欧州関連

E-3を2035年までに廃止するNATO、米空軍に続きE-7A取得を発表

NATOは「E-3を2035年までに廃止して新しいプラットフォームに置き換える」と2019年に発表していたが、米空軍に続き「E-3の後継機としてE-7Aを取得する」と発表、最初のE-7Aは2031年までに運用を開始する予定らしい。

参考:NATO chooses Boeing E-7A Wedgetail for next-gen command and control aircraft

NATOは14機のE-3が提供している監視・管制能力をE-7A+新しいプラットフォームで構築するつもりなのだろう

米空軍やNATOが複雑で大規模な航空戦術を駆使できるのは早期警戒管制機や空中給油機といった航空支援能力を保有しているため、特にE-3セントリーは交戦空域の監視・管制能力が秀でいるものの、プラットフォームのボーイング707は民間航空会社での運用が終了したためサプライチェーンが消滅し、政府説明責任局も「スペアパーツの供給と老朽化した機体のメンテナンスの問題でE-3は9年連続で空軍の設定した準備率を達成できていない」と指摘。

出典:U.S. Air Force photo/Airman 1st Class Chris Massey

さらにロシアや中国は遠距離から早期警戒管制機(AWACS)を叩き落とすことが出来る長射程の空対空ミサイルや地対空ミサイルの開発を進めており、米空軍は「少数のAWACSに交戦空域の監視・管制能力を集中させるリスク」を危惧、アドバンスバトル・マネージメントシステム(ABMS)に地上、海上、空中、宇宙ベースのISR資産を統合して戦場認識力を確保する方針だが、実用化に時間がかかるため韓国空軍、オーストラリア空軍、トルコ空軍で運用実績があり、英空軍も導入を決定しているE-7Aウェッジテイルの導入を決定した。

NATOも2019年に「E-3を2035年までに廃止して新しいプラットフォームに置き換える=Alliance Future Surveillance and Control(AFSC)」と正式発表、こちらも米空軍と同じように分散型ネットワークを想定しているのだが、まだAFSCは初期コンセプト段階で実用化には程遠いため15日「E-3の後継機としてE-7Aを6機取得する」と発表、最初のE-7Aは2031年までに運用を開始する予定らしい。

E-7AはAFSCで構築される分散型ネットワークの一部になる予定で、NATOは14機のE-3が提供している監視・管制能力をE-7A+新しいプラットフォームで構築するつもりなのだろう。

関連記事:2035年までに廃止されるNATOのE-3、後継システムの受注にL3ハリスが挑戦を発表
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関連記事:英空軍の早期警戒管制機「E-3D」運用が終了、後継機E-7Aの運用開始は2023年予定

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by 2nd Lt. Mark Goss

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コメント

    • MAT
    • 2023年 11月 16日

    E-3の元になったB707自体初飛行は1957年、民間仕様は2019年に終了したのでいつかはこうなるとは思いましたが、E-7になるのも自然な流れだなと。
    ちょっと気になるのは、お皿持ちの機体が減れば減るほど同じレドームを持ってる我が国のE-767の運用がどうなるかですね。
    今は大丈夫でも10年後には後継機が必要そう。そうなると、やっぱりE-7になるのかな

    14
      • 匿名希望係
      • 2023年 11月 16日

      C-2AEWあたりじゃあないですかね?
      自作するかイスラエルから買うかE-2Dのお皿を使えるようにするかはわからないとして
      E-737は容積の関係でコンソール自体の数は減っていて管制能力に関していうと弱体化してますしね。(最大レーダー射程も確か劣っていた記憶がある)

      7
        • ロールケーキ
        • 2023年 11月 16日

        米空軍は調達するE-7について「E-3よりも高度な空中移動目標機能、戦闘管理、指揮統制能力を提供する。より優れた空中の認識能力と管理能力を実現するため先進的なレーダーを搭載し、米国や同盟国は高度な敵に対して長距離攻撃を行うことが出来るようになる」
        と説明してるのでE-7はE-3より高性能になる。
        すなわちE-737採用国もこのアップグレードを受ける事が出来る。
        日本のE-767はE-3に準じているので能力が陳腐化するのは必須なのでどこかでE-7に乗り換えざるを得ない。

        4
      • 774rr
      • 2023年 11月 16日

      > お皿持ちの機体が減れば減るほど
      維持費が高くなるのは間違いないよね〜 とほほ

      今の内にE-7A買っとかないとヤバそう
      新しいプラットフォームとやらが出来る見込みがあるなら良いんだけどね〜

      9
    • 幽霊
    • 2023年 11月 16日

    日本が運用するE-767の退役はまだまだ先かな?
    機体は767ベースだから問題ありませんし、レーダーや電子機器も改修して性能を向上させてますからね。
    将来的には独自開発のAWACSもしくは独自開発のアドバンスバトル・マネージメントシステムと似たようなものかアメリカが採用する新型AWACSもしくはアドバンスバトル・マネージメントシステムになるのかな?

    13
      • 匿名希望係
      • 2023年 11月 16日

      E-2Dのレーダーやシステム使えれば一番楽だと思いますけどね>運用基盤

      3
      • 2023年 11月 16日

      問題が大有りなのだが。
      問題なのは機体の方ではなく載っているレーダーがE-3と同じものであると言う事。
      E-3が退役してしまったらアップグレードが当然無くなるだけではなく保守も出来なくなる。
      日本単独でレーダーのアップグレードは現実的ではないし米軍がE-7を採用となるとそちらの方のより高性能になっていくのは既定路線

      7
        • 匿名希望係
        • 2023年 11月 17日

        米海軍がアップデするE-2Dでもいいんやで>レーダーおよびシステム

        空自的にはE-2Dいれているし。母機の損益分岐点内で更新できれば良いだけだし

        2
          • 2023年 11月 20日

          莫大な金かけて使い古しのE767を母機としたE-2D陸上型を単独で作る事に何の意味があるんでしょうか?
          単純にE-7買った方が安上がりでしょう。

          2
    •  
    • 2023年 11月 16日

    まあ確かにS-400や開発中のS-500はAWACSにとって致命的だから分散を図るのはとてもよい決定だ
    最も重要な管制機能の低下がどの程度の影響をもたらすのかは予測しづらいところではあるが…

    2
    • 58式素人
    • 2023年 11月 16日

    後継となる予定の分散型ネットワークは、まだ形は無いのですね。
    日本もそうしたものを開発するのかな。
    E2Dはお皿を持ってるけど、中身は既に固定式アンテナとか。
    三方向にフェーズドアレーアンテナをつけているそうな。
    使っている波長が長いので、ステルス機を捉えるのに向いているとも。
    指揮管制部分を衛星通信で地上に持っていけば、良いような気もします。
    どうせ、BADGEにつなげるのだろうし。運用速度が若干不満でしょうか。
    どなたか、ノースロップ・グラマンに資金を渡してターボファン化しては。
    あるいは、日本のP1にレーダーシステムをそっくり移植しては、などと妄想します。

    1
      • 匿名希望係
      • 2023年 11月 16日

      空自で使うなら運用基板のあるC-2の方がよさげ
      外販(ソフト込み)はイスラエルがしてるけどね。
      今やってくれるかは不明として
      後は自作

      8
    • LLOOWWEE
    • 2023年 11月 18日

    次期戦闘機の研究でやっていた、コンフォーマル・レーダ・システム、先進統合センサ・システム、多機能RFセンサ、将来アビオニクスシステム、戦闘機用統合火器管制技術辺りの技術をC-2のスタンド・オフ電子戦型の箱に詰め込んで管制機能付ければコンフォーマル型の早期警戒機が出来ないかなぁ。
    無理だと分かっているけど夢ぐらい見たいなぁ

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