米海軍は開発を進めているDDG-Xについて「設計上のマージン確保が最も重要で、この部分への投資によって調達コストが上昇しても全く惜しくない」と主張している。
参考:US Navy should view space, power margins as a ‘warfighting capability’ worth paying for
DDG-Xが提示するマージンが今後の艦艇開発における有力な指標になるのかもしれない
最も新しい米海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦FlightIIIはAN/SPY-6(V)1を統合するため発電量と冷却能力を2倍以上に強化した結果、完全に設計上のマージンを食いつぶしてしまったため新たに開発された兵器や電子機器を追加するのは不可能=将来に対する発展性が失われてしまったが、一方の中国海軍が調達を開始した055型駆逐艦(11,000トン)は将来の追加要素に対応できるマージンをたっぷりと残している状態だ。
このまま両者がFlightIIIと055型を建造し続けると実用化が見込まれている艦艇搭載タイプの極超音速兵器、指向性エネルギー兵器、より電力を必要とする大出力の電子機器の追加統合で明暗が別れるため米海軍は次期駆逐艦「DDG-X」の開発を進めており、フライトIIIよりも攻撃力を高めるためMK.41のセル数拡張や極超音速兵器向けの専用セル統合、AN/SPY-6(V)1よりもRMAモジュールを拡張(37個→57個)した大型レーダーの採用などを検討しているが、これと同じかそれ以上に重要なのが設計上のマージンで「この部分への投資によって調達コストが上昇しても全く惜しくない」と海軍上層部が主張している。
海軍作戦本部で水上戦を担当するポール・シュリーズ少将は「中国との戦いは互いにミサイルを撃ち合うゲームになる可能性が高いものの現在の米駆逐艦にはこの種の戦いに不可欠な弾倉量が不足している。限られたMK.41の有効性を最大化する創造的な方法を模索しているが、この戦いを制する最も重要な要素は電力を供給できる限り射撃が継続できる指向性エネルギー兵器になるはずだ」と語り、米海軍は使い切ってしまったアーレイ・バーク級駆逐艦のSWAP-C(スペース、重量、電力、冷却)マージンを取り戻すことが最も優先されると主張した。
海軍で水上艦開発を担当するキャリー・フィリング氏(造船工学の専門家で文官)も「SWAP-Cは将来の脅威に対応するための能力でありコレなしに追加の成長は見込めない」と語り、別の専門家も「海軍はコストと能力を考慮しながら他の要素を検討しているがマージンこそが戦争遂行能力だ」と述べ、DDG-Xプログラム・オフィスが相当量のマージンを確保する前提で次期駆逐艦の開発を進めていることに正しいアプローチだと賞賛を送っている。
海軍はDDG-Xに10%の重量マージン、20%以上の電力マージン、20%~40%の冷却マージンを要求しており、この部分への投資は開発・調達コストを押し上げるものの表面的なスペックに反映されないため相対的に割高だという印象を与えるが、フィリング氏は「計画されたDDG-Xのマージンが多すぎると思わないし高価だとも思わない、マージン確保への投資は守る価値がある」と主張しているのが興味深い。
特に電力と冷却に関するマージン不足は艦艇に限った話ではなくF-35でも問題になっており、発電能力と冷却能力の強化が行われないと予定されているBlock4の機能をフルで発揮できないと F-35ジョイント・プログラム・オフィス(JPO)のエリック・フィック中将が明言、さらに第6世代戦闘機のテンペストは大きな電力を必要とする電子機器や指向性エネルギー兵器の統合を見越して発電能力と冷却能力に相当のマージン(発電要件に限ればB787に匹敵する)を確保することを目指している。
つまりセンサーやアビオニクスの性能向上を追求すると発電能力と冷却能力の強化が必要になり、指向性エネルギー兵器の登場がほぼ確実視されているためSWAP-Cマージンの確保が将来の戦いを有利に進めるため重要になってくるという意味だ。
この将来要件の需要予測を外すと比較的容易な追加統合ではなくプラットホームを1から作り直すハメになり戦力格差が広がる要因になりかねないが、逆にSWAP-Cマージンを大きく取りすぎれば調達コストに響くためDDG-Xが提示するマージンが今後の艦艇開発における有力な指標になるのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Sean Lynch/Released
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055型の凄さ、脅威度が際立つな
海軍が鷹揚だったら予算使いすぎて議会に怒られる未来が見える
大戦中かな、米軍機を調べた日本人技師が、出力、容量、強度すべてに充分な余裕が見込まれており、改造が容易で発展性が高いと分析してる
平時における無駄の部分が、戦時においては生きてくるという見解ね
どうやら米軍は平和に慣れきってしまってる、非対称戦争に傾倒しすぎて、自分と同等かそれ以上の相手を想定できてないようだ
マージンなら本邦艦艇は素晴らしい。
各国より排水量に対する少な目な装備と後日搭載予定という実行されないマージンを確保している。
最近思うんだが、後日搭載って実行されないから海自はダメだなって思っていたけど、一度も実戦を経験しない護衛艦が多数あることを考えると、海自の予算の有効活用や納税者目線から見て悪くなかったのかも。
(ただし、必要になった時に直ぐに搭載できないと意味がないんだけどね。)
しかしその割りには、後継艦で少しずつ排水量が大きくなっていくのは
いつも予算ギリギリに設計して、将来マージンを見てない証拠では?
前にDDGXの記事を見た時に極超音速兵器用のセルを搭載?いっその事全部のセルを大型セルに更新すれば良いのにと思ってたがその時が来ればこのマージン使って更新するのかな?
だとしたら海自のSPY-7搭載艦もこれに倣うのか?
続報をお待ちしてます(`・ω・´)ゞ!!
P.S. やっぱセル数は多い方が良いよね
この件ではミサイル万能時代には主砲が邪魔とまで言われ始めるだろうな
装薬不要のレールガンの利点は弾薬容積の最小化に伴う継戦性向上にあるのだろうがじゃあ砲身寿命は?デカ重いシステム重量は?って話になるから現状だとレーザー兵器が適当なんだろうかね
電源つなぐだけのレーザー主砲ならスライドさせて直下にVLSも置けるとか聞いたことあるぞ
レールガンの大きな利点は、従来火砲では達成できない高初速を出せるから、砲弾の長射程化や高威力化などが可能な点にある。
レールガンの射程は200kmにも達するよ。
レールガンの特徴は、
① 極超音速で砲弾を発射
・レールガンは2000m/s 以上、参考として現有戦車砲は約1750m/s
・日本が試作したレールガンは2297m/s を達成した実績を持つ
② 射撃諸元が可変
・電気エネルギーであることから、砲弾初速が容易に可変
③ 探知・迎撃されにくい
・砲弾サイズが小さいため、探知されにくい
・砲弾サイズが小さく、超音速飛翔のため迎撃されにくい
などといったものがある。
また、レールガンの旨味は速さだけでなく「装薬火砲の初速理論値を超えつつ、発射速度も両立する」という手数的な面も多分にあるだろう。
あと、日本はレールガンのエロージョンの低減なども達成しているから、砲身命数の問題も解決済みだ。
アメリカのレールガンは、この問題が解決できなかったから、砲身命数が少なかった。
また、レールガンはそんなに大きくないし重くもない。
>電源つなぐだけのレーザー主砲ならスライドさせて直下にVLSも置けるとか聞いたことあるぞ
そんなもの作っても構造が複雑化しすぎるし、VLSの利点もなくなるから、実用化なんてされないでしょ。
あとレーザー兵器には、曲射が不可能な点や大気の影響を大きく受けるなどの欠点もある。
従来の陸上兵器とレールガンやレーザー兵器が相互に補完する相乗効果により全体の能力向上を実現する。
攻撃用途で射程200km位はもうオワコンだよ
レーザーは悪天候でも十分な性能だせるんだろうか
想定される悪天候下で所要の最小迎撃距離を確保できる出力を実現できか否かだと思います。
気象条件がそれより良ければ迎撃距離は伸びるし、条件が良い程より多数のミサイル等に対応できる時間的余裕が生じます。迎撃性能は気象条件に左右されるが下限が兵器として有効かどうかです。
そして多層防空システムの構成要素として、条件付きでも非常に有用と判断されるならば否定する理由は無いのでは。
既存の127mmに対し艦対空でどんだけ使えるかだけどレーザーの威力的に76mmに対してなら割と容易かもしれない
まずは76mm更新の新型砲で配備されて127mm代替はそれからというのが現実的だろうね
最も艦載で実用は近接防空用でファランクス補完して次に代替やるのが最初ではあるからその次の話だけど
我が国はいつまでMk.41を使うのだろうか? 韓国はすでにMk.41容積の180%以上のKVLS-IIの開発を完了しているが。
発射機自体はそんなに重要じゃないんじゃない
撃ち出すミサイルが大型化して必要に迫られたんならまた別やけど。。。何を撃ちたいの?
いや、割と重要でしょ。自分で答えを出してるじゃない。
DDG-Xとて大型のHGVを積む時は大型の専用セルに換装するし、ロシアが新しめの艦艇にツィルコンを積めるのは、3S14UKSKが大型のVLSだから。
SAMだってMk.41ありきでサイズと性能の制約がかかってるから、3K96みたくセルが大きければ長射程のでかいミサイルが運用出来る。
電力を確保したいなら、原子力を積むのが一番手っ取り早いのではないだろうか?飛行機は無理かもしれないが、船ならすぐ出来るはず。
それが米海軍の話ならば、イージス艦以前に存在した原子力巡洋艦をすべて退役させたのは、あまりにコスパが良くないから
今まったくその話題が上がらないのはそういうことだよ
海自にすぐ原子力とかは笑い話だし
まあ、今の程度の原油高程度ではオール原子力ドクトリンは無理でしょうね
もう1ケタ上まで高騰した状態で固定化されてしまえば、逆にオール原子力ドクトリンじゃないとやっていけないでしょうが
あと、単純な機関部の出力対重量比・空間対出力比であれば、通常動力での発電の方が上ですよ。極端な長時間の無補給運用や、無酸素運用ならば別ですがね
原子炉には放射線遮蔽が必要ですし、結局は蒸気タービンを回さなければスクリューや発電機を回す力は取り出せません。その上、核燃料被覆材の耐熱性の関係で発生させられる蒸気の温度と圧力にも制限が掛かりますので、最新の通常動力蒸気タービンと比較しても効率性に劣りますのでね
>SWaP-C (Size, Weight, Power, and Cost)
今更だけど、何で「WaP」なのだろう?
「a→e」か「a↔P」なら分かるけど。
小文字aだから「And」意外になさそう
まあ、こういうのって語呂合わせ優先で正式名称の方がおまけのパターンすらあるし(コンセプト→語呂合わせ→正式()名称、的な)
細かいことは気にしたら負けかも
aを入れないと、意図した読み方をしてもらえず、変な読み方になりかねないしそれが変な意味と結びついてたら最悪だからね
もうメンドクセーから、日米で共同開発しちゃいなョ