バイデン政権は昨年「デンマークがアルゼンチンに保有するF-16AMを売却する」と通知、米議会も最大38機の売却を承認していたが、スペインのInfodefensaは22日「デンマークはアルゼンチンに24機のF-16AMを売却する」「この契約は来週中にも成立する」と報じている。
参考:600 millones de dólares: Argentina cada vez más cerca de los F-16 daneses
デンマークは予備機を含めてF-16AMを計43機持っていたことになる
アルゼンチン政府は2022年9月「空軍保有の空中給油機と互換性があり、AESAレーダー、戦術データリンク、電子戦装置を搭載する多用途戦闘機の調達に約6億8,400万ドルを費やす予定だ」「検討中の候補には中国のJF-17、米国のF-16、ロシアのMiG-35、インドのテジャスMK.1Aが含まれている」と明かし、ロシアの現状を考えるとMiG-35が選ばれる可能性は限りなく0に近く、テジャスMK.1Aは英国の技術がネックになり、アルゼンチン空軍はJF-17よりもF-16を希望。
アルゼンチンのLa Nación紙は「ウクライナへのF-16提供」が話題になっていた2023年7月「バイデン政権が議会にアルゼンチンへのF-16売却を通知した」と報じ、これは「デンマークが保有する全てF-16AM(38機)を3億3,870万ドルでアルゼンチンに売却する」という内容で、ウクライナのシンクタンクは現地新聞に寄稿した中で「アルゼンチンには時間と選択肢があるのでデンマークのF-16を譲ってくれ」と訴える事態に発展、米Breaking Defenseは9月「アルゼンチンへの売却が承認された」と報じた。
“7月下旬に国務省は『デンマークが保有する最大38機のF-16を総額3.38億ドルでアルゼンチンに売却する可能性を承認した』と議会に通知、Breaking Defenseの取材に国務省関係者は『アルゼンチンへの売却は承認された』と明かしたが、通知された内容や金額は取引内容の上限であり、この関係者は具体的な取引内容について明かさなかった”
“アルゼンチンがデンマークからF-16を取得するためには『(米国との)微妙な政治的立場の違い』を解決する必要があるものの、国防総省を担当する経験豊富なアナリストは『このオファーが水面下で静かに進められているのは中国のJF-17売却を阻止するためだ』と、別の軍事アナリストも『国防担当者が最も恐れているのは米国の裏庭に中国製航空機を運用する国が現れることで、特にアルゼンチンに提案されているJF-17にはWS-13が搭載している。このエンジンはJ-35にも採用される予定(WS-19搭載搭載する可能性もある)で輸出に成功すればエンジン産業基盤の強化に直結する』と述べている”
“ただデンマークはアルゼンチン(38機)とウクライナ(19機)のニーズを満たすF-16の在庫(30機+予備機)を持っておらず、この問題を最終的にどう解決するかは不明だ”
この問題についてスペインのInfodefensaは22日「F-16AM売買契約に署名するためデンマークのポールセン国防相が来週中にもアルゼンチンを訪問する予定」「総額6億5,000万ドルの契約はF-16AM×24機(地上要員の訓練用機体×1機)取得に関する3億3,800万ドルの契約、AIM-9XやAIM-120Dなどの搭載兵器に関する3億1,200万ドルの契約で構成されている」と報じており、これが事実ならデンマークは予備機を含めてF-16AMを計43機持っていたことになる。
因みにオランダとデンマークは計61機(42機と19機)の提供を約束しており、ウクライナは12機で構成される飛行中隊を最終的に4個~5個立ち上げる予定だが、恐らく両国は提供できるF-16AMを全て吐き出した格好なので、仮に「61機では足りない」もしくは「損耗分の補充」といった需要が発生すると「次に誰がF-16(戦闘機)を提供するのか?」という問題に直面するものの、これが問題化するのは相当先の話だろう。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo/Staff Sgt. Larry E. Reid Jr., Released
アルゼンチンに対する武器売却ならイギリスが何か言ってきそうだけど中古なら口を挟めないのかな?
イギリスの部品を使ってないからでは?
テジャスはイギリス・マーチンベイカーの射出座席使っててこれが引っかかった、という話でしたよね。
F-16はレイセオン/コリンズのACES IIを採用しているのでイギリスフリーになるのが大きいのでしょう。
T-50も確かそうかと
ミレイ政権は親米なので提供決まったのかな?
個人的にはあの国の社会実験には興味ある
デンマークは、民主主義国ですから、納税者に目を向ける必要があります。
ロシア本国からの脅威は小さいですから、有償(アルゼンチン)と喜捨(ウクライナ)を比較すれば、ウクライナにかなり配慮したと感じていまます。
アルゼンチンは人口4604万人(2010年国勢調査)、人口増加傾向(やや少子化)、平均年齢が若い
ウクライナは戦争中で、国内在住人口2000万人台(後半?)、人口減少傾向、高齢化が加速(若者の海外流出と戦争)
アルゼンチン経済の動向次第ですが、対中国・対ブラジル(対BRICS)の観点からも、注目かもしれませんね。
(Updated date: 12/07/2023 基本データ アルゼンチン大使館)
経済的な部分は仰るとおりと思いますが、ウクライナと違い支援のないアルゼンチンがF-16購入できるか不安です。
以前記事に掲載されたノルウェーの中古P-3も、初回分の分割払ができず今年の2月時点では配備されていない様ですので。
リンク
仰る通り、どうなるのか気になりますね。
推移を見守りたいと思います。
P3C未配備の情報、ありがとうございます!
デンマーク本国へのロシアの脅威は低いですが、属領のグリーンランドはロシアの脅威が大きいです。
デンマーク軍の規模が小さいことを併せて考えるとグリーンランド防衛にアメリカの力を借りたいといった所でしょうか。
アメリカの関心を買うためにウクライナへ中古機を供与するのはアリではないかと思います。
仰る通りかもしれませんね。
アメリカにとって、グリーンランドは、アメリカ防衛の最重要拠点の1つなんですよね。
中国軍が、グリーンランドに拠点を築くと、非常に厄介な位置になります。
北極海航路に注目が増すうえに、NATOの大西洋中継拠点としても、極めて重要になります。
アメリカ軍が、基地を設置しているのですが、まず手放さないだろうなと。
次はアメリカが退役予定のF-16Cを出せるかだな。
米軍のA/Bでもいいきはしますけどね。
F-16 ADFとかが何機あるかは知らないけど
ウクライナに対する戦闘機供与で。
スウェーデンのグリペンとフランスのミラージュ2000の話が
浮かんでは静まるを繰り返しているようだけれど。
実際のところはどうなのでしょう。
マクロン大統領が口走った(?)要員派遣の話にしても、整備要員と
整備インフラと考えると、筋書き(?)が組めそうな気もするのですが。
他所の記事では、グリペンとF16とミラージュ2000を並べて、
それぞれ、Mig29/Su27/Su24の代替機と書くものもありましたし。
代替のラファールとグリペンE/Fの準備ができるのかな?
ミラージュ2000の方は、2022年に仏空軍を退役済のようですね。
ですから、現在の保有機数の勘定には挙げられていないものと思います。
どのくらいの機体を保管しているか、でしょうか。
グリペンの場合も、同様に保管機がいくつかあるようですね。
WIKIでは24機とか。型式はC/D型のようですが。
退役したのは初期型のCで、–5とDは現役のはずでは?
仏空軍以外では十分に現役なようです。