米太平洋陸軍は15日「第1多領域任務部隊が演習(Exercise Salaknib 24)に参加するためフィリピン・ルソン島北部にMid-Range Capability missile system(中距離ミサイルシステム=Typhon Weapon Systemのこと)を配備した」と発表した。
参考:US Army’s Mid-Range Capability makes its first deployment in the Philippines for Salaknib 24
米陸軍が初めてTyphon Weapon Systemを海外に派遣、台湾有事を想定した一時配備
米太平洋陸軍司令官のチャールズ・フリン大将は昨年11月「2024年にTyphon Weapon Systemをインド太平洋地域に配備する予定だ」と明かし、インド太平洋地域の何処に配備するのかについては「西海岸に配備される可能性はない」と述べ、朝日新聞も今月4日「Typhonはグアムに配備され、訓練目的で一時的に日本へ移送される可能性が高い」と報じていたが、米太平洋陸軍はフィリピンにTyphon Weapon Systemを一時的に配備したらしい。
米太平洋陸軍は15日「第1多領域任務部隊が演習(Exercise Salaknib 24)に参加するためフィリピン・ルソン島北部にMid-Range Capability missile system(中距離ミサイルシステム=Typhon Weapon Systemのこと)を配備した」「C-17に積み込まれたMRCは15時間以上をかけてワシントン州ルイス・マコード統合基地からフィリピンに到着した」「この画期的な配備はフィリピン軍と連携して相互運用性、即応性、防衛能力を強化し、新たな能力の重要なマイルストーンになるだろう」と発表した。
INF失効に伴い米陸軍は長距離攻撃能力(射程500km以上)を再取得中で、ブースト・グライド・ビークル搭載の極超音速兵器=Dark Eagleを運用するLong-Range Hypersonic Weapon、トマホークとSM-6を運用するTyphon Weapon System、HIMARSで運用するPrecision Strike Missileの開発・実用化を進めている。
MK.41を流用したTyphon Weapon SystemはトマホークとSM-6を運用予定で、SM-6は迎撃ではなく地上目標を攻撃するために使用され、S-300やS-400が迎撃弾を対地攻撃に転用しているのと同じ考え方に近い。
弾道コースで目標に接近するSM-6は発射から着弾までの時間が短いため敵の対応時間が限られ、トマホークはSM-6よりも遠くの目標を攻撃可能だが着弾まで時間がかかり、トマホークとSM-6は静止目標を攻撃するという意味では同じだが、目標へのアプローチが異なるため補完関係にあるのだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Photo by Darrell Ames
>SM-6は迎撃ではなく地上目標を攻撃するために使用され、S-300やS-400が迎撃弾を対地攻撃に転用しているのと同じ考え方に近い。
地対空ミサイルで地上攻撃を行うなんてロシア人は何て間抜けなんだろうと思っていたが、アメリカ人が真似をするんだから実は有効な戦術だったのかもしれない。SM-6はパトリオットより長射程なので(日本でボツになった)イージスアショアの車載版として使えそうだが、タイフォンシステムにレーダーらしきものが存在しないので地対空ミサイルとしての運用は無さそう。
スタンダードミサイルは最初から対水上射撃には対応していたので忘れていた使い方を思い出したといった感じなのでしょうね
滞空ミサイルを陸上目標にとは、もったいない使い方だなぁという感想を持っていましたが、陸上用のミサイルも値段が変わらなければ、経済的にアリなのかも。
なんとなくSSMよりSAMの方が高価なような気がしていましたが無知なだけだったかも。
SAMは超音速の目標を破壊するため、自身もマッハ3以上となる。推進装置は固体ロケットモーター。
SSMは相手が低速なので自身は亜音速程度で良い。推進装置は小型ジェットエンジン。
固体ロケットモーターも小型ジェットエンジンも高額だが、燃費は圧倒的に後者の方が良く、同じサイズなら射程は圧倒的に優れる。但し飛翔速度は旅客機と変わらないので1,000km離れた相手に命中するのは1時間以上掛かります。
SM-6なら飛翔速度はマッハ5(時速6,000km)、射程400km(対地攻撃ならもっと長いかも)であり、最大射程で使用すれば僅か4分で到達します。炸薬は少ないので破壊範囲は小さいが、レーダーなどの高価値目標なら十分お釣りは来ます。
対空目標は、高速移動するターゲットを3次元ベクトルで捉えるだけでなく、偏差を考慮して狙う必要がありますからね。
地上目標は動かないため、格段に狙いやすいという事でしょう。
鉄道版も作って欲しいですね!架空線が邪魔だけど。
北朝鮮の列車搭載型テポドンのことでしょうか。発射時にトンネルから出てくるみたいで敵ながら格好良い。
ひょっとして、海軍のイージス艦が側にいれば。
対空ミサイルとしても使えるのかな。アーセナルシップの代わりになる形で。
大量に降ってくる(であろう)弾道ミサイル/巡航ミサイル/ドローンの対策は?。
タイフォンだけでは、陣地としては不完全なような。
PAC-3や対空砲も部隊編成に必要に思えます。
陸上型イージス艦って作れないもんですかねえ。
ビッグトレーか。
第1列島線”に対する”接近拒否領域拒否戦略ですね。500kmといえば台湾の南東側は概ね射程に入ります。米国の艦艇が第1列島線の内側に入れないように、PLANの艦艇もフィリピン海に入れない状況を作る=台湾を海上封鎖する能力を中国に与えないという明確なメッセージですね。米軍のフィリピン領内での展開能力や体制維持が有事にどの程度持続するのかについて自分は懐疑的ですが、政治的に「中国は台湾を好きなときに包囲できる訳ではなくなった」という状況を示せるのが重要なんでしょうね。
中国は「戦って勝つのは銀、戦わずに勝つのが金」の国です。これは現代的に言い換えれば同じ結果でもコスパに優れるほうを選ぶということで、その延長線上にあるのが「台湾の国民に戦っても無駄であることを理解させる」事です。台湾の多数を占める外省人も中国人とエートスを共有する集団であり、上に同じく「結果が同じ敗北ならコストの少ないほう(降伏や自主的融和)を選ぼう」と考える素地は持っていると思います。その意味で、陳腐な言い方ですが日米は台湾の有権者に対して主権や独立への希望を常に持たせ続けなければいけないですし、そのための一つの答えがフィリピンを抱き込んだ対中包囲網形成なんでしょうね。(台湾の北東側を占める日本の対応もまた注視されていることでしょう)
> 台湾の多数を占める外省人
台湾についてもう少し勉強された方がよろしいかと
そこで読む気が失せます
中共軍の中距離弾道ミサイルの数に比べればアメリカが新ミサイルをフィリピン、沖縄に配備しても
通常弾頭では対抗できません
重要なのはアメリカがロシア(中共)にINF条約破棄を通告したことで中距離ミサイルに核弾頭を搭載で
きるということです。
要員の宿舎が一時的とは?の造りの施設を造りそう。