米国関連

F/A-18E/Fの生産ライン閉鎖、契約の遅れで2027年春までの延期が確定

米議会は海軍が要請する「F/A-18E/Fの新規調達打ち切り」を拒否し続けてきたが、ボーイングが「F/A-18E/Fの生産ラインを2025年に閉鎖する」と発表したため同問題に決着がついたと思われていたものの、F/A-18E/Fの生産は2027年春まで続くことが確定した。

参考:Navy Buys 17 Super Hornets in $1.1B Deal, Last Planned Contract Secures Technical Data Packages

議会が2025年度予算に調達資金を盛り込めば2027年の生産ライン閉鎖が再び先延ばしになるかもしれない

米海軍は予算削減を受けて「F/A-18E/Fの新規調達を2014年に打ち切りたい」と提案したが、議会は国防権限法(毎年の国防予算の大枠を決める法律)に同機の調達を盛り込んで海軍の動きを阻止、以降も海軍の議会の押し問答が続き、遂にギルディ作戦部長は2022年6月「海軍が必要としていない航空機調達(F/A-18E/Fの新規調達分)を議会に働きかけるを止めてほしい」と訴えて注目を集めていた。

出典:DoD photo by Lisa Ferdinando

それでも議会は2023年度予算に8機分の調達資金(約6億ドル)を盛り込んだため、F/A-18E/Fの新規調達打ち切りは202年4度予算に持ち越された格好になっていたものの、ボーイングは昨年2月「F/A-18E/Fの生産ラインを2025年に閉鎖する」「インド海軍がF/A-18E/Fを採用したら新規製造を継続して2027年に生産ラインを閉鎖する」と発表、インド海軍はラファールを選択したため2025年の生産ライン閉鎖が確定したと思われが、どうやら2027年まで生産ラインは維持されるようだ。

どうやらボーイングは海軍にF-35C並(約1億ドル)の価格を提示したため、2022年度予算と2023年度予算に盛り込まれていた計20機分の価格交渉で行き詰まり、この最終契約分(LOT47~48生産分)が19日に発表され「LOT47分の引き渡しが2026年に開始され、LOT48分の最終号機は2027年春頃に引き渡される」と説明している。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class T. Logan Keown 耐久年数の延長プログラムを受けるF/A-18E/F

つまり2027年春頃まではF/A-18E/Fの新規生産ラインとサプライヤーが維持されるという意味だが、米海軍は2025年度予算の中で「F/A-XXへの投資削減=予算不足による実用化時期の先送り」を提案しており、Breaking Defenseは「F/A-XXの開発が遅延し、F/A-18E/Fの調達が0になるという2025年度の組み合わせは確実に議会の反発を招くだろう」と報じているため、議会が2025年度予算にF/A-18E/Fの調達資金を盛り込めば2027年の生産ライン閉鎖が再び先延ばしになるかもしれない。

因みに19日に発表された契約は20機分ではなく17機分で、この契約には「F/A-18E/Fの技術データを海軍に引き渡すこと」も含まれている。残り3機分の契約が締結されるのか、3機分の資金が技術データの引き渡しに化けたのかは不明だが、2027年に閉鎖されるのは新規生産ラインのみでBlockIIからBlockIIIへのアップグレード作業、EA-18Gの近代化プログラムは2030年代まで継続される見込みだ。

関連記事:米海軍は資金不足、中国海軍とのギャップが287隻対395隻に拡大する可能性
関連記事:10年間に及ぶ米海軍と議会の戦いが決着、2025年にF/A-18E/Fの生産ラインを閉鎖

 

※アイキャッチ画像の出典:Photo by Maria Rachel Melchor

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コメント

    •  
    • 2024年 3月 25日

    何故、ウクライナ以外の記事ばっかりになったの?

    ウクライナ不利の情報しかないから?

    事実と向き合うのが苦痛になったの?

    5
      • ひろゆき
      • 2024年 3月 25日

      ここ色んな軍事記事をまとめた個人ブログなので、どの記事を取り扱うかは管理人さんの自由だからね?
      ウクライナとロシア戦争のニュースを見たいなら他のブログとか行けばいいし、翻訳して生のソースに触れられなかったりするのであれば記事の内容にだけコメントしとこう
      管理人さんとか関係ない話題をだすのはマナー違反だぞ

      165
      • 秩父
      • 2024年 3月 25日

      個人的にはウクライナ軍がロシアの揚陸艦を巡航ミサイルで攻撃した件を取り上げ欲しい。

      久々の戦果なのに取り上げて貰えないのは寂しいです。

      6
        • 幽霊
        • 2024年 3月 25日

        個人的には今揚陸艦を攻撃して意味があるのかな?とは思いますね
        戦果には違いないけど戦局に影響を与えるかと言うとまず無さそうですし。

        22
          • 戦略眼
          • 2024年 3月 26日

          海上輸送に使っているはずなので、沈める価値はあるよ。

          9
          • nachteule
          • 2024年 3月 26日

           国内外へのアピールとして必要と思って居るのかもしれない。それ以外の理由だとロシアと交渉するつもりはない意思表示だろうね。

          1
        • gepard
        • 2024年 3月 25日

        リンク
        揚陸艦へのダメージは無し、若しくは最小限であることが衛星画像分析から示されています。

        記事内容とは関係ないのでこのくらいで。

        6
        • nachteule
        • 2024年 3月 26日

         そんな戦果なんて今となっては普通レベルの物でしかないし、わざわざ取り上げる必要なんてあるのか?ウクライナの戦果を見たいならばミリレポでもウクライナに偏りすぎの動画配信者だっていくらでも選択肢あるんだし。

         個人的に取り上げるとしたら信頼度が高ければロシアがドローンからの位置情報を元に戦車で長ロングレンジ攻撃して間接砲撃能力向上させたとか、ちょっと珍しい話題の方がありがたい。

        6
      • 例のアレ
      • 2024年 3月 25日

      こwれwはwひwどwいw

      30
      • Whiskey Dick
      • 2024年 3月 25日

      3月24日の記事の通り、前線の動きはほぼ見られない。そろそろ雪解けの時期でウクライナの大地は泥沼の様になっている。この状態で進撃すれば戦車は泥に沈み、歩兵は足を取られる。今進んでも互いに不利なので大砲やドローンで相手の陣地を攻撃していると思われます。

      29
      • たむごん
      • 2024年 3月 25日

      泥濘期だから、戦線は大して動かないですよ。

      そもそも管理人様が、好きなトピックを取り上げたらよいかと。

      釣りと思いますが、一応。

      56
    • DEEPBLUE
    • 2024年 3月 25日

    何だかんだで30年代まで存続すると予想

    9
      • jimama
      • 2024年 3月 25日

      B-52「そんなに早く引退できるなんてウラヤマ」

      11
    •  
    • 2024年 3月 25日

    企業の献金を受けた議員が必要ないにもかかわらずその企業の製品を国費で買うことを公然と強いているのは腐敗ではないのか?

    27
      • 匿名
      • 2024年 3月 25日

      何処の国の軍隊であろうと、自分たちの望む最高の装備を常に与えられることは無いわけで…。
      国費を使うからこそ、軍の希望のみを聞いて兵装調達できる政府もまた無いわけです。

      8
      • 理想はこの翼では届かない
      • 2024年 3月 25日

      現場が要らないと言ってるのに議会が押し付けてくるって、意味がわからないですよね
      裏でどんだけのカネが動いてるんだろうかとどうしても勘ぐってしまいます
      議会制民主主義のダメな所が浮き出たような話です

      27
        • ハリ
        • 2024年 3月 26日

        こんな話、インドの戦車だけだと思ってましたよ

        1
      • 匿名希望係
      • 2024年 3月 26日

      よく借りる空軍に専用機持たせた方がいい気はするな。

      1
    • たむごん
    • 2024年 3月 25日

    アメリカの雇用問題が絡む問題に、議員が口出しするという話が、あった記憶があります。

    巨大工場閉鎖は、雇用・地域経済への影響は大きいですが、遅々として再編は進みませんね。

    13
    • 干物
    • 2024年 3月 25日

    F/A-XXの開発予算が大幅に削減される見通しなのでスパホの運用期間も延びそうですね。

    5
    • 58式素人
    • 2024年 3月 25日

    あちこち読んでいると。
    米海軍や米海兵隊はF35の調達数を削減するみたいに思えます。
    主に調達/維持経費が高額であることを理由としている様子ですね。
    全体に(陸/海/空/海兵/宇宙)国防予算が不足しているということなのでしょう。
    では、その穴埋めはというと、F/A18の既存機の改修で行うことを目論んでいるように見えます。
    素人などは、でしたら新造を、と思うのですが。こちらも新造は高額みたいですね。
    2022年頃の他所の記事では、F35Cとほぼ同額を提示したとか。
    議員さんたちによく説明してもらわないと、でしょうか。

    8
      • 戦略眼
      • 2024年 3月 26日

      ただでさえ割高なF-35CとF/A-18E/Fが同価格とか、おかし過ぎる。

      8
    • a
    • 2024年 3月 25日

    NASAのコンステレーション計画とかもそうだけど、アメリカの議会のパワーって強いよね
    選挙区の代表として地元の雇用とかを守りたいのはわかるけど、それに固執した結果、防衛能力の低下に繋がったら本末転倒な気がするけどな

    13
      • Easy
      • 2024年 3月 26日

      日本も三菱重工が政界と官僚組織に影響力を持ち過ぎて、結果MRJやらH3やらと失敗ばかり繰り返しており。
      企業は森の木と一緒で、適宜に老いたら切り倒さないと次の世代の木が育たない、というのはような東西を問わず真理かと。

      3
    • 現役
    • 2024年 3月 25日

    先代F/A-18は米空母の横須賀公開日に空母内で戦闘機の機体を直接触らせてくれ個人的にも
    気に入っているシリーズなので飛び続けてほしい。

    5
    • 無印
    • 2024年 3月 25日

    F-35Cの調達もゆっくりだし、F/A-XXはいつ配備されるかサッパリ分からないし、空母戦闘機が完全ステルス化するのはまだまだ先っぽいなぁ
    中国のJ-35にボコボコにやられて「奴らはステルス機だ、このホーネットタイプじゃダメだ!」なんて事にならなきゃいいけど

    9
      • 戦略眼
      • 2024年 3月 26日

      なるかもしれないし、変わらないかもしれない。
      レーダー技術の進歩次第。

      5
      • Whiskey Dick
      • 2024年 3月 26日

      アメリカ海軍は早期警戒機E2の長波長レーダーでステルス機を探知できると主張しており、空軍ほどはステルスに執着していない。海軍航空隊は空中戦による制空権確保を重視していないというのもある(F/A18はどちらかというと攻撃機よりの性能)。
      海上では遮蔽物は無く電波が届きやすいし、大気の温度分付も均一なので赤外線センサーが使いやすいといった特性の違いがあるのかもしれません。

      4
        • kitty
        • 2024年 3月 26日

        ミサイルの性能向上で、F-14+フェニックスミサイルを退役させたくらいですからねえ。

        米国の場合、弱い者イジメに空母打撃群を使うことが多く、その場合第五世代機で編成された部隊である必要性は薄いんですよね。
        米国相手に乾坤一擲の勝負をする中国の空母艦隊は気合いが違います。
        それに付き合って、全空母打撃群をハイエンド仕様にするのはいくらお金があっても足りない。

        3
        • jimama
        • 2024年 3月 27日

        99年のセルビアでF117が60年代初頭に登場したS125を改良したのに落とされてますから
        工夫次第で古いシステムでも捕捉して落とせんことはないですし
        その当時と今でステルス技術の原理が変わってない(はず)なので同じ技術で捉えられるはず
        後はまあ素人考えですがどんなにRCSが小さくなってもレーダー上に映っている以上
        亜音速~音速で高度数百mとかを飛行するハトとかゴルフボール大のものがあれば
        スパコンとかで1秒前の画像と比較されてバレそうな気もします

        2
    • 反革命分子
    • 2024年 3月 25日

    ウクライナ戦争を見るに、不具合がなく使い慣れた兵器の生産ラインが維持されているというのも悪いことではないのかな。
    対中戦になって損害を出して、思ったよりも長期戦になって、とくれば機種を問わず量産できるだけでありがたいはず・・・

    6
    • daishi
    • 2024年 3月 25日

    F/A-18E/Fの製造ラインが止まる = EA-18Gの調達も止まる (EA-18Gの近代化改修は既存機体のみ)
    で良いんでしょうか。
    EA-18Gは輸出先が限られている(オーストラリアしか採用しなかった)のもあるので、大勢に影響はないのですが、電子戦機がアメリカ軍全体で充足されているのか、次世代への備えや研究も進められているのかちょっと不安です。

    2
      • 全てF-35B
      • 2024年 3月 26日

      電子戦はF-35が出来ますので、問題ないです。

      2
        •  
        • 2024年 3月 26日

        AN/ASQ-239等のカタログスペックは認めるけど、単座でパイロットが電子戦まで対応しなければならないF-35じゃ専門の電子戦要員を乗せるEA-18Gの代用にはなりませんよ
        ただでさえEA-18Gの時点で電子戦要員のオーバーワークは問題になっていたのに
        アメリカ軍の電子戦軽視はウクライナ戦争当初から結構問題になっています

        14
        • 匿名希望係
        • 2024年 3月 26日

        NGJ打ち切りでなかったけ?

          • kitty
          • 2024年 3月 26日

          リンク
          Raytheon awarded lot 3 for next generation jammer mid-band on EA-18G Growler

          とかありますけど、F-35関係でなんかあったんですか?

    • 匿名希望係
    • 2024年 3月 26日

    脱字
    規調達打ち切りは202年4度予算

      • kitty
      • 2024年 3月 26日

      FY2023でのLot5の調達情報までは確認できましたけど、これもウクライナ支援による台所事情の苦しさなんでしょうかねえ。

      • kitty
      • 2024年 3月 27日

      なるほど、F-35にはNGJを付けるだけで電子戦機仕様にできるという海軍大将/LMのコメントがありましたが、予算削減の煽りで調達が遅れてEA-18Gの更新分すら充当できていないと。

    • FSX
    • 2024年 3月 26日

    今から見ればFS-X開発で日本の独自開発がアメリカ政府議会に潰され輸入・改造の選択の時に
    双発で拡張性が大きいF/A-18改造を選び日本独自開発のフェーズドアレイレーダーと対艦ミサ
    イル搭載してれば現在のF/A-18E/Fに匹敵する機体性能のF-2とF-15で東アジア最強になった
    かもしれない

    1
      • 匿名
      • 2024年 3月 26日

      >双発で拡張性が大きいF/A-18改造を

      🤔……???

      1
      • hoge
      • 2024年 3月 27日

      レガホ世代は小型で内部容積はカツカツで燃料の搭載量が少ないことが当初から問題視されていた。
      内部容積の限界からスパホが開発されている。

        • 匿名
        • 2024年 3月 27日

        なんせ、原型は重量級のF-15と対になる軽量級戦闘機の座をF-16と争ったノースロップのYF-17ですもんね…

          • イーロンマスク
          • 2024年 3月 28日

          スパホとF-2は初飛行が同年でほぼ同じなんよな

          1
          • daishi
          • 2024年 3月 29日

          もともとP-530コブラを軽量戦闘機計画に提案する際にP-600/YF-17に仕立て、海軍採用になった時に再度大きくしてそれでも不足したのでスパホ化した、という流れでしたよね。
          P-530のスペックはよくわからないのですが、YF-17より大きくF/A-18A/B/C/Dと同程度(=先祖返り)のようです。
          ※ 書籍「Northrop: An Aeronautical History」の引用らしくネットに元ネタがないので信憑性はわからないです(電子書籍もなさそう)

          リンク

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