インドとフランスは27日「インド軍向けのヘリコプターや潜水艦を含む防衛装備品の共同生産」「友好国向けの防衛装備品に関する共同生産」で合意したと表明、他にも「戦闘機向けエンジンの製造支援」「野心的で前例のない宇宙分野の協定に署名した」とも報じられている。
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将来の大国インドにおける影響力拡大は国家戦略に類似点が多いフランスの圧勝
独自の戦略的自律性を標榜するフランスとインドは1998年に戦略的パートナシップ関係を確立、両国は敏感な主権領域を含む広範囲の問題で協力関係を強化し、特に機密性の高い防衛分野の取引が大幅に伸びたためフランスはインドとってロシアに次ぐ武器供給となり、2023年7月にモディ首相とマクロン大統領は「この歴史的な信頼関係を両国は今後も発展させていく」と宣言して次の25年間(2047年まで)をカバーする野心的なロードマップを発表した。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Koby I. Saunders
このロードマップは「両国の防衛力強化」に加えて「第三国への輸出も視野に入れた先進防衛技術の共同開発・生産」に踏み込んでおり、このファーストステップとして「インドによるフランス製装備の購入」「ヘリコプターエンジンの共同開発」「AMCAやTEDBFに関連している可能性が高い航空戦闘システムの共同開発」「インド海軍や国際的なニーズを満たす水上艦艇分野での協力関係構築」に関して覚書を交わしていたが、インド政府は27日「防衛装備品の共同生産で合意した」と正式に表明。
この合意はマクロン大統領のインド訪問中に発表され、両国は「インド軍向けのヘリコプターや潜水艦を含む防衛装備品の共同生産」「友好国向けの防衛装備品に関する共同生産」で合意したが、この取引の詳細や価値については明かしていない。

出典:fir0002/GFDL 1.2
現地メディアは「タタとエアバスがH125の最終組立ラインをインドに設置すること合意した」「生産されたH125は海外にも輸出予定」「マクロン大統領とモディ首相はサフランによる戦闘機向けエンジン製造の支援についても話し合った」「公式発表は行われなかったもののフランスはインドは野心的で前例のない宇宙分野の協定に署名した」「軍事衛星の打ち上げでも両国は協力する可能性がある」と報じており、内容は不明瞭なものの両国の協力関係は新しい次元に入ったと考えられる。
因みに仏メディアは昨年「欧州諸国の無謀な協力体制は中東で敗北し、フランスがインドで勝利を収めたことは我々の取り組みが正しかったことを裏付けている。これは研究開発、生産、マーケティングといった自国の兵器システムに途切れなく投資してきた結果であり、ラファール、スコルペヌ、FDI、これらのセンサーや兵器システムを独自に構築してきたおかげだ」と主張。

出典:Indian Navy/GODL-India カルヴァリ級潜水艦
さらに「ギリシャ、エジプト、アラブ首長国連邦、カタール、ブラジル、インドネシアなど最近の成功例を挙げればキリがないないが、継続的な投資と独自の兵器システムによる成功は今後の国際共同開発において重要な指針となるだろう。独自の外交と独立した軍事能力に支えられるフランスは『同じ戦略』を追求する国を惹きつけるはずで、フランスの武器輸出は主権の輸出に他ならない」と述べたことがある。
米国、英国、フランス、ドイツ、イタリアは「将来的な大国としての地位」が約束されているインドを巡って「安全保障分野における影響力拡大」を争い、特に米国はF414共同生産、米海軍艦艇の修理契約、海底領域における共同認識力の強化、防衛産業のサプライチェーン強化に向けた協定交渉、防衛産業協力と技術共有を強化する枠組みを提示したが、空母ヴィクラント向けの戦闘機選定でラファールMに破れ、結果から言えば「国家戦略に類似点が多いフランスの圧勝」とも言える内容だ。
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※アイキャッチ画像の出典:Narendra Modi
インド外交は、アメリカとの距離感が、伝統的に上手いですね。
イスラエル(ガザ紛争支持、技術導入)、ロシア(ウクライナ戦争中立、資源輸入)、フランスなど、絶妙にバランスを取りながら利益享受しているように見えます。
「インド外交はアメリカとの距離感が上手い」同感っすね。
フランスといいこれもやはり核を保有して独自の核抑止力を構築しているからこそ成せる技なんだろうか?
核保有国ならではの立ち回りは、仰る通り感じますね。
隣国パキスタンも核保有国ですが比較すれば、モディ首相が優秀・インドの大国としての将来性(各国の打算)があるのかもしれないですね。
国際社会におけるバランス感覚に関してはインドとフランスはどちらも秀でているのは確かですからね。両国ともに大国と呼ばれる米中露と付かず離れるという形で、決定的な衝突にいかないようにしている。
米中両国が共倒れ、みたいな構図になった場合に国際社会の主導権を握るのはこういった強かな国なのかもしれません。
…フランスはなあ
イスラエル建国当初、各国が支援を躊躇する中積極的に兵器供給(アメリカは第三次中東戦争以降)
イスラエルの核開発にも協力
しかしアラブがOPECで力を持つとイスラエルを切り、イラクでの核開発に協力
イラク、リビアなどの独裁国家にも兵器供給
シリアともバース党繋がりで関係深く
台湾にミラージュ売るも中国に乗り換え、アップデートを拒否る
世界の安全保障はアメリカが担ってるのをいい事に、フランスは節操ない武器商人で
後は野となれ山となれで好き勝手やってるように見えるが
仰る通りですね。
フランスは、『外交は他国を信用してはいけない』というのを、体現してるように感じます…(台湾海峡情勢もですが…)。
フランスもインドシナ戦争のときあたりまでは、みんなアメリカ製の兵器だったわけですよ。
戦車はM24軽戦車、空母はアメリカ製空母、海軍の艦載機、戦闘機はアメリカ製のF4Uや、F8F、空軍のジェット戦闘機もアメリカ製戦闘機で、フランス国内にはNATO軍、アメリカ軍が駐留していました。
しかし第二次中東戦争で、フランス・イギリス連合軍が奪回したスエズ運河を、アメリカがソ連と協力してエジプトに返還するように外交的な圧力を掛けたあたりからフランス政府、フランス国民のアメリカに対する不信感が決定的になりました。
核兵器なんかフランスには開発できない、と思ってたらフランスにはキュリー夫人の息子がいました。兵器の開発はもともとはアメリカよりずっと上で、第一次世界大戦のときのアメリカ軍はほとんどフランス製の兵器を装備していました。日本陸軍もフランス製の戦闘機、爆撃機、戦車、機関銃を装備していたわけです。日本が国産兵器を開発するようになったのはフランス軍の顧問からの助言です。兵器をみんな輸入に頼ると外交的な圧力をかけるのに利用されるからです。
仰る通りです。
国産兵器の重要性を感じますね。
最近トルコが、F35・F16の導入寸前でアメリカの外交的な圧力を受けた事例が、まさに仰る点だと感じました。
あれはトルコがロシア製のS300を導入とか意味不明な事したから、完全に自業自得な気はするけど…。
そりゃ中露にステルス性がバレかねないのに、F35を売れるわけ無いでしょと。
『野心的で前例のない宇宙分野の協定に署名した』
よくあるキャッチコピーだけど、なんかボジョレー味がある
北朝鮮チャーハン味とも言う。
アメリカはパキスタンと事実上の同盟国で
アメリカからインド向けの兵器は能力制限、対パキスタンでの使用制限がかけられていると思われ。
インドパキスタンの間で戦争が再燃した場合は、両国に制裁がかけられる恐れもあり(印パ戦争ではそうなった)
その点をフランスがクリアーしたので採用されたんじゃないか
しかしフランスは中国とエアバスユーロコプターで協力しており、この点がどうなるか気になる
中国の新鋭ヘリのほとんどがユーロコプターの協力のもと生産されてるし
フランスはまたもやイスラエル台湾のように取引先を見捨てるのかな?
フランス兵器にいいイメージが全くないんだけどな
エグゾゼとか実績あるじゃんとか思ってたけど実は当たっても不発だったりしてんですよねえ。
つーても冷戦終結後の単独国での大物兵器開発案件、となるとアメリカ除けば割と上位に来るのでは。
性能で一段二段落ちたとしても「アメリカほど色々うるさくない」「共同開発のしがらみがない」なら欲しがる国は十分ある訳で。
え?ラファールとか優秀じゃん…