米空軍はまもなく空中給油戦略に答えを出す予定で、この結果次第で「KC-46Aの将来」「KC-Y入札の実施」「KC-135の耐用年数延長」が決まる。因みに亀裂問題で納入停止になったKC-46Aはその後の検査で50機中11機で亀裂が見つかり、問題なしと確証が得られるまで納入は再開されない。
参考:As tanker plans remains uncertain, today’s Air Force refuelers may fly past their 100th birthday
参考:Embraer ready to step up KC-390 tanker investment for US, pending NGAS decision
この結果次第でKC-Yの運命と(NGASで更新する一部の)KC-135の耐用年数を2050年以降に延長するかどうかが決まる
米空軍の空中給油能力は計450機以上のKC-10とKC-135で構成され、これを近代化するためKC-10の退役とKC-46Aの導入が進み、現在は空中給油能力はKC-135とKC-46Aで構成されているものの「KC-135の後継機=KC-X」に関する方針は定まっておらず、このニーズも従来型のKC-Y(現在のTanker Recapitalization)と専用設計でステルスを追求したKC-Z(現在のNGAS)に別れ、空軍とBoeingは差し迫ったKC-Yのニーズ(150機前後)を満たすためのKC-46Aの追加調達を希望しているが、度重なる品質問題、欠陥や不具合の発覚、修正努力の遅延の影響でKC-46Aは議会の信用を完全に失ってしまった。

出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Abigail Klein
そのため議会は「契約で約束した最大調達数(179機)を超える追加調達」を禁止し、KC-46AとKC-Zのギャップを埋めるブリッジタンカー(KC-Y)を「競争入札で新たに選定しろ」と要求、これは致命的な欠陥や不具合がなく信頼性が高いA330MRTTとの競争入札を意味し、これを実施して公平な評価を下せば「信頼性」と「将来性」でA330MRTTが勝利するのはほぼ確実なため、空軍は「KC-Zを優先するためKC-Yの調達(150機→75機)を削減する」と発表。
これはKC-YにA330MRTT(米空軍仕様=LMXT)提案するLockheed Martin/Airbus陣営の採算割れ(最小100機)を狙ったもので、最終的にLockheed MartinはLMXTからの撤退を決めたものの、Airbusは単独でもKC-Yへの入札に応じる構えだが、結局のとろこNGASの能力と実用化時期が明確にならないと「KC-Y入札を実施するのかどうか」「KC-Yの調達規模」「遅れるKC-Y調達に合わせたKC-135の耐用年数延長」などが定まらず、全くと言っていいほど「KC-Y入札の話」は進んでいない。

出典:Lockheed Martin LMXT
米Defense Oneは「何年も宙に浮いていた空中給油戦略について空軍は答えを出す」「まもなく密接な関係にあるTRとNGASの分析を終える予定だ」「この結果次第で(NGASで更新する一部の)KC-135の耐用年数を2050年以降に延長するかどうかが決まる」と、米Dreaking Defenseも「米空軍の空中給油能力に関する要件の中には『120機~140機の緊急ニーズ』が含まれている」「米市場参入を狙うEmbraerは分析結果次第で投資スケジュールを調整する必要があると述べた」と報じている。
Embraerは2022年「米空軍にとって作戦上の緊急課題である戦術的空中給油のオプション=アジャイルタンカーの開発を米L3Harrisと共同で行う」「フライングブーム方式の空中給油システムとJADC2対応の通信システムを追加したKC-390を米空軍に売り込む」と発表、L3Harrisは他の優先事項のためアジャイルタンカー計画から手を引いたものの、それでもEmbraerは米国市場への進出=主要プレーヤーになる夢を諦めておらず「複数の米企業と協議を進めている」と述べ、米国内でのプレゼンスを拡大するためC-390/KC-390の最終組立て工場を米国に設立することも検討しているらしい。

出典:Embraer
Embraerが狙うアジャイルタンカー計画とは「大型で高価な空中給油機を小型で安価なKC-390で分散させた方が戦術的に有利」という意味で、長射程化が著しい空対空ミサイルでKC-46Aを1機でも失えば多くの作戦機に影響が出るため「運用効率が悪くても複数のKC-390で空中給油を行う方が空中給油全体の抗堪性が優れている=米軍全体で取り組む分散戦術の空中給油バージョン」と言ったところだが、このようなニーズが空軍の空中給油戦略に含まれているのか不明だ。
但し、米War Zoneは「大規模戦争において航空戦力生存の鍵となる分散型作戦コンセプトは空中給油機に『戦場空域での運用』を強いるものの、NGASの存在は非ステルス空中給油機が中国との戦いで深刻な問題に直面していることを明確に反映している」「NGASのコンセプトは脅威から遠く離れた空域に留まる大型空中給油機が『生存性の高い小型空中給油機』に燃料を供給するハブ・アンド・スポーク方式だろう」「米空軍は最近、ブーム方式の航空機に燃料を補給できるポッド式空中給油システムの契約を締結したばかりだ」と指摘したことがある。

出典:U.S. Air Force
つまりNGASはステルスを追求してもF-47やB-21のようにリスクが高い空域には侵入せず「戦場に近い空域に留まって小型空中給油機に燃料を供給するのが役割」という意味で、もし空軍がこのアプローチを採用してくればKC-390のニーズは存在するかもしれない。
因みにWar Zoneは3月2日「引き渡し前の機体4機中2機で亀裂が発見された」「この亀裂は操縦舵面やヒンジではなく一次構造や二次構造で見つかった」「ボーイングは根本的な原因を把握して効果的な是正措置を実施するまで一時的にKC-46Aの納入を停止する」「米空軍も保有する89機を全て検査する予定だ」と報じていたが、Defense Oneは「これまでに検査が完了した50機中11機で亀裂が見つかった」「残りの39機も3月末までに検査を終える予定」「この亀裂は安全上のリスクをもたらさないが原因を特定して『問題がない』という確証が得られるまで納入は再開されない」と報じている。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Joshua J. Seybert
日本が購入した機体は、大丈夫なんでしょうかね?
50機中11機で亀裂があったなら、(特定ロットに集中するような事がないならば)日本保有分にも何かしら欠陥のある可能性もあるなと。
本体が大丈夫でも
少量生産で修理が高額になりそう
そりゃ、あるだろう。
ここに亀裂が入ること自体は高齢な767の持病なので空軍もボーイングも想定はしていたけど、新造機で見つかったのは想定外みたい。
民間じゃ老朽化した767を1日に数レグ飛ばすハードな使い方して傷みが早いだろうから当該箇所の修理実績も多数あるんじゃないかな。
ボーイング印の旅客機だぞ(だめそうの意)
亀裂が発見されて、修理にボーイングに送り返したら手抜きされて、飛行中に機体が分裂して墜落。
おまけに給油機なので、市街地に燃料がばら撒かれて、大火災で数千人規模の死者が出るまでがボーイングのクオリティ。
ボーイングによるボーイングのボーイングのための空軍。
日本もEmbraerから空中給油システムを提供してもらって、C-2の空中給油機バージョンを配備した方がいいな。
あと、F-35Bの艦上運用の為に、V-22用の空中給油ユニットを購入すべきだな。
???「空中給油機に空中給油する空中給油機ですか。実に良いアイデアですな」
おっと、ブラックバック作戦の悪口はそこまでだ。
2割以上の機体で亀裂が見つかるなんてそんなあからさまなエイプリルフールネタに引っ掛かる訳…え?
KC-46A の二割以上が使い物にならないゴミだなんて
エイプリルフールのジョークとしては面白いですね
ボーイングは存在自体がジョークみたいなもんですね…
この記事はマジな奴ですよね…????
分からない・・・一体どの記事が本物で、どの記事がエイプリルフールネタなのか!
テンプレ悪役「うまく嘘をつくにはね…、少しの真実を混ぜておくことですよ」
これがネタ記事であってほしいよ
まだ納入前なのに次から次へとこんなの見せつけられて、イスラエルはどう思ってるんだろか。政治的リスクがあるからやっぱりエアバス導入ってことも無いだろうけど。