中東アフリカ関連

イスラエル国防軍、Iron Vision搭載のメルカバIV最新バージョンを発表

イスラエル国防軍は20日「5年間の開発プロセスを経て新しい戦車“Barak/バラク”を発表した。高度なセンサーとAI処理を搭載した新しい戦車は国防軍の即応性と能力を向上させるだろう」と発表、この戦車はメルカバIVの最新バージョンだ。

参考:Israel unveils new ‘5th generation’, ‘lightning’ version of Merkava tank

重装甲化、APS採用、徘徊型弾薬の搭載の次に来る地上車輌のトレンドは「360度の状況認識力」になるかもしれない

イスラエル国防軍は20日「5年間の開発プロセスを経て新しい戦車“Barak/バラク”を発表した。高度なセンサーとAI処理を搭載した新しい戦車は国防軍の即応性と能力を向上させるだろう」と発表、この戦車は2015年頃に開発構想の検討が始まり、2018年に正式な開発作業を開始、2020年頃にプロトタイプが完成してテストが行われていたメルカバIVの最新バージョンのことだ。

バラクバージョンには新型APSのトロフィー(構造的は変化はなく技術的な改良が加えられているらしい)、戦車内部から外の状況を360度見渡せるIron Vision、最新のセンサーシステム、収集した膨大なデータを処理するAIシステム、高度なネットワーク機能が組み込まれており、バラクが配備される第401機甲旅団の司令官は「この戦車の導入は作戦効率を飛躍的に向上させる絶好のチャンスだ」と述べている。

要するにメルカバIVのバラクバージョンは構造的な変更=主砲や装甲の強化などは行われていないものの、Iron Vision、最新のセンサーシステム、AIシステムによる状況認識力の拡張で戦闘効率が格段に向上し、Iron Visionは演習データを投影することで実戦に近い訓練にも活用でき、Torch-X C4ISRに接続されたバラクバージョンは完全な戦場デジタルネットワークの一部に組み込まれ、他の戦車や他の部隊だけでなく司令部とも情報をリアルタイムで共有できるようになるため「どのような状況下においても最適な意思決定を迅速に下せるようになる」と言ったところだろう。

出典:Australian Army

因みオーストラリア陸軍向けのRedbackにもIron Visionが採用されており、似たようシースルー技術も複数の国や企業が開発しているため、重装甲化、APS採用、徘徊型弾薬の搭載の次に来る地上車輌のトレンドは「360度の状況認識力」になるかもしれない。

関連記事:豪陸軍はハンファのRedbackを選択、韓国がドイツに勝利して契約獲得
関連記事:レオパルト2A8にトロフィー採用、欧州でのAPS普及が本格化する兆し

 

※アイキャッチ画像の出典:Israel Ministry of Defense

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コメント

    • 58式素人
    • 2023年 9月 21日

    写真の装甲表面のざらつきは何を意図しているのでしょう。
    昔のツィメリット・コーティングみたいなものでしょうか。
    今は磁気吸着地雷は使っていないと思うのですが。
    それとも、着弾時に何らかの形で信管の作動を阻害するのかな。

      • 拓也さん
      • 2023年 9月 21日

      あれは滑り止めですね。日本の89式装甲戦闘車やアメリカのエイブラムスにも付いています。 砂漠地帯での運用なので砂のせいで特に滑りやすいのでしょうね。

      19
      • ななし
      • 2023年 9月 21日

      赤外線対策のコーティングか何かのでは?

      2
    • 航空太郎
    • 2023年 9月 21日

    これまでの戦車は最強ではあるものの、死角が多く、そこを突かれる問題があったので随伴歩兵が必要となってましたけど、戦車内部から外の状況を360度見渡せるIron Visionが実装されると、戦車4台の小隊編成でも互いの死角を補って運用できそうですね。

    気になるのは、各種新装備がどれもこれも電力を多く必要としてるとこ。F-35も電力不足が問題視されてるので、今後の装甲車両は自家発電能力の高いことが前提となっていきそうですね。なんかどんどん高額ルートに入ってる気がしますが、ウクライナ侵攻で容易く狩られる状況を見れば致し方ないことなのでしょう。

    16
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2023年 9月 21日

    遂に公表されたかという感じですが、ウクライナ紛争で徘徊ドローンが幅を利かせている状況を鑑みるにIron Visionがどれだけ徘徊ドローンに対して有効かどうかによりますが、戦車の進化の方向性が正しいのかどうかが疑問に思えてきてしまいます

    4
    • ジュディ
    • 2023年 9月 21日

    次に来る地上車輌のトレンドはサイバー戦力とレーザーと思っている
    敵の砲弾やミサイル、自爆無人機を遠距離で起爆するサイバーハッキングやスプーフィングなどの能力
    レーザーは地雷探査にも攻撃にも使える

    2
    • 名無し
    • 2023年 9月 21日

    AIの補助があるとはいえ、艦船と違い少ない人員でどこまで対処できるんでしょうね。
    価格も鰻登りで前線に出すのを躊躇しちゃいそう…

    4
      • hoge
      • 2023年 9月 21日

      誤検知、誤射を防ぐ努力が非常に重要になりそうですね…

      3
    • たむごん
    • 2023年 9月 21日

    各種、外付けセンサー・光学機器が、安価な徘徊ドローンによる攻撃にどの程度の耐久性があるのか気になりますね。
    戦車の徹甲弾による直撃よりも、ドローンによる被弾回数の方が(異なる強度)、多くなる事が想定されると思います。

    結局のところ、やはり実戦を繰り返した兵器が、信頼性に繋がるという基本に繋がりますね。

    3
    • バーナーキング
    • 2023年 9月 21日

    自前の360°情報に広域データリンクやUAVからの情報も統合するだろうからむしろ目をつぶされてもかなり普通に戦えそう。

    5
    • ブルーピーコック
    • 2023年 9月 21日

    次は自動運転かな。人への衝突防止機能を付けるかは知らんけど。

      • 台湾大好き
      • 2023年 9月 21日

      艦船になぞらえるなら、情報の統合による視覚化・一元化、自車への脅威の自動検出、自動優先度付、(個別兵装毎にon-offされた)自動対応ですかね。
      乗員が寝てても識別信号に応じないドローンは自動撃墜とか。そのくらいしないと戦車の生き残りは難しそうです。

      5
    • チェンバレン
    • 2023年 9月 21日

    360°の監視というとF-35のEO-DASを思い出させる

    F-35のように戦車兵のバイザーに投影するのか、戦闘室にモニターをぐるりと並べるのか

    当面の脅威であるゲリラ相手に戦車は過剰な気もするが、まだ国家間の紛争が起きうる地域だけにMBTは必要ということか

      • バーナーキング
      • 2023年 9月 24日

      元記事見ると載ってますが「Iron Vision 『helmet』」なので前者ですね。
      YouTubeでも公式の動画が見つかりますが仕組み的にはまんま航空機用とかと同じですね。
      さすがに車内でぶつけて壊して数千万がパァ、なんて事にはならない造りにはなってるでしょうけど。

    • Natto
    • 2023年 9月 21日

    それでも、車外偵察や自分で顔を出す事は大事と言いたいけど、それで沢山死んでるのでこういうシステムを開発したんだろう。

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