米国はロシアや中国に差をつけられた空対空ミサイルの射程距離ギャップを埋めるため懸命な努力を続けているが、ボーイングは新設計の長射程空対空ミサイル「LRAAM」を披露して注目を集めている。
参考:Boeing Unveils New Two-Stage Long-Range Air-To-Air Missile Concept
米空軍がF-15EXに搭載できる特大の空対空ミサイルとはボーイングが今回発表したLRAAMのこと?
ロシアや中国は戦闘機に搭載する空対空ミサイルの長射程化に取り組んでおり、ロシアはMiG-31用に開発していた射程200km以上(ロケットブースター追加で射程を400kmまで延長可能)の空対空ミサイルR-37MをSu-35から発射するシーンを昨年初めて公開、さらにシーカーにAESAレーダーを採用してAIM-120と同等の性能をもつと言われているR-77Mのラムジェット推進バージョン「K-77ME/Izdeliye180-PD(R-77Mの射程距離拡張版で最大射程は推定200km以上)」をSu-57に統合する作業を進めている。
中国もAIM-120の射程を大きく上回る空対空ミサイル「PL-15(推定射程200km以上)」を実用化、PL-15よりも大型でラムジェット推進を採用したPL-21(推定射程400km+/今のところ実用化までには至っていない)の存在も確認されており、米空軍は空対空ミサイルの交戦範囲で生じたギャップを埋めるため新型空対空ミサイル「AIM-260 JATM(推定射程200km)」を開発中で今年中に試射を行い2022年中に初期作戦能力を獲得(2026年までにAIM-120とAIM-260の供給量が逆転すると予想されている)する予定だ。
米海軍も独自にF/A-18E/Fへの艦対空ミサイルSM-6(艦艇からロケットブースターで打上げた場合の最大射程は約240km:BlockIBなら約300km)統合を模索しており、レイセオンも「ノルウェーのコングスバーグと共同で開発中のAIM-120の射程延長版AMRAAM-ER(防空システムNASAMS向けの製品)をF-35Aのウェポンベイに組み込むことを検討している」と発言するなど空対空ミサイルの射程距離ギャップを埋めるため懸命な努力を続けているのだが、ここにボーイングも参戦を表明して注目を集めている。
米海軍がF/A-18E/Fに艦対空ミサイル「SM-6」を搭載してテストしている様子が目撃されている。
SM-6の交戦距離はAIM-120よりも長く、空対空ミサイルの射程距離で中国やロシアに劣勢を強いられている状況を考慮するとSM-6を搭載したF/A-18E/Fの存在は非常に意味深だ。https://t.co/5CqhVx1cnQ
— 航空万能論GF (@grandfleet_info) April 21, 2021
米空軍は議会に提出(今年5月)する資料の中で「開発を進めてる特大の空対空ミサイルをF-15EXに搭載できる」と説明して注目を集めていたが、今月20日に開幕した空軍協会主催のカンファレンスでボーイングは新設計の長射程空対空ミサイル「LRAAM(Long-Range Air-to-Air Missile)」を披露。
このLRAAMは米空軍研究所(AFRL)の要求(複数の企業に将来の長射程空対空ミサイルに求められる先進技術のアイデアを提出することを昨年要求)に基づくもので、キルビークル/kill vehicleと呼ばれるミサイル本体と加速ブースターの2段構成されており、ボーイングは「大きな速度、長い射程距離、敵機に接近して交戦する際の高い機動性の3つを兼ね備えたミサイルで既存のミサイルを置き換えるものではない」と説明したものの「キルビークルとは何を意味しているのか」については説明を避けた。
Boeing’s New Two-Stage Long-Range Air-To-Air Missile Concept pic.twitter.com/obHQINhqAb
— Defence Decode® (@DefenceDecode) September 21, 2021
米メディアは「キルビークルという言葉は大きな運動エネルギーを利用して目標を直接破壊するヒット・トゥ・キル/Hit-to-Kill(直撃破壊)方式を指す際に用いられる」と指摘して、ボーイングのLRAAMはミサイル本体を小型するためHit-to-Kill方式を採用しているのではないか?と予想しているのが興味深い。
現時点でボーイングのLRAAMは米空軍が「特大」だと表現した空対空ミサイルなのかは不明だが、ロシアも加速ブースターを追加可能なR-37Mを実用化しているので、米空軍も同じ方式の空対空ミサイルで早期警戒機や空中給油機など高価な資産を後方から狙い撃つことを考えていたとしても不思議ではなく、特にセンサーとネットワークの急速な発展が視界外戦闘の交戦距離拡張を加速させているのだろう。
関連記事:米空軍はF-15EXに特大の空対空ミサイル搭載を検討、米海軍はF/A-18FにSM-6を搭載してテスト中
関連記事:レイセオン、AIM-120C-7よりも射程距離が50%向上したAMRAAM-ERのF-35A統合を検討
※アイキャッチ画像の出典:ボーイングF-15EX
長射程すぎて持て余していたAIM-54の3倍の重量と2倍の射程あるSM-6を戦闘機に積む時代になっているの怖いよなぁ。
この場合、母機はステルスである必要がうすく、大型の輸送機から発射しても差し支えない
大型ミサイルをステルスのウェポンベイに納めるのは無理があるから、戦闘機に依らないロングレンジ攻撃という拡がりも考慮されていくんではないかな
戦闘機の大型化は無理だろ
>母機はステルスである必要がうすく、大型の輸送機から発射しても差し支えない
撃墜される。
そういう母機を攻撃する目的で、ロシアと中国の長距離対空ミサイルは開発設計されているので。
それはアメリカに教えてあげたら(笑)その程度のことにも気がつかないのかって叱れよ
気づいててもどうしようもないんだもん
F-35のウェポンベイは全てAIM-120規格だしAIM-260も同じ規格
中露のミサイルはそれより数回りデカいサイズでウェポンベイも初めからそのサイズに合わせて設計してる
古い規格をいつまでも使いまわしてるアメリカが射程負けするのは残念でもなく当然
アメリカもロシアのmig31の様な要撃機を作って運用する時代が来るね。産油国であるアメリカが防衛目的に大型機材を運用するとは思えないので、空対空戦闘でB21・57にこれ等の長距離空対空ミサイルを優先搭載するかは判らない。
AAMは銃と弾の関係に似ている。各種長射程ミサイルは専用の運搬手段に装備させるのが適当。しかし米軍に公開されたコンセプトモデルと似た代物を合理的に運用できる(能力を持った)機体は無い。仮にF15EXや18新規改修型に搭載できても付け焼き刃の様に思える。
米軍もmig31の様に高性能レーダーや赤外線装置等を装備した高高度戦闘機を開発するとなると話は別だが、現行のミサイルギャップを埋める為に(LRAAM)試験を兼ねてF15EXに装備させるのが無難なんだろ。F35の燃費度返し運用が可能なら自衛隊にも(高高度戦闘機+長射程ミサイル)必要。
>高高度戦闘機+長射程ミサイル
YF-12の時代が来るというのか…
胸が…熱くなるな。
kill vehicle が米メディアの指摘通り運動エネルギーによる直撃破壊AAMなら、主撃墜対象は運動性の高い戦闘機等ではないてことなんでしょうね。
以前にサイドワインダーとアムラームを組み合わせたネットワークセントリック空中防衛エレメントという2段式ミサイルの計画もあったし、いずれはアメリカもこういうミサイルを装備するのではと思う。ただ、日本では落下物を伴うミサイルは難しいかな。
日本なら、ASM3改を超特大の長射程AAMとして使えないかな。ロシアのKh31P対レーダミサイルは高度15000メートルまでならAWACSに対して発射可能だし、月刊軍事研究に乗っていた記事によるとインドはブラモスを空対空ミサイルとして使うことを検討しているらしい。パッシブホーミングを採用しているASM3でもできるんじゃないかな。
ロシアと中国の超長距離空対空ミサイルが、戦場の脳たるAWACSを戦場から遠ざけ、更に増槽が使いづらくて航続距離が短いアメリカのステルス戦闘機を支援するため、後背に控えさせている空中給油機艦隊の活動範囲に制約を与えることを通じて、
ステルス機を打ち破ることなく、ステルス機の活動に甚大な制約を与えることを目的としており、またそのターゲットが旅客機ベースの機材であるため、超長距離対空ミサイル共通の課題である、射程端での空力機動不足は問題にならない(高空力機動によるミサイル回避が実施できない)。
といった、目的と手段に完璧な一貫性があるのに対して、アメリカの超長距離空対空ミサイルの目的は一体、何?
仏作って魂入れずの様子しか見えない。
中国もAWACSや輸送機を使ってるわけだから使い道がないってことはいのでは
戦闘機も当たるかどうかは別にして、自分に向かって飛んで来たら回避しないといけないし
でも中露が西側の戦術ドクトリンを転換させたようなインパクトがないのは確か
長射程化しても目標を探知して命中させる
技術も能力も無いように思うけどな
アメリカ以外は
「あっちの方に敵機がいるらしいから、とりあえず打っとけ」ってな感じで打ち出して、あとはミサイル自身が探すんじゃないかな。命中するのか否かは、ミサイル自身の機動性によるけど。
今回ボーイング社が公開したコンセプトモデルのミサイル直系次第だけど。基本的にこの手のミサイルはミサイル直系が大きく大型シーカーによる遠距離からの捕捉・追尾が可能。終末段階までは母機などから指令誘導でミサイルを誘導して30~60㎞辺りでミサイル本体の誘導が行われる。これ等の値は標的のRCSにより大きく変化する。
そしてミサイルシーカーに適切なレーダーはPESA方式が有利。基本的に最後まで母機等からの指令誘導での撃墜が高い命中率を維持できる。勿論これには複座型かつレーダー要員が必須なので、目視可能距離での戦闘に依存してきた米軍では未経験な点が多い。
手数と射程距離があるってやばいな中露、これは日本もP-1にAAMガン積みする必要があるか?
アメリカは非対称戦闘。中露は大国間戦争を意識した装備開発を継続してきた。現状の米露間での空中戦は(アメリカの)数の優位をものともせずロシアが圧勝するくらいの実力差が有る。だからバイデンは大統領就任前にロシアを脅威とし、就任後に勝ち目がないロシア対抗を諦めて対中戦略にシフトした。
本来ステルス機はこれら長射程ミサイルへの対抗も兼ねて開発されたが、赤外線帯も含む電磁波領域で遠距離から捕捉追尾可能なのでステルス効果は限定的。日本が導入したF35なんかは実用上昇高度も航続距離も貧弱なので、中国はともかくロシア機相手では勝負にならないくらい「ヤバい」。そして露骨な覇権主義を掲げる中国の脅威に隠れがちがちだが、軍事力だけだとロシアの方が何倍も「ヤバい」。
ぶっちゃけイージス艦やアショアとF35なんかは国民を安心させる宗教建造物。精々対朝鮮勢くらいにしか使えないが、日本国民の大多数はこの事実を知らない。個人的にプーチンが大統領で居る限りこれ等の脅威が表出する事は無いと考えてる。
酸素魚雷や46cm砲や零戦で勝ってるからって戦争には勝てないよ。
うちの国の開発も最初はこんな風に単純に1段追加するとかして
例えでかく・重くなって1機あたりの搭載数が減ろうと
まずは射程長いの実用化するとこからやれば良いと思うんだ
欲張って始めから射程とサイズ・重量を両立させようとして
結局速度や射程が物足りないことになっている気がする
今さらF-14の後継機を作れないから、スーパーホーネットかF-35のビーストモードで運用するんだろうけど、問題はステルス機(中露機のステルス性はともかく)に対応した上で当てられるかだと思う。
中露の空軍にA50メインステイみたいな高価値目標が少ない以上、主目標が戦闘機になるなら、遠距離から当てられる性能が重要になってくるので「落とされてもいい索敵役」共々、開発が上手くいってほしい
でも個人的にはむしろ対レーダーミサイルのHARM-ERの進捗を知りたかったり
中国ロシアのこの手のミサイルって運動性はどうなのだろうか
固体燃料方式の場合は短・中距離空対空ミサイルと大差無いよ。R33等の大型AAMは昔から前進方向に対して垂直方向にかかるねじり荷重に弱いと言われている。これは液体燃料方式で材料工学の知見不足が影響しており、現行の対G耐性は大差無い。
ミサイルの運動性は、加速中から加速後の滑空段階における速度に依存している。大型のAAMはロケット再点火や速度性能で小型の物より優位。だから回避不能領域内での運動性能ならAIM9・120と同等と思われる。
基本的にR37(M)のミサイル直径は37㎝(全幅75㎝前後)くらいなので、RCS1㎡の標的を捕捉追尾するのにだいたい70~30㎞まで接近する必要がある。
公開されているRCSの断片的な情報は諸元が未公表なので断言できない。戦闘機相手にR37mを使用すると180㎞前後(ブースター有りで290㎞以上)の回避不能領域内で撃墜(命中)可能と思われる。なおPL15の実物画像を見た事が無いので中国製は不明。今の所西側にR33系統と同等の現行AAMは無い。
大型プラットホームの脆弱性については空軍も考えているんだし、単純に簡単に撃墜されるとか書く必要ないだろ。最終的にはどんな対抗策出すのかはまだハッキリしてないが対レーダー対赤外線二つの対抗策かそれに光学も含んだものになるかは分からないけど、なんの対抗策もなしにこんなものは進めない。
それにしても手軽なのは分かるがパラシュート射出のせいで1回攻撃に複数発は確定とかちょっと使いづらいなコールドローンチ考えていいんじゃないか。
一部誤爆した(笑)
ということで、ステルス機体・双発・データリンク搭載で、各種センサー類・神の目とかのアビオニクス省略のメンテ簡易なミサイルキャリア開発希望。
次世代トムキャット
AAMの射程を求めれば大型化しステルス機には搭載できないジレンマに陥る。
根本的な解決策はダクテッドロケット式ミサイルだが開発には長い時間を要するようで西側にはミーティアしか存在しない。
燃料に酸化剤をほとんど含まない代わりに、空気を酸化剤として利用するため、通常のロケットモーターと比較して2~4倍の燃料効率を持っており、ミーティアでは長距離の高速飛翔が可能となった。そのため終末誘導段階での回避不能範囲がAMRAAMの3倍と言われており、従来のBVR(目視外射程)空対空ミサイルに比べ非常に命中精度が高いという。
しかしこれまでのミーティアでは射程限界まで速度が落ちない利点はあったが、誘導用のシーカー性能がダメダメだったので命中率が悪いという欠点があった、そこで日本のAAM4Bの(改良型)AESAシーカーと組み合わせることで長射程で命中率の良いミサイルを実現できる。
自衛隊としても改良型ミーティアをF-35に載せることでAMRAAMを使う場合より中露に対して大幅に優位に立てる。
ミーティアの原型シーカーに欠陥があるというのは真実ですか?
少くとも試射は全て成功しており、配備予定の国々は予定通り導入する様ですが…シーカー不具合のネタわご教示頂けましたら幸いです。
以前その手の記事を読んだことがあるがどこにあったかは思い出せない、しかしパラボラレーダーとAESAでは勝負にならない。。
もしイギリスがシーカーの性能に自信を持っているなら、わざわざ日本と共同開発する必はない。
これまでのAAMはけっこう外れることが多かったが、新型ミーティアは相手のレーダー範囲外・射程外から発射して100%の撃墜を狙ったミサイルとして開発しているはずである、高性能ステルス機に装備すれば負けることはない。
AESAでは一瞬で目標空域をスキャンで出来るが、パラボラ式のシーカーでは目標検出に時間がかかるので目標直撃は難しく近接信管を使うことになる、また下方目標への攻撃やECMにも弱い。
空自がまだAAM4を装備していなかった頃アメリカ軍と模擬空戦をする時は、接近する前にミサイルを撃たれてキル判定されてしまうので、二機のF-4を同じ軸線上で飛ばし一機に見せかけ直前で左右に分かれレーダーを誤魔化して一機をおとりに二機目が攻撃する作戦をとったとか。
結局、その長射程ミサイルを当てる為のセンサー機体が大事になる
先行する無人機の数と性能で勝負がつく