米Defense Newsは「ウクライナ向け砲弾をEU域外調達するチェコの取り組みが勢いが増している」と報じており、このまま資金が流れ込み続ければ砲弾供給の戦いは「国際市場の供給能力」対「ロシア+イラン+北朝鮮の生産分」に発展するかもしれない。
参考:Czech-led bulk ammunition buy for Ukraine picks up steam
チェコの取り組みを支援する国は増え続け、12ヶ国以上が資金を提供しているらしい
チェコのパベル大統領はミュンヘン安全保障会議で「購入可能な155mm砲弾50万発と122mm砲弾30万発を発見した」「米国、ドイツ、スウェーデンなどのパートナーから資金が得られれば数週間以内にウクライナへ届けられる可能性がある」と言及、これに複数の国が資金提供を表明し、チェコのフィアラ首相は8日「第1バッチ=砲弾30万を購入するのに十分な資金が集まった」と明かしていたが、米Defense Newsは「チェコの取り組みは勢いが増している」と報じた。
チェコ当局は「資金さえあれば追加購入できる砲弾70万発を見つけている」「約30億ユーロの資金があれば砲弾150万発(最初の80万発+新たに追加購入が可能な70万発の合計)を確保できる」「我々は北朝鮮を含む幾つかの国を除く第三国の供給元と交渉する用意がある」と明かし、チェコのリパフスキー外相とポーランドのシコルスキ外相も15日の会談で「今は選り好みをしている場合ではない。長期的な欧州の防衛能力と産業の発展は重要だが、ウクライナは今直ぐ砲弾を必要としている。戦場では砲弾が何処からやって来たかは重要ではない」という意見で一致。
14日にスウェーデンが3,260万ドル、ポルトガルが1億8,600万ドル、19日にドイツが18万発分の資金(額は非公開)を追加提供すると発表、これまでカナダ、英国、ドイツ、フランス、ポルトガル、オランダ、スウェーデン、ベルギー、ノルウェー、フィンランド、ラトビア、リトアニアが公に資金提供(Defense Newsは12ヶ国以上だと言及)を表明したが、実際には20近い国がチェコの取り組みを支援しているらしい。
独メディアは「チェコが交渉している第三国の供給元には韓国、南アフリカ、トルコが含まれている」と言及しており、恐らく122mm砲弾や152mm砲弾の調達先はエジプト、パキスタン、インド辺りで、フィアラ首相は「第1バッチの砲弾納入は早ければ6月頃に始まる」と述べているが、まだチェコと各供給元との契約が締結されていないため正確な納入スケジュールは不明だ。
どちらにしても欧州がウクライナに供給する砲弾供給のボトルネック=購入資金と調達先の分離に成功し、調達先が域外=国際市場に拡大したため、このまま資金がチェコの取り組みに流れ込み続ければ砲弾供給の戦いは「国際市場の供給能力」対「ロシア+イラン+北朝鮮の生産分」に拡大し、ウクライナ軍とロシア軍の火力投射比は是正もしくは逆転する可能性すら秘めている。
因みにFinancial Timesは「155mm砲弾50万発と122mm砲弾30万発を購入するのに15億ドル=約13億ユーロの費用が必要」と報じていたので、新たに発見した砲弾70万発の購入費用は約17億ユーロとなり、仮に70万発が全て155mm砲弾なら1発あたりの調達コストは2,428ユーロだ。
この調達コストはラインメタルがスペインから受注した契約(9万4,200発を2億800万ユーロで受注)=1発あたりの調達コスト(2,208ユーロ)と差が少なく、バウアーNATO軍事委員長が言及した「155mm砲弾の価格高騰(2,000ユーロ→8,000ユーロ)」とは大きく離れた金額で、あまり8,000ユーロという数字を信用しない方がいいのだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army Photo by Cpl. Geordan J. Tyquiengco, Operations Group, National Training Center
砲弾が、どの程度集まるのかは注目です。
トルコ(地震・インフレ)・エジプト(スエズ運河と観光収入の激減)・パキスタン(洪水・外貨準備不足)は、ユーロ・ドルなどの現金が欲しいですから、即金ならば喜んで売却しそうですね。
現金を貰えるのであれば、砲弾を追加生産したうえで、さらなる砲弾を引き渡してもらえるかもしれません。
最大150万発としているが今迄供与予定の兵器数、弾薬数の実際の数が半分以下〜7割だったのを考えると今回も良くて100万発と考えるのが妥当。
供与される弾薬はストックされている物なので第三国が全力でウクライナを支える為に工場フル稼働させる話ではないので今回1回限りと思われる。(アジア中東諸国ではウクライナが戦況をひっくり返すのは不可能と理解している)
仰る分析、理解できます。
2026年までロシア軍の戦車・装甲車は、在庫改造で持つと言われていますから、次の準備も重要になりそうですね。
問題の本質は欧州の戦争に欧州『域外』からしか調達できないことである。米国は同盟国イスラエルの弾薬不足にも取り組まねばならず、韓国の弾薬をあてにし過ぎるとアジア情勢が緊迫した際にリスク要因となる。トルコや南アフリカやエジプトは言わずもがなだろう。
契約の中身が不明な現段階で、ウとロシアの火力投射能力の是正の可能性に踏み込んで議論するのはかなり時期尚早な印象だ。
チェコの取り組みはカネはあっても域内に弾薬がない状況の短期的な解決策に見えるかもしれないが、これまでの多国間支援スキームの実績は「100万発の砲弾」やレオ2供与のゴタゴタなどであり決して想定通りに運ぶとは思えない。
長期的には欧州域内の弾薬生産をロシア並みに引き上げる必要があるだろうが、結局欧州にその意思はあるのだろうか。
「ビロード離婚」なんて世界史でも珍しい無血の民族分離をやってのけた国は違いますね。
このイケジジが会議でドンと「購入可能な155mm砲弾50万発と122mm砲弾30万発を発見した」なんて発言したらハリウッド映画かと思いますわ。
戦争SFでよくある企業の製品として兵器等が供給されて代理戦争が行われてる世界みたいになってきた
>今は選り好みをしている場合ではない。
まったくその通りですが、かねてからEU予算を使った域外調達が問題になっていたかと思うのですが、その問題はどうなっていたのでしょうか?
その問題が解決されているのであれば、それこそ韓国から調達すれば解決するのではないでしょうか。
そりゃ問題は残るでしょう。
個人で例えれば、現金を渡すのと、自分の庭でとれる野菜を渡すのの違いのようなものです。
額面上同じ金額でも、懐の痛み具合は2~3倍ぐらい違うので、抵抗は大きいでしょう。
それと韓国はウクライナ向け砲弾の輸出は承認しないのでは?
紛争当事国への兵器輸出はしないはず。
過去に米国経由でトコロテン方式で155mm砲弾を実質的に供与はしてましたが。
今回のチェコの提案は中々砲弾増産のために投資しない欧州企業と法制度整備しない欧州政府の尻を叩く意味合いもありそう
早く法律作って生産しないとビジネスチャンスを失うぞ、と
韓国は北朝鮮がロシアに軍事支援を初めてから風向きが変わって、保守系メディアは「韓国政府は本気になってウクライナに軍事支援しろ」って記事連発してますし
このまま何もしないってことはないかと
このチェコのマッコイ爺さん主導する調達は
「EU予算ではない有志国の支出」によるものです。
ぶっちゃけるとモノ自体が自衛隊法での不用品としても
武器輸出三原則の例外としても現状出せない日本にとっては
これに金だけでも乗っかることができれば支援になるんですよね……
ロシアが先に買い付けそう
インドとかすでにロシアに大量に輸出してるといわれてるし
勉強になります、その観点は抜けていました。
食糧や資源を対価に、乗る国は出てくるかもしれませんね。
時間との勝負ありそうですね。
西側諸国は、政権幹部に裏金を掴ませられない弱み(?)もありますから。
調達先候補にアチラ側じゃないかと思われていた南アフリカやパキスタンも入ってるのは意外でした。
ロシアから原油を買いまくってたパキスタンくんは貧乏なだけだったのねってことなんでしょうが、南アフリカは最近ロシアと軍事演習した間柄じゃ無いのかよと。
グローバルサウスはウクライナに冷たいとか言われてましたがやっぱり金次第なんでしょうね。
戦争が長引いたら砲弾製造に名乗りを上げる国も出てくるかもしれません。
欧米じゃ儲からなくても低賃金の途上国では美味い商売になるかもしれない。
国際市場で砲弾の取り合いという図式になったらロシアはちょっと分が悪いでしょう。
単純に欧米に比べてお金がないのというのと、ロシアと付き合って得られるベネフィットが軍事技術が貰えるかもというのと石油が安く買えることくらいしかない。
その頼みの石油価格も中国経済の失速で下落傾向です。
民生品は売ってくれる国はそれなりにありますが武器そのものを売ってくれる国はやっぱり北朝鮮とイランくらいしか出てこないんじゃないですかね。
”チェコ大統領、ウクライナのため砲弾80万発を購入する資金が集まった”
と記事に出ていたのは3月8日だったから。
最初の便はそろそろでしょうか。到着の報告が出るのが待たれますね。
自己レスです。
”仮に70万発が全て155mm砲弾なら
1発あたりの調達コストは2,428ユーロだ。”
これが正しいとして、バウアーNATO軍事委員長
に対し、8,000ユーロ/発を吹っ掛けた?企業は
そのまま砲弾製造を行うのでしょうか?。
それとも、儲けが減るからやめるのでしょうか?。
砲弾1発あたり8000ユーロというのは、これまでのところバウアーNATO軍事委員長の発言以外にソースがなく、実際にその金額をふっかけた企業があるのかどうかもわからないので、本記事にある通り、まさに「あまり8,000ユーロという数字を信用しない方がいいのだろう。」ということですね。
それにしても、やはりこれほどの規模の戦争ともなると特定の少数の人々の意志だけでは趨勢が決せず、あちらがだめならこちらがのような状況の変化がリアルタイムに進行し、先のことを語るのはほんとうに難しいですね。
砲弾の話はともかく、砲身の耐久力と供給力、製造能力はどうなっているのでしょうか?
NATO域内でも砲弾規格が微妙に違うのに域外国の砲弾なら別物に近いだろう
ウクライナ軍が実際に大砲で撃てば命中率は下がるし貴重な砲身が損傷するかも
対してロシアの北朝鮮に新規オーダーの砲弾はロシア軍規格で発注してるだろ
オーダーしても届くものが規格を満足するとは限らないし、北朝鮮規格かもしれないし、そもそも新品じゃないかもしれないし。
岸田政権の安保三文書改定で弾薬や整備用品の製造能力を上げるってことも明記されてたはずだけど
さらに加速させてさらに増強させないとマズいじゃないかな
そのためには人手不足を解消させる必要があって、子供を増やさないといけないがそれまでには年数がかかり、さらには増えることはあり得な…い可能性がとんでもなく高そうだけど