中東アフリカ関連

モサド元長官、これほどのロケット弾をハマスが持っていると知らなかった

多くの海外メディアは「なぜ世界有数の軍事力と一流の情報機関をもつイスラエルがハマスの奇襲を許してしまったか」と首を傾げているものの、モサドの元長官は「これほどのロケット弾を持っていると知らなかったし、何が起きているのかも見当がつかなかった」と述べた。

参考:A ‘Pearl Harbor’ moment: Why didn’t Israel’s sophisticated border security stop Saturday’s attack?
参考:Israel’s former Mossad chief: “We didn’t have an inkling of what was going on”

7日に戦争が始まったのは本当に驚きで何が起きているのかも見当がつかなかった

イスラエルはハマスのテロ攻撃に慣れているものの「7日の攻撃」は予兆や警告がないまま始まったため、イスラエルメディアを含む多くの海外メディアは「なぜ世界有数の軍事力と一流の情報機関をもつイスラエルがハマスの奇襲を許してしまったのか」と首を傾げており、CNNの取材に応じたイスラエル国防軍のジョナサン・コンリクス元報道官も「これはシステム全体の失敗を示しており、イスラエルにとってのパールハーバーだ」と述べた。

出典:Twitter経由

イスラエル国防軍のヘクト報道官は「インテリジェンスの失敗」を追求する記者の質問に沈黙を貫いているものの、CNNの取材には「目の前の戦いと市民の保護に集中してるため(インテリジェンス面で)何が起きたのかは後で話すことになる」と述べているため、情報面で何らかの問題があったと認識しているのだろう。

イスラエル諜報特務庁(モサド)のエフライム・ハレヴィ元長官も「7日に戦争が始まったのは本当に驚きで何が起きているのかも見当がつかなかった。我々は今回の攻撃に何の警告も発していないし、24時間以内に発射されたロケット弾の数も3,000発を越えており、これは我々の予想を超える数だ。これほどのロケット弾を敵が持っているとは知らなかったし、これほど効果的であるとも思っていなかった。ガザ地区のハマスがイスラエル領の奥深くまで侵入して集落を制圧したのは今回が初めてのことで、残念ながら非常に調整された作戦だったと思う」とCNNの取材に明かしている。

出典:GoogleMap 管理人作成(クリックで拡大可能)

ハマスが大量のロケット弾を何処から入手しているのかは謎だが、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のジャスティン・ブロンク氏は過去「イランが工作員をハマスに送り込んで無人機やロケット弾の製造技術を移転している」と主張したことがあり、これらの兵器はイランからの密輸や市場で入手可能な材料やコンポーネントを使用しているため「入手ルートの遮断」が困難で、ハマスが使用している簡素なロケット弾の製造コストは500ドル~600ドルだと推定されている。

ハレヴィ元長官も「ハマスは海からの密輸ルートで部品や材料を持ち込み、ガザ地区でロケット弾を製造した可能性が高く、イスラエル軍に察知されることなくテストや訓練を行うことが出来たのだろう」と指摘し、我々には何が起きているのか全く理解していなかったと付け加えているのが印象的だ。

2021年の攻撃時も「イランはガザ地区に落下したアイアンドームの迎撃弾からシーカー部分を入手するのに成功し、アイアンドームの迎撃限界に関する情報を手に入れてた」と噂されており、ハマスによるロケット弾攻撃は一般的な高角の弾道ではなく非常に低い弾道で発射されているという報告もあるため、イランやハマスはアイアンドームの脆弱な部分を狙った戦術を採用している可能性が高い。

因みに7日の攻撃でイスラエルが被った人的被害は1,800人を越えており、このうち何人がロケット弾攻撃による犠牲者なのかは不明なものの、ハマスは上記のような運用戦術と大量のロケット弾で「アイアンドームの迎撃」を振り切ったのだろう。

関連記事:ガザ地区周辺を巡る戦い、イスラエル側の死傷者数は増加し1,800人を突破
関連記事:奇襲攻撃で1,000人以上が死傷、イスラエルにとって今回の攻撃は9.11に匹敵
関連記事:ハマスの奇襲攻撃を受けたイスラエル、前例のない代償を支払わせると約束
関連記事:ハマスがイスラエルに対する大規模攻撃を宣言、複数の入植地や基地を占拠
関連記事:イスラエル国防軍、Iron Vision搭載のメルカバIV最新バージョンを発表
関連記事:UAVがすり抜けるの時間も問題? 厳しいテストに晒されたアイアンドーム
関連記事:アイアンドームによる迎撃も限界、3日間で打ち込まれたロケット弾は1,500発以上
関連記事:UAV技術の拡散阻止は不可能、日本企業が不正輸出した部品は中東で無人機に化ける

 

※アイキャッチ画像の出典:حركة حماس

ガザ地区周辺を巡る戦い、イスラエル側の死傷者数は増加し1,800人を突破前のページ

バイデン政権、大統領選挙までのウクライナ支援に1,000億ドルを要請か次のページ

関連記事

  1. 中東アフリカ関連

    TB3やMQ-9B STOLに対抗?イスラエルも空母対応の無人航空機を開発中

    ファンボロー航空ショーに参加したイスラエル航空宇宙産業は19日、クイー…

  2. 中東アフリカ関連

    ガザ地区のシファ病院が機能を停止、集中治療室の患者が死に始める

    ガザ地区最大のシファ病院は「イスラエル軍が病院に向けて発砲してくる。発…

  3. 中東アフリカ関連

    難民キャンプへの空爆、イスラエル軍は南へ逃げるよう警告したと攻撃を擁護

    イスラエル軍によるガザ北部への空爆で多数の市民が死傷し、国際社会から非…

  1. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  2. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  3. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  4. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  5. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
PAGE TOP