フィリピンのデルフィン・ロレンザーナ国防相は米国務省が販売の可能性を承認したF-16Vについて「高すぎるので空軍は他の選択肢を検討している」と語り注目を集めている。
参考:Pricey F-16s prompted look at fighter jet options
1機あたりの調達コストが2億ドルを超えるフィリピン向けの提案、他の国に提案されたF-16Vよりも高価
フィリピンは後継機を取得しないまま2005年に戦闘機「F-5A/B」を退役させたため純粋な戦闘機戦力を喪失してしまったが、2014年に韓国から軽攻撃機としても活用できるFA-50(12機)を導入するなど再び戦闘機戦力の再構築を試みており、現在は軍の近代化プログラム「Horizon」の下で高度なマルチロール機の導入を進めている最中だ。
この計画に有力な選択肢として浮上していたのはF-16Vとグリペンで費用対効果の点で「グリペン有利」だと言われていたが、フィリピン軍の合同参謀本部議長を務めるギルバート・ガペー陸軍中将は昨年末「ドゥテルテ大統領の任期が切れる2022年までにF-16のようなマルチロール機の導入契約を結ぶことになるだろう」と語りフィリピンがF-16V導入に傾いていることを匂わせ注目を集めていた。
米国務省は最近フィリピン向けの武器パッケージ売却の可能性を承認して議会に通知、このパッケージは独立した3つの対外有償軍事援助(F-16V×12機/24.3億ドル、AIM-9X×24発/4,240万ドル、ハープーン×12発/1.2億ドル、全てスペアパーツや保守・訓練・サポートなど関連費用込みの金額)で構成されており米国側が提示したパッケージ内容をそのまま導入すればフィリピンは25.9億ドル/約2,870億円という大金を支払う必要があるのだが、正式なFMSを米国務省が承認したので「フィリピンがF-16Vを導入するのではないか?」と海外メディアが報じている。
しかしフィリピンの年間国防予算は42.6億ドル(2021年度実績)しかなく、1機あたりの調達コストが「2億ドル/約220億円(AIM-9Xとハープーンの金額は含んでいない)」を超える提案をフィリピンが受け入れるのか微妙だと管理人は思っていたが、やはりフィリピンは米国の提案を蹴ってきた。
フィリピンのデルフィン・ロレンザーナ国防相は現地メディアに対して「米国はF-16を買えと言ってきたが提案内容は高すぎるで空軍は他の選択肢を検討している」と語っており、フィリピンが攻撃ヘリを導入したときと同じ展開になっているのが非常に興味深い。
関連記事:急転直下で正式発注、フィリピンがトルコ製攻撃ヘリ「T129B」導入を発表
国防相は「他の選択肢」が何なのかについて明かさなかったが、これまでの経緯から判断すれば「他の選択肢」がグリペンなのは間違いないのでロッキード・マーティンは早急にウクライナに提案を予定しているような廉価グレード(中古機をF-16V仕様にアップグレードしたもの)を提案し直さないとフィリピン需要をグリペンに持っていかれてしまうだろう。
因みに新造機のF-16Vを導入した台湾の調達コストは約1.2億ドル(66機/総額80億ドル)、ブルガリアの調達コストは約1.5億ドル(8機/約12.5億ドル)なのでフィリピンのロレンザーナ国防相が「高すぎる」と提案を蹴ったのは常識的な反応とも言える。
関連記事:グリペン有利を覆すことに成功? フィリピンがF-16V導入を匂わせる
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※アイキャッチ画像の出典:Airwolfhound / CC BY-SA 2.0
保守パーツやらなんやら込みなんだろうけど流石に残当
アメリカだって根拠もなくぼったくってるとは思えないし
要するに、新興国水準では西側先進国用のはハイ・ローのローでも買えないって時代になってきたって事なんだろうな
関連費用込みとはいえF-16が1機当り200億円超てことだもんね。
F-15J導入時は機体調達単価100億円余りでしたっけ。
日本にいると忘れがちだけど、アメリカを含めて世界は少しずつインフレしてるから仕方ないね
その影響か、確定拠出年金とかで投資する先として、海外関係はありがたい存在です。
悲しいなぁ…
ハイローミックス自体実在が怪しいらしいが、どちらにせよF-16Vはアヴィオニクス最新だし、新興国どころかG7以外の国にとっては普通に主力機になる実力はあるっていう
下にスーパーローが必要なのでしょう
途上国向けの輸出仕様機、かつてのF-5みたいなのがあると良いのですが
いっその事FA-50の追加配備で良い様な気もします
それかF-16C辺りの中古を購入するという手も
FA−50もアップデートしないと攻撃機止まり。
マルチロール機を所望しているところに攻撃機では ムリ。
そんな目が有ったらマルチロール機なんて言い出さない。
2億ドル超えはさすがに高いな
でも一度現代の戦闘機戦力を手放した国だから保守整備、訓練のインフラも消え去ってるだろうしそこをイチから再構築するとなると導入コストが跳ね上がるんだろう
台湾やブルガリアとはそこが違うんやろな
なるほど。流石にぼったくりすぎだと思ったけどそう考えれば納得
技術は継承が大切ということですね。
台湾から中古のF-16を引き取ってアメリカで整備してフィリピンに売ればいいのに。
アメリカのブロック40やブロック50の中古を輸出向けに整備し直して売る方が手っ取り早いような気がする(笑)
身の丈にあったものを装備すればよき
良いものは高いのそれが普通なの
アメリカの本音はわかりませんが一線級の戦闘機を運用する体制をほぼゼロから構築するのは
大変なんだなあと、練習機相当の機体を先に導入できていただけまだマシなんでしょうけど
そもそもジェット戦闘機の運用環境が無かったんだから初期費用が高くつくのは仕方なくないか
国防も自力でままならないお国が何ぐずってんだか
お得意の八方美人でもやってろよ
フィリピンが中国側に付いたら国防上相当不味いことになるのを理解してるのか?
八方美人して中国についたら日米終わりだぞ
そうはいっても、アメリカについたら中国に軍事力より先に政治的に経済的に叩きのめされるのが目に見えてるし、
中国についたら絶対終わるのが目に見えてるしで、力のない国にはどちらにも付きようがないよ
ほんとこれ
他人事でないのが痛い
そこはドゥテルテ大統領の采配が光る部分でして。
比は一旦ジェット戦闘機を完全廃止してっからな
復活させるにはいろいろと余計な費用が掛かるんだろ
こういう分野でアメリカ側が金銭的利益を得ようと考えるのがそもそも間違いだろうに
ダッソー「呼んだ?」
単発機のコストで悩んでる国にはいくら格安中古と言っても双発機は高嶺の花でしょう。
中古のミラージュ2000 なんて良い商材だと思うのですが、フランスには手持ちの機材が無いのかな?
台湾のミラージュ2000の経緯思うに
元々フランス戦闘機の運用体制ないところに今更ミラージュは維持費用が高騰するのではなかろうか
もう本体は新規生産やってないため部品・兵装の供給がいつまで見込めるか怪しいし
最終アップデートした機体ではないとサポートできないとダッソー社が台湾に通達してる話を聞くとお安そうな旧型の中古は維持が大変です
ラファールは余計高いのでは…
アメリカにすればフィリピンは採算度外視して軍事支援する価値がないのでしょう。
地位協定も宙に浮いたままですし。
フィリピンは西太平洋防衛に重要な要ですが、ドゥテルテ大統領はあからさまに
反米ですし、しかも国民からの支持が高い。米国は、フィリピンのドゥテルテ熱が
冷めるのを待っているのでしょう。
でも普通にアメリカ国防総省はドゥテルテ大統領に惚れ込んでるよねw
だからそれ知ってるフィリピン側が吹っ掛けてる構図w
米空軍F-16C/Dの州軍向けの中古を転用して輸出で決まるんでは。
金注ぎ込んでも引き留めたいだけの価値は間違いなくある。今回はそんなことしなくても他国製で穴が埋まるからそもそも軍事支援目的じゃない。
この数年間で一定の空軍力がないと政治的な発言力が伴わないと思ったんだろうけど、早急に必要なのは離島部で活動する分離主義やイスラム過激派のゲリラ鎮圧くらいで、戦闘機の系統が一回途絶えてるのはそういうことぞ。それ以前に装備していたF-5A/Bだって夜間戦闘能力すらない旧式廉価ジェット機で、実質対地攻撃くらいにしか使えない代物だしな。
旧宗主国なんだから太っ腹なところ見せて恩を売れば良いのに。
冷戦時代ならともかく今それをやったら他の国からフィリピンと同じ条件にしろって突っ込まれるよ。
中古を叩き売る分にはどうとでも言い訳が効くだろ。
アメリカはフィリピンのこの計画への本気度を測りかねてるのかもしれないね
ハイローミックスなんて空軍が予算獲得するための政治的こじつけだろ
F-16の開発経緯見れば分かる話
F-16Vの新造で廃品回収されるF-16C/Dをアメリカで再整備してJF-17に近い価格で売り捌くってのは出来ないもんかねぇ…
アメリカが途上国の武器をコントロールしたいならそのくらいしないとMig-29の中古やMig-35、JF-17に持ってかれるぞ
それはいいアイディアです。中進国はカネがないが冷戦時代の遺物ではもうやっていけない。アップグレード用のソフトを握っているのは米国なので、そのアドバンテージを活かさない手はないと思いますね。
普通にグリペンで良いんでないの
今の大統領ではフィリピンが米国陣営とは言えないし