米陸軍は2030年頃までに有人ヘリと複数の無人航空機(UAV)による高度なチーミング(協力)を実用化してネットワーク化された長距離精密火力構築を目指している。
参考:US Army sets first shoot-off for airborne, long-range precision munitions
参考:AH-64E Apache teams with two UAVs to identify, attack target
ネットワーク化された長距離精密火力構築に向けて着々前進していく米陸軍
もっとも分かりやすく言うとロシアのパーンツィリや中国のHQ-17など低高度の防空を担当する防空システムで守られた空域に無人航空機を侵入させて目標の捜索と位置を特定、敵の防空システムが届かない空域に待機している有人機AH-64Eや無人の攻撃機に搭載された長射程の精密誘導兵器で目標を破壊する戦術実用化を目指して関連技術の開発・実証を進めており、ネットワーク化された長距離精密火力構築に向けて注目される動きが2つ観測されている。

出典:public domain AH-64Eアパッチ・ガーディアン
1つ目は攻撃ヘリAH-64Eと2機の異なる無人航空機(UAV)の間で高度なチーミング(協力)が成功した点だ。
これまで米陸軍は上記の戦闘シナリオを実現させるためAH-64EとMQ-1Cのペア、AH-64EとRQ-7のペアによって有人機と無人機のチーミング(協力)実証に取り組んできたが、米陸軍はより高度で複雑なチーミングに成功したと発表した。
今回の実証内容は、戦場の交戦空域から離れた地点を飛行しているAH-64Eの兵器士官が交戦空域に侵入した偵察・監視用の無人航空機「RQ-7B」を操作してターゲティングシステムのレーザーを地上目標に照射、高度4,500mの上空を飛行中の無人航空機「MQ-1C」に指示してレーザー誘導のヘルファイアを発射させて地上目標の破壊に成功したという内容で、国防総省が開発している「統合全ドメイン指揮統制(Joint All Domain Command and Control:JADC2)」の機能を利用することで実現したと米陸軍は説明している。

出典:public domain RQ-7B
この統合全ドメイン指揮統制とはゲームで見かけるような敵の配置や移動が可視化された戦場状況の認識を全軍が共有できるようにする仕組みで、JADC2に認識されている敵に対してネットワークに接続している戦力なら誰でも攻撃を仕掛けることが出来るようになる=つまり大規模なセンサーとシューターの分離が実現するという意味だ。
2つ目はAH-64Eの後継機=つまり開発中の将来攻撃偵察航空機(Future Attack Reconaissance Aircraft:FARA)に搭載する長距離精密誘導兵器(Long-Range Precision Munitions:LRPM)の開発が具体的に動き出した点だ。

出典:Republic of Korea Armed Forces / CC BY-SA 2.0 スパイクNLOS
米陸軍は現在、暫定的な長距離精密誘導兵器としてイスラエル製の対戦車ミサイル「スパイクNLOS(最大射程30km)」を使用しているため、少なくとLRPM開発契約を受注する企業はスパイクNLOSを超える射程を備えた長距離精密誘導兵器を提案する必要があると言われており、LRPM開発を受注した企業は2026年までに試射を行うことを要求されている。
恐らくLRPMは既存のAH-64Eや無人航空機にも統合して運用されるはずなので「FARA専用弾」という訳ではなそうだが、米陸軍が構築を目指しているネットワーク化された長距離精密火力を実現するのには欠かせないピースの一つだ。

出典:Defence Images / CC BY-SA 2.0
果たしてLRPMに求められる射程距離は幾らになるのだろうか?
この射程距離がネットワーク化された長距離精密火力のベース=敵の防空システムに守られた戦場からどれだけ距離を取れるのかの基準になるので非常に重要な数値となり、ロシアも開発中の攻撃ヘリ「Ka-52M」に長射程の新型巡航ミサイル「item305(最大射程100km)」を搭載しているため米陸軍も同程度の射程を求めたとしても不思議ではないが、射程距離が長くなれば推進剤の量も増えるのでミサイル自体の大型化や調達コストが課題になるかもしれない。
恐らく多くの方が「なんで回りくどい方法を採用するのか?交戦空域に侵入した無人航空機がそのまま攻撃すれば良いだけでは?」と思うかもしれないが、攻撃能力まで備えた無人航空機になると大型化して見つかりやすくなり調達コストも高価になるため、低コストで幾ら失っても全く問題にならない小型UAVを戦場に大量投入して遠距離から狙い撃つ=センサーとシューターを分離を進めたほうが経済的で戦術的にも効果が高いからだろう。
因みに中国も同種の取り組みを実施しており、昨年11月に無人航空機(UAV)を使用して攻撃ヘリから発射されたミサイルの誘導を行うことに成功したと報じられている。
関連記事:センサーとシューターの分離が進む中国、UAVによるミサイル誘導に成功
※アイキャッチ画像の出典:U.S.Army Photo by Staff Sgt. Tim Morgan
UAVを叩き落とす兵器の実用化が急務だね
ジャミングの方が価値があるかも。
ジャミングは遠隔操縦されていない自律モードのドローンには無意味だし衛星経由の通信妨害も難しい
なんならジャマー発信源に突撃するドローンもありえるから効果は限定的だと思う
センサーとしてのUAVを無効化するにはジャマーも有効でしょ。
効果はある。
よって、各国は電子戦装備の開発や拡充を急いでいる。
全ての国が取り組んでるので対抗手段の打ち合いになるので、これさえあれば大丈夫と言う装備もない。
もちろん、対抗装備だけあっても敵は無傷。
よって、こちらもスタンドオフ兵器が必要。
対戦車ミサイルの射程が30キロ越す戦場って、お互いに相手を目視しないまんまで吹き飛ばしたり吹き飛ばされたり
ある意味、白兵戦よりも恐怖感高い
ロマンの塊AC-130の105mmにエクスカリバーのような誘導兵器組み合わせてくれないかしら
いや撃墜されるってのは分かってるんですが
シューターはヘリじゃなくても良いのでは?自衛隊も陸海空が相互に共同交戦能力を持つことが最先順ではないでしょうか?
今の空自の機数で陸自を支援してるような余裕ある?
空自は戦闘機と操縦士の数戻せって言ってたな~
コープノースでやってるが、充分な体制は予算や人員から実現不可能。
無人機なしにはエアカバーはほんの一部の部隊のみになってしまう
UAVの駆動音がどこかから聞こえたら死を覚悟するような戦いになってくのかな
そういえば先の紛争でもアルメニア軍の兵士が敵UAVを見つけたら装備や乗ってた車両放り捨てて逃げたんだったか
そこまでの状況になると「ただのオモチャのドローン」にすら兵士が逃げ惑う訳ですね。
ドローンを発見した時点ですでに敵方のキルゾーンに入ってしまった可能性
防御、反撃、そこまでの時間感覚が生死を分ける状況が一層厳しくなると予想
陸自はのんびりしないでね、塹壕に入ったままで終わったらダメよ
陸自は突撃訓練と穴掘りばかりやってるらしいけど大丈夫なの?
日本で真似ようにもアパッチ12機では…
FARAが固まるまで様子見してるのか、それまでコブラは持つのか…
UAVがセンサーの替わりになるんだからミサイルキャリアは安いヘリでいいんじゃないか。前線が100㎞先なら携帯SAMも無いだろうし。
20年前から言われていたが、これが実現するとアサルトライフルに耐えるが、携帯ミサイルは当たる上にF16より高いアパッチではなくて、やや安いブラックホークでいいし、最初から通信機器を積んでる専用ヘリの方がいいだろ。
無人機関係で言えば海自のアヴェンジャー導入はどうなった~
細かくフォローしている人たちは別でしょうが、最近の軍事は変化が激しく、
自分のアタマでは付いて行けないことが多すぎですよ。
同感です。こちらセンサーとシューターって聞くとハンター&キラーを連想してしまう頭の硬いオッサンです。
なので、このブログは大変参考になってます。
本当に。このブログは、専門知識を持っている人のレスが多いから、
参考にさせてもらっている。
全くの同意です。
もしFARAが進んで従来の攻撃ヘリの運用を置き換えるなら
将来型・長距離航空攻撃機にはV-280かその系統が採用されそう。
大きくて重いミサイルと電子装置を積んで長距離を速く飛ぶ能力ならV-280のが上だしUH-60くらいのコストだし
FARAならデファイアントの売りだった投影面積や機動性はそんなに要らないのでは?