今年2月にウクライナへの提供が決まった長距離攻撃兵器「GLSDB」は年内の到着が予想されていたものの、ロイターは1日「ボーイングから納品後に数ヶ月かかるテストを米国内で実施するためウクライナへの引き渡しは2024年になる」と報じている。
参考:Ukraine’s new long-range rocket delivery from US pushed to next year
生産ラインの立ち上げや生産に大きな遅れが生じたわけではなく、GLSDBはほぼ約束通り「9ヶ月後」に完成している
反攻作戦を控えていたウクライナは「HIMARSの射程(約80km)を越える長距離攻撃の提供」を要請、これを受けてバイデン政権は2月にGLSDB(地上発射型小口径爆弾)の提供を発表して注目を集めていた。

出典:SAAB GLSDB
ボーイングとサーブが開発した150km先の目標を攻撃可能なGLSDBは「クラスター弾非活性化のため用済みになるM26弾のロケットモーター」と「アフガニスタン紛争で余ったSDB」を再利用した地上発射型の滑空爆弾で、ウクライナに提供済みのHIMARSやMLRSで運用可能な兵器なのだが、GLSDBは開発したものの採用国が現れなかったため現物も生産ラインも存在せず、ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)経由の資金で契約締結後に生産ラインが立ち上がった。
ボーイングは国防総省にGLSDBのウクライナ提供を提案した当時「契約締結後5ヶ月~7ヶ月で納品できる」と主張していたが、Bloombergは業界関係者の話を引用して「最初の納品は契約締結から約9ヶ月後になる」と報じ、初回出荷は10月頃になると予想されていたものの未だにGLSDBはウクライナに到着してない。
このGLSDBについてロイターは1日、国防総省の話を引用して「ボーイングからの初回出荷は12月下旬の予定で数ヶ月ほどかかるテストを国内で実施する予定だ。このテストで能力が確認できれば2024年の早い時期にウクライナへ提供されるだろう」と報じている。
国防総省は「USAI経由の資金で契約が締結されたのは3月だ」とも明かしているため、生産ラインの立ち上げや生産に大きな遅れが生じたわけではなく、ほぼ約束通り「9ヶ月後」にGLSDBは完成しているため提供が来年になるのは手続き上の問題だ。

出典:Photo by Lance Cpl. Nicholas Guevara
因みにThe Economist紙は「静的な接触線が出現したことでロシアの強力な電子戦能力が効果を発揮し始めた。エクスカリバー砲弾、JDAM-ER、GMLRS弾が目標を外し始めた」と報じているので、この話な事実なら同じGPS誘導のGLSDBも影響を受ける可能性が高い。
関連記事:米国、150km先を攻撃可能な長距離攻撃兵器を含むウクライナ支援を発表
関連記事:ロシア軍のEW能力が効果を発揮、GPS誘導兵器は目標を外しドローンも制圧
※アイキャッチ画像の出典:SAAB GLSDB
元々テロ組織とか小国を武力で制圧するのに使う予定で作ったのでしょうから、
電子戦対策はあまり考えられてないのでしょう
航空機用の爆弾投射だからまさしくウクライナみたいな航空兵力に問題抱えるケースで使用するのが発端でテロとか小国蹂躙とかはあくまで一つの使い方でしかない。
テロリスト攻撃するのに厚いコンクリートぶち抜く必要があるのか、向きを変えて発射すらリスクがあるから、発射後に発射方向の真後ろさえ狙える軌道修正能力とか下手すれば火傷する能力を持つ対正規軍相手の攻撃手段でしょう。
エクスカリバーとかの対GPS能力は段階的に向上して居るし、それに関してはやる気があれば対策出来るしイタチごっこ。
これも時期遅れ(?)になるのかな。
提供されるものに文句はつけられないでしょうが。
ロシアの無誘導滑空爆弾よりはマシでしょうが。
時期遅れっていうか単純に数のない兵器なんて役に立たない
ロシアの滑空爆弾は管制+GLONASS誘導の簡素な作りだけどその分安くて大量に投入できる
なんならJDAMだって一番活躍してるのはそのタイプだし、同じ滑空爆弾として開発されたJDAM-ERが正式採用に踏み切られていないのもそれが原因
”数のない兵器なんて”・・・同意します。
ですが、グロナスの精度は今はそれほど高くないのでしょうね。
”GLONASSでは受信機が一度衛星からの信号を受信し始めると、 位置測定を瞬時に行うことができる。最大効率の時には、システム標準の位置・時刻精度は、 水平位置で57 – 70m、垂直位置で70m、速度ベクトルで15cm/s、時刻伝送は1マイクロ秒とさ れている(99.7%の可能性で)”とあります。
GPSはスマートフォンのもので3mほどとされています。この点で優位でしょう。
多分、今のグロナス誘導の精度は、昔の急降下爆撃を下回っているのでは。
数があっても、面攻撃でなければ使いにくそうな気がします。
もう、そのテストをウクライナの実戦でやっちゃえばいいのに。
着弾観測できないから無理か。
もちろんテストを兼ねるわけですが、今回はロシアのEW妨害装置との実戦データが手に入る千載一遇のチャンスなので。
・最新のGPS誘導技術を投入
・失敗すると責任問題なので慎重に慎重を期す
・同時に着弾後の全てのシナリオで確実に誘導装置は破壊されなければならない、絶対にロシアの手に渡してはならない
・ウクライナがリバースエンジニアリングをかけてコピーしようとするのも防がねばならない
という技術的かつ多分に政治的な課題があるので、その準備に時間がかかっているのでしょう。
兵器とはいえ工業製品なのですから、事前に提示している規格・仕様を満たしているかどうかを検証するのは製造者の義務です
テストせずに実戦でというのをウクライナが同意したとしても、いざ発射時に爆発したとか想定射程まで飛ばなかったとかが起きてしまったらボーイング社の責任問題になりますし、信頼失墜に繋がるのでボーイング社側が飲まないでしょう
🫴「時すでに遅し」
🫴「来年のことを言うと鬼が笑う」
「十分な量」を提供できるのだろうか。