中東アフリカ関連

ECOWASによるニジェールへの軍事介入、作戦開始日=D-day設定を発表

西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)はニジェールに対する軍事介入について「D-dayが決定された」と明かし、内部的に設定された期限までに事態の打開=バズム大統領の政権復帰が叶わなければ「武力」を行使する構えだ。

参考:West African bloc says ‘D-Day’ set for possible Niger intervention

ECOWASは「内部的に設定された期限」までに事態の打開=バズム大統領の政権復帰が叶わなければ「武力」を行使する

西アフリカのニジェールで7月26日にクーデターが発生、大統領警護隊の兵士らはバズム大統領を拘束して「祖国救済国家評議会(CNSP)」の樹立を宣言、大統領警護隊の司令官だったチアニ将軍が新たな元首に就任し、ニジェール軍のイサ参謀総長も「致命的な内部衝突を避けるためCNSPを支持する」と表明したが、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)はニジェールの軍事政権を認めず「10日以内に民主的に選出された政府=バズム大統領による統治を回復させなければ軍事介入もありえる」と通告。

出典:ECOWAS

これに対してマリとブルキナファソの軍事政権がニジェールの軍事政権を支持し「周辺国による軍事介入を自らへの宣戦布告とみなす」と宣言したたものの、ECOWASのオマール・トゥーレイ委員長は10日「ニジェールの秩序を回復させるためECOWASの待機部隊を直ちに配備するよう命じた」と発表。

コートジボワールのワタラ大統領も「ECOWASの指導者達はニジェールに軍を派遣することを承認した。この軍事介入は出来るだけで速やかに行われるだろう。コートジボワールも850名から1,000名規模の大隊を派遣する」と述べ、これを受けて現地メディアは「ECOWASは軍にニジェールへの軍事介入を命令した。西アフリカに戦争が迫っている」と報じていたが、今月12日に予定されていたECOWAS加盟国の参謀総長会議が急遽キャンセルされたため軍事介入の可能性は少しだけ遠ざかっていた。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Sean Castellano

参謀総長会議はECOWASが決定した「待機部隊の配備」を協議して「軍事介入に関する最良のオプション」を各国の指導者に提示するため設定されていたのだが、ロイターは19日「ガーナの首都アクラで参謀総長会議が行われ、軍事介入に関する具体的なプランが話し合われた。ECOWASのアブデル・ファタウ・ムーサ安全保障担当委員は『まだ調停団の派遣を準備している最中なので対話の扉を完全に閉ざしたわけでは無いが、終わりの見えない対話に付き合う気はなく、命令が下されればいつでも出動する用意があり、作戦開始日=D-dayも既に決定されている』と述べた」と報じている。

要するにECOWASは「内部的に設定された期限」までに事態の打開=バズム大統領の政権復帰が叶わなければ「武力」を行使するという意味だが、どこにD-dayが設定されているのかは不明だ。

関連記事:対話ではなく武力を選択したECOWAS、ニジェールへの軍事介入を命令
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※アイキャッチ画像の出典:Zenman/CC BY-SA 3.0

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コメント

    •    
    • 2023年 8月 19日

    経済支配していたフランスがまた利権を得ようと絡んでくると収まるものも収まらなそうで

    しかしマリとブルキナファソは口先だけでなく派兵するんだろか?
    どうなるか見守るしかないか

    7
      •  
      • 2023年 8月 19日

      やっぱり

      解決するなら
      外交よりも戦争だよな

      3
        •     
        • 2023年 8月 19日

        は?
        誰もそんな事を言ってないが

        話し合いで解決するに越した事はないが、プーチンやヒトラーみたいな話し合いが通じない相手には他の手段とるしかないだろうと思うね

        外交による妥協は時には宥和政策となり、後により大きな災いをなす事になりかねないと思うので。

        27
    • 幽霊
    • 2023年 8月 19日

    民主主義を守るための戦いだから西側諸国はECOWASを積極的に支援するのかな?
    フランスは利権維持の為に積極的に支援しそうだけど。

    17
      • ASDF
      • 2023年 8月 19日

      支援はするだろうけど何ができるかな

      弾薬を含む軍需物資はウクライナ支援に使われていて手持ちが厳しいだろうし
      お金もウクライナ支援とインフレ対策生活支援とガス供給安定化に使われていて
      挙句に高金利で国債発行借り換えも負担が大きいという状況だ

      フランスの影響力が下がるのは避けられないというか、下がるのを見越してクーデターではないだろうか

      3
        • タチコマァ
        • 2023年 8月 19日

        言っちゃあアレだけど所詮アフリカの反乱軍だからなぁ
        ウクライナのように重装備が数百巣数千投入されてるわけじゃないのでウクライナに投げ込む分の誤差の範囲の支援で十分どうにでもなりそう
        何ならフランス軍はアフリカで軍投入しての治安戦はよくやってる事だし

        12
    • アジアの純真
    • 2023年 8月 19日

    とりあえずECOWASとしての姿勢を明確にするための牽制に見えますね。
    ECOWASなんてナイジェリア以外の国々は弱小で影響力は無いので開戦したらマリとブルキナファソが介入すると宣言している以上、カギを握っているのはナイジェリアのみです。ナイジェリアの軍事介入には議会承認が必要なのでここはストッパーになっています。現状軍事介入するための兵力は足りているように思えません。
    あとウクライナ戦争の影響もあり東西諸国が表立って軍事支援を行うことは無いかと思っています、あるとしたらロシアがアルジェリア経由でニジェールに支援を行うとかですかね。

    12
      • gepard
      • 2023年 8月 19日

      ナイジェリア軍に国土の5分の4がサハラ砂漠のニジェールをまともに占領統治する能力はありません。恐らく米軍でもやりたくない作戦でしょう。地上侵攻を実行すればほぼ確実に補給の悪夢に苦しみます。

      現実的なのは空爆と斬首作戦ですが文民政権の統治能力回復に失敗すればリビアのようになります。
      ECOWASができることは限られていると思います。

      9
        • ふむ
        • 2023年 8月 19日

        アラブの春も成功とは言い難いですしねぇ
        放置してなるがままに任せる方が、外が引っ掻き回すより良いんじゃ感
        外国人がひっくり返すんじゃ、自分達が国の有り様を決めるんだとならないでしょうし

        2
        • 首都直下有事
        • 2023年 8月 19日

        首都が思い切り海に寄ってて奥の方は遊牧民が勝手にやってる内陸アフリカの典型みたいな国土だからおそらくクーデター側は奥地に引っ込む選択肢を持たないしECOWAS軍もわざわざ深部まで攻め込んでく理由が生じない
        ニアメー周辺の情勢さえ回復されれば国際社会としては収まったことにしてしまって中央政府の全土統治なんて数十年放置なんてことになってもある種の既視感しか

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