ロシアの新型防空システム「S-500 プロメテウス」は量産バージョンの引き渡しが間もなく始まる予定だが、ロシア連邦軍事技術協力局長のドミトリー・シュガエフ氏は「S-500を中国とやインドなどにも輸出する可能性がある」と公式に認めたため海外メディアが大きく報道している。
参考:War fears ramp up as Russia poised to sell China weapons in Biden-bating move
参考:Russia likely to export new S-500 missile systems to India, China
S-500とチェックメイトで対ロシア制裁を骨抜きするか、米国が友好国を失うかの2択を突き付けるロシア
ロシアが新たに開発したS-500はS-400の後継バージョンではなく、S-500はどちらかと言うと弾道ミサイル、地球低軌道上の衛星、極超音速兵器、戦線よりも後方に位置する早期警戒機や空中給油機といった価値の高い空中目標を迎撃するのに特化した防空システムで最大600km~800kmの範囲で作動し、S-400を補完する存在=パトリオットとサードの関係に似ていると言われているがS-500の詳細はほとんど分かっていないので事実かどうかは謎だ。
ただ一つだけ確実なのはS-500とS-400と組み合わせることで完成する多層防空システム=ロシア版「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」は今まで以上に強固な防衛シールドとして機能するだろうという点で、この組み合わせをポーランドとリトアニアに挟まれたロシア領のカリーニングラードやウクライナから強奪したクリミア半島に配備されると、冷戦終結後にNATOへ加盟した東欧諸国(バルト三国、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア等)やドイツ、ギリシャ、トルコまでがロシアの監視下もしくは干渉可能な範囲に置かれるためNATOにとっては非常に厄介な問題と言える。
このS-500についてロシア連邦軍事技術協力局長のドミトリー・シュガエフ氏は「十分な量が国軍に行き渡れば中国やインドなどのパートナー国(トルコを指しているのかもしれない)にもS-500を供給することを検討している」と語ったため、海外メディアは「ロシアが初めてS-500の海外輸出について公式に言及した」と大きく報道しており、台湾海峡で米国と対峙する中国、S-400導入で制裁発動を目前に控えたインド、同じく導入したS-400を絶対に放棄しないトルコにロシアがS-500を輸出すれば米国のバイデン政権は軍事的にも外交的にも頭を悩ませることになろうだろう。
さらにロシアは新型ステルス戦闘機「チェックメイト」をサウジアラビアとアラブ首長国連邦に売り込もうとしており、米国の対ロシア制裁(敵対者に対する制裁措置法/CAATSA)とバイデン政権が掲げた武器輸出政策は大きな曲がり角に直面している。
参考:Russia to Present Mock-up of Checkmate fighter Jet, Orion Drone at Dubai Airshow
バイデン氏は大統領選挙中に多くの民間人に犠牲者がでているイエメン内戦を問題視、これに関与するサウジアラビアとアラブ首長国連邦、両国を軍事的にも物資的にも支援する米国の方針に異を唱え「石油購入や武器販売のためイエメン内戦の問題に目をつむることを止める」と主張していたが、大統領に就任したバイデン氏は直ぐに中東戦略を大きく転換してサウジアラビアとアラブ首長国連邦に対する武器輸出プロセスを停止してしまった。
特にアラブ首長国連邦はバイデン大統領が誕生する1時間前にトランプ政権とF-35A導入に関する対外有償軍事援助(FMS)を締結したのだが、現在もバイデン大統領は攻撃に使用される武器輸出のプロセスを再開していないためサウジアラビアとアラブ首長国連邦はチェックメイトに大きな関心を寄せているらしい。
これを見越してロシアは今月14日に開幕するドバイ航空ショーにチェックメイトのモックアップを持ち込み中東諸国に大々的なプロモーションを行うと発表、当然サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールといった国とチェックメイトの輸出について協議を行うはずなので、バイデン政権は対ロシア制裁の原理原則に従い「もしチェックメイトをロシアから調達すればCAATSAに基づく制裁が発動する恐れがある」と脅しにかかるはずだ。
この対ロシア制裁はS-400だけでなく「Su-35導入でも発動する恐れがある」とインドネシアとエジプトを脅したことがあるので、当然第5世代戦闘機のチェックメイトにも適用される可能性が高く米国の外交は自身の国内法でどんどん選択肢が狭まっている。
恐らくプーチン大統領はチェックメイトを武器に米国の武器輸出政策=第5世代戦闘機を売る国と売らない国の隙間を突いてバイデン政権を攻撃、特にS-500をインドに輸出するという「新たな外交カード」でバイデン政権が進めるクアッドと対ロシア制裁の矛盾を攻撃してCAATSAを骨抜きするか、米国が友好国を失うかの2択を突き付けるつもりなのだろう。
因みに対ロシア制裁の起源は米大統領選挙にロシアが干渉したことに由来しており、この国内法はロシア製装備品の海外輸出を妨害→露防衛産業界の収益性を悪化→研究・開発のサイクル鈍化を狙っているのだが、米国の対ロシア制裁はロシアを直接罰するのではなくロシア製装備品を購入する国を罰するため「第三国の主権を侵害(安全保障に関する決定)している」との批判もあり、国内でも関係強化を望んでいる国との関係を逆に悪化させるだけで外交政策から柔軟さが失われているとの指摘も多い。
まぁ日本視点だけで言えばS-500が中国に輸出されれば東シナ海上空で早期警戒機や空中給油機といった価値の高い戦力の運用が干渉を受けるため、何らかの対策(AWCASシステムの分散化、空中給油機の無人化、空中給油に依存しない航空戦力の構築など)が必要になってくると思われる。
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アメリカさんはそろそろ自国の国際的地位について、認識を改めた方がいい
やっぱりポリコレなんてかなぐり捨てて、二言目には自由の味を教えにかかる、狂気のアメリカを取り戻さないと。
これはこれで理想主義の狂気の成れの果てや。
アフガンとイラクで狂気の戦争を2つもやったせいで大赤字で疲弊したってのは
左派は勿論のこと右派やトランプも含めて皆が知ってたからこそ
二言目には自由の味を教えにかかる狂気のアメリカを捨てたんだぞ
別に実力行使しなくても単に武器輸出するだけで良いんだし
バイデンの行動は左派の理想主義に偏り過ぎというか
自国の売った兵器で民間人が犠牲になるのは嫌だろうけど
ロシアとの勢力争いを考えたら武器輸出を躊躇ってる場合じゃない
その通り、アメリカとの友好関係維持が国家の利益に合致する、という状況では必ずしもなくなってるのは確かですね。
代わりを引受けるライバルが台頭し国際的地位は相対的に低下していてムチが効き難くなってる。
まぁアメリカも同じような兵器を開発して売ればいいんだけど、中東の場合はイスラエルに配慮しなきゃいけないしバランスオブパワーを考えないと売却出来ないから詰んでるよなw
人道も大切だけどそれを掲げても購入国は別の国から買うだけだし、人道も改善されるわけもない
フランスみたいにアメリカも人権ダブスタ決めればいいのにw
綺麗事大好きな民主党の間では難しそう。さらに言えば、ポリコレが幅を利かせてる間は無理なンでは?
昔みたいに、思いっきりハジケないと。
共和党ならサウジアラビアUAEにどんどん武器売るんだけどな
米国民もその辺の事には気付いているらしく、先日行われたバージニア州知事選(来年の中間選挙の前哨戦)では共和党候補が勝っていたな
米国民は「弱い大統領」を容認しない空気があるから、次の大統領選の時にはバイデンを弱腰扱いして政権の座から追い出しそうな気がする
イスラエルもトルコやサウジアラビアが顧客
中共軍も国産SAMを持ってる筈なんだけど
未だにロシアから買ってるってことは狙った性能は発揮してないんかな
売ってくれるんだったら、お金積んででも買うのが中国式ですから、とりあえず比較用として買うのでは?
多重化(二種類のレーダーを導入することによる冗長化)とか、最近、非常に緊密になってるらしいロシアとのリアルタイムデータ共有などが目的なのでは
性能もだが、この手のミサイルはそう量産できない。
一発作るにも金も時間もかかる。
だから、外国から時間と労力を買ってる
米国「おい、ロシア製の兵器を買うのヤメやがれ(怒」
トルコ「分かった、じゃあ米国製の兵器売ってくれや」
米議会「それは駄目」
トルコ「は?」
あのさぁ・・・・
中共空軍が始めた旧型有人機の無人運用は、対防空ミサイル用デコイとしても役立つだろう。
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ボーンヤードの骨たちの職場復帰も近いかもしれない。
だから、日本もQF-4を!
実現したらゾンビ飛行機とでも名付けるか。仮想目標はとりあえずサメだな
アフガン撤退の失策や兵器開発の失敗と中国軍拡の放置
段々と頼りなくなってきたアメリカから日本は距離を置いた方がいい
防衛費も増やすみたいだから、国産兵器の導入と開発に力を入れて
ぼったくり欠陥兵器を売りつけるFMSを減らすべきだ
中国が喜びそうな提案ですね
非常に賛成したい内容であるが、今米国と距離を置けば中国とロシアの暴走を起こしかねない状況であり、日本の官僚と政治家の傾向として、未だに中国は自分達の制御かにあると考えていてもおかしくはない事は念頭に置くべきだ
また米国政府内にも中国との癒着は非常に深刻である事は間違いなく、対中を警戒するのであれば距離を置くべきだ
(米国資金が武漢研究所に流れていた疑惑や、選挙期間中に米国将官が中国将官にコンタクトを取っていた)
一方で米国との利害とは別に、対中の協力関係を結べるパートナーを模索するべきだ。例えばイギリスとの関係を強化の模索が一番適切なところではあるかもしれない。
イギリスは中国との関係は悪く、米国にも物言える立ち位置にある国だ。もしものことがあれば、日英で米を挟み撃ちに出来る地理関係にある
2%GDPの防衛費や兵器の国産化推進は望ましいけど、核をもつ米国から離れることは、
日本にとって得策とは思えないな。
ただ、少なくとも日本の立ち位置からは、中国やロシアとの連携はむしろ国益に反するだろう。
アメリカ寄りだけど中国とも距離を保つ今の方針を続けるのが良いと思うがね。核の傘無しに日本単独でできることは無いんだし。ロシアには適当に飴舐めさせとけ
将来のGDPとか一帯一路とか考えたら
中国と仲良くしたがる国はこれからどんどん増えていくから
共倒れも何も如何にタイミングを見極めて米国から離れるかが大事
米国が強い間は中国が日本を侵略出来ないのは日米同盟のお陰だろうけど
米国が弱体化しても日本が侵略されないとしたら同盟は殆ど役に立ってない事になる
同盟が実は形骸化してるけど侵略されないとしたら同盟なんてもう意味無い
問題はそのタイミングだよ
これを機に日本もロシア製の長距離SAMや大型戦闘機を…
前者はメリット有るかもしれんが、後者は趣味のレベルだよな。
ロシアと言えばこれの技術移転では?日本の定数300両ですしね。
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それかこれの後釜を共同開発するとか
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前者はメリット有るかもしれんが、後者は趣味のレベルだよな。
アメリカはとっととトルコ(あとインド)にごめんなさいと言えばいいのに、と思うのは俺が日本人だからか
惹かぬ媚びぬ省みぬ!
冗談はさておき、トルコ以外も脅していたから、今更引いたらあっちこっちから火の手が上がるからね。ゴメンナサイじゃ済まなさそう。
CAATSAは他国に圧力をかけてロシア制裁をやろうて発想だが、効果が無いどころか国権を侵害する内政干渉と反発を招いたわけで、逆に双方が国益を損なう愚策だったてことでしょうね。
かといって適切な代替策無しにCAATSAを廃止すれば余計に侮られるわけで下策。
とりあえずはロシアとの取引を断念させる得るだけのアメ提供を約束するしかないんじゃないかと。それだけのアメを提供できるかが問題ですが。
アメリカさんにはもっと現実を見て対外政策をして頂かないと共倒れになる身としては困るんですよ
ぶっちゃけ、島嶼防衛にS4O0、S500は欲しい。
それでXデーになると、機能しなくなるんですね。