ウクライナ戦況

シルスキー大将、東部戦線のシヴェルシク方面とバフムート方面が厳しい

シルスキー大将は26日「ロシア軍はシヴェルシクに向かうための条件を作り出そうとしている」「バフムート方面では戦術的な成功が得られなかったため一時的に守りに入った」と報告したが、RYBARは「ロシア軍がイワニフスキー郊外に到達した」と報告している。

参考:РФ увеличивает интенсивность наступления на Северском и Бахмутском направлениях – Сырский
参考:Оккупанты пытаются развить наступление на Часов Яр и в направлении Северска, – Сырский
参考:СИРСЬКИЙ
参考:Наступление на Часов Яр: начало боёв за Красное обстановка по состоянию на 18.00 26 января

参考:Битва за Авдеевку: бои на юге города обстановка к 14.00 26 января 2024 года

バフムート方面の敵は特定地域で戦術的な成功が得られなかったため一時的に守りに入った

シルスキー大将は26日「東部戦線の状況は依然として厳しい。シヴェルシク方面では敵が戦術的ポジションを改善してシヴェルシクに向かうための条件を作り出そうとしている。敵は迫撃砲や大砲の支援を受けてクレミンナ方向やフリホリフカ方向への攻撃を試みたが失敗に終わった。同時に攻撃失敗をカバーするため砲撃の激しさが増している。この2日間は特にロケット弾、空爆、自爆型ドローンによる攻撃を積極的に行った」と報告。

出典:СИРСЬКИЙ

さらに「バフムート方面でも敵は積極的な攻撃を行っている。バフムートの北と西で防衛ラインを突破してチャシブ・ヤールに向かおうとしている。クリシェイフカやアンドリーイカでも失地の回復を試みているが失敗に終わっている。敵は特定地域で戦術的な成功が得られなかったため一時的に守りに入ったが、攻撃的な作戦のため突撃部隊を待機させている」と明かし、ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARも似たような内容を報告している。

RYBARは26日「アウディーイウカ方面での戦闘の影響を受けてチャシブ・ヤールに対するロシア軍の攻勢はやや勢いを失っている。ロシア軍はボタニフカの中心部まで前進したものの現在は後退している。但し、ロシア軍はボタニフカ北東郊外を依然として支配し、ボランティア部隊、第200自動車化狙撃旅団、第98空挺師団が攻撃再開の準備を進めている」と報告したが、シルスキー大将の報告と異なるのは「ロシア軍がイワニフスキー郊外に到達した」と言及している点だろう。

出典:管理人作成 バフムート周辺の戦況(クリックで拡大可能)

RYBARは「第68戦車連隊、第150自動車化狙撃師団、第4自動車化狙撃師団はクリシェイフカ方向から畑を迂回してイワニフスキーのサドバヤ通りとT-0504が交差する周辺(青丸)に足場を築くことが出来た。イワニフスキーに対する攻勢が成功すれば『隣接する高地』を占領してチャシブ・ヤールへの道を切り開ける。イワニフスキー自体は低地に位置するため戦術的価値は低い」と主張しているが、これは視覚的に確認されていないため本当にサドバヤ通りとT-0504が交差する周辺にロシア軍が到達したのかは不明だ。

因みにウクライナ人が運営するDEEP STATEはアウディーイウカ方面について「敵がツァルスカ・オホタから後退した」と報告したが、RYBARは「市内南部のソボルナ通り、スポルティヴナ通り、チェルヌィシェフスコゴ通りで最も激しい戦闘が続いており、敵は戦車の支援を受けてロシア軍を追い出そうとしているが成功していない。ウクライナ側の発表と異なりツァルスカ・オホタは現在もロシア軍の支配下にある」と指摘。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)DEEP STATE基準の前線位置

但し、アウディーイウカ北部は南部攻勢の影響で砲撃とFPVドローンを用いた攻撃のみになっており、特にウクライナ軍が電子戦システムの積極使用を始めたため、ロシア軍のドローンは十分な距離を飛行するのが難しく戦場認識力で劣勢らしい。

関連記事:アウディーイウカの戦い、反撃によってツァルスカ・オホタからロシア軍が後退か
関連記事:侵攻698日目、ロシア軍がバフムートやクピャンスクでも新たな攻勢を開始

 

※アイキャッチ画像の出典:СИРСЬКИЙ

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コメント

    • 名無し
    • 2024年 1月 27日

    ウクライナも電子戦システム多様しだしたのか
    日本はこの分野全くだろうし
    観戦武官でも送って調べられないものだろうか

    20
      • TKT
      • 2024年 1月 27日

      日本の警視庁でも、ドローンを使ったテロ犯罪対策で5年くらい前、2019年あたりから妨害電波発信装置を装備しています。

      そういう話を聞いた時から、戦場で軍隊、自衛隊がドローンを使っても敵の妨害電波の発信でいずれ使えなくなるだろうなとは思っていました。ついこないだも、霧でウクライナ軍のドローンが使えなくなったためにロシア軍の奇襲が成功したと言われます。霧でなくても、雪や吹雪でも同じような故障が発生するでしょう。気温が下がればバッテリーの能力もさがるはずです。

      DX、デジタルトランスフォーメーションという政策で、ドローンを使った配達の実証実験などもしていますが、やはり同じようなことが起こるでしょう。故意の妨害電波でなくても、電波の干渉で突然電波を受信できなくなることも考えられます。

      陸上自衛隊で対・ドローンのジャミング装置を装備するなら、警視庁で5年前から使っている電波妨害発信装置を参考にすればいいでしょう。

      2
      •  
      • 2024年 1月 27日

      多様はしてないと思いますし、する機材もないでしょう
      そもそも西側は電子戦装備で東側に大きく劣っていますから、最初から支援できる機材がありません
      それでもなけなしの電子戦能力をどこに使うかとなれば、攻勢正面、あるいは今回のような包囲の開口部でしょうね

      6
        •    
        • 2024年 1月 27日

        電子妨害機材といっても色々あるし侵攻当初からジャマーなど供与されてますよ
        民生用ドローンなら民生用でジャマーも普通に買えます

        22
        •     
        • 2024年 1月 27日

        ロシア軍が2014年にウクライナ東部ドンバス地方の上空で始めたドローン作戦を受けて、ウクライナ企業プロキシマスは「ブコベルAD」というトラック搭載型のジャマー(電波妨害装置)を新たに開発した。

        この5万ドル(約720万円)のシステムは、周囲約100kmのドローンを探知することができ、50km程度まで近づくとドローンと地上の操縦士をつなぐ無線にスクランブルをかける。

        ウクライナ軍は2021年には数十基のブコベルADを保有していたと報じられている。ロシア軍の攻撃でそのうちのいくつかは破壊されたが、プロキシマスが代替システムの構築と全体的な戦力拡大に必死に取り組んでいるのは間違いない。ウクライナは、外国の同盟国から入手した詳細不明のジャマーでブコベルADを補強している。

        …だそうですよ

        26
          • たむごん
          • 2024年 1月 27日

          情報ありがとうございます、勉強になります。
          フォーブズの記事拝見しました。

          David Axeさん、他に下記のような記事を出しています(ネットで少し話題になった記憶があります)。
          関連性・投入時期が気になっています。

          >ドローン操縦士が敵のドローン操縦士を追跡して討ち取るという今回の対ドローン作戦は、ウクライナ軍がヘルソン州で昨年11月に行った作戦と類似点がある。

          >その作戦では、ウクライナ軍の電子戦チームの一員がロシア軍のドローンフィードをハッキングし、そのフィードを海兵隊のドローンチームに中継した。海兵隊のドローンチームは三角測量でドローンの拠点がある位置を割り出し、監視用のドローンを送り込んだ。ほどなくして、ウクライナ軍の砲兵がその拠点を攻撃した。

          (2024年1月22日 渡河ボート31隻沈めたロシアのエースドローン操縦士、ウクライナ軍が見つけ出し殺害 Forbes Japan)

          1
      • 兵長
      • 2024年 1月 27日

      陸自の自衛隊の電子戦は結構凄いすよ、どんぐりの背比べだが、アメリカより良いっす。
      海自、空自はしれっと昔からやってますし。

      7
    • EGI
    • 2024年 1月 27日

    産経
    ロシアは2014年から続くウクライナへの軍事介入で電子戦とサイバー戦を一体化させた世界初の作戦を行い、北方領土にも最新電子戦装備を配備した。
    中国も15年に設立した戦略支援部隊が宇宙、サイバーと並び電子戦を担い、南シナ海の人工島に電波妨害装備を展開させている。
    米国は後れを取る。ウクライナでのロシアの作戦を目の当たりにした米陸軍幹部は「ロシア陸軍が行える(電子戦の)1割もできない」と嘆いたほどで、電子戦システムや装備の開発に必死だ。
    陸上自衛隊は1950年代から電子戦の要員養成と装備開発を続け、熊本県に最新装備のネットワーク電子戦システムを配備する部隊の発足に結実した。
    日本は新たな領域のうち宇宙では出遅れ、サイバーは技術力があっても要員が不足する中、「陸自の電子戦部隊は米陸軍より圧倒的に優れている」(防衛省幹部)と指摘される。

    15
      •  
      • 2024年 1月 27日

      電子戦ってかなり旧来型の廃れつつある軍事分野なんですよね
      だから旧来型の軍組織である自衛隊は逆にそこに対する投資が大きくて優れており、最新鋭を求める米軍はさっさと見切りをつけていて既に規模が縮小しきっている

      4
      • ak
      • 2024年 1月 27日

      すいません、茶々入れるようで申し訳ないですが、
      「産経」の軍事関係記事、特に独占記事は「飛ばし」記事が多く、内容の間違いも多々見られる傾向に有ります。

      その為にきちんとその出展が示されていない産経の軍事記事は、私は信用しない事にしています。

      29
      • 匿名
      • 2024年 1月 27日

      ソースが「産経」ねぇ…
      軍事に関してならまだ朝日のほうがマシなレベルじゃん

      12
        • 匿名11号
        • 2024年 1月 28日

        どうですかね。主観的な信用するしないで特定のソースの情報を鵜呑みにするよりは、それぞれのソースから正しい部分の情報を判断した方が間違った情報に踊らされるリスクは小さいと思いますがねえ。

        7
          • 匿名
          • 2024年 1月 29日

          個人的に、産経の軍事関連記事はそのレベルにすら達していないジャーゴンと判断しています

          3
      • そもそも
      • 2024年 1月 28日

      夜のニュースの解説陣がスベりまくったせいで
      自衛隊幹部と、機関紙たる産経の言説は
      個人的には、もはや信用に値しない情報になりました

      11
    • 黒丸
    • 2024年 1月 27日

    ドローンをすべて行動不能にするのではなく、敵のドローンのみを対象にしなければならず
    しかも敵味方ともに、同一メーカーの民生ドローンとその派生を多用している状況ですか。
    考えたくもない作業量になりそうです。AIとか使用してデータ捌くのかもしれませんが。

    16
    • 匿名
    • 2024年 1月 27日

    ドローンが、戦車の攻撃力こえたまた凄い時代になってきた。
    総務省が広報で、ブログなど不特定多数に見られるウクライナ戦争記事は、日本人に対してロシアが偽情報流しているとして、ウクライナ戦争に対して中立公平にできるだけ作成して発信することを何度も呼びかけているから、個人の興味持った軍事記事作成しているだけかけばよく、国の総務省の広報や呼びかけ無視しますと断言する中立公平がないとは名言しないほうがよいとは思う。

    4
    • たむごん
    • 2024年 1月 27日

    管理人様、分かりやすい地図ありがとうございます。
    アウディーイウカ南部、緊張感の高い局面ですね。

    両軍の砲撃が、戦場にどのような違いをもたらしているのかが、現状少し気になっています。

    >…同時に攻撃失敗をカバーするため砲撃の激しさが増している。この2日間は特にロケット弾、空爆、自爆型ドローンによる攻撃を積極的に行った…

    6
    • Artillery
    • 2024年 1月 27日

    アウディーイウカ南部はここ数日大きな動きが報告されていないので、ロシア軍は市街地への定着に成功し、ウクライナ軍は突破口の手当てに成功したのだろう。
    ここからジワジワとした市街戦に入っていくと思われる。

    バフムート戦線に関してはチャシブヤールに手を出すのは時期尚早と思うのですが、行けそうなら行くのでしょうか。
    チャシブヤールは天然の要害で、正面から直に攻めるのは相当苦労しそうなのですが。

    5
      • Easy
      • 2024年 1月 27日

      現状はドローンと砲兵で圧倒的に優勢ですから,しばらくはドローンと砲撃でウクライナ軍を削ることが最優先なのでしょう。
      結局のところ、この戦争は完全に消耗線の我慢比べの様相を呈しており。
      一番補充が難しいのが両軍とも兵士となっていますので、無理に兵士を消耗する戦術が取りにくくなってますね。

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