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無人戦闘機の可能性、米空軍が編隊飛行を行うF-22AとMQ-28Aを公開

米空軍の無人戦闘機に関する新たな動画が登場、F-15EとXQ-58A、F-22AとMQ-28Aが編隊飛行を行う様子が公開されており、このような取り組みを明かすのは初めてなので注目を集めている。

参考:Future Of Artificial Intelligence Dominated Air Combat Showcased In New Air Force Video

本格的に有人機と無人機の飛行をテストしている様子が垣間見えるので非常に興味深い

米空軍が開発を進めている「戦闘機に随伴可能な無人戦闘機」は幾つもの並行プログラムが存在し、2020年に立ち上げて注目を集めたスカイボーグ(無人戦闘機の機体と制御ソフトウェアを別々に開発するプログラム)ですら実用化に向けた布石に過ぎない。

出典:USAF Air Force Research Laboratory AFRLが作成したスカイボーグ・プログラムのイメージ

戦闘機に随伴可能な無人戦闘機は現在「協調戦闘機=Collaborative Combat Aircraft」と呼ばれており、このCCAの競争試作が「2024年に開始される予定だ」とだけ判明しているが、米空軍がスカイボーグで「何を開発して何を得たのか」は明かされておらず、定期的に広報目的で登場する無人戦闘機と言えばXQ-58Aだ。

XQ-58Aは米空軍研究所のLCAAT (低コスト航空用航空機技術) 計画でクラトスが開発した機体で、スカイボーグやCCAのために開発された機体ではないのだが、オクラホマ・シティに完成した同社の生産拠点でXQ-58Aの低率初期生産が始まっており、現在はLOT2で能力向上型のBlock2が生産されている。

出典:EGLIN AIR FORCE BASE

このXQ-58A Block2についてクラトスの最高経営責任者を務めるエリック・デマルコ氏は「Block1と比較してBlock2はより高い高度を長時間飛行できるようになった。LOT2で生産される半分以上はBlock2Bに変更され、顧客や要求した新たな追加機能が組み込まれる」と述べているものの、米空軍にとってXQ-58Aがどのような位置づけの機体なのかは明かされておらず、これを正式なCCAとして採用する気はなさそうだ。

米空軍は無人戦闘機について当初「損耗を許容できる安価なプラットフォーム」と強調していたが、最近は「優れた調達性も重要だが驚くほど安価ではない」と説明、ケンドール空軍長官も「CCAの調達コストはF-35の25%~50%=2,000万ドル~4,000万ドル」だと明かしており、開発計画全般を管轄するムーア中将はCCAの基本的なミッションセットとして「射撃手として戦闘部隊の能力強化」「電子戦の能力」「戦場におけるセンサーとしての能力」を挙げている。

出典:General Atomics Aeronautical Systems LongShot UAVのイメージ

兎に角、米空軍のCCAは秘密のベールに覆われているため既存機や次世代機とのチーミングをどのように実現するのか(一般人には)見えておらず、量産が開始されているXQ-58Aや興味を示していたMQ-28AをCCAと別に採用するか謎だらけだが、米空軍の無人戦闘機に関する新たな動画が登場した。

この動画はAutonomous Aircraft Experimentationイニシアチブを紹介するもので、一言で言えば将来の無人機を人工知能と機械学習が自立的に飛ばすための実験だが、F-15EとXQ-58A、F-22AとMQ-28Aが編隊飛行を行う様子が公開されており、このような取り組みを明かすのは初めてなので注目を集めている。

米ディフェンスメディアは「試験目的で米空軍がMQ-28Aを1機取得した」と報じているが、動画を見る限る米空軍が取得もしくは借り受けたMQ-28Aの数は最低でも2機で、本格的に有人機と無人機の飛行をテストしている様子が垣間見えるので非常に興味深い。

出典:Video by Francis Foose

以前紹介したXQ-58の打ち上げシーンも動画内で紹介されており、米海兵隊もXQ-58Aを取得する予定なので「滑走路運用に依存しないF-35BとXQ-58Aの組み合わせに関心があるのではないか」と噂されている。

関連記事:ランド研究所が沖縄配備を主張していたXQ-58、米空軍が打ち上げシーンを公開
関連記事:低率初期生産が始まったXQ-58A、米海兵隊はF-35Bとの組み合わせに関心
関連記事:米空軍、無人戦闘機の価格は2,000万ドル~4,000万ドルで2020年後半に登場

※アイキャッチ画像の出典:

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コメント

    • 名無し
    • 2023年 7月 06日

    最近の米軍にしては開発が順調そうだけど、一回でも事故ったり政治的ないざこざがあったら、ちゃぶ台返しで即開発中止にならないか少し心配

    5
    • 無色
    • 2023年 7月 06日

    うーん夢見た世界。
    でも私の好きだったX-47ペガサスはお蔵入りなんだろうか、寂しい

    11
    • 鼻毛
    • 2023年 7月 06日

    ハイローミックスみたいなところに落ち着きそうですね

    2
    • 通行人
    • 2023年 7月 06日

    私も好きでした。もっとカッコいいやつがきっと出てきますよ、長生きしましょう。

    8
    • Whiskey Dick
    • 2023年 7月 06日

    ステルス戦闘機がステルス性能を発揮するには兵器を機内に格納する必要があり、どうしても兵器搭載量に劣るという欠点があった。本記事の無人機付随という方法で兵器を運搬し、有人機の指令で搭載兵器を使用できれば搭載量不足を解決できる。
    またレーダーを使用すると逆探知される恐れがあるが、無人機をセンサー母機としてデータリンクにより有人機がこっそり敵を攻撃することもできる。

    6
      • 原点にして頂点
      • 2023年 7月 06日

      F-22やF-35などの最新鋭機を含む既存機では、FCPの生成および共有が不可能なので、無人機をどのように活用するつもりなのか興味があります。

      >またレーダーを使用すると逆探知される恐れがあるが、無人機をセンサー母機としてデータリンクにより有人機がこっそり敵を攻撃することもできる。

      少なくとも現在のF-22やF-35の能力では不可能です。

      なぜなら、FCPの生成および共有が不可能ですから、自機のFCRで敵を必ず捕捉する必要があるからです。

    • ブルーピーコック
    • 2023年 7月 06日

    4世代と5世代の隔て無しに運用可能なら、非ステルスな既存機の生残性がより高まるな。

    2
      • 匿名さん
      • 2023年 7月 06日

      それはつまり、第4世代戦闘機の改修が必要になるということですが、
      空軍にそのようなお金があるとは思えません。。。

      F-16Vのように、中東の裕福な国が開発費を出してくれるのを、乞うご期待ですかね。

        • XYZ
        • 2023年 7月 06日

        飛行するのに第5世代機からのサポートが必要ならば改修が必要になりますが、自力飛行が可能になれば改修無しで現在の地上レーダーやAWACSとのデータリンクと同じ方法で情報共有ができるのでは?
        無人か有人かの違いしかなくなりますので。

        先行させた無人機からのデータを元に後方の有人第4や4.5世代機が攻撃できるようになりそうです。

        2
          • 原点にして頂点
          • 2023年 7月 06日

          先行させた無人機からのデータを基に後方の有人機が攻撃するためには、射撃指揮図(Fire Control Picture, FCP)の生成および共有が必須ですが、これらはF-35やF-22などの最新鋭の第5世代戦闘機を含むすべての既存機で不可能だとされています。

          なので、先行させた無人機からのデータを基にミサイルを射撃するということを既存機で実現するためには、少なくとも大規模な改修が必要だと考えられます。

          それも、OFP(Operational Flight program)の書き換えなども必須ですから、かなり大規模な改修となるでしょう。

          なお、日本が開発中の次期戦闘機のために日本で研究開発が進められてきた「戦闘機用統合火器管制システム」ではFCPの生成や共有なども実現します。

          6
            • 匿名
            • 2023年 7月 07日

            ソフトウェア面がまだまだ追い付いていないということなんですね。

    • 匿名さん
    • 2023年 7月 06日

    >CCAの基本的なミッションセットとして「射撃手として戦闘部隊の能力強化」「電子戦の能力」「戦場におけるセンサーとしての能力」を挙げている。

    役割別に専用機を用意するのではなく、共通機を作って役割分担させるのかな。

    • 無印
    • 2023年 7月 06日

    いずもからF-35Bを、ひゅうがからXQ-58を飛ばせるようにならないかな

    2
    • 58式素人
    • 2023年 7月 08日

    現在のバディ方式に無人機を組み込んでみる所から始めるのかしら。
    いずれ、親機から距離を離す/または子機の数を増やす場合、
    データ通信の方法が重要になりそうな気がします。
    何らかの形で存在を把握されてしまえば、データ通信を妨害すれば、
    戦力は一気に数分の1に減少(無人機の分は無くなる)するわけですから。
    現在であれば、長距離ならば衛星のレーダー、近距離ならばIRセンサー
    で補足はできそうな気がします。
    今度のステルス機は上から来るレーダー電波にも対応する必要があるのでは。

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