米国関連

米議会の議論が予算からウクライナ支援に移行、下院議長も遅らせないと明言

米議会の優先事項は2024年度予算の承認だったためウクライナ支援に関する議論は停滞していたが、ジョンソン下院議長は「予算に関してはバイデン政権との合意が成立した」「今後は議論の焦点を追加援助に移すつもりだ」「これを遅らせるつもりはない」と述べた。

参考:Джонсон: “Не зволікатимемо” із розглядом допомоги союзникам США
参考:Ukrainian Premier Sees US Aid Coming as Early as This Month

まだ具体的な変化はないものの、停滞感が漂っていた時期よりは随分マシになってきた

米議会の優先事項は政府機関の閉鎖回避=2024年度予算を22日までに承認することだったため、ほぼウクライナ支援に関する具体的な議論は行われてこなかったが、ジョンソン下院議長は19日「国土安全保障省への資金供給(メキシコ国境問題)に関してバイデン政権との合意が成立した」「今後は議論の焦点を(ウクライナ、イスラエル、台湾に対する)追加援助に移すつもりだ」「これを遅らせるつもりはない」と表明、約2週間の休会後=4月8日以降にウクライナ支援の議論が本格化する見込みだ。

出典:PRESIDENT OF UKRAINE

ジョンソン下院議長は「我々はウクライナに対する資金供給メカニズムのみを協議しているのではなく、パートナー向けの追加資金パーケージ全体について話し合っており、ロシア人オリガルヒから没収した資産の活用、REPO法(差し押さえたロシア資産をウクライナに移転する法案)、ローンやレンドリースの概念を支援に取り入れることにも多くの議論が行われている」「我々は米国が果たすべき役割について、テロリストや独裁者が世界を闊歩するのを許さないというメッセージを打ち出す重要性を理解している」と述べた。

ウクライナのシュミハル首相もEUとG7の援助について「2024年度上半期に必要な資金を提供してくれたため生き延びることが出来た」と称賛したが、下半期については「米国の支援に頼ることになる」「これについて民主党と共和党の議員らが積極的に議論している」「今月中か来月中までに前向きなニュースが届くだろう」と述べ、遅くとも4月中までに「具体的な資金援助に関する枠組みが見えてくる」と期待感を示している。

出典:pixabay

焦点だった2024度予算に目処がつき、ジョンソン下院議長を含む共和党も「ロシアを勝たせないためのウクライナ援助」を否定しておらず、まだ具体的に何かが変化した訳では無いので楽観視は出来ないが、停滞感が漂っていた時期よりは随分マシになってきた。

因みにシュミハル首相は「前線で実施されているローテーションや武器供給の状況を考慮し、追加動員の規模は当初要求されていたほど必要はない」と述べており、今後予定されている追加動員の規模は50万人を下回ると示唆した。

関連記事:ウクライナを守る防空システム、3月末までに迎撃弾の一部が枯渇する可能性
関連記事:難航していたウクライナへの軍事支援、EU加盟国が50億ユーロ提供で合意
関連記事:ウクライナ軍が直面する砲弾不足の原因、問題は何処に潜んでいるのか
関連記事:バイデン政権、偶然手に入った資金で3億ドル相当のウクライナ支援を発表

 

※アイキャッチ画像の出典:Office of Speaker Mike Johnson Public Domain

チェコの取り組みが勢いを増す、ウクライナへの砲弾供給は国際市場に拡大前のページ

F-35 Block4へのF135EEP採用がほぼ確定、AETP採用は見送り次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米国、ウクライナが年内に反攻に必要な戦力を準備できる可能性は低い

    米CNNは28日、ホワイトハウスの関係者は「ウクライナが2月24日以降…

  2. 米国関連

    米海軍の次期練習機に挑戦するTextronとLeonardo、T-7Aに優位性はない

    米海軍が調達予定しているT-45Goshawkの後継機候補にはM-34…

  3. 米国関連

    米空軍がE-8C/Joint STARSの早期退役を開始、来年9月まで議会が認めた4機を処分

    米空軍は21日、2022年度の国防権限法で認められた対地版の早期警戒管…

  4. 米国関連

    米国、HIMARSや巡視船の提供を含むウクライナ支援パッケージを発表

    バイデン政権は23日、多連装ロケットシステムの追加提供や沿岸海域を保護…

  5. 米国関連

    F-35最大の欠点解消に向けて前進、ALISに代わるODINの評価は上々

    F-35の管理システム「ALIS」に代わる「ODIN:オーディン」がア…

  6. 米国関連

    米国、中国の軍事的脅威に対抗するには日本のデュアルユース技術が必要

    極東における中国、北朝鮮、ロシアの脅威を抑止するためには日米間の技術協…

コメント

    • 幽霊
    • 2024年 3月 21日

    差し押さえたロシア資産のウクライナ移転は結局アメリカ単独で行うのか?EUも共同で行うのか?どうなるんでしょうね?
    それにもし日本がアメリカからロシア資産のウクライナ移転を求められた場合従う事はあり得るのでしょうか?

    4
      • MarkⅡ
      • 2024年 3月 21日

      差し押さえと言っても運用益だけだと思う、ちょっと前EUで資産本体は手を出さない方針にするとか言ってたし

      11
    •  
    • 2024年 3月 21日

    そのうち合意されると思う。
    停戦仲介人になってノーベル平和賞を狙ってるトランプ的にもウクライナには年内持ちこたえてもらわないと困る。
    ただ勝ちすぎても困るから23年レベルの額にはならないだろうな。

    6
      • 名無し
      • 2024年 3月 21日

      勝ち過ぎてもって…まだそんなのんき事言ってんスか…

      54
    • たむごん
    • 2024年 3月 21日

    (1)ウクライナの弾薬残量
    (2)アメリカの新規弾薬生産動向
    (2)アメリカがウクライナに送れる弾薬余力

    この3つが気になっています。
    アメリカの支援が決まっても、手元に弾薬在庫がなければ送る事はできません(アメリカ在庫補充+イスラエルなど他国向け)。

    アメリカ本国〜ポーランド〜ウクライナ前線輸送に、かなりの時間がかかります。
    ウクライナ軍前線の弾薬が、持つのかは時間との戦いかもしれませんね(チェコ購入分もです)

    10
      • あるまじろ
      • 2024年 3月 21日

      昨年9月の記事で
      ●2024年春までに月5.7万発
      ●米国のクラスター砲弾在庫300万発
      という予定だった。

      予算がつくなら物はある程度だせるはず、はずなんだけど・・・。

      おっしゃる通りで米国からヨーロッパへの輸送って
      結構時間がかかるから苦戦はしばらく続くかもしれませんね

      10
        • たむごん
        • 2024年 3月 21日

        大規模な国家間紛争ですから、ロジスティクスが本当に難しいですよね。

        1
      •  
      • 2024年 3月 21日

      前線の状況を見てても言うほど弾薬不足になってるとは思えないけどな。
      越境攻撃では民間人に被害が出るほどロシア領内に激しく砲撃してるし。
      ないない言ってるのは支援引き出すための政治的駆け引きなんじゃないの。
      今の所、潤沢にあるわけじゃないけど戦線を支えて小規模な反撃するだけの備蓄はありそうに見える。
      だいたい砲兵がマスコミに対して撃つ弾がないとかベラベラ喋ってること自体が不自然。
      備蓄弾薬量なんか機密事項なんだし。

      13
        • 投石器
        • 2024年 3月 21日

        その疑念の答えになる記事がこちらですね
        リンク
        チェコの砲弾支援が、6月から届き始める目処が立ったお陰で
        ウクライナ軍は緊急用に残していた最後の砲弾備蓄に手を出し易くなり、それで今急速に1日あたりの砲撃回数が回復しロシアの進軍を食い止め始めているようだと。

        それに、ウクライナ側の砲弾不足が言われ始めてから、砲撃回数の圧倒的劣勢の下でロシアに奪われた領土は結構な面積になります
        西側から支援を引き出す駆け引きのために、わざとあれだけ領土をロシアに明け渡すなんて事はまあしないと思いますよ

        8
        • たむごん
        • 2024年 3月 21日

        自由ロシア軍団(500人位?)など、義勇組織は全体で数千人くらいとみたいだから、越境攻撃の人数そんなに多くないんじゃないかなあ。

        管理人様やコメント欄でも指摘されてるけど、規格の違う物が混ざってるから、前線が砲弾不足になるのは妥当(ロジスティクスに負担が大きい)。
        NATO規格の155mm砲・155mm砲弾も、品質にばらつきがあるという点も指摘されていた記憶があります。

        陸戦の主役に砲兵が返り咲く・全面戦争3年目も想定外だから、弾薬不足というのも理解できるんですよね。

        (誰が悪いというのではなくて)ロシアの弾薬備蓄・生産量が異常な訳で、北朝鮮からの砲弾調達も想定していなかったわけですし。

        (2024.03.8 ウクライナ軍が直面する砲弾不足の原因、問題は何処に潜んでいるのか 航空万能論)

        5
        • hiroさん
        • 2024年 3月 21日

        チェコの提唱する砲弾供給を期待して、緊急用備蓄分を撃っているとの報道がありましたが。
        これが正しければ、供給の遅れがウクライナ軍の戦線崩壊に繋がりかねないことは認識しておくべきでしょうね。

        15
        • ぱんぱーす
        • 2024年 3月 22日

        残り砲弾の正確な数は不明でも、火力の投射量は誤魔化せないのでウクライナ軍の残弾が乏しいのは事実だと思われます。
        弾だけでなく砲身もかなり消耗しているでしょうからそちらも心配ですね。
        米国の支援再開の流れは明るいニュースですが、泥濘期が明けてロ軍の攻勢が再び強まる前に前線までなんとか届いてほしいものです。

        10
    • lang
    • 2024年 3月 21日

    これトランプ派とフリーダムコーカスに止められませんかね?

    2
      • 名無し
      • 2024年 3月 21日

      この下院議長はトランプの子飼いみたいなもんだからトランプの意向が変わったから急に可決へ動き出したんじゃない?
      でも下院議長はフリーダムコーカスではないからその連中がまた議長辞めさせるとか騒ぐかもしれん
      トランプとフリーダムコーカスの思想はズレてきてて、トランプが説得しても聞かなくなってるからね

      でも共和党は民主党よりもウクライナ支援に熱心な議員も多かったし、フリーダムコーカスが反対しても阻止するのは今度は不可能では
      プーチンが再選したタイミングで支援に反対とか、まるでプーチンのために政治やってるようなもんだし

      8
    • hiroさん
    • 2024年 3月 21日

    かねがね思っていたけれど、思想·発言内容の是非は別として、議長が審議の方向性を明確に表明できる議会は機能している気がする(方針変更も玉に瑕だけど)。
    翻って我が国は、立法府の長とは名ばかりの名誉職の爺さんばかりで情けない。
    故安倍元首相が、自分は立法府の長と発言したのは、認識不足による失言ではなく、実態を皮肉を込めて表しただけかもとか考えるこの頃。

    8
      • 名無し
      • 2024年 3月 21日

      現場が困らないように野党がいくら反対しようが(維新と国民民主からの申し出を受けて一部修正したこともあるが)スケジュール通りに予算を可決させる日本の国会
      予算が成立するのがいつもギリギリになって世界に悪影響与えてるアメリカ議会が機能してる…か

      8
    • ar
    • 2024年 3月 21日

    バイデン大統領的には罪悪感とかないもんかね
    全く知らない他国の国民とはいえ、自国に不法移民を通さないという共和党の要求にハイハイ言えば通ったであろう支援をウクライナがあわや存亡の危機に陥るほどに遅延して。
    数万人規模が死傷しただろうね。自分のイデオロギーにこだわった結果でね

    11
      • Easy
      • 2024年 3月 22日

      バイデンさんはソ連を破壊することに人生を捧げた筋金入りの闘士ですよ。
      ソ連の東側とソ連の西側が戦って潰しあっているこの光景を見て、満面の笑みでしょうよ。

      9
      • はらへり
      • 2024年 3月 22日

      当初のウクライナ支援と引き換えの条件にしてた本来なら民主党が拒否してきた移民対策を民主党が飲んだら、
      そんな条件で飲むとは思わなかった(=移民対策を民主党政権が実施してしまうとプアホワイトや保守派の票がある程度流れてしまう)共和党が
      やっぱその条件じゃダメって今度こそ民主党が飲めないレベルの条件を言い出したのが今回の発端なんで
      根本的に共和党側が悪いわけなんだが

      14
    • 名無し
    • 2024年 3月 21日

    結局ウクライナ支援はするんだったらこの半年弱の時間は何だったのか
    ウクライナ人がその分死んだぞ

    それまでの共和党主流派の力が全く無くなってるのもそうだし
    フリーダムコーカスの反対で辞めさせられたジョンソン下院議長に民主党が譲歩してればさっさと下院で可決出来てたはずなんだがな
    民主党もLGBTとかそっちに熱心な層が力持っててそいつらウクライナ、台湾(東アジア)のこと興味ないし

    8
      • Whiskey Dick
      • 2024年 3月 22日

      共和党は元々強硬な反共産主義なんだけど、近年はかつての敵であるロシアに甘すぎる。現在のロシアは(一応野党が認められた)緩い独裁であり、税制や産業構造は共和党が望むものに近い。共和党は共産主義は嫌いだが、独裁体制自体には否定的でない。例:太平洋戦争直前のアメリカにおいて民主党はナチスを非難していたが、共和党は融和的だった。
      ※戦争前のロシアの所得税は所得に関係なく13%。産業構造は農業、資源採掘、製造業に強く、これはアメリカにおける共和党の支持層でもある。

      >民主党もLGBTとかそっちに熱心な層が力持ってて
      ロシアのプーチン体制も中国共産党も同性愛を嫌悪しており、彼らがウクライナと台湾を支配すれば同性愛者は弾圧の対象になる。共産主義国家は強力な王権と大家族制を土壌としており、「独立した個人」や「非伝統的な性的関係」を敵視している。

      2
    • 借金漬け
    • 2024年 3月 22日

    >ウクライナ首相:必要な資金を提供してくれたため生き延びることが出来た
    生き延びたのはゼレンスキー政権だけでウクライナ兵士国民は死に続けている
    ウクライナの経済はすでに破綻しており米NATOの資金援助の半分は融資です
    アメリカの参戦とレンドリース法で大英帝国はWW2に勝利しましたが
    戦後、借金漬けで7つの海を支配した大英帝国は崩壊しました
    ウクライナはロシアとの戦争に負け莫大な借金だけが残るかもしれません

    16
      • のー
      • 2024年 3月 22日

      国家間の莫大な借金は返済されることは無い。という名言もあります。
      うまく行けば、大量にある天然ガスで返済できる可能性はありますが。
      貸す側も全額が帰ってくることは期待してないと思います。
      あとウクライナはNATOにとっては、貴重な緩衝地帯でしょう。

      4
    • gepard
    • 2024年 3月 22日

    下院共和党とバイデン政権の合意内容がまだ不明なので様子見の段階。
    国境問題のバイデン政権側の譲歩があるならば、不法移民取り締まり強化やテキサス州との対立などの諸問題に進展があるはずだ。

    リンク
    トランプ氏の最近の発言を踏まえても、共和党側は仮にウ支援があるとすれば米国にも利益がある融資という形にこだわっている。形になるとすれば融資案がたたき台になるだろうが民主党側は譲歩するだろうか。

    リンク
    ちなみに下院議長を迂回してウ支援を通すために必要な218票について、今週初めの時点で177票しか署名が集まっていないという。
    民主党左派のイスラエル支援への根強い反対によるもの。共和党からの造反は0。

    6
    • 匿名さん
    • 2024年 3月 22日

    予算のパッケージングには反対だが、議論はパッケージでするのか。

    マッカーシー前下院議長の右腕で、調整力があると聞いたことがあるけど、真意がどこにあるのか、蓋を開けてみるまで、よく分からないな。

    3
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  2. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  3. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  4. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  5. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
PAGE TOP