米国関連

150km先を攻撃可能なGLSDBがテストをパス、まもなくウクライナに到着

ロイターはウクライナへのGLSDB提供時期について昨年12月「2024年にずれ込む」と報じていたが、POLITICOは30日「ウクライナ向け長距離精密弾薬のテストが成功した」「早ければ31日にも戦場へ到着する予定だ」と報じている。

参考:New US-made longer-range bomb expected to arrive as soon as Wednesday in Ukraine
参考:Pentagon press briefing: 1/30/24

大量のGLSDBを供給するには追加契約が必要=議会が600億ドルの追加支援を認めなければならない

反攻作戦を控えていたウクライナは「HIMARSの射程(約80km)を越える長距離攻撃の提供」を要請、これを受けてバイデン政権は昨年2月にGLSDB(地上発射型小口径爆弾)の提供を発表して注目を集めていた。

出典:SAAB GLSDB

ボーイングとサーブが開発した150km先の目標を攻撃可能なGLSDBは「クラスター弾非活性化のため用済みになるM26弾のロケットモーター」と「アフガニスタン紛争で余ったSDB」を再利用した地上発射型の滑空爆弾で、ウクライナに提供済みのHIMARSやMLRSで運用可能な兵器なのだが、GLSDBは開発したものの採用国が現れなかったため現物も生産ラインも存在せず、ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)経由の資金で契約締結後に生産ラインが立ち上がった。

ボーイングは国防総省にGLSDBのウクライナ提供を提案した当時「契約締結後5ヶ月~7ヶ月で納品できる」と主張していたが、Bloombergは業界関係者の話を引用して「最初の納品は契約締結から約9ヶ月後になる」と報じ、初回出荷は10月頃になると予想されていたものの、ロイターは昨年12月「ボーイングからの初回出荷は12月下旬の予定で数ヶ月ほどかかるテストを国内で実施する予定だ。このテストで能力が確認できれば2024年の早い時期にウクライナへ提供されるだろう」と報じていた。

このGLSDBについて米国のPOLITICOは30日「ウクライナ向けに製造された長距離精密弾薬のテストが成功した」「早ければ31日にも戦場へ到着する予定だ」と報じ、国防総省のライダー報道官も「安全保障支援の一貫としてウクライナにGLSDBを提供する」「安全上のリスクがあるため具体的な提供日時は明かせない」と述べている。

因みに国防総省とボーイングが締結したGLSDBの契約額は3,300万ドルに過ぎず、ここには生産ラインの立ち上げ費用(SDBの価格は4万ドルらしい)なども含まれ、シンクタンクの分析によれば初回出荷は24発だと主張しているため、GLSDBを継続的に供給するには追加契約が必要=600億ドルの追加支援を議会が認めなければならない。

追記:3,300万ドルで24発しか調達できないという意味では無いので勘違いしないように。

関連記事:150km先を攻撃可能なGLSDB、ウクライナへの到着は年内ではなく来年
関連記事:米国、150km先を攻撃可能な長距離攻撃兵器を含むウクライナ支援を発表
関連記事:ロシア軍のEW能力が効果を発揮、GPS誘導兵器は目標を外しドローンも制圧

 

※アイキャッチ画像の出典:SAAB GLSDB

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コメント

    • 1919
    • 2024年 1月 31日

    GLSDBは書類上の扱いはミサイルなんですか?それとも砲弾?

    2
    • 58式素人
    • 2024年 1月 31日

    当面は現行のM31ロケット弾の長射程版扱いになるのでしょうか。
    終末誘導の種類にもよりますが、敵地の150kmの奥深くに入り込んで
    目標の捜索と弾頭のSBDの最終誘導を行うステルス無人偵察機が欲しくなりますね。
    状況により攻撃対象を変えるようなら必要に思えます。
    弾頭のSBDにはセミアクティブレーザー誘導のものもあるようですし。
    固定目標を狙うにしても、新しいGPS誘導装置は必要でしょうか。
    INSですと、どうしても誤差が大きくなるでしょうし。

    3
      • バーナーキング
      • 2024年 2月 01日

      素性からして古典的なGPS/INSじゃないですかね。
      今のウクライナの状況でセミアクティブレーザー誘導の選択肢はないでしょう。
      滑空が安定した辺りでGPSでゆるっと補正して他はINS、とかで純INSよりははるかに精度が出るだろうし、GPSへの欺瞞の影響もほぼ避けられる。

      2
    • Easy
    • 2024年 1月 31日

    さすがに150キロ先までPole-21が立ち並んでいることは無いでしょうから、戦略攻撃に威力を発揮しそうですね。
    問題は誘導装置にMコードを使っているかどうか、ですが。
    流石にまだ現物を非同盟国や敵国に渡すわけにはいかないので、旧式GPS誘導でしょうかね。

    4
    • 名無し
    • 2024年 1月 31日

    ウクライナのために600億ドルもの支出を議会が認めるとは考えにくい気が…

    2
    • 桐谷美玲
    • 2024年 1月 31日

    プーチンの手先のハンガリーは折れたしトランプは150億の損賠賠償で再選の芽は潰えた。
    完全にウクライナに流れが戻ってきたな。

    1
      • 名無し
      • 2024年 1月 31日

      何回目なんですかその流れが戻って来た!てヤツ

      16
    • 765
    • 2024年 1月 31日

    日米みたいに中国のガチ防空網相手だと射程短い+迎撃されるで微妙兵器だと思うけど、そうじゃない国には戦術弾道ミサイルよりも安くてお手軽なんで流行るかと思ったが全然流行らなかったな
    これ買うくらいなら自爆ドローンの方が良いってことなんだろうか

    1
      • 名無し
      • 2024年 1月 31日

      え?
      ロケット弾と巡航ミサイル、航空機、弾道ミサイルの迎撃システムはまるで別物ですよ

      5
        • 765
        • 2024年 2月 01日

        何の話をしてるんですか?
        記事にも書いてある通りGLSDBは滑空爆弾なので、大半の防空システムで迎撃可能ですよ。

        そもそも防空網って複数の迎撃手段が用意されてるものだし、航空機と巡航ミサイルは両者共にパトリオットに撃ち落とすされてるの見たこと無いんですか?

        2
      • nachteule
      • 2024年 1月 31日

       元が航空兵力に乏しい組織がターゲットみたいな感じだったし売ってもらえるかがあるし、発射プラットフォームに選択肢は有りそうだが基本MLRSかHIMARSでの運用。ATACMSと比較したら射程と威力は限定されているから今だとGMLRSの上位と考えたら値段次第では売れそうな気はするね。

      2
    • きりる
    • 2024年 2月 01日

    GBU-39の単価は40,000ドルなんでブースターと統合費用で一発当たり100,000ドルくらいかな

    射程100kmで突入速度が音速くらいあれば意外に使えそう、炸薬50ポンドなんで範囲攻撃には向かないな
    エクスカリバー弾よりマシかもね

    1
      • バーナーキング
      • 2024年 2月 01日

      形状からして遷音速以上は難しいでしょう。
      最後翼閉じてダイブするとかすればできなくはないかもしらんけど、そうまでして速度稼ぐより、わずかでもいいから不規則蛇行なり螺旋なりで軌道ブラした方が迎撃避けられそう。

    • ku
    • 2024年 2月 01日

    40万発在庫あるのか 
    プーチン君覚悟しとけ

    1
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