどうかわからんってのが実情だと思うがなあ

    • A
    • 2021年 3月 03日

    トルコってロシアからS400を買うってことでアメリカともめてなかったっけ?
    是是非非ならそれでいいんだけれど、鹵獲されたロシアは黙っていないんじゃないかな。
    トルコってよくわかんない国だな。

    1
      • 匿名
      • 2021年 3月 03日

      S-400を導入したことでトルコの全てを否定していたら政治や外交交渉なんて出来ないよ。あくまでS-400については米国とトルコは意見が食い違って対立しているけど協力出来る部分は手を握り合うのが政治さ。

      4
      • 匿名
      • 2021年 3月 03日

      それはそれ!
      これはこれ!

      1
    • A
    • 2021年 3月 03日

    動画の中でエルメス900の背中に何か載せているけれどそんなことできるんだね。
    ならそのうちレドーム載せてAWACS仕様なんてのができるんじゃない?
    これなら極超音速何たらミサイルってので狙われても人的被害は出ないよね。
    でも価格が高くなるからダメかな。

    • 匿名
    • 2021年 3月 03日

    時が見える・・・

      • 匿名
      • 2021年 3月 03日

      あなた書き込むのが遅すぎたのよ

      • 匿名
      • 2021年 3月 03日

      日本の場合、商標登録の関係で玩具には使えないが、兵器の場合どうなんだろう?

        • 匿名
        • 2021年 3月 04日

        商標は、ジャンルの異なる物は個別に登録可能だったかと。

        • 匿名
        • 2021年 3月 04日

        エルメスの語源って本来はギリシャ神話だよね、
        商標登録の限度ってもんがあるだろう

    • 匿名
    • 2021年 3月 04日

    エルメスという名前で更に無人機なのか・・・

      • 匿名
      • 2021年 3月 04日

      母機側にして欲しいよね。

      1
        • 匿名
        • 2021年 3月 04日

        インド系女性パイロットが要るよ

          • 匿名
          • 2021年 3月 11日

          「大佐、今日からノーマルスーツを着けて出撃なさってください。」

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