北米/南米関連

ブラジル陸軍が選定候補を発表、Caesar、ATMOS、Zuzana2、SH15

ブラジル陸軍は2016年頃からM114の更新検討を開始、2023年8月に入札依頼書を発行していたが、入札要件に従ってNexterのCaesar、ElbitのATMOS、KonštruktaのZuzana2、中国兵器工業集団のSH15が選定候補に選ばれたと発表した。

参考:El Ejército Brasileño anuncia a los modelos preseleccionados para el proyecto de su futuro Vehículo de Artillería Autopropulsado sobre Ruedas

中国兵器工業集団のSH15が選定候補に選ばれたのは驚きでしかない

ブラジル陸軍は2016年頃からM114の更新検討を開始、2022年に入手可能な装輪式自走砲の調達コストを調査するためフランスのNexter、イスラエルのElbit、スウェーデンのBAE AB、中国のNorth(中国兵器工業集団)、トルコのMKE、セルビアのYugoimport、スロバキアのKonštruktaなど19社に見積もりを依頼、これに計9社が回答(内1社はRFP発行後に価格を提示すると回答)し、ブラジル陸軍は2023年8月に提案依頼書(RFP)と入札依頼書(RFT)を正式に発行した。

出典:Ministère des Armées

最終的に何社が入札に応じたのかは不明だが、ブラジル陸軍は入札要件に従って選定候補に選ばれた自走砲を公表して注目を集めている。

選定候補に選ばれたのはNexterのCaesar、ElbitのATMOS、KonštruktaのZuzana2、中国兵器工業集団のSH15で、各国の採用実績を見ればCaesarとATMOSの選出に驚きはなく、ウクライナで実戦を経験したZuzana2の選出もサプライズと言うほどのものではないが、中国兵器工業集団のSH15が選定候補に選ばれたのは驚きでしかない。

SH15は人民解放軍向けに開発されたPCL-181の輸出バージョンで、中国兵器工業集団製の52口径155mm榴弾砲はNATO規格の砲弾を使用でき、最大射程は通常弾なら20km、同社製のロケットアシスト弾なら53km、さらに半自動装填装置も備えており、人民解放軍、パキスタン陸軍、ミャンマー陸軍、エチオピア陸軍が導入済みだ。

選定候補に選ばれたCaesar、ATMOS、Zuzana2、SH15の能力(カタログスペック)に大きな違いはなく、採用実績の面でもSH15はCaesarやATMOSに引けを取らないが、中国兵器工業集団はブラジル陸軍が採用するL3Harris製通信システムをSH15に統合しなければならず、この辺りの問題をどうやってクリアしてくるのかが見どころだろう。

恐らくSH15の調達コストは他の候補よりも安価で、パキスタンはSH15を現地生産しているため技術移転の面で問題が生じるとは考えにくく、中国を安全保障上の脅威と考えない国にとって「入手性が優れるNATO規格の砲弾=155mm砲弾」を使用できるSH15は魅力的に映るかもしれない。

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※アイキャッチ画像の出典:KONŠTRUKTA-Defence

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コメント

    • たむごん
    • 2024年 3月 14日

    アメリカ製装備の更新需要に、アメリカ企業が最終選考に入っておらず、中国企業が最終選考に入っている事は驚きですね。

    中国企業のコスト競争力は、砲塔の口径さえ合えばいいのであれば、極めて高いと言えます。

    西側のシステム統合が必要なのであれば、システム面が参入障壁になるのかもしれませんが、(ブラジルですし)想定する戦場によっては不要(優先順位が低い)なのかもしれませんね。

    7
      • 無印
      • 2024年 3月 14日

      アメリカはこの手の装輪自走砲は開発していないので、土俵にも上がれないんですよ
      この間もM1299を諦めたので、アメリカは自走砲の開発能力をほぼ失ったのではないかと

      19
        • たむごん
        • 2024年 3月 14日

        情報ありがとうございます。
        アメリカならば、制空権とって何とかするのかもしれませんが…。

        世界展開・前線展開を早くするため、軽量化のメリットはありますが、難しいなと感じます。
        ウクライナ戦争の戦訓から言えば、米陸軍・海兵隊が牽引砲で対処するのであれば、FPVドローンに狙われて痛い目を見たかもしれませんね。

        2
    • あああ
    • 2024年 3月 14日

    同じ値段なら自動化進んで3人乗りでアウトリガー式で横にも撃てる旋回砲塔のズザナが最良ですかね。この方式はウクライナの泥濘環境では無理かと思いましたが案外そうでもなかったらしい。だったら前方に射角を限られる上に射撃速度が接地面に左右されがちな駐鋤式を選ぶ必然も無いでしょ。
    駐鋤式は同じ場で連射するのに向いてアウトリガ式は継続移動の射撃に向いてる。低空無人機脅威が想定される今なら後者が適当なのは間違いない。巨大なブレードが地面にめり込む駐鋤式は射撃位置の痕跡がデカいのでこれを追跡される恐れがある。特にIRの熱線画像なら削った地面が一目瞭然です。
    車台がタトラでリアエンジンで専用化しても高額化しないのは競争力に直結してる。いっその事この車体の派生で色々作って35mmツインのAWとかファミリー利用するなら尚更お安く納まるとも思います。ただその場合でも全幅はあるので車体幅が2,5mでなく3,0mで構わない部分が大前提ではありますが。

    4
    • ポンポコ
    • 2024年 3月 14日

    ブラジル陸軍で、中国製の自走砲が選定されるかもしれないということが、なんか個人的には驚きでした。

    民製品でなく、直接の兵器ですからね。でも、時代はとっくに変わっているのですね。

    2
    • AH-X
    • 2024年 3月 14日

    M114なんてまだ使ってたとは。
    日本のFH-70も中古で輸出すればそれなりに需要あるはずなんですがね。もったいない。

    6
    • 牛丼チーズ
    • 2024年 3月 14日

    中国製は安いだろうけど西側の通信システムの統合や西側との関係も考えるとあまりいい候補ではないんじゃないかな。

    4
    • jgamw
    • 2024年 3月 14日

    パキスタンはSH-15を236両注文しましたが、一両当たり約220万ドル(メンテナンス等含む)で調達しましたね。
    中国軍はPCL-181を600両以上生産していますが、輸出価格でも3億円程度で生産できるので、凄い勢いで配備が進んでいます。

    4
    •  さ
    • 2024年 3月 14日

    南米、中南米を裏庭視するアメリカの強烈な圧(それらの国々力を持つ事を嫌う)もあって、装備更新もままならない状態だったのが
    アメリカが敵視する国の製品を候補に入れられる、入れたことを公表できる程度には圧が弱まった、という事なんだろうなぁ

    中国やロシア、ウクライナ、パレスチナ、中東辺りで外交的なリソースを根こそぎ奪われて、南米・中南米に回す余力がないのかもしれない

    5
    • ポンポコ
    • 2024年 3月 14日

    追記して、

    「ブラジル陸軍が、中国製の自走砲を持つかもしれないなんて驚きだ」、と言ったのは、私個人では悪い意味での驚きです。

    見直してみて、逆の意味にとられるかなと思って、追記しました。

    というのは、私は日本や世界の安全保障上の脅威は、中国だと考えているからです。

    2
    • nimo
    • 2024年 3月 14日

    装軌式はなぜ外したのか
    高いからか

      • T.T
      • 2024年 3月 14日

      置き換え元が牽引榴弾砲のM114なので運用上装輪で十分代替可能ですから、まあ安い装輪なんでしょうね。

      1
    • T.T
    • 2024年 3月 14日

    砲塔付き本格SPGを装軌から装輪にしただけのZuzanaが一番好き。重くて高くていいならこれが一番。
    安くて軽い方向に割り切るならCaesarってとこかな。
    しかし、SH15ことPCL-181もなかなか優秀みたいですね。この形態で360°旋回可能って本当かな?そうで無くても動画からは結構射角が広く見える。これはよい選択肢になりそう。

    蛇足だけど本邦の19式は好きになれない。中途半端にデカく、運用人員も7人と多く、乗員5人の内二人はあんな位置で、追加の2人は弾薬トラックに搭乗って一両で完結してないじゃん。カエサル位まで割り切るか、装輪99式位まで豪華にするかにして欲しかったかな。

    2
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