ウクライナ戦況

ウクライナ軍のシルシキー大将、戦局を打開するチャンスは常にある

ウクライナ軍のシルシキー大将はロイターの取材に「戦力的に優位なロシア軍相手にA-10、AH-64、AH-1、UH-60が役に立つだろう」と述べ、戦況を打開する可能性についても「チャンスは常にあると思う」と回答した。

参考:Ukraine needs more attack aircraft for war effort – ground forces commander

退役するA-10をウクライナに送ればいいと言うほど物事は簡単ではない

ウクライナ東部での戦いを指揮しているシルシキー大将はロイターの取材に応じ「もしA-10が我々に与えられるのであれば、、、選択肢の1つとして話すことができる。これは新しいものではないが戦争で実績を積み上げてきた信頼性の高いシステムで、歩兵の支援に役立つ対地兵器を数多く使用できる」と述べ、A-10は戦力的に優位なロシア軍相手に主導権を握ろうと試みているウクライナ軍に「効果的な支援(近接航空支援)」を提供できると主張。

出典:U.S. Air National Guard photo by Staff Sgt. Mercedee Wilds

ロイターは昨年12月「ウクライナが米国との非公式会議に軍のニーズを満たす兵器リストを提出した」「このリストには保有済の武器や弾薬に加えてC-17、C-130、AH-64、UH-60、F/A-18、MQ-9B、THAADといった高額兵器も含まれている」と報じていたが、シルシキー大将は「AH-64、AH-1、UH-60といった攻撃ヘリも重要な役割を果たすことができる(UH-60もスタブ翼のExternal Stores Support System=ESSSを追加することでヘルファイアーやロケット弾などを携行可)」と付け加えている。

米空軍は281機保有するA-10を2028年までに全て退役させたいと議会に要請しており、2023年に21機、2024年に42機の退役が認められているため、計63機のA-10がアリゾナの砂漠(デビスモンサン空軍基地)に送られることになるのだが、それならウクライナに送ればいいと言うほど物事は簡単ではない。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Melanie A. Bulow-Gonterman

兵器システムを運用・維持するためにはウクライナ国内にA-10の兵站を構築する必要があり、パイロットの訓練と合わせて時間と費用がかかるのだが、ウクライナ支援の資金は青天井ではないため「A-10提供や運用にかかる費用を誰が負担するのか」という政治的な問題を先に解決しなければならず、もう一つの現実的な問題は米空軍がA-10を手放したい理由だ。

ブラウン参謀総長(現在の統合参謀本部議長)は2023年1月「A-10は本当に素晴らしい機体だ。但し、競合が存在しない環境での話で、シングルミッション(近接航空支援)にしか対応していないA-10は我々が求める航空機ではない」と語り、ウクライナでの教訓にも触れて「近代的な防空システムが従来型の航空機を無価値に変えた」と主張したことがある。

出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Rachel K. Young スティンガー

A-10が戦場の低空域を飛び回ってロシア軍の戦車や陣地を攻撃するというのはロマン溢れる光景だが、これが実際に実行出来るのかと言われると非常に怪しく、限られた資金をA-10に投資するのが本当に正しいのか吟味されるべきだろう。

これはAH-64、AH-1、UH-60にも言えることで、SNS上で見かける「米国はグズグズせず直ぐにF-16を送れ」という批判は支援資金が無限で、兵站構築にかかる費用や時間が0だと勘違いしている。軍用機のライフサイクルコストに占めるの運用・維持費用は機体の取得費用よりも高額(戦闘機なら機体単価の2倍~3倍と言われている)で、しかも戦時の運用となれば運用・維持にかかる費用は平時の見積もりよりも高価なるので、本当によく考えて支援しないと資金が無駄になるか、他の兵器システムや弾薬の供給が割を食うかもしれない。

出典:СИРСЬКИЙ

因みにシルシキー大将は「ウクライナに有利な転機が訪れる可能性があると思うか」というロイターの質問に「チャンスは常にあると思う」「それを見つけて利用するだけだ」「前線の長さが約1,000kmに及ぶ戦場のあらゆる場所に強固な防衛ラインを構築するのは不可能だ」「地形やその他の要因で必ず脆弱な場所は存在する」と述べ、まだ戦況を打開する可能性を諦めていないことが伺えるが、当面は建設中の防衛ラインに籠もって兵士、装備、弾薬などの消耗を抑えて戦力を蓄積する必要がある。

関連記事:ウクライナ、米国側にC-17、AH-64、F/A-18、MQ-9B、THAADなどを要求
関連記事:米空軍のブラウン参謀総長、A-10を2028年までに完全退役させると発言
関連記事:米空軍が熱望するA-10の処分、議会も2024年に42機の退役を認める方針
関連記事:米メディア、ウクライナ人がA-10の操縦方法を学ぶ施設を自力で構築した

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Makenna Gott

ウクライナは孤独ではない、英国とウクライナが歴史的な安全保障協定に署名前のページ

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コメント

    • ザコ
    • 2024年 1月 13日

    なんらかの戦訓があってA-10やAH-64が欲しい(役に立つ)って意味ではなくてとりあえず欲しい物リストに並べてみたって感じでしょうか

    45
      •  
      • 2024年 1月 13日

      ウクライナには南部攻勢でロシア軍の攻撃ヘリにタコ殴りにされた経験がありますからそこから出てきた発言なのでは
      ただ今やこの類の兵器は非常に繊細な運用が求められ、とくに攻勢では使いづらい兵器です
      ロシア軍は敵先鋒の前進に対空網の前進が追いつくまでの時間的間隙に対して攻撃ヘリを集中投入し多大な戦果を挙げましたが、ウクライナ軍が対空網が前進させ生存領域が狭まってからは後方に下げました
      そもそもシルカやパーンツィリを備えるロシア軍に対して突ける間隙があるのかという問題もありますし、ウクライナにロシアのような高度な運用が出来るかもまた疑問ですね

      31
        • 伊怜
        • 2024年 1月 13日

        低空飛行での強襲は双方Su-25やMi-24で成功させており、実績がある行動なんですね。ただやはり損耗率は高いのと、元々の保有数が少ないから機体が減ってくるわけです。その補充という意味ならSu-25の代わりにA-10を要求するのは的外れとも言えないでしょう。
        いくらロシアに自走対空砲があるからと言っても全域をカバーできるだけの配置はできていませんし、前進させすぎてドローンや砲撃で破壊された例も多いですから、一定の戦果は挙げられるかと思います。
        ただ、西側の機体ということで乗員の訓練に時間が掛かり、他の兵器と比べて即座に効果が出ないのはまた別の問題ですが。

        14
          •  さ
          • 2024年 1月 13日

          最大の問題は、その一定の成果とやらは費用対効果的にどうなのよ?って話
          他よりも優先して調達する価値があるの?

          そもそも成功するかどうかも正直かなり疑問だしなぁ
          大丈夫と出撃したら、そこは実際には対空火器の射程内だったとかだったら目も当てられない

          2
            •    
            • 2024年 1月 13日

            費用対効果を度外視しても敵を攻撃しなければならない時もありますよ
            国破れて仕舞えば元も子もありません

            ロシア軍の攻勢は…費用対効果などまるっきり軽視してるとしか思えませんが

            3
              • のむら
              • 2024年 1月 14日

              10兆円の予算から1兆円投資する話と、100兆円の予算から2兆円やりくりする投資。

              同じ戦果ならコスパは2倍違いますが、全体に占める割合では5倍の差があります。

              ウクライナもロシアも同じ条件ならコスパやキルレシオも意味がありますが、全く違うので比率や効率は無視はできずとも最重要視もできません

              2
      • たむごん
      • 2024年 1月 13日

      旧ソ連系の野戦防空を、突破できる算段があっての発言なのかが気になっています(ウクライナも旧ソ連系のため)。

      実際提供されて、他武器の調達予算に支障でたら困ると思うのですが、どうなんでしょうかね…。

      8
        •     
        • 2024年 1月 13日

        複合的に運用すればいいと思いますが

        アメリカ軍もA10だけで運用などしていません
        SEAD任務機のSAM制圧やサポートがあってこそでしょ

        2
    • 分析
    • 2024年 1月 13日

    戦争は金がかかるんですよね…
    自国国家存亡の危機には後先を考えず金を刷りまくって無理やり継戦するしかないですが、他国の場合には支援国の財政が問題ない限りの支援活動にどうしても限られます。
    A10でロシア軍の補給団列を薙ぎ倒すことが出来れば目立つ絵なので士気も上がるでしょうが、実際はA10を用意する金額で砲弾製造と防衛線構築を行った方がロシア軍の損失は大きいでしょう。

    27
    • 2024年 1月 13日

    >AH-64、AH-1

    それらの戦闘ヘリコプターを全廃する国が確かありましたね
    わざわざ高い税金を掛けて処分するくらいなら送って差し上げたら如何でしょうか

    2
      • 匿名
      • 2024年 1月 13日

      自国で処分するよりも、ウクライナに送り運用管理する方が高くつくという記事かと。
      また民生品の軍事転用に対し、民間企業へ責任転嫁する口で、将来を通じて勝手に軍需品を第三国へ横流ししないとも言い切れませんしね。

      38
    • 速すぎィッ!
    • 2024年 1月 13日

    AH-64DがEにアップデートして別物になると言うのと、退役が進むA-10と、70/72にアップデートしないF-16 ver.50/52をもらえたらいいなぁ〜とゆう都合のいい話をまとめたものがこれなのでしょうか??

    そんなの丸ごと台湾軍に供与したらいいと思うのですが、コロナの時点でF-16Vが大幅に遅れてしまっていて
    米軍トップはひたすら東アジア(対中国の台湾支援)を何年も何年も叫んでいるのに米議会にほぼシカトされてる現状で
    ウクライナにイスラエルにイエメンで米軍が実際にどんな事ができるんでしょうか?
    アブガンもイラクも諦めておいてインド太平洋に注力したいとゆう米軍の意向が完全に無視されたあげく、本番の対中国がどうなってしまうのか非常に不安です。

    13
      • 幽霊
      • 2024年 1月 13日

      台湾だってF-16ならともかくA-10はいらないでしょう
      と言うかアメリ軍だってコスト以外に中国など充実した航空兵力や対空能力が有る相手にはA-10は役に立たないと思うから退役させるのに、台湾に提供したって嫌がらせにしかならないと思いますよ。

      29
    • 攻撃ヘリよりも兵站を支える輸送ヘリの方が
    • 2024年 1月 13日

    要求アイテムがキャパシティオーバーというのかただでさえ人的資源が不足しているですから、搭乗員育成から始まる運用コストも考えない要求にいい加減アメリカ政府がお怒りになりそう。
    A-10なんかもソビエトの劣化版システムのイラク軍に湾岸戦争で通用しなかったのに何故本家ロシア軍に通用すると考えてるのかな?とプロの意見に素人ながら首をかしげます。
    ウクライナ政府もそれだけ長期戦を想定しているのでしょうが。

    21
      • T.T
      • 2024年 1月 13日

      A-10に出来ることは大体Su-25でも出来ますからね。損耗補充の感覚なのだろうか。
      まあ、有れば役に立つ的な言い方なのでそこまで本気では無いんだと思うんですけど。

      28
      •  
      • 2024年 1月 13日

      A-10は湾岸戦争で大活躍だろ。

      4
        • 歴史と貧困
        • 2024年 1月 13日

        湾岸戦争のように、アメリカ軍が運用するなら使い所もあると思うんですけどね。今のウクライナではどうにもならない。

        5
      • hiroさん
      • 2024年 1月 13日

      湾岸戦争ではA-10を140機投入し喪失6機。
      イラク軍の戦車987両、装甲兵員輸送車約500両、指揮車両など249台、トラック1,106台、砲兵陣地926ヶ所、対空陣地50ヶ所、SAMサイト9ヶ所、レーダーサイト96ヶ所、指揮所など28ヶ所、塹壕72ヶ所、スカッド発射台51基、FROG発射台11基、燃料貯蔵タンク8ヶ所、航空機地上破壊10機、Mi-17ヘリコプター撃墜2機の戦果が記録されている。
      これで通用しなかったとは厳しい評価ですね。

      9
    • ku
    • 2024年 1月 13日

    パイロット養成にどれだけの時間が必要かという・・・

    12
      • kitty
      • 2024年 1月 13日

      なにしろA-10学校が必要ですからねえ。

      7
        • Easy
        • 2024年 1月 13日

        それに加えて、A-10乗りとして養成してしまうと、他の機種への転換が大変ですよ。乗り方も使う兵装も戦術も違いますから。
        しかも後継の新型機種があるわけではないので,進化の袋小路です。A-10で培った技術を持って行く先がありません。貴重なパイロット資源をそこに投資するのは筋が悪すぎますね。

        4
          • kitty
          • 2024年 1月 14日

          一応Aー10学校で検索推奨

    • 琥珀
    • 2024年 1月 13日

    どんな兵器も数が少なければ多少効果はあっても大局には影響なくて、懸賞金とか付けられて執拗に狙われて撃破されそうですし、
    数が足りたところでそれを運用し維持するだけの人と金はあるのかって話ですね。

    とりあえずウクライナは政府も軍も土地に拘るのやめた方がいいような。
    土地に拘って人や物を消耗した結果押されてる訳ですし、ロシアは今は長期戦覚悟したからか、ウクライナ軍の人的資源や兵器何かの消耗狙ってる感じになってるしで。

    33
      • たむごん
      • 2024年 1月 13日

      仰る通りです。
      ウクライナは、5年10年単位の戦争が続くと言われていますから、ウクライナ兵は極めて貴重と思います。

      >土地に拘って人や物を消耗した結果押されてる訳ですし、ロシアは今は長期戦覚悟したからか、ウクライナ軍の人的資源や兵器何かの消耗狙ってる感じになってるしで。

      2
    • 58式素人
    • 2024年 1月 13日

    何が欲しいということではなく、何でも(?)良いので
    戦闘/攻撃機とヘリの数が欲しい、ということでしょうか。
    現有装備の損耗が激しいのではないかと想像します。
    ”チャンスは常にあると思う” 当然と思います。軍人ですから。
    よく言えば、入手したもので勝機を見付けてみせる、と言っているのでは。

    11
    • 暇な人
    • 2024年 1月 13日

    A10はロマン、これがロシア軍を蹂躙するのはルーデルの夢の実現

    12
    • たむごん
    • 2024年 1月 13日

    現代航空機は、エンジンなどの交換部品・整備要員など、後方支援の負担が大きいですよね。
    ウクライナは旧ソ連の兵器体系だったため、(F16だけでも)運用基盤を構築するのが大変でしょう。

    ウクライナ喜捨の予算は限られているえに、安価で大量調達できる兵器のメリットが見直されています。
    仕事も同じですが、限られた条件の中で、最適解に辿り着いて欲しいですね。

    4
    • Easy
    • 2024年 1月 13日

    >「前線の長さが約1,000kmに及ぶ戦場のあらゆる場所に強固な防衛ラインを構築するのは不可能だ」「地形やその他の要因で必ず脆弱な場所は存在する」
    これは現在防衛線を作って守ろうとしているウクライナ軍側にとって厳し過ぎる現実なのでは、と。。
    >「チャンスは常にあると思う」「それを見つけて利用するだけだ」
    これはロシア軍側もそう思ってますよね。
    そして天秤にかけた時にチャンスの数が多いのは常に平坦が充実していて物資と兵士に恵まれている方です。
    どんどんどこかの太平洋戦争みたいな感覚になってきますね。こうやって捷一号作戦とかが始まるんだろうなと思うと、とても感慨深いですね。

    17
      • たむごん
      • 2024年 1月 13日

      捷一号作戦などにより、余力を吐き出して、1945年に被害が激増していきますからね。

      ウクライナが、日本の失敗を繰り返さないように、余力のあるうちに外交交渉が妥結する事を願っています。

      13
      •  
      • 2024年 1月 13日

      >「前線の長さが約1,000kmに及ぶ戦場のあらゆる場所に強固な防衛ラインを構築するのは不可能だ」「地形やその他の要因で必ず脆弱な場所は存在する」

      実は私はこの部分にかなりの面白みを感じました
      旧ソ連末期、ちょうど発言者であるシルスキー大将が軍事理論を最も吸収した時期であろう20代半ばから30代くらいの頃ですね、この陣地構築についてソ連軍内で何十年ぶりの大きな議論がありました
      つまり西側でもあった「火力が向上した将来戦では用兵もより流動的かつ散兵的にならなければならない」というやつです
      第二次大戦以前から使い続けて洗練されてきた拠点防御陣地を基本としていたソ連軍の陣地構築ですが、この将来戦への対応として新しい陣地構築術が提案されました、島嶼型ハニカム陣地
      です
      これは各個に独立した複数陣地を幾何学的に配置する陣地で、従来型の拠点防御陣地と比べ、全周対応能力が高く、より小部隊で広正面を防御可能で、陣地構築にかかる時間も少なく、移動性も優れ、逆襲への移行もはるかに容易、という利点があると言われていました
      ただし理屈でそうは言っても反論も多く、特に議論になったのが、各個撃破される危険性が高いことと、そして「幾何学的配置を前提とすれば地形対応能力に致命的な欠陥を抱える」という点です
      まさしくシルスキー大将の言う通り1000kmに及ぶ戦線全てに強固な防御陣地を築くことはそこに配備する部隊数の面で両軍とも不可能であり、多くの部分でこの島嶼型ハニカム陣地(あるいは西側の類似陣地)に頼らなければいけなくなるが、そうすると地形的に脆弱な部分が必ず表れてしまうというわけです
      実に35年前の大議論が今になって再燃しているように感じてしまいます
      ちなみにいわゆるスロヴィキンラインからもこの議論に対する研究成果が見て取れます
      ロシア軍はトクマク正面に第二次大戦型の拠点防御陣地を超えて第一次大戦を彷彿とさせる連続線防御陣地を構築した一方で、南ドネツク正面では拠点防御陣地と島嶼型ハニカム陣地の中間のように見える変種の陣地を構築していました
      結果を見るとロシア軍の35年間の研究はしっかり結実したと言えるでしょう
      さて、ウクライナ軍の35年間はどうだったのでしょうか
      こちらもまた楽しみにしているのですが、ウクライナ軍の構築した陣地の衛星写真などはロシアのものと違ってあまり出てきておらず、残念に思います

      8
        • Easy
        • 2024年 1月 13日

        大変興味深いですね!
        個人的には西側ドクトリンが高度な技術を使って「急所となる最重要目標の効率的かつ確実な破壊」にシフトして行ったのと真逆に、ロシア側は「何を破壊しても終わらない泥沼の総力戦」を想定していたあたりがもう文化の差というべきレベルで異なるんだな、と。。
        そして今のウクライナ戦は完全にロシアのフィールドで戦ってしまっていると言えそうです。

        2
          • T.T
          • 2024年 1月 13日

          そこは相互にドクトリン研究して対応を続けている分野ですからね。
          例えばエアランドバトルによる結節点の破壊に対応する為、ソ連軍は部隊展開のマニュアル化により通信や司令部が破壊されても作戦が遂行され続ける体制を作り出しました。グルジア戦争のツヒンヴァリの戦いで第58軍司令部が待ち伏せ襲撃された際にその成果が発揮されたように思います。

          4
        • たむごん
        • 2024年 1月 14日

        情報ありがとうございます、勉強になります。

        ウクライナ軍の陣地情報、戦中・戦後いつになるのか分からないですが、考察を拝見する事を楽しみにしています。

    • コンビニ
    • 2024年 1月 13日

    最後までゲームチェンジャーに縋りますね

    13
      • paxai
      • 2024年 1月 13日

      ウロ共に攻勢を大規模に成功させるにはゲームチェンジャーが必要だと思う。
      1キロ前進ならまだしも要塞化されたポイントを損害を抑えて突破出来る兵器が今の所ないわ。

      1
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 1月 13日

    A-10を効率的に運用できるだけの組織・環境があるなら、そもそもここまで押し込まれてないでしょ
    「〇〇さえあれば!」「〇〇があれば!」というのは気持ちはわかるのですが現状では論外としか思えません

    17
    • マダコ
    • 2024年 1月 13日

    またはじまりましたね。
    su-25がいくらか入った事を想像すれば良いと思うのですが。
    要は大差はないということです。ゲームチェンジャーではないと素人でも思います。

    13
    • 帝国
    • 2024年 1月 13日

     与党(大政翼賛会状態のようだが)が議会で「50万人動員」法成立を断念せざる得なかったくらい軍需・民需へのマンパワーが逼迫しているのがキエフ政権の実態。A-10があれば~も反抗のチャンスはどこにでもある~も全て反現実の妄想に過ぎず、見苦しい〇〇〇ー・ショーでしかない。

     とりあえず可能で当面有効なのは、ドニエプル川西岸に退却しその橋を落とすくらいか?東キエフなども断念だが、今は兵隊の消耗がもっとも堪えるのだから守りやすいところまで引くしかない。制空権と力量と兵力と良い装備があれば遅滞戦術、機動防御も可能だろうがこれまでそうであったように無理。後は、川などの自然障害と陣地構築を組み合わせて次々と西側に下がっていくしかない。西側に行けば行くほどウクライナの兵站は楽になり露軍は面倒になる。時間を稼げばマシになるかは正直怪しいのだがウクライナ西部まで行けば、ウクライナ語話者の濃度も高まるし補給も超楽になるし戦線を整理すればその長さの割に部隊密度がすごく上がりそうだから守りやすくはなるだろう。もし、本当にキエフ政権への国民の信頼が篤いならロシアの伸びた補給線への攻撃も盛んに出来て西部戦線の露軍は気息奄々となるかもしれない。もっともベラルーシ側の北方に対しどう守るかという問題はあるんでそれなり苦しくはある。
     今の方向で戦うならA-10が来ようがアパッチが来ようが何が来ても兵隊が溶けるのが速過ぎてますますどうにもならない。反攻で戦略予備も含め戦力を溶かしてもう負け確なんだけれど、これでドニエプル川東岸で無駄に頑張ってしまい残存戦力のマシな部分の多くを喪ったら転げ落ちる。オデッサを取られ、南北から西部国境封鎖へ進むだろう。

    5
    • きりる
    • 2024年 1月 13日

    A10は無人機に改造してGBU39を山盛りにしてSAMの脅威が高い空域でCASで使い潰すくらいしかないでしょ

    1
    • 名無し
    • 2024年 1月 13日

    戦線は広いから抜けるところはあるだろうけど、そこから先が厳しい
    安く余ってる兵器貰った方がよいと思う

    • コンビニ
    • 2024年 1月 13日

    JSFさんもこの話題してましたが…ごめんなさい笑わせてもらいました。

    …どうしてこうなった

    • れんちゃ
    • 2024年 1月 14日

    これは逆の話かな。攻撃ヘリについては管理人さんのいう通りコストや技術的問題が大きいと思うが、A-10は別だと思う。
    まず、A-10は空軍の決定によって使える状態で保存される機体数が大きい。まとまって60機をフライアブルで入手出来るなんてのはなかなかない話だよね。その場合は支援額算入コストが違うんだよね。A-10渡したから別のA-10を買い直すという算定にならないので、そこは安くなる。当然、既にあるA-10用の予備パーツもそのままセットで流用出来るので他の選定よりもそこらが潤沢な環境になる。
    更に大きいのは整備性と生存性だね。A-10なら普通の戦闘機や環境に敏感な戦闘ヘリよりも扱い易い。元々メンテ重視の設計になっている上にエンジン位置的にも基地運用が比較的易しい部類に入る。砂漠の作戦で戦闘ヘリが満足に飛べないのにA-10は飛べたのはこの違いが大きい。被弾した場合も帰投や着陸、もしくはパラシュート離脱出来る可能性がかなりある。イラクでそれは証明されてる。ヘリと違って脱出装置にも頼れるしね。
    大体、これから西側戦闘機を導入しようかってのにA-10も扱えないなら話にならんよね。むしろA-10で基地運用経験積ませてから西側戦闘機を扱わせた方が良いのでは?とすら思う。
    ただ、攻勢に使うというよりも敵が突出したところを叩く方が有望かな。最近は歩兵の突出なのでそれなりに離れた所からアベンジャーぶち込んで即帰投するだけで良い話になるだろう。また、敵がおいそれと突破を狙いにくくなる予防効果にもなる。そういった必要が出るまでは普段は後ろでドローンハンティングでもやってた方が良いんじゃないかね?
    仮に攻勢に使うとしても、ダメ押しみたいな使い方になると思う。まあ、短距離空対空ミサイルを使える空飛ぶローランドとでも思えば余ってる期限切れ間近な短距離対空ミサイルの流用に良いんじゃないの?A-10ならいろんな所に降りれるし、長時間巡回任務も出来るでしょ。意外と悪くないと思うよA-10だけに限れば。

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