ウクライナ軍のシルスキー陸軍司令官は「クピャンスク方面の状況が悪化しているため対応策を協議した」と述べており、ロシア側情報源も「第6軍はシンキフカ包囲に向けてポジョンを改善した。シンキフカ北部はグレーゾーンになった」と報告している。
参考:РФ мстит за осень. Что происходит под Купянском и станет ли он вторым Бахмутом
参考:Россияне не имеют успехов на Купянском направлении, – ГУР
シルスキー陸軍司令官が短期間にクピャンスク方面を2度も訪問しているため、何かが起こっているのは確実だ
ウクライナ軍は昨年秋の反撃でオスキル川沿いのクピャンスクを奪還、ロシア軍もオスキル川沿いの占領地を放棄してルハンシク州方面に撤退したため、ウクライナ軍はクピャンスクを起点にハルキウ州の解放を進めたが、ロシア軍は国境沿いに近いハルキウ州北東部を手放さず、今年の3月頃からオスキル川沿いに南下を開始してドヴォリチネ、フリャニキフカ、マシュティフカを制圧、ザポリージャやドネツクでウクライナ軍の反攻作戦が始まるとロシア軍はクピャンスク方面の攻勢を強化。
この方面の戦いに関する視覚的な証拠は少ないものの、ロシア側だけでなくウクライナ側も「クピャンスク方面が現在のホットスポットだ」と主張しており、ウクライナのマリャル国防次官も「東部戦線のロシア軍はクピャンスク方面に戦力を集中させている」「ロシアは昨年秋に失った地域の支配権を取り戻そうとしている」「敵の攻撃を失敗し続けているが攻撃は非常に激しい」と言及、ハルキウ州当局も9日「クピャンスク地域からの強制避難」を発表。
東部司令部の司令官も兼任するシルスキー陸軍司令官はバフムートでの反撃、トルスケやアウディーイウカの防衛を指揮するの忙しいにも関わらず、短期間にクピャンスク方面を2度も訪問して現地司令部と対応を協議しているため何かが起こっているのは確実だ。
国防省情報総局のスキビツキー報道官は16日「クピャンスク方面はロシア軍が積極的に攻撃を試みる場所の1つで、クレムリンは最低限の目標達成を諦めていない証拠だが何も成功していない。敵の攻撃は戦略的な軍事的性格を帯びておらずただの局地戦だ」と述べたが、クピャンスク近郊で戦う旅団を訪問したシルスキー陸軍司令官は「状況が悪化しているため対応策を協議した」と述べており、ロシア側情報源(Рыбарь)も「第6軍の部隊がヴィルシャナの南西にある陣地を占領し、シンキフカ包囲に向けてポジョンを改善した」と報告。
さらに「ウクライナ軍は依然としてシンキフカ南部を保持しているものの残りはグレーゾーンに移行している」とも述べており、ロシア人軍事特派員(Русской весны)も似たようなことを報告しているため、クピャンスク方面の状況は悪化している可能性がある。
勿論、現時点でロシア人の主張は視覚的に裏付けられていないため「情報戦」の可能性もあるが、ウクライナ軍も同方面の状況(ドヴォリチネ、フリャニキフカ、マシュティフカをロシア軍が支配していると視覚的に確認されているがウクライナ軍は認めていない)を正確に提供しているとは言えず、ザポリージャ州や南ドネツクでの戦いの推移は概ねロシア人の主張通りに展開中だ。
ここから先は各々が判断する領域だが、個人的には「直ぐにクピャンスクがどうにかなるというレベルではないものの状況が悪化している」と思っている。
因みにドニエプル川左岸地域=コザチ・ラヘリの西に上陸したウクライナ軍はロシア軍の反撃を受けて撤退したらしい。
関連記事:ロシア軍がオスキル川沿いに南下、クピャンスクでは住民の強制避難を開始
関連記事:ドニエプル川左岸地域へのウクライナ軍上陸、まだ誰も確認できていない
※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
日本のマスコミ、ウクライナ南岸ドニエプロ川流域に橋頭保を構築したと、散々プロパガンダを煽ってましたね。
そもそも橋頭保と呼べるのでしょうか?
偵察、よく言えば威力偵察くらいの表現ですよね。
軽装備の歩兵だけで、装甲車両やドローンが待ち構えているのに、期待させてもどうしようもないかと。
何百mある大河に、架橋させるだけでなく、数十tの車両や補給物資を運ぶとなると…航空優勢なく妨害ある中での渡河作戦は非現実的に感じてしまいます。
>因みにドニエプル川左岸地域=コザチ・ラヘリの西に上陸したウクライナ軍はロシア軍の反撃を受けて撤退したらしい。
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2023年7月3日
ウクライナ軍の渡河成功か、東部で激戦続く 英国防省
リンク
米CNNなどによると、ウクライナ軍がドニエプル川東岸に橋頭堡(きょうとうほ)を確保した可能性がある。川を渡って戦略的に重要な同地での拠点確保に成功したとすれば、ウクライナ軍が進軍するきっかけになる。
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管理人様いつも貴重な情報ありがとうございます。
度々、リンクなどを貼っていますが、もし邪魔でしたら削除やデットリンク扱いにして下さい。
橋頭保なんてもんは脆弱なんだから短期間で拡張して架橋して重火器を渡河させない限り維持は無理だわ。
紹介している記事は1ヶ月半前なので、恐らく春からウクライナ軍が何やらやってるオレシキー北部、アトノフスキー橋周辺ですね…
今回の渡河は数日前に「上陸」「進出」という表現とロシア軍少佐を捕らえたという報道ばかりで、橋頭堡という表現は見ていません。
ロシアがザポリージャ方面に派遣した部隊をヘルソンへ再配置したと言うニュースもありましたね。
ウクライナとしては本命であるザポリージャの戦力を分散できれば御の字と言ったところではないでしょうか。
これまでウクライナ軍はドニエプル川東岸には3度上陸してきたかと思いますが、いずれも重火器を輸送することなく撤退して終わってるので、今回も撤退したのは当然の結末ではないでしょうか。
> 撤退したらしい
管理人さんの言いようから、まだ確定とは言っていないようですね。
他でもそう主張しているロシア側アカウントがあるという程度らしいです。
ロシアアカウントが一斉に騒ぎだしてもいないので経過を見たいと思います。
両軍とも夜間の少数兵力による浸透作戦を使うようになり、派手なドローン映像が出にくくなってますね。しかも浸透しても昼間は穴掘って偽装して隠れて見つからないようにじっとしてるそうですから、両軍とも正確にはどこまで行けているか把握してないのでしょう。
戦場のドローン監視が進み過ぎて、人間は太陽の下を歩けない世界になりつつありますね。
現状両国とも無制限に個人用の夜間暗視装置が行き渡ってるわけではなく私物や寄付によるものなども使われる状態で歩兵は相変わらず夜目は効かない。昼よりは歩兵も動けるが結局夜間戦闘可能な車両やドローンが跋扈しているまさに地獄。
地雷も日没直後に赤外線領域見れるドローン使って草や土との比熱の差利用して探査してるとか見ますし、赤外線装備が重要みたいですねー
両軍とも暗視装置装備のスナイパーを浸透戦術対策に使っており。
両軍から画像が出てますが、あれはヤバいです。ただでさえ厄介なスナイパーが、夜の闇のどこかからサーマルセンサー使ってこっちの居場所を特定して一方的に狙撃してくるわけで。あんなの対策しようがないですよ。もはや映画のプレデターを相手にしてるようなもんです。
ゲームチェンジャーだのそんな万能兵器ではないだの議論になっているF16君ですが、有効に使えるならまさに今のこの戦線みたいな状況でしょうね
攻勢中の部隊は、戦線から押し上げていく関係でどうしても長距離・中距離SAMの傘から外れがちであり、航空爆撃に脆弱になります。
小部隊に浸透されたとしても、機甲部隊本体に航空阻止爆撃をかければ、結局浸透した部隊は援護がないため擦り潰される運命です。
特に今戦争ではドローン観測による砲撃から逃れるためにSAMは最前線から下がっているでしょうから。
理想的にはそうだけどF-16の訓練は限定的な空対空戦闘にとどまるようだから供与されてもその任務には対応出来ないという問題が
攻勢で戦線押し上げ中の部隊は敵SAMの傘の下にいるだろうからF16君飛ばしたって撃墜されるだけだよ
デンマーク保有のF16は、アルゼンチンにほとんど供与されるんですよね。
オランダ次第なのでしょうか?
ウクライナが、F16を熱望している中で、NATOの政治的なメッセージと解釈しています。
そもそも、F16本当に揃うのか(供与する気があるのか)、見守りたいと思います。
空対空ミサイルの射程が足りるのかわかりませんが、足の早い戦闘機で前線やロシア領内からの長距離空爆を妨害できればだいぶ楽になるでしょうね。
バフムート方面もクリシチーウカ西の高台占拠までで止まった感
士気の維持の為にウロザイネとロボチネ大々的に喧伝するんでしょうけど、3重の内の1番目の防衛線突破もまだなんですよね…
被害減少の為に歩兵メインとは言うものの、時間あたりの犠牲は減っても距離あたりではどうなのか
ウクライナの初期兵数と予備役を招集した後の徴兵数とか犠牲者数は闇の中なんで怖いですね…
南方やバフムート方面の為に無理して引き抜いたから北東が危ないんでしょうし、徴兵ペース訓練ペースが間に合ってないほどに消耗してる?
バフムトはどうなんだろう?
自分的には攻める攻める詐欺で都市に露軍を吸着して袋叩きにするのが目的という可能性もある気がするけど・・
あと東部はウクライナ軍が手薄だったからというよりは、ロシア軍が南部の軍すら引き抜いて大部隊を編成したからの戦果とみたほうが正しいと覆う
バフムトは単純に攻めきれずに停滞しただけ
時間かけてもソレダルとバフムトという前線デポを手に入れたロシアが補給面ではるかに有利でウクライナにいいことはない
ロシアの方はよく知らないのですが、ウクライナの方はハリコフから第3独立戦車旅団をバフムートの方に持ってきてるかと
相当な数の部隊を両軍とも投入してるみたいですね
問題は攻め取る気があるのかどうかで、自分的には秋の終わりごろに奪取したら逆算で今は削り作戦中だったということかなぁという感じ
ちょい前の「(バフムト奪還は)名誉の問題」記事のコメントで意見が分かれたのも、どのタイムスパンで見るかだと思うし
*ここの最新の記事によると、ウクライナ軍は優勢を保ったままロシア軍にダメージ入れていってるみたいで(ワグネルのような人海戦術で都市狙ってなくて)少し安心
ロシアは東を ウクライナは南を って感じだね。
どっちも守りながら攻めるしかない。
ウクライナとしては兵站をつぶしやすい南部をメインでいくしかないでしょ。
南部は奪還しちゃえばもう再侵略は今のロシアには無理そうだし。
ポイントを絞らないといかんでしょ。
クピャンスクは戦略上は重要です。ウクライナ軍も増援を続けているはず。
バフムト南方のクリシチエフカなどへのウクライナ軍の攻勢が衰えたのは、そのせいかも?
ドニエプル渡河のへルソン方面は、どっちみちゲリラ戦程度なので、どちらが優勢でも大勢には影響ないでしょう。
この辺りは人口も少なく、ウクライナにとって最も補給が困難なエリアであるのに対して、ロシアにとっては最も補給が容易なエリアですね。なので、ウクライナはこの地域で多大な損害を出してまで踏みとどまるべきではないと言う判断もあるのでしょう。
ただ、ロシアがセベレツ川を渡河した直後、状況の見えていなかったウクライナ軍の一部の部隊が必要以上に後退したために、ロシア軍を楽に前進させてしまったと言う手痛いミスがあったので、何も考えずに戦線を下げればいいと言うものでもないでしょう。
シルスキー陸軍司令官が度々現地を訪れているのも、死守すべき所と、撤退すべき所の判断は現地に乗り込んでみなければ分からないと考えているからではないでしょうか。
シンキフカ北部がグレーだと近くにあった陣地は抜かれた可能性があるな。クビャンスクの価値が高いならウクライナ南部攻勢の足引っ張る可能性もあるし戦力分散させるために動いてそうな感じはする。
このまま上手くクビャンスクまで行ければ画像の真ん中ほどロシア軍支配地近くにあるウクライナ軍陣地相手に大きな犠牲払う事無く侵攻出来そうで意外と考えて攻めていたりするんだろうか。